逃亡
憂鬱な気分で王宮に足を運ぶことになった。
なのにアンナはこれ以上ないほど気合をいれてドレスアップをする。
「アンナ、気合入れ過ぎじゃない?」
「何をいいますか!これぐらいは当然です」
アリシアの銀髪に紫の花を飾る。
瞳の色と合わせてだったのだがかなりの気合が入っている。
「なんで純白なのよ」
これではウェディングドレスのようで困る。
断られる可能性だってあるし破談になることも考えられるのにと思いながらアメリアに促されるまま馬車に乗る。
「私はご挨拶をしてきますから貴方はここで待っていなさい」
「はい」
王宮に入り客間に通されたアリシアは深いため息をつく。
「お嬢様、くれぐれも・・・」
「わかっているわ」
ここに来てまでお小言を言われるのかと思うとうんざりだった。
「では失礼します」
「ええ」
アンナも席を外し一人になったアリシアはいよいよ病みそうだった。
「とりあえず向こうが断ってくれればなおよし」
王族に嫁ぐことにトラウマを感じつつある。
「シンデレラは幸せになんて絵空事だわ」
前世の記憶を持っているが故に思うことがある。
それに中身は庶民だ。
「別に王妃にならなくてもいいのよね」
平民になって自由になり好きな人を見つけて自由に生きていく方がずっと魅力的だ。
とはいえこの世界では身分に性別の制約が厳しいのだ。
あげく自分の立ち位置は公爵令嬢だった。
「逃げたいわね・・・」
許されないとは思っているが正直な気持ちだ。
「抜け出そう」
アンナがいない今が絶好の機会だ。
別にすっぽかすわけじゃない。
この居た堪れない待ち時間を潰すだけだと思ったが・・・・
「ちょっと!何で鍵がかかっているのよ!!」
ガチャガチャとドアノブを潰しかねない勢いだ。
「こうなったら」
バルコニーに出て逃げ出すことにした。
「大丈夫よね」
運動神経に関しては自身がある。
警備も手薄で簡単に抜け出すことが叶いしめしめと思いながら裸足で逃げ出していった。
「やっぱり外の空気は美味しいわね」
ヒールを手に持ちそのまま歩いていくと温室が見える。
小さな温室だがこじんまりとしていてとてもアリシア好みだった。




