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リリアちゃんと呼ばれた日。



 リリアの名前はリリアライト。

 人族のお父様とお母様の間に産まれた筈なのに、リリアは猫の獣人、猫人キャットでした。


 リリアが猫人キャットに産まれたせいで、お母様はふてい? と言うのを疑われて、第一夫人から第二夫人になってしまいました。リリアのせいです。


 リリアは悪い子なのです。


 獣人は、嫌われ者だと教わりました。

 人の姿をしているだけで、家畜と変わらないと言う人まで居るのだと、側仕えに教えられました。


 その為お城の中には住めず、離宮を与えらています。


 離宮の中で、リリアと同じ獣人の使用人達に囲まれて生活をしています。


 お母様にご迷惑をかけているから、せめていい子で居ようとお勉強を頑張り、与えられた課題をこなしていますが、獣人のリリアが貴族学校に入れるかは分からないそうです。


 そんなリリアには、お姉様とお兄様がいらっしゃいます。


 お兄様は既に貴族学校に居て、今は四年生なのですが、あまりお勉強はお得意ではいらっしゃらない様です。


 お姉様はリリアの一つ上で六歳、お城で暮らしているそうです。


 聞いた話ではとても優秀なお姉様で、読み書きは三歳の時に大人と同じ様に出来ていて、今では礼儀作法や魔法の練習も完璧だと羊の獣人、羊人シープの側仕え、ドレイクが言っていました。


 リリアもお姉様みたいに、凄い人になれたら、お母様に迷惑をかけずに済んだのでしょうか?


 まだ会ったことは有りませんが、何でも出来るお姉様をリリアは尊敬しています。


 そんな生活をしているある日、お姉様がリリアに会いたがっていると、お忙しい中リリアに会いに来てくださったお母様が教えてくれました。


 でもリリアは獣人で、お姉様はその事を知らないそうです。


 怖い、そう思いました。


 初めてお会いしたお父様の目を思い出して、もし尊敬するお姉様に同じ目で見られたらと思うと、とても会う約束を出来ませんでした。


 お母様は大丈夫と言いましたけど、とてもスグには返事が出来ません。


 それからも、お姉様の凄さを毎日噂で聞きました。


 特に魔法のお勉強で、今では大人が数人がかりで使う魔法も一人で出来ると聞き、リリアも自分の事のように誇らしくなったのです。


 ある日ドレイクが、お姉様に魔法を教わる事を提案してきました。


 リリアがお姉様に会うことを怖がっているのを、ドレイクが一番知っているのですけど、そのドレイクに勧められたのです。


 なんでも、お姉様はお父様にも自分の意見をハッキリと言い、嫌な事は嫌だとお父様の命令でも逆らうのだそうです。


 そんなお父様の息がかかってないお姉様なら、リリアに嫌な顔をしないかも知れないと。


 でもそれは変だと思いました。


 獣人が嫌われているのは、お父様は関係無い筈では?

 獣人が獣人だから、人族は獣人を家畜と呼ぶのだと、そうリリアに教えたのはドレイクじゃありませんか。


 そう言うと、ドレイクは静かに教えてくれました。


 お城でリリアの事を領主の娘として扱ってくれるお方は、お母様以外にも居るのだと。


 それがお姉様のお母様、フェアリーゼ様だと。


 フェアリーゼ様とお母様は仲が良く、第一夫人と第二夫人の立場が入れ替わっても変わらぬ態度で接していると。


 そんなフェアリーゼ様の娘のお姉様なら、フェアリーゼ様と同じでリリアの事を妹として扱ってくれるんじゃ無いかと。


 少しだけ、お姉様に会ってみたくなりました。


 お母様以外にも、リリアを人として扱ってくれる人が居ることと、その娘であるお姉様に興味を持ちました。


 勇気を振り絞り、お姉様をお茶会に誘おうとお母様にお願いしてみると。


「あらあらあら、それはいい事ね。お母様嬉しいわ。今すぐ聞いてくるわね。水の鐘にはアナタのお姉様がここに来ると思うからしっかり準備するのよ?」


 なんとその日の内にお姉様を招待して来ると言い始めたのです。


 面会の予約もせずに会いに行くなど失礼ですし、その日の内にお茶会に誘うなど有り得ないと、リリアが学んだ礼儀作法や教養など何だったのかとお母様に思わず叫んでしまいました。


 お母様は聞く耳を持たず、本当にお姉様をお誘いしてきたと昼の鐘が鳴ったスグあとに離宮に戻ってきました。


 ほ、本当に今日、お姉様がここに? あと鐘一つの間に?


「ど、どどどどどうしましょう! ドレイク、準備のお茶会を急いでっ······!」

「お嬢様、落ち着きなさいませ。お茶会の準備ですよ。準備のお茶会とは何ですか。淑女たるもの、如何なる時も焦ってはなりません」


 既にお母様は城に戻り、何も出来ないリリアの代わりにドレイクはテキパキと準備を進めていき、あっという間にお茶会が出来る状態に客間を仕上げました。

 リリアの側仕えは優秀です。


「ではお嬢様、そろそろお約束の水の鐘がなりますので、入口にてお客様をお迎えして参ります」


 ついに、お姉様に会えるのだと思うと、胸がドキドキして苦しくなってきました。


 嬉しいのですが、同時に同じくらい怖くて、泣き出してしまいそうです。


 いえ、怖い方が強いでしょうか?

 それとも、楽しみだからこそ、その分強く恐怖を感じるのでしょうか?


 どちらにせよ、怖くなってきました。


 お姉様は本当にリリアを、妹として見てくれるのでしょうか。


 震えそうになる体を抑えつけ、歯を噛んで恐怖を必死に押し込めると、ドレイクの声が聞こえた後にお姉様とその側仕えが客間にやって来ました。


 怖かった気持ちはどこかに飛んでいき、リリアは客間の入口に立つお姉様に見蕩れてしまいました。


 夜の空を思い起こす、一つの癖も無い艶やかで綺麗な黒髪が腰までスルリと伸びていて、リリアを見詰める瞳は吸い込まれそうな程に濃い黒。


 お顔は人懐っこく柔らかい印象の中に、少しだけ鋭さが隠れています。


 紫を基調としたドレスは、お姉様の素敵な黒髪と相まって、大人びて見えます。

 そして胸元に見える複雑な形に金属が編まれたネックレスが、既に充分お綺麗で愛らしいお姉様の美しさを後押ししています。


 あ、挨拶をしなくては。


 一瞬時間を忘れてしまいました。

 妹の分際でお茶会に当日呼びつけると言う暴挙のうえ、挨拶も出来なくては、お姉様がお優しくてもきっとお怒りになるでしょう。


 震える喉から必死に言葉を出そうとすると、先にお姉様の口から言葉が零れました。



「·········猫の耳······?」



 体が震えました。


 そうです。リリアは獣人です。猫人キャットなのです。


 忘れていた恐怖が一気に体を飲み込み、涙が出そうになると、お姉様が何やら短く言葉をもらして駆け出しました。


 急に走ってこられるなんて経験した事がありません。


 目には知らずの内に涙がたまり、駆け寄るお姉様が次に何をするのか、嫌な想像だけが膨らみます。


 殴られるのでしょうか? 罵られるのでしょうか?


 怖くて涙が溢れそうになると、お姉様は叫びました。



「可愛いいいいいいいいいいー!!」



 そう叫んだお姉様に、リリアは抱きしめられて居ました。


「かわ、可愛い! 可愛いよぅ! お耳! 尻尾!」


 お姉様に抱き締められたまま、耳や尻尾も撫でられて、最後には頭も優しく撫でられました。


「あ、あの、お姉様·········」

「あ、ごめんねリリアちゃん。お姉ちゃんのフェミリアスだよ。あー可愛いよー! お父様は何でこんな可愛い子を離宮に何て入れてるのかな!? ちょっとフェミ、今からお父様怒ってくるよ!」


 ひとしきりリリアを抱き締めたあと、お姉様は銀髪の側仕えに何事かを伝え始めました。


「お嬢様、まずはお茶会が先ではありませんか?」

「お茶会はいつでも出来るよ! まずは可愛い妹の生活改善だよ! お父様がリリアちゃんの生活を改めなかったらお城をぶっ壊してやる」


 何やら物騒なお話が始まりました。


「あ、あの、おね······」


 言葉が上手く出てきません。

 あまりの事に驚いて、体が言う事を聞いてくれないのです。


「お嬢様、リリアライト様が驚いています。それに公の場では態度が崩れすぎていますよ?」

「無茶言わないでよリーフェ! こんなに可愛いんだよ!? 今は礼儀作法とか無粋なこと言わないでよ!」


 あの、あの、あの。

 先程から何回も可愛いと仰っていますが、もしかしてリリアの事でしょうか?


「お嬢様、旦那様を潰すことこそ、いつでも出来ます。今はリリアライト様と初めてお会いした記念すべき時に、しっかりと臨むべきではありませんか?」

「ん! リーフェがいい事言ったよ! そうだね。お父様なんかいつでも潰せるよね。潰したらお母様に怒られそうだけど」


 リリアだけじゃありません、ドレイクも護衛も、この場に居る全員が言葉を失っています。


「じゃ、改めましてお姉ちゃんだよ。会えて嬉しいな」


 そう言って笑うお姉様に、胸がきゅんと締め付けられる感覚がします。

 リリアなんかより、お姉様こそ可愛らしいと思うのです。


「あの、リリア······ライトです······」


 お姉様の笑顔が眩しくて、素敵で、教えられていた作法など頭からどこかに飛んでいってしまいました。

 ソファに座ったままの挨拶が失礼だと今更気付き、もうしてしまった挨拶に血の気が引いていきますが、お姉様はそれも笑って済ませた後にもう一度抱きしめてくれました。


「うー、可愛いよー。慌てなくてもお姉ちゃん怒らないからね、ゆっくりでいいよ」


 諭すように頭を優しく撫でられて、胸がドキドキします。

 お姉様はなんだかいい匂いがして、柔らかくて、あぅ······。


 リリアがお話しを進めないから、お茶会がいつまでも始まりません。


「はぁ、なんか満足しちゃった。リーフェ、リリアちゃん連れて帰ろ?」

「お嬢様、護衛の前で誘拐発言は如何なものかと存じます」


 あわ、あわわ、まだ帰ってはダメです。

 お茶会に呼び付けておいて、持て成しもせずに返すなど淑女失格とドレイクに教えられましたもの。


「お、お姉しゃま、お席を······」


 それだけ言うのが限界で、後は視線でドレイクに頼みます。

 察してくれたドレイクはやはり優秀です。

 リリアからお姉様を引き剥がす時に、少しだけ寂しく思いましたが、このままだとお茶会が始まらないので仕方ないのです。


 丸いテーブルにリリアとお姉様が向かい合って座り、その後ろにそれぞれ、お姉様の側仕えとドレイクが立っています。


「本日はお招き頂き嬉しく思いますわ。わたくしはフェミリアス、アナタの姉よ」


 本当に今更だけど、きっちりと貴族の顔を被って挨拶をやり直すお姉様がとてもカッコ良く見えます。


「あ、あの、本日は急な招待に関わらず、お越し頂きまして、嬉しく思います······。わ、わたくしはリリアライトと、申します。·········お姉様にお会い出来て光栄です」


 最後だけは本心から絞り出したので、スラスラ言えました。が、どこから見ても挨拶はボロボロでした。


「ふふ、今日はお土産も有るのよ。リーフェ」


 お姉様が手を叩くと、お姉様の側仕えがドレイクにバスケットを渡します。

 それをドレイクが今度はメイドに渡して食器に出していき、ドレイクが一つだけ口にして毒味が終わると、お茶会のテーブルにお姉様が持ってきて下さったお菓子が準備されました。


「ほ、本当に急なお話でしたのに、お菓子の準備まで······」


 淑女としての格を見せられた気がします。


「ふふ、リリアライト様、お嬢様はリリアライト様にいい所を見せたくて張り切って居たのですよ」

「あら、リーフェは何でバラしてしまうの?」


 リリアが落ち込みそうになると、お姉様の側仕えがリリアを励まし······てくれたのよね?

 それをお姉様が笑顔で睨みます。


 ああ、アレが『笑顔のまま相手を睨む』技術ですかっ······!

 ドレイクやお母様にも必要だと言われている淑女の嗜みです。

 やはりお姉様は凄いのです。リリアはまだ出来ないのです。


「ふぅ、貴族っぽいのもう良いかな?」


 急にお姉様が貴族を辞めました。いえ、本当に辞めては居ないのですが、お部屋にいらっしゃった時と同じ様に砕けた様子になりました。


「お嬢様、公の場ですよ」

「リリアちゃんは妹なんだから身内でしょー!」

「リリアライト様の側仕えや使用人が居ますが?」

「リリアちゃんの仲間はフェミの仲間だよ?」

「その理論で行くとガノドライグ様も仲間になりそうですが?」

「敵では無いよ? アレは邪魔者なだけ」


 いくら何でも、領主様を相手に不遜過ぎる物言いは、ですがこの離宮に居る獣人の使用人は殆どお父様が嫌いなので、心無しか頷いている者も居るようです。


 リリアの後ろの近衛兵士なんか、見なくても頷いていると分かる程です。


「それより、リリアちゃんに聞いていい? リリカフェイト様は人族だよね?」


 体が少し震えました。

 そうです。リリアは獣人なのです。


「はい。お母様は人族です」

「うーん。先祖返りか何かかな?」

「せ、せんぞがえり······ですか?」


 何でしょう、聞いたことの無い言葉です。


「うん。リリカフェイト様ってどこの領地から来たのかな?」

「えっと、お母様はファミニストルデから嫁いで来たと教えられています」

「リーフェ、その領地での獣人の扱いは?」

「はい、他の領地に比べると大分良好で、獣人が当主をやっている貴族家も少しあります」

「あー、じゃぁやっぱり先祖返りだよ」


 お姉様は確信を持っているみたいですが、せんぞがえりとは何でしょう?

 お姉様に聞くと、素敵な微笑みを浮かべて教えてくれました。


「先祖返りって言うのは、簡単に言うとリリアちゃんのお祖母様とか、もっと遡って探した時の血縁者の特徴を持って産まれてくる事だよ。リリアちゃんの血筋に獣人の人が居たんじゃないかな?」

「そ、そんな事があるのですか?」

「うん。珍しい事だと思うけど、多分ファミニストルデの文献を探せば類似の事例が有ると思うよ」


 では、リリアは、悪く無いのですか······?


 あれ、どうしてでしょうか。

 急に涙が溢れて来て······、ダメです。今はお茶会の途中です。

 人前で泣き出すなど、淑女失格です。


「何となく分かってきたけど、獣人ってもしかして差別されてるのかな?」

「·········はい。我々はもちろん、お嬢様も好意的には見られていません」


 ドレイクがお姉様の質問に答えると、目に見えてお姉様が呆れた表情になりました。


「はぁ、やっぱりかー。ちなみにどんな差別かな?」

「簡単に説明しますと、我々獣人は家畜だと、多くの人族は言います」

「くっだら無いなー! お父様もそうなのかな? リーフェやっぱりお父様潰そ? 人族主上主義なんてろくなもんじゃないよ」

「お嬢様、あんなのでも一応領主なのです。潰すのは良いとして、その後領地管理が出来る者を据えないと領地が滅んでしまいます」


 またお姉様から物騒なお話が飛び出します。

 お姉様にとって、お父様はどう言う存在なのでしょう?


「種族がどうとか本当に下らないよ。大切なのは何を成したかじゃないの? お父様なんて領地経営に失敗して、今は維持するのがやっとなんだから偉そうにしないで欲しいよね。みんなもそう思わない?」


 お姉様が客間を見渡すと、誰も口を開きませんが、否定の言葉も出てきません。


「お嬢様、何度も言いますが今はお茶会ですよ。旦那様を引きずり下ろすなんて今のお嬢様には簡単でしょう? それに、このような会話を続けると、リリアライト様が怖がってしまいます。嫌われても宜しいので?」

「それはダメ! お姉ちゃん怖くないよ!? リリアちゃんの味方だよ!」


 側仕えに宥められたお姉様が身を乗り出しますが、確かに少しだけ怖いと思っただけで、嫌うなんてとんでもありません。


「リリアは、優しくしてくれたお姉様が、大好きです」


 獣人だから怒られたり、殴られたりすると思っていたリリアを、優しく抱きしめてくれたお姉様がリリアは好きです。


 怖いお話もリリアの為なのが分かりますし、嫌うなんて有り得ないのです。


「あの、お姉様にお願いがあるのですが······」

「なになに、どうしたの? お姉ちゃん何でもするよ?」

「······本当に何でも出来てしまうので、安請け合いしないで下さいませ」


 お姉様の側仕えが嘆息しますが、お姉様は張り切って居ます。

 お姉様は本当に、獣人のリリアを妹として見てくれているのですね。


「お姉様は、魔法のお勉強が、素晴らしい成績だと伺いました。リリアもお母様の為に、力になりたいのです。どうかリリアに魔法を教えて下さいませ······!」


 言いました。ついに言ってしまいました。

 急にお茶会に呼んだ上にこの様なお願い、お姉様は聞き入れて下さるのでしょうか?


「······あちゃー」


 お姉様の様子を伺うと、右手を額に当てて目を瞑っています。

 あの、これはどう言う反応なのでしょう?


 不安になってドレイクを見てしまいますが、ドレイクも分からないようです。


「あのねリリアちゃん。フェミの魔法の成績はズルなの」

「·········え!?」


 お姉様は驚く事をおっしゃいました。

 アレだけの成績を、ズルで修める事が出来るのでしょうか?


「フェミが魔道具作れるのは知ってる?」

「はい、伺っております」

「フェミの魔法はね、その魔道具を使って補助しているだけだから、魔道具を全部捨てたら多分、フェミはリリアちゃんより魔法使うの下手だよ?」


 本当なのでしょうか?

 お姉様の側仕えに助けを求める様に視線を向けると、困った顔をしています。


「お嬢様は確かに魔道具で魔法を使っていますが、その魔道具だって魔法への理解があって初めて作れる物ですし、なにより自分で作った魔道具を使って魔法を行使するのは魔法使いとして普通ですよ」

「そうかな? フェミの魔道具は自分で言うのも変だけど、規格外だよ?」


 どうやら本当に魔道具で補助をしている様です。

 これは考えて居ませんでした。どうしましょう。


「じゃぁ、リリアは強くなれ······」

「よし、リリアちゃんにも魔道具あげよう! リーフェにも!」


 あれ?


「私もですか?」

「うん。リーフェには元々渡すつもりだったし、いい機会だから二人にあげちゃう」

「と言うと、お嬢様の魔力の源ですか?」

「あ、やっぱり気付いてた? その他にも色々渡すけど、一番大事なのはその魔道具かな」

「あ、あの! お姉様、よろしいでしょうか?」

「ん、どしたの?」


 話しが進んで行きますが、本当にそれで良いのでしょうか?


「あの、リリアも魔道具で強くなって良いのでしょうか? お姉様が作った魔道具でお姉様が強くなるのと、リリアがそれを頂いて強くなるのは違うと思うのです」

「んー、気にしなくていいと思うけどなー。リリアちゃんは、『毎日勉強して魔法の練習をして、もっと強くなりたいからフェミに師事して、結果強くなった』。ほら、普通じゃない?」

「あれ? あれ? 言われると確かに普通の事の様な······」

「お嬢様、お嬢様に師事して『訓練をして』強くなる、が抜けて居ますよ。お嬢様は口が上手いですね」

「あ、本当です! 訓練が抜けています!」

「あーもー、リーフェ余計な事言っちゃダメだよー。リリアちゃんは特訓をサボるつもりは無かったんだし、実際に訓練したかどうかなんて些事だよ」


 「それに」と、お姉様が一つ呟いてから続けます。


「この魔道具、体の中に取り込んで使うんだけど、取り込む時すっごい辛くて、死にそうな程苦しいから、別に楽して手に入る訳じゃないよ?」


 え、死にそうな程苦しいのですか?


「リリアちゃん、どうするかよく考えてね。本当に辛いから断っても良いけど、一度断ったら次は無いからね」


 お姉様がスッと態度を変え、厳しい顔で問うてきます。


「リリアは······、強くなりたいです。お母様のお役にたてるくらい、何でも出来るようになりたいのです」



「じゃぁ、その事について話し合いましょうね」




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