変化
朝と昼はお日様が大地を照らし、夜はお月様が照らす。
その光は一条の光で、どんなに暗くてもその光があれば道を見失うことはない。
いつもユリウスが言っていた言葉だった。
「後は流し込めば・・・」
厨房で真剣な表情で鍋をかき混ぜるアリシアを見て思うアランはふと昔のことを思い出す。
「これは」
「プリンです。のど越しがいいのでユリウス殿下も食べやすいかと。後は薔薇をあしらいます」
温室に咲いていた薔薇の花を添える。
「さぁ、仕上げですアラン様」
「あっ・・・ああ」
アラン自ら作った初めてのお菓子。
「気持ちを込めてください。お兄様への気持ちを」
「俺の気持ち・・・」
最高のスパイスは食べてもらう人への想い。
その想いをプリンに精一杯こめて出来上がったカラメルプリン。
「できました」
「不思議な菓子だな・・・珍妙で君みたいだな」
「さりげなく私を貶してますね?私はプリンみたいに太いといいたいんですか!」
公爵令嬢であるアリシアにこんなに失礼な態度をとる人間なんて国内にはまずいないだろう。
表向きは淑女の鑑として振る舞い猫を被って来たのだから。
例え中身がこんなにもぶっ飛んでいようとも。
「いや・・・悪い意味じゃななく・・・もが!」
アランの口にスプーンを突っ込む。
本人はかなりご立腹のようだった。
「あっ・・・美味い」
「でしょう?でも美味しいならもう少し笑ってくださいな」
いつも仏頂面のアランにとって笑うと言う行為は難しいモノだった。
「アラン様は素敵な面立ちをしているのに笑わないなんてもったないですわ」
「・・・・・」
罰の悪そうな顔をするアランに気づかないアリシアはプリンをお皿に乗せていた。
アランの中で少しずつ変わり始めていく何かに気づかずにいたのだった。




