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ブチ切れルフィアの速攻解決。



「いやなぁに、名乗る程のもんじゃねぇよ」

「そうなの? ルフィアはシュリルフィアだよ。はじめましてっ!」


 平民の挨拶はこうだって、メリちゃんに教わったの。上手に出来たかな?


「はっはっはっはっはぁ······。ざけんじゃねぇ!」

「あれ、何か間違ったかな。ごめんなさい?」


 ちゃんと挨拶出来たと思うのに、なんでか怒られちゃった。悲しいな。

 おじさんは本当に怒ってるみたいで、おじさんの声を聞いてレオ君と同じくらい大きい赤い狼さんが、近くの机の下影から出て来たの。


「わぁ、綺麗な狼さん。なんて魔物かな?」

「てめぇ、随分余裕だなぁ人族さんよぉ? コイツはな、ビャルシードって言う上級の魔物だ。コイツが今から、この国での人族の立場と振る舞いってモンを教えてくれるからよぉ······」


 んーん? えっと、ペケラシスでは人族が嫌われているんだっけ。だから、ルフィアの事が理由も無く嫌いなのかな。でも、フェミちゃんが言ってたもん。そう言う理由も無い蔑みは許しちゃいけないって。


「随分立派な魔物だが、戦いの方はどうだろうなぁ?」

「レオ君強いよ? 後悔しない?」

「言ってろてめぇ、やれラッシュ、ぶっ殺してやれぇ!」

「レオ君、手加減して上げてね?」


 ラッシュ君て名前らしいビャルシードは、おじさんの声でルフィアに牙を剥いて走り出して······。


「ヴォンッ!」


 レオ君の前足で叩かれて、隣のギルド窓口の中に吹き飛んでいったの。


「な、はぁ!?」

「あぁぁ、レオ君もうちょっと手加減······。ラッシュ君だいじょうぶ?」


 思ったより弱くて、流石のレオ君も手加減を間違っちゃったみたい。ルフィアは壊れちゃったギルド窓口の仕切り壁の穴を跨いで、エリさんが止めるのを止め返して飛んでいったラッシュ君を追い掛けるの。


 職員さんが悲鳴をあげてる中、机を叩き割って残骸の中に蹲るラッシュ君を見付けて、体を診てあげるの。骨は折れてなくて、傷も少ないから、レオ君の攻撃の衝撃が一番効いたみたい。


「あう、マジックキャット。ニャンニャン、回復魔法を二重展開、補助お願いね」


 その場にニャンニャンを呼んで、マジックゲートを使って貰う。エーテルドレスじゃないから、ニャンニャンを呼ばないと無詠唱魔法が難しいの。

 いつも使う魔法なら出来るんだけど、フェミちゃんに装備を貰ってから怪我しないから、回復魔法はあんまり出番が無いの。


「ラッシュ君、動かないでね······」

「てめぇ、俺のラッシュに何をしてやがる!」

「回復してるから黙っててよぉ!」


 ルフィアを怖がってるラッシュ君を撫でて、痛そうな所を全部治していく。フェミちゃんは魔道具か何かを使っているのか、痛い所は見ただけで全部わかるんだけど、ルフィアにはそんな事出来ないもん。

 触って痛そうにした所に回復魔法を当てて、魔力をいっぱい流して綺麗にしていく。


「······治ったかな? ラッシュ君、頑張ったね」


 ラッシュ君をぎゅってして、フェミちゃんがルフィアにしてくれるみたいに撫で撫でして上げる。こうすると安心するもんね。


「クゥーン······」

「ん、よしよし、もう大丈夫だよぉ」

「おい、ラッシュ! 何してんだ! さっさとソイツを······!」

「レオ君! その人うるさいからどっかやって!」

「ヴゥアッ!」


 レオ君の前足が炸裂して、今度は人の居ない所を狙っておじさんが飛んでいった。今度はちゃんと周りを気遣えるレオ君はやっぱり優しいの。


「ラッシュ君、もうルフィアを襲わないでね? 酷いことしたくないの。よしよし」

「······ファフ、クゥーン」


 可愛くなったラッシュ君を背中に背負って、転ばないように立ち上がって窓口の中から出て、職員さんに謝る。机を壊しちゃってごめんなさい。


「先の件はアチラのハンターの過失だと思います。シュリルフィア様に何か請求すると言うなら、断固反論致します」

「エリさん、大丈夫だよ? 弁償出来るし」

「そう言う問題では無いのです」


 ルフィアが大きなラッシュ君を背負ってる事に驚いてるハンターギルドの中の人達にもペコッと頭を下げて、ラッシュ君を依頼台の前に下ろしてあげる。


「ラッシュ君、もう大丈夫。ご主人あっちだよ?」

「ワフ! ワンワン!」

「ん。どしたの? ルフィアはご主人じゃないよ?」

「ワウンッ!」

「············気に入られたみたいですね」


 ラッシュ君は全然ルフィアの側を離れなくて、獅子虎人のおじさんを気にしていないみたい。その様子にギルドの中の魔物使いがみんなガタッと椅子を鳴らすの。


「お、おい嘘だろ。あんな一瞬で主従関係奪えるのかっ!?」

「······もしかして、すげぇ名のある魔物使いか······?」

「冗談じゃねぇよ。あんな簡単に相棒奪われたら······」


 みんなが騒ぎ始めるけど、あの、ルフィアは依頼を受けに来ただけなの。どうしてこうなったの?


「ラッシュ君。よく考えて? あのご主人は、ラッシュ君とずっと一緒に居た人じゃ無いの?」

「クゥーン······」

「うん。そうだよね。ラッシュ君の大事な人だよね。別にあの人の魔物でも、ルフィアはラッシュ君に優しくするよ?」

「······ワン」

「ん。大丈夫。ほら、気絶してて見られてないから、内緒にしてあげるよ? 見ている人も優しいから、きっと内緒にしてくれるから」


 ルフィアが入口の方を見回すと、関わりたくない人が皆目を逸らしたの。これでわざわざ告げ口する人は居ないと思う。ラッシュ君がご主人を見捨てようとした事なんて誰も知らないよ。フェミちゃんも教室でこうやって、ルフィアを守ってくれたの。


「ん、ばいばーい!」


 反対側の依頼台の前まで吹き飛んでいったおじさんの側まで行って、顔をぺろぺろ舐め始めるラッシュ君に手を振って、ルフィアはやっと依頼を選べるの。


「うーん? 見た事無い魔物ばっかりで、どれが強いか分からないの。あと、生け捕りだと報酬が凄い上がる······。調教するから?」

「その様ですね。······ルフィア様、本当にお強いのですね」

「うん! 特級だもん!」

「「「「「「特級!?」」」」」」


 エリさんと依頼を選んでいると、ギルド中からそんな大声が響いてビックリしちゃう。なに、ルフィア何かしたかなぁ?


「あぅ、えと、なぁに?」

「お、お嬢さん、特級って言ったかい?」

「ぎ、ギルドカード! 見せてくれないか?」


 机から立ってみんながルフィアの周りに集まって、ちょっと怖いの。レオ君が唸ってみんなと距離を保って暮れるけど、みんなの雰囲気が尋常じゃ無いの。

 ルフィアはみんなの言う通りに、ギルドカードを出してみんなに見せてあげると、大歓声が上がってまたビックリする。


「ヴァルキリィィィィィィイイイイイイ!」

「来た来た来った来たぁぁぁぁああああ!」

「ランドで噂の特級パーティ! ワイバーンの群れさえ沈めた本物の英雄!」

「依頼達成率十割! しかも自由討伐だけで特級になった化け物!」

「あわわわわわ······。怖いよぉ······」


 あまりの事で訳がわからなくなって、シマちゃんとワンワン、ピョンピョンとシーちゃんも出てきて貰って、ルフィアは頭を抱えてエリさんとしゃがむの。


「うぉぉぉおお! まだこんなに使役している魔物が!」

「小さいのも、強いのか······?」

「ぅぅうう、ピョンピョンは一人でヘゲナ倒せるもぉん······」

「「「「「おおおおぉぉぉぉぉぉお!」」」」」


 怖い怖い怖いの。何が起きてるか分からないのってすごい怖いの。フェミちゃんに初めてあった時みたいに、ルフィアの気持ちとは関係なく取り返しの着かない事が進んで行くのは凄い怖いの。


「皆様! ルフィア様が怖がっておりす! 強くてもまだ幼いのです、ご自重下さい!」

「あ、あぁ、そうだよな······」

「お嬢さん、悪かった。怖くないから、頭をあげてくれ」


 エリさんのお陰で、やっとギルドの中も静かになったの。ありがとうエリさん。助かったよぉ。


 なんでこんなにヴァルキリーが外国に伝わっているのか分からかいけど、ギルドの人達が言うには、解決して欲しい依頼があるんだって。


 詳しく話を聞いていくと、ルフィアは段々イライラして来たの。


「つまり、みんなの大事な魔物を盗んで行く人が居るの?」

「そうなんだっ、ここに居る魔物連れていない連中なんか、半分は被害者なんだぜ!」

「俺のパニアも、パニア············、パニアァァァァァァァアア!」

「············許せないっ」


 ルフィアは怒ってる。怒ってるよ。ルフィアだって、レオ君達を誰かに連れ去られたら絶対に復讐に行くもん。フェミちゃんが教えてくれたエーテルスーツって言う、強過ぎて使っちゃダメって言われてる装備だって使って絶対に取り返しに行くもん。


「連れ去られた魔物達の情報を全部教えて! ルフィアが絶対見付けてあげる!」


 小物入れからパソコンを出して、新しい頁を作って魔物の種類、名前を全部教えてもらってカタカタ打ち込んでいく。


「絶対許さないもん! 辛いんだよ、大好きな人と離れるのって。悲しいんだよ、会えないのって!」


 ルフィアもフェミちゃんに会えなくて、辛くて寂しくて、それでも我慢すれば会えるって思うから頑張れるのに、無理やり連れ去って、もしかしたら死んじゃってるかも知れないなんて、絶対絶対絶対許せないっ!


「大体分かったの。エコーバット、エコちゃん、この数に近い魔物が密集してる場所を探してきて! たぶん外じゃない。隠せる屋内だと思うの。これだけの数、売り捌くにも殺して解体するにも広さは要ると思うの」

「キィィィイ!」


 エコちゃんを出してエコーで魔物の群れを探して貰う。知らない魔物も多くて、本当はちゃんと魔力の反応とかを同種の魔物で確認したりしたいけど、時間が経てば経つほど、売られたり殺されたりするかもしれない。


「ニャンニャン、ピョンピョンを乗せてエコちゃんと連携して、反応がある場所を探ってきて! 当たりだったらそのまま罠をたくさん仕掛けて、すぐにその場所を使えないようにしておいて!」


 開きっぱなしのギルドの扉からエコちゃんが飛んでいって、ピョンピョンを乗せたニャンニャンも後を追い掛ける。


「みんな、ギルドの外をよく見てて欲しいの。見付かったら空に向けて合図を出すから。あとエリさんの護衛もお願い。ルフィアはこのまま外で探してくる!」

「お、おいお嬢さん! 本当に一人で······」

「良いの! ルフィア今すっごい怒ってるから、周りを気にして戦えないもん」


 パソコンを片付けてレオ君に跨る。シマちゃんとワンワンとシーちゃんとミルフィを連れてギルドから飛び出す。


「シマちゃんとワンワンは、犯人を釣るために路地裏とかで寝た振りしてて! 釣れたら手加減薄目でやっつけといてね! レオ君、とにかく街中を飛び回って!」


 エリさんにはギルドで待っててもらって、ルフィアは今から全力でヴァルキリーになるの。ラッシュ君可愛かったもん。あんな子が他にも、今も辛い思いをしているなら、ルフィアは助けてあげたい。


 広い街だけど、空を掛け回ればすぐに全域回れる。


 魔物の牧場、たぶん違う。反応が全部同一。魔物使いに魔物を売るお店、あそこも違う。売ってる魔物の数が少ない。

 

「キィィイイ!」

「見つけたぁぁぁあ!」


 反応が見事にバラバラ、数も多くて監視の人間まで居る! 場所は、ルフィア達が泊まってるお屋敷の裏の倉庫みたいな場所!


「ニャンニャン、先行して隠れてて! ピョンピョンは罠を! シマちゃんとワンワンは起きてルフィアに合流! シーちゃんシールド全力展開! 突っ込むよぉ!」


 レオ君に低空を走って貰って、倉庫の入口にシーちゃんと体当たりして入口を壊して中に入る。


「だ、誰だお前ぇ!」

「うるさいっ! 盗んだ魔物をみんなに返すの! ハウンド、スラッシャー! フェアリーリング!」


 倉庫の中はただ広くて、四角い鉄製の檻が山積みにされている。その中には種類のバラバラな魔物が入っていて、中には抵抗したのかボロボロにされている子も居た。


 レオ君から飛び降りてフェアリーリングで倉庫の中を飛び回って、倉庫中に置いてある檻に当たらない様に見張りをしている五人の兵士の膝をハウンドで撃ち抜く。


「ぐぅぁあっ、敵襲だぁぁあ!」


 撃たれた人の叫び声で人が十五人くらい増えるけど、こんなの増えた内に入らないよ。ワイバーンの方が多くて硬くて早くて強かったもん!


「レオ君! やっちゃえ!」

「ヴォォォォォオオオオッ!」


 ルフィアが壊した入口からも更に人がわらわら増えるけど、そこはもう入口じゃないよ?


「なぁ! ぐぁつ」

「ぎゃぃやぁぁあ!」


 ピョンピョンが素早く仕掛けた罠を次々踏んで動けなくなる人をほっといて、檻を回って名前を呼んでいく。これで間違いだったら悲惨だけど、呼ぶ名前にはしっかり返事があったよ。


「ギュルト、レフィー、ドラド! エクエア! ソルド!」

「キャアア!」

「ヴァアン! ヴァッヴァ!」

「キュゥゥゥゥウウッ!」


 空中でパソコンを開いて、書き出した一覧を見て何匹か符号した魔物を確認した時点でシマちゃんに指示を飛ばす。


「確認出来たぁ! シマちゃん真上にシマちゃん砲全力で!」


 入口でゴタゴタしている人達を蹴散らして倉庫に入ってきたシマちゃんはすぐに真上にお顔を向けて可愛いお口を開いてくれた。


 -ズガァァァァァアンッ!


 シマちゃん砲で屋根が崩壊して瓦礫が崩れて行くのをフェアリーリングを三組飛ばして全て魔物の檻のない場所にはじき飛ばして行く。


「ルフィアは魔物強奪犯から魔物の奪還依頼を受けたハンターだよ! 抵抗するなら死ぬ覚悟をしてね! 抵抗しないなら命は助けてあげる!」


 檻の影に隠れているニャンニャンのマジックリングで拡声魔法を使って、倉庫全体に聞こえる様に大声を出す。


「るせぇ糞ガキがぁ! 死ねぇ!」

「シマちゃん、その人は良いよ。やっちゃえ」


 弓を引き絞った人の頭にシマちゃんが噛み付いて、ゴリっと音がして弓の人は動かなくなった。殺そうとするなら、殺されるんだよ?


「もう一度言うよ! 抵抗はやめて! 床に伏せてたら何もしない! たまに踏んじゃうくらいだよ! みんな立ってる人はボコボコにしちゃえええええ!」


 そこからは大狂乱。シマちゃんとレオ君が中心に抵抗する人を食べたり裂いたりして、シーちゃんは檻の魔物が巻き込まれない様に飛び回ってくれてる。

 殆どが片付いて、抵抗しなかった人はピョンピョンがワイヤートラップって言う罠を使って縛ってくれる。みんな凄い。


「何事だこれはぁ! 何が起きたのだ!」

「············シュリルフィア?」


 悪い人をみんな倒したり縛ったりが終わった頃に、たくさんの兵士を連れた主さんとお父様が入口から入って来たの。

 張ってあった罠はほぼ踏まれてるから、お父様は取り敢えず安全なの。


「お父様? ここで何を?」

「シュリルフィア、お前こそここで何を······? 私は商談で、商品を見にここへ······」

「····································へぇ?」


 偶然近かったんじゃ無かったんだ。魔物泥棒の犯人は主さんだったんだ。

 お父様はこの魔物達が盗まれたものだって知ってるのかな······。知ってたら嫌だな······。


「これはどう言う事ですかな! なぜお嬢さんが私の倉庫を破壊して、見張りを打ち倒してい居るのですか!」

「············それはコチラの台詞ですわ。何故ここにはハンター達の盗まれた魔物が山ほど居るのですか? 檻の中で?」

「なっ!? 何の事だ! デタラメを言うな!」

「······どういう事だ? 盗品を私に売り付けるつもりだったのか?」


 ルフィアの声に、お父様は主さんを凄い怖い顔で睨んでいた。良かった、お父様は仲間じゃ無かったの。良かった············。


「デタラメかどうかは、すぐに分かる事ですわ。もうすぐギルドの人間がここへ駆け付けて来ますから」

「なにぃ! そんな事は許さんぞ! お前ら、あの者を討てえ!」

「ふざけるなぁ! 娘に何をっ」

「黙れぇ! 人族の分際でぇ!」


 主さんの声に着いてきた兵士が弓を引き絞って、お父様が怒ったら主さんが腰の短剣を抜いてお父様に振りかぶった。

 ふざけないで。ふざけないでふざけないで。


「お父様に触るなぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!」


 振り下ろされる短剣にお父様が目を見開いて、覚悟を決めた瞬間にシーちゃんが割り込む。


 耳障りな音が響いて短剣が吹き飛び、衝撃にたたらを踏んだ主さんにフェアリーリングで飛び込んで思いっきり蹴り飛ばした。

 兵士達の弓が全部こっちに向くけど、お父様には傷一つ付けさせないんだから!


「大回転全域防御!」


 フェアリーリングを全て呼び戻して、お父様を中心に防御型で大規模展開する。すぐに放たれた矢はもちろん全てフェアリーリングに触れた瞬間弾き飛ぶ。


「みんな、あの人達も倒しちゃって!」


 シマちゃんはシマちゃん砲を控えて、レオ君と一緒に兵士さん達をすり潰して行って、蹴り飛ばした主さんが起き上がる頃には周りが血溜まりになっていた。


「······そ、そんな······、馬鹿な······」

「ランド王国王都所属パーティ、ヴァルキリーが一人シュリルフィア・クィンタートだよ。お父様に剣を向けたあなたは絶対許さないからね」


 ギルドカードを掲げて主さんとお父様の間に立つ。この人はお父様に剣を向けたの。絶対に許さないんだから。

 お父様の前でハウンドを構えて、まだ何かするなら頭を弾き飛ばすつもりで動かない。


「シュリルフィア、これは············」

「お父様は絶対守るもん。ルフィアの大事な人は絶対守る」


 何か隠さないと行けない気がするけど、今はいいの。エコーで伏兵も確認して、レオ君とシマちゃんにも集まってもらってお父様絶対守る陣形を取って、ギルドのハンターか職員が到着するまでにニャンニャンに回復魔法魔法の発動を任せて魔物の治療をしてもう。


「く、くそっ······」

「動くなぁ!」


 逃げ出そうとする主さんの足元にハウンドを撃って牽制する。逃がさないよ。こんな酷いことをして、逃げられると思わないで欲しいの。


「こ、こんな事して、ただで済むと······」

「思わないよ。ただで済むわけがないもん。アナタがね」


 エコーを見ると、ギルドの方から凄い数の人がこっちに向かってきてるのがわかる。


「そろそろギルドも来るよ。アナタは終わり。ギルドには貴族権力が通じないからね。フェミちゃん言ってたもん。国を跨ぐ組合だから、犯罪相手には凄い強いって」

「ぐぅ、この人族がぁ······」

「人族も獣人も関係無いよ。アナタが敵に回したのは、ギルドに居たたくさんの獣人なんだからさ」

「この、このぉぉぉぉぉぉお!」

「レオ君!」


 自棄になったのか分からないけど、顔を真っ赤にして走ってくるからレオ君にお願いする。レオ君は素早く主さんの肩に噛み付き、ゴリゴリ嫌な音を立てながら噛み砕いて行く。

 床に押し倒して、噛み千切らないように両肩両足を上手に噛み砕いたレオ君が、口を赤く汚して戻って来たから魔法で綺麗にしてあげる。

 

「姉御ぉぉぉぉぉおおおおおおお!」

「パァァァァァァニァァァァァァアアアアアア! 無事かぁぁあ!」

「エクエア! エクエアァァァ!」

「ドラド無事でいてくれぇ! ドラドォ!」


 大声が近付いてきて、ハンター達と少しの職員が倉庫の中に入ると、みんながその惨状に立ち止まって息を飲んだ。

 それでも魔物が心配なハンターさん達はすぐに立ち直って、大切な魔物の名前を呼びながら檻に殺到していった。


「ふぅ、終わったぁ············。あー······」

「シュリルフィア············、なんだな?」

「あー、あの、お父様、違うのです······」


 あー間違えた間違えた! お父様の前でルフィアはダメ! シュリルフィア起きて起きてー!


「あ、あの······。これは······」

「姉御ぉぉお! あり、ありがとうござぃまじだぁぁあ!」

「姐さぁん! エクエアが、エクエアが無事でしたぁぁあ······!」


 お父様に弁解したいのに、ハンターさん達が今度はルフィアに殺到してそれどころじゃ無くなっちゃったの。あああ頑張ったのに怒られるぅ······!


 それにハンターさんを掻き分けてギルドの職員さんまで来て、ルフィアに頭を下げるの。


「ハンターギルドミルシュア支部のギルドマスター、シーカライドだ。此度の依頼、これほど早く解決して貰い、ミルシュアの全魔物使いを代表してお礼申し上げる······。報酬は特級ハンターに相応しい指名依頼料を······」

「あの、報酬は要りませんわ。皆様の笑顔が何よりの報酬です。なので、あの、今は少し······、お父様とお話をする時間が欲しいのですが······」

「こ、これ程の仕事をして、報酬が要らないと!? 笑顔が報酬だなんて······」

「はい。あの、ですから······」

「ヴァルキリーの方は高潔な方が多いと聞きましたが、これ程とは······」

「あの······、話しを······」


 話しを聞いてよ! ルフィアはお父様に弁解しないといけないの!

 そのままお父様の前で胴上げまで始まって、うわぁぁあ、ルフィア頑張ったのにぃ!


 それから依頼の関係書類はランド王国の王都ギルドに送って貰うことになって、喋らなくなっちゃったお父様と、ギルドの捜索が入ってとても泊まれる状況じゃ無くなったお屋敷から連れてきたお兄様と、主さんの娘さんと、エリさんを連れて、ギルドが用意してくれたすっごい豪華な宿の部屋に行ったの。


「シュリルフィア。話しをしよう」

「······はい、お父様······」


 

 頑張ったのに、頑張ったのに、頑張ったのに怒られるの嫌だよぉ······。

 淑女らしくなったって、喜んでくれていたお父様の前で、あんなに乱暴に喋っちゃったんだもん······。お父様絶対怒ってるもん······。


「父上、あの、これはどうすれば?」

「お父様が罰せられるなら、私も連れて行って下さいませぇ」

「おい離れろ! 父上! 連座もあるかも知れないのに、連れて来て良かったのですか!?」

「······あの、私もあの屋敷の者です。皆様にまで累が及ぶかと······」

「エリカは良いのです。わたくしが連れて帰ります。わたくしがあの屋敷を潰したのですから······」

「皆、少し黙ってくれ。シュリルフィアと話しがしたいんだ」



 それから、お父様とお話しをして、次の日にギルドマスターと話しをして主さんの娘様、ヒャルリアーノ様とエリさんの事で口裏を合わせて貰うお願いをして、商談が無くなったクィンタート家はすぐに王都への帰路に着いたよ。



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