浄化
ユリウスの言葉にアランはこれ以上ない程傷つく。
最愛の兄を苦しめているのは自分の存在なのだと。
「ユリウス殿下、これを召し上がってくださいませんか」
「これは・・・なに?」
プリンを差し出すアリシアはユリウスを見つめる。
「プリンというお菓子です。これはアラン様が貴方様の為に一生懸命つくったものです」
「私は・・・もう」
生きることに絶望した自分は何も食べたくないと言う。
「せめて一口だけでも。アラン様のお気持ちです」
「アリシア!」
無理を言うなと訴えるもユリウスは弱弱しく手を伸ばす。
「アランが・・・私の為に」
「はい」
黒い影はユリウスを縛り付けていたが一瞬だけ緩まった気がした。
(この影は・・・)
アリシアはこの黒い影がユリウスに憑りついている原因にもしかしてと思った。
真っ黒に染まる影はまるで負の感情そのものでユリウスの心の闇にも思えてならなかった。
ならば・・・
「どうぞ」
「ああ・・・」
一瞬でもこの影に。
自分の中にある闇に打ち勝つことができればと賭けに出た。
「兄上、いかがでしょう」
「・・・・」
一口プリンを食べるとユリウスは涙を流した。
「美味しい・・・なんて優しい味なんだ」
「ユリウス様。その味はアラン様が貴方を思って作ったものです」
「私のため?」
プリンの甘さが口に広がり、甘さと優しさが包んでいた。
「その優しい味は貴方様に元気になってほしい。その願いが込められています」
アリシアはユリウスに訴える。
「アラン様はユリウス様を心から慕っておいでです。これ以上自分を責める物言いはアラン様を傷つける行為です」
「アリシア!!」
厳しすぎる言葉にアランは咎めるがアリシアは止まらない。
「貴方様は王となられる方です。ならばご自分に負けてはなりません!貴方様がお亡くなりになればどれだけの方が泣くことになりましょうか」
「誰かが・・・泣く」
生気のない瞳に一瞬だけ光が戻りユリウスを拘束していた黒い鎖に皹が入る。
「わたしは・・・生きていていいのか?」
「兄上!」
瞳を揺らすユリウスにアランは驚きながらも告げる。
「当たり前です!私は兄上をお支えし守ることが願いです!兄上が王となることを願っています」
アランの心からの願いがユリウスに届く。
ガキン!
何かが砕ける音が聞こえた。
「アラン!」
黒く覆っていた霧が消えていく。
ユリウスはアランに手を伸ばし抱きしめる。
その手を離すまいとアランはユリウスを抱きしめる。
「すまないアラン・・・許してくれ」
自分を取り戻したユリウスだったが、影は消えていなかった。
影は瞬く間に二人に襲い掛かろうとした。
「お二人とも危ない!!」
影がユリウスとアランに襲い掛かろうとするが、咄嗟にアリシアは傍に置かれている剣を取り影を防ぐ。
「オノレ・・・後少シダッタモノヲ!!」
「邪悪な影の主!!やはり殿下に憑りついていたか!!」
ユリウスの病の原因は悪霊の仕業だった。
「アリシア!!」
「さがってください!!」
剣を構えながら睨みつける。
「兄を思う弟の気持ちを・・・弟を思う兄の気持ちを弄ぶなんて許せない」
人の弱みにつけこもうとしたやり方が許せずアリシアは悪霊を睨みつける。
「かかって来なさい。悪霊には悪役令嬢がちょうどよくてよ?」
貴族の令嬢には似つかわしくない勇ましい表情をするアリシアだったが相手は悪霊で生身の人間が太刀打ちするのは難しかった。
「アリシア!!」
「アラン!聖剣を・・・聖剣を使うんだ」
「はい!」
ユリウスは聖剣をアランに投げる。
「うっ・・・ぐっ!!」
悪霊に力で押されるアリシアは息もできない状況だった。
そこにアランは聖剣を突き立てる。
「きゃああ!!」
「アリシア!!」
聖剣の光により悪霊は浄化され光の中から小さな妖精が現れる。
「え?」
「妖精に悪霊が憑りついていたんだ」
小さな動物の姿をした妖精はそのまままどからいなくなってしまい驚くアリシアだった。




