秘密の花園
優しい薔薇の香りがする温室に入っていく。
「うわぁー・・・綺麗」
足を進めると綺麗に手入れが行き届いた薔薇が並ぶ。
「すっごく素敵!」
アリシアは花大好きだった。
母親の影響もあり自分で花を育てるぐらいだ。
「誰だ」
「え?」
薔薇に触れる一人の青年に遭遇する。
「アラン様?」
「アリシアか・・・って、何で裸足なんだ」
「これには海よりも浅くて狭い事情があります。そしてお願いです。匿ってください」
「は?」
素っ頓狂な声を出すアラン。
まずどうして裸足なのか問いただすことにした。
「飛び降りるなよ」
「鍵をかけたアンナがいけないのです。私が脱走しない様に考えたのでしょうが」
「あのなぁ~・・・」
アランは頭を抱えたくなった。
裸足でその辺を歩くなんて貴族の御令嬢がすることではない。
「でも抜け出してよかった。この庭園本当に素敵」
くるりと見渡し花々を愛でる。
「こんなに綺麗なお花に囲まれていたら心が癒されるでしょうね。ここの花の手入れをしている人はきっと素敵な人ね」
色鮮やかに咲きほこる花を見て告げる。
「この温室はこの国の王太子が作るように命じたんだ」
「この国の王太子?」
「正当な後継者のユリウス殿下だ」
王位を継承することが決まっている人物だ。
「じゃあこの国はきっと優しい国ね。植物を愛する人は心の綺麗な人だもの」
「だがその方は重い病に侵されている」
「え・・・」
顔を歪めるアランはそっと薔薇に触れる。
「幼少期から体が弱い方だった・・・最近では悪化し一人で起きることもままならずにいる。皮肉なことに弟は病とは縁がなく丈夫だ。どうせならば弟が病気になればよかったもの」
その言葉がとても冷たく感じる。
「それは違います」
そんなアランを否定するかのように告げる。
「この温室の花を育てた方がそんな酷いことを願うはずありません」
「何故そう思う」
「だって、そのようにお優しい方が弟君の不幸を願うはずありません。兄や姉が何故咲き匂う稀になるかおわかりですか?」
「・・・・・・・」
「後から生まれて来る弟や妹を守る為です」
包み込んで守るのが兄や姉の勤めながら弟や妹の役目は支えだった。
「ここに咲いている花は全て美しい。それは育てている人の心が優しく美しいからです」
そっと薔薇に触れるアリシアは醜い心を持った人に美しい花を咲かせるなんて無理だと思った。
「花は強い・・・どんな風も嵐も負けない」
弱そうに見えて強いのだ。
「アリシア・・・」
不思議な気持ちだった。
言葉だけの慰めではなくアリシアの言葉は真実がこめられており重みがあるように感じた。
下手なお世辞よりもずっと心に沁みる。
「きっとユリウス殿下は弟君が大好きなんでしょうね」
「・・・・・ああ」
凍りつく心が少しだけ溶けていくような感覚だった。




