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黒い影



出来上がったプリンを持ってアランと一緒にユリウスの元に向かう。



「すごい綺麗な作り」


「この先は王族の部屋だからな。その奥が託宣の間だ」


すごく静かだった。

王宮の中ならば侍女やメイドが行き来して当然なのに。


「どうしてこんなに静かなんですか」


「この国の精霊の加護が弱まっている。その所為だ」


この国は精霊の加護により反映して来たが、今はその精霊の力が弱まり平和な国もいつ崩れるか解らなかった。



「あれ?この肖像画は?」


「この国の聖女だ」


「聖女?」


大きな肖像画を見上げる。

色鮮やかな花と穏やかな表情で微笑む慈愛に満ちた女性の絵だった。


「国が亡びる時、白き姫巫女現れ、地上を浄化せん」


「え?」


「古くから伝わる言い伝えだ。この国を救うであろう聖女を表している」


じっと肖像画を見つめるアランの目はどこか優しげだった。


「聖女とはこの国を救う姫巫女だ。姫巫女は清き乙女だと言われている」


汚れを浄化する尊い存在でこの国の騎士団はいつか現れる姫巫女に仕えるのが代々の誉だとされていた。


「俺は神なんて信じていないが、姫巫女のことは信じている」


「え?」


「実際に存在した方だからな」


かつて精霊の加護を授けたのが初代姫巫女と言われていたのだ。


姫巫女の話は幼い頃から聞かされていた。

おとぎ話の様にされていたが、いつか本当に会えるならばと思っていた。



そんなことを考えながら首を振る。


「この話は忘れてくれ・・・姫巫女が現れると言うことは国の危機を表している」


「アラン様」


「この国はまだ大丈夫だ。陛下も、ユリウス殿下も存命なんだ」


姫巫女が君臨するということはこの国の危機を表している。

そんなことはあってはならないんのだと言い聞かせるアランだった。


「この奥だ」


「はい・・・」


大きな扉の前に立つ。



その時だった。

黒い影が見えたのは。


(何・・・?)


扉を包む黒い影が見える。

まるで黒い影がすべてを包み込むようだった。


「兄上失礼します」


扉に手をあてると、そこにはベッドに横たわるユリウスが真っ青な顔で二人を見ていた。



「あっ・・・兄上」


「アラン」


今にも消えそうな程の儚い笑みを浮かべる。



「来てくれたんだね」


「兄上・・・」


黒い靄がユリウスを包み蝕んでいた。



「ゲホッ・・・ゲホッ!」


「兄上!!」


咳き込み吐血するユリウスに駆け寄るアランは背中をさする。


「アラン・・・私はもうだめだ」


「兄上!なにを・・・」


「私が死んだら君が母上と父上をお支えするんだよ。君がこの国を」


「やめてください!」


弱気な兄の言葉を遮る。


「もう・・・疲れたんだ」


「兄上・・・」


「私はもう解放されたい。もう生きていたくない」



生きることが苦しくて仕方ないというユリウスに唖然とする。


「私さえいなければ・・・アランは王位につける」


「そのような!」


「私なんていなければいいんだ」



(これは!)


真っ黒な影がユリウスを支配している。


まるで黒い鎖で繋がれているかのようだった。




アランには見えない影がアリシアにはしっかりと見えていた。




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