ヒマワリのように
アリシアの言葉が真っすぐにアランに届いた。
ユリウスは誰よりもアランを気にかけ愛情を向けていた。
異端の色を見に纏った自分を災いだと言う貴族も多い中真っ先に庇ったのは兄だった。
そんな兄が病に倒れた時どれだけ傷ついたか。
この世に神などいないとさえ思う程絶望を感じたのだ。
愛する兄を守りたかった。
アランの太陽でもある兄をどうしても守りたくて王位継承権を捨てて騎士団に入ったのだ。
これから先兄を支え守る為に。
その想いを理解してくれる人間がいなくとも。
「俺は・・・」
兄を守りたい。
もう一度昔の様に兄が笑顔を取り戻せるならどんなことでもしたい。
「どうしたらいいか解らない」
「え?」
「兄を・・兄上を笑顔にする方法さえ解らないんだ」
「兄・・・」
アランの言葉でようやく気づいた。
王太子殿下であるということに。
「アリシア教えてくれ。どうしたら君の様に誰かを笑顔にできる?君のような魔法を使うことは俺にはできないんだ」
「魔法?」
「君のお菓子は魔法のようだった・・・食べると幸せになれる」
あの時食べたクッキーの味を思い出す。
食べた時心が和らぐような気持だった。
「アラン様」
「なんだ?」
「今から一緒にお菓子を作りましょう」
ガシッと手を掴むアリシアに首をかしげる。
「お菓子と一緒に貴方の最高のスパイスを届けるんです。お兄様を思う気持ちをお菓子に込めて」
「だが・・・俺は菓子作りは」
料理なんてしたことがないアランは眉を顰める。
「大丈夫です!私がお教えします!一緒にお兄様を笑顔にしましょう」
美味しいものは人を幸せにする。
それがアリシアの考えだった。
今必要なのは心から美味しいと思うもの。
そのお菓子を作るのだと豪語する。
「さぁ行きましょう」
「おっ・・・おい!」
お見合いに来たことなどすっかり忘れているアリシアは知らなかった。
自分のお見合い相手が誰なのかなんて。




