プロローグ
煌びやかな豪華絢爛な校舎。
国内でも名だたる名門校に通う生徒達。
ここは12歳から18歳までの優秀な生徒が通う学校だった。
今日は卒業式。
華々しく着飾る生徒達だったがそのホールにて不穏な空気が流れていた。
数名の男子生徒が一人の少女をかもるように囲み一人の美しい令嬢を睨みつける。
「何とか言ったらどうなんだ!」
怒鳴りつける少年はこの国の王太子、ハルステッド王太子でありアリシア・ブルーメリアの婚約者だった。
だったとつけるのは元だと言っても過言だった。
「この時を持ってそなたとの婚約を破棄する」
大勢が見守る中告げるハルステッドを前に僅かな頭痛に耐えながらも前を向く。
「それが殿下の望みなら。ですが訳をお聞かせください」
「この期に及んで」
ズキンと痛む頭痛を抱えながらも先程まで意識がとんでいたことに気づくアリシアは胸を抑える。
「そなたが!ここにいるマリア嬢に陰湿な嫌がらせをしたからだろう!身分が低いという理由で!」
ハルステッドの後ろに隠れて泣きそうな表情をするのはこの世界の‥‥というよりもこのゲームのヒロインでもある少女。
男爵家の娘で名をマリアという名前だったと記憶している。
「私は間違ったことをしてはおりませんわ」
「なんだと!」
「私はマリア様を苛めるような愚かな行為をしていないというのです」
対峙する中数名の男子生徒が批難の目を向ける。
「この期に及んでそのような!貴方はこれまでマリア嬢に嫉妬し陰湿な嫌がらせをしたではありませんか‥‥特にハルステッド殿下に近づくなと」
「それは王族に対する態度を咎めたのです。殿下は王族。そのお立場を理解ししていただく様に厳しく咎めたのです」
「ならば、夜会で他の者と踊ろうとした時に厳しい言葉を浴びせたのは」
「それはマリア様がパートナーがいる男性とダンスを踊ったからですわ」
上流階級においてぜったに侵してはならない決まり事。
それは婚約者のいる男性とダンスを踊ってはならない。
踊る場合も礼節重んじるのが決まり事だった。
「だが身分をひけらかせ彼女を愚弄したというではないか」
「殿下は私がしたところを見て聞いたのですか?私がそのような人間とお思いなのですね」
「現に君の所為でマリアは辛い思いをした…そうだな?」
ハルステッドの腕に抱かれるマリアは涙目で告げる。
「ええ‥‥ですがハル様が傍にいてくださったので」
公の場で親し気に愛称で呼ぶマリアに嫌悪感を抱く。
「アリシア嬢、そなたは高位な身分にありながら生徒を傷つけた罪は重い。相手はいずれこの国の王妃になる女性に手をあげたのだ!よってそなたを国外追放にする!!」
「それが殿下の願いとあれば…もう二度とお目にかかることはないでしょうね」
静かに去っていくアリアシアだったがハルステッドが止める。
「去る前にマリアに手をついて謝れ」
「お断りいたします」
「何!!」
「私は自分のして来たことが間違いだとは思っておりません。マリア様に頭下げることは私の生き方を否定すること…マリア様。貴方は私からどれだけ奪えば満足なのですか?」
涙を見せることもなく決して弱みを見せることなく言い放つ。
「私はアリシア・ブルーメリアの人間として恥じる行動はいたしません」
その言葉を言い放ちアリシアはそのままその場を去って行った。