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ペケラシスにルフィア。



 お城に帰るまでずっと泣いてた。

 寂しかった。こんなに寂しい思いでお城に帰るなんて、思っても居なかった。


 レオ君の鬣に顔をモフっと埋めながら、気持ちが落ち着くまで泣き尽してゼイゲルドットまで空を走る。


「ふぅぇぇえ············。フェミちゃぁん······」

「ウォフッ!」


 レオ君が慰めてくれて、気持ちがやっと落ち着いたから魔法を使って涙の跡を消した。これからお城に行くんだから、淑女らしくしなくちゃ。


(シュリルフィア、起きて起きて)

(あらルフィア、交代なの?)


 フェミ様のようにコロコロと、淑女と素顔を入れ替えられないわたくしは、自分の中にシュリルフィアとルフィアを作って入れ替えているのです。


 フェミ様の前では、ルフィアになることはすぐに出来るのですが、ルフィアからシュリルフィアになる事には少しだけ時間がかかるのです。


「シュリルフィア・クィンタート。ただ今戻りましたわ。馬車を用意してくださる?」


 ふぅ、でも心の中までシュリルフィアは疲れちゃうね。フェミちゃんはどうやってあんなに簡単に変われるのかな?


 レオ君で城下街の門に降り立って、驚く門番の兵士さんにヴァルキリードレスの袖口や裾の隅に付いている、ゼイゲルドット領主の家紋を見せて通してもらう。フェミちゃんがこう言う時のために、騒がれない様に目立たない場所にちゃんと家紋を入れてくれているのだ。んふー、フェミちゃん大好き!


 ゼイゲルドットはランド王国の中でも有数の大領地で、その城下街は当たり前だけどすっごい大きい。レオ君で空を走っても良いんだけど、王都以外の街の中では控えるようにって、フェミちゃんに言われているの。


 だからお城まで馬車で行こうと、門番さんにお願いした。


「レオ、お疲れ様。ビーストアウト」


 呪文を口にすると、レオ君が光の砂になって風に解けて、ルフィアのヴァルキリードレスの中に入ってくる。


 一つ一つに驚く門番さんに案内されて、ゼイゲルドット城下街を囲う壁の、その内部に作られた兵士の詰所の待合室まで連れていかれる。


「ありがとう存じますわ。いつもお仕事ご苦労様」

「い、いえ! 勿体ないお言葉ですっ!」


 ルフィアが領主の娘だから、怖くてお話しも出来ない門番さんは挨拶をして部屋を出ていった。

 でも、ルフィアを一人にするのは、それはそれで不味いと思うの。


 馬車が来るまで暇だから、肩がけの小さい小物入れを漁ってデジカメを取り出して、綺麗に撮れているフェミちゃんの姿を堪能する。うぇへへー、フェミちゃん可愛いよぅ。


 同じ八歳だけど、背がちっちゃくて、髪の毛がとっても綺麗で、カッコ良くて優しくてお顔が可愛くて、とっても強くて凄くて素敵なフェミちゃん。


「うふー。フェミちゃんすきー」

「ピュァ?」

「ん、ミルフィも可愛いよ? でも、フェミちゃん可愛すぎるでしょ?」

「ピッ」


 ルフィアに頷いてくれるのは、フェミちゃんがルフィアにくれたリティットのフェミルフィア。フェミちゃんが生んで、ルフィアが育てるから、二人の子供みたいなの。うふふー。


「············会いたいよぉ」


 デジカメのフェミちゃんを眺めて、ミルフィを撫でているとまた寂しくなるの。離れたくない。はやくフェミちゃんのお嫁さんになりたいな。


「馬車の準備が出来ましたっ!」

「··················はい。ありがとう存じますわ」


 急いでシュリルフィアに戻ってお礼をするの。急に来るからビックリしちゃった。


 それから馬車に揺られてお城に向かうの。途中でハンターギルドが見えて少し行きたくなったけど、先にお父様にお会いしたい。フェミちゃんに会えないんだから、お父様に甘えるんだもん!


 半年離れていたお城に着くと、城門を守る騎士さんにも驚かれつつ、お城の中まで護衛してくれた。お父様はお母様と一緒に執務室に居るみたいで、自分のお部屋以外はまだ知らないから騎士さんの後ろをついて行くの。


 騎士さんがとあるお部屋の扉をコンコンしてお父様に声を掛けると、側仕えじゃなくてお父様が扉を開けて飛び出してきたの。びっくりした。


「おおおお! シュリルフィア! ずいぶん早かったじゃないか! ん? 側仕えはどうしたのだ?」

「ただ今戻りました。お父様、側仕えは先にゼイゲルドットへ送り、その後追い抜いて来てしまったのです」

「追い抜いた? ふむ? まぁいい、まだ仕事が残っているが、中で教えておくれ。ああよく帰ったシュリルフィア」


 騎士さんにお礼を言って、羊皮紙がいっぱい散らかる執務室の中に入ってお母様とお父様の間に座る。お母様にも会いたかった!


「お帰りなさい、シュリルフィア」

「お母様、お会いしたかったですわ」


 それから、いーっぱいお話しをしながら、お父様とお母様の間でお仕事を眺めていたの。

 魔法学をもう卒業して、資格を貰ったと言うとお父様がルフィアを抱えて立ち上がって、机から離れてクルクル回るの。


「ふはははー! 凄いじゃないかシュリルフィア! 一年生でもう魔法学を修めてしまったのか!」

「うふふ、お父様、わたくしよりもっと凄い方も居るのですわ。トライアスのフェミ様とリリ様は、初日で卒業して見せたのです」

「なんとぉー!?」


 そう、フェミちゃんは凄いの。リリちゃんも凄いの。メリちゃんも凄い、リーフェさんも凄いの。


「トライアスか······。目立たない領地だったが、これから伸びるのか······?」

「いえお父様、フェミ様はお家と仲がよろしく無いそうなのです。王家にも既に貢献していらっしゃるのに、評価をトライアスに還元ならさらないのですわ」

「ふむ、なるほど。トライアスの領主は馬鹿者であったか。そのように優秀で可愛い娘を邪険に扱って、領地に貢献して貰えないとは」

「そうなのです。わたくし、フェミ様ほど素晴らしい淑女はお母様の他に知りませんもの。なぜフェミ様のお父様は、フェミ様に優しくして下さらないのでしょう?」


 フェミちゃんからたまに聞けるお話しに、すっごい酷いお父様のお話しもあって、ルフィア聞いてるだけでムカムカしたもん。


 ルフィアはお父様にフェミちゃんのいい所をいっぱい知って欲しくて、いっぱいフェミちゃんのお話しをしたの。あ、そうだ。


「お父様、これをご覧くださいませ」

「······ん? それは、ハンターのギルドカードか? ······特級!?」


 本当は、貴族がハンターをやると怒られるって聞いたけど、お父様は怒らないの。ルフィア知ってるもん。

 お父様も貴族学校に居た頃に、お友達とハンターをしていたって。


「そうなのです。わたくし、フェミ様のパーティで特級になれたのですわ。ワイバーンだって倒せるのですよ」

「竜を倒せる!? ほ、本当なのか!?」

「ふふ、フェミ様のご指導の賜物ですわ。戦うための魔道具も沢山フェミ様に頂いたのです」

「············本当にトライアスの領主は馬鹿者なのか。そこまでの才女、クィンタートの養女にしても良いくらいでは無いか」

「まぁ! それは素敵ですわ! 毎日フェミ様やリリ様と一緒に居れるのですね」


 お父様とお母様は、特級の事をあんまり信じてくれていない見たいだけど、フェミちゃんのお話しは信じてくれたみたい。


 それから晩餐会でお兄様とお姉様も一緒に夕食を食べて、お二人にもギルドカードを見せて褒めてもらったの。

 でも間違ってリヴァルカードを出したら大騒ぎになっちゃった。


「三億············!」

「な、はぁ······? このリヴァルカード壊れているのかい?」

「············シュリル、これはどう言う事なの?」

「あの、言った通りにワイバーンを倒したお金ですわ? フェミ様達と王都はずれにあるワイバーンの群れを全て倒して、そのお金をフェミ様が全員に等分しましたの」

「ワイバーンの群れ!? 一匹じゃ無かったのか!?」

「うふふ。お父様、ワイバーン一匹ではわたくし達の相手になりませんわ。ただ硬いだけでしたもの」


 ルフィア、実はレオ君の上に居ただけで、一番何にもして無いんだけどね。

 お姉様とお兄様にも歓迎されて、お姉様とお母様のお茶会に参加したり、お父様とお兄様にお願いされて魔物狩りを見せたりして三日立つと、先に王都を出た側仕えや他の貴族達が街に着き始めて、ある程度の報告をお父様が受け取ったその日に、お父様とお兄様、それとルフィアは何故かペケラシスに出発したの。なんで?


 お姉様は、婚約者の方と用事が有るみたいだからお城に残って、お母様はお父様の代わりに執務。


 豪華は豪華なんだけど、レオ君の背中に慣れているルフィアにはとっても遅く感じる馬車で五日、少しの護衛と側仕えを連れたルフィア達は獣国ペケラシスに辿り着いたよ。右も左もリリちゃんみたいな獣人がいっぱいなの! もふもふ! ふわふわ!


 あんまり素敵な光景だから、思わずルフィアに戻りそうになるのを頑張って耐えたよ。こんどフェミちゃんに褒めてもらうの。


「ここペケラシスは、獣の国だ。ランド王国とは逆で獣人から人族が虐げられている国だ」

「しかし安心しろルフィアよ。我がゼイゲルドットの民は比較的受け入れられている」


 実はお父様、領主一族だったお母様に婿入りしたフェミニストルデの貴族なの。最初は下位領地のお父様は当時猛反対される中、お母様に尽くしてお仕事を全部完璧に仕上げて、今ではお父様を馬鹿にする人なんて居ないの。


 そんなお父様は元フェミニストルデの貴族だから、獣人にも優しくて、お父様の第二、第三夫人になりたがる獣人の貴族が凄く多かったって聞いたよ。


「お兄様は、来たことがあるのですか?」

「ああ、実は私は、獣人が大好きなのだ。あのふわっふわの耳に尻尾、最高では無いか。ここなら獣人好きを隠す必要が無いからな」

「············ここまで極端に育ってしまったのは何故だろうな?」

「······お兄様、トライアスのリオンハルト様は、猫人キャットの女性と婚約致しましたわ」

「なんだと!? 公に獣人と婚約······? わ、私より獣人を愛している者がトライアスに居たのか······!」

「フェミ様の妹君、リリ様も猫人キャットですわ」

「ふぉぉお? トライアスの領主一族最高では無いか!」


 知らなかった。お兄様がふわふわ大好きだなんて。お父様にはビーストマスターでお会いしたけど、お兄様にも見せたら喜ぶかな?


 ルフィアは荷物からデジカメを取り出して、リリちゃんをお兄様に見せてあげると、お兄様がデジカメをルフィアから奪ってずっと見てるの。


「ついたぞ」


 名前も知らない大きな街について、門でお父様が少しやり取りをすると中に入れてくれた。

 馬車が門を過ぎる時に、狼人ウルフィの門番さんと窓越しに目があって、あんまり綺麗なもふもふだったから笑顔で手を振っちゃったの。


 国境もそうだったけど、街の中はもっと獣人で溢れてて、猫人キャット犬人ドッグ兎人ラビッツ獅子虎人ライガー竜人ドラビュート羊人シープ狼人ウルフィなど、本でしか見れない獣人ばっかりいっぱい!

 フェミニストルデの貴族は猫人キャット羊人シープしか居なくて、平民にも兎人ラビッツ犬人ドッグが少し居るだけらしいの。だから竜人ドラビュート獅子虎人ライガー狼人ウルフィなんて本当にこの国でしか見れないし、他にも全然知らない獣人もいっぱいいる。


「な、最高だろう?」

「はい! もふもふがいっぱいで、わたくし心踊りますわ!」


 お兄様はまだリリちゃんを見たままそう言って居る。どうしたのかな、そんなにリリちゃんが気に入ったのかな?

 でもリリちゃんもルフィアも、フェミちゃんのお嫁さんだよ?


 馬車が進んで大きな豪邸に入って、屋敷の使用人の案内で招かれるけど、お兄様がデジカメを返してくれないの。

 フェミちゃんの持っているデジカメ以外は、絵を羊皮紙とかに写すのに印刷機って魔道具が必要で、ルフィアは今持ってないからデジカメを返して貰えないの。


 ······フェミちゃんのデジカメには、もっといっぱい、すっごい可愛いリリちゃんの絵がいっぱい入ってるから、お兄様に見せたら返してくれなくなると思う。


 応接室に案内されて、お父様だけは館の主に挨拶をしてくるとそのまま使用人に連れられて行ってしまった。

 あの使用人の人も、ふわっふわだったよ。なんの獣人だろう。


「ペケラシスには、どの様な用事があったのですか?」

「シュリル、街の中で魔物は見ただろう?」


 お兄様にそう言われて、ルフィアは頷く。

 街の中には色んな獣人と、その獣人に付き従う様に側を歩く魔物の姿もいっぱい居たの。

 魔物は倒すべき相手で、それが街の中に居て誰も騒いでない様子がとっても不思議だった。


「ペケラシスには魔物使いと言う職業があってな。魔物を調教して人の暮らしに役立てるんだ。ハンターにも魔物使いが多くて、強い魔物を連れている人間は周りから一目置かれる」

「························ハンターギルドに行きたいですわ」


 ルフィアの他にも、もふもふを連れたハンターがいっぱい居るって事だよね? 王都では、ルフィアは魔物を連れた変な人だったけど、ペケラシスだとルフィアは普通のハンターなんだ!

 嬉しくて、お兄様に聞いた要件もどうでも良くなって、今すぐハンターギルドに行って何か依頼を受けたくなる。

 お父様とお兄様には、エーテルドレスで戦う所しか見せてないから、まだルフィアのビーストマスターは王都で買った服と、お父様には思われている。


 フェミちゃんに、自分で強い魔物も狩れないとヴァルキリーでやっていけないとキツく言われているから、強過ぎない魔物はエーテルドレスで戦うことにしているの。


「ふふ、まぁ待て。それで、調教された魔物を買い付けて、ゼイゲルドットの農産に生かそうと計画があるんだ。今日はその魔物を買いに来たって訳さ」


 応接室の隅に銀色の狼人ウルフィのメイドが一人残っていて、ルフィア達の前にお茶を淹れてくれた。

 ルフィアは我慢出来なくて、思わず声を掛けてしまったの。だって、お兄様は今の説明の間も、デジカメ見たままなんだもん。


「ごきげんよう。素敵な毛並みですわね」

「············恐れ入ります」

「ごめんなさい、人族はやはり苦手ですか? わたくしもお兄様も、獣人の方が大好きなのですが······」

「······正直に言いますと、苦手です」

「ふふ、本当にごめんなさい。急に話しかけてしまって」

「いえ、お客様を持て成すのが仕事ですので」

「では、お言葉に甘えてしまってよろしいかしら? お兄様、この通りに魔道具に写った猫人キャットの淑女に夢中なのです」


 もしかしたら、他の国で嫌な思いをしてこの国に居るのかも知れないメイドさんは、嫌な顔を必死で隠してお話しをしてくれた。凄い優しい人だよ。


「うふふ、本当に素敵な毛並みですわ。よくお手入れされているのかしら」

「はい。人前に出るために、それなりの手入れは心がけております」

「······あ、そうだわ。ぜひコチラを使ってみて頂ける?」


 ルフィアは荷物の中から、フェミちゃんが他の人用に作ったトリムを出してメイドさんに手渡した。

 お客様から物を貰えないと言うメイドさんに、ただの贈り物じゃないと言い訳をするの。


「これは、髪が物凄く艶やかになる、魔力の要らない魔道具なの。ぜひ使って、もっと素敵になった毛並みを見せて欲しいのです。綺麗になれと言うお客様からの無理に応えるための道具ですから、贈り物じゃなくってよ?」


 舌をペロッと出しておどけて見ると、メイドさんが初めて笑ってくれたの。

 すっごい可愛くて、お城に連れて帰りたくなったよ?


「ふふ、笑って居た方が素敵ですわ。お兄様は今のを見逃すなんて、獣人好きが聞いて呆れますわ」

「ん、なに!? 私は何を見逃したのだ!?」


 やっとお兄様が顔を上げてくれた頃に、お父様が戻ってきた。ランドに帰るまで、このお屋敷でお世話になるみたい。


「側仕えは屋敷から付けてくれるそうだ」

「でしたら、わたくしコチラの方が良いですわ」


 お兄様に取られる前に、とっても可愛い狼人ウルフィのメイドさんを捕まえた。この人、リーフェさんと同じ匂いがするの。たぶんすっごい優秀な人だよ。


 それから屋敷の主さんに晩餐会へ招待されて、みんなで夕食を食べた。


 猫人キャットの主さんは頭のてっぺんに髪の毛が無くて、お肉がぶよぶよ。笑い方もなんか嫌でルフィアは好きになれなかった。


 挨拶と夕食が終わって、今日は旅の疲れを取りなさいとお父様に言われて、メイドさんに案内されてルフィアのお部屋に行く。


「んふー! 疲れたー!」


 メイドさんと二人きりなった途端にルフィアは、フェミちゃんみたいに貴族のお面を脱ぎ捨てた。その様子にメイドさんがビックリするけど、気にしないで貰うの。


「ふふー、内緒だょ? 人前では淑女で居るの」

「············お年の割に、切り替えが完璧なので少々驚いております」

「んふふー。眠くなるまでお話ししたいな? ルフィア寂しいの嫌なの」


 少しだけ心を開いてくれたメイドさんは、エリカライトって言う名前なんだって。リリちゃんみたいな名前だね。あっ。


「あー、お兄様にデジカメ取られたままだよー! もう! エリさんにもリリちゃん見せたかったのに······」

「シュリルフィア様、従者に敬称など必要ありません」

「良いの。二人の時はこう呼ぶの! 仲良くなりたかったらこうするって、フェミちゃん言ってたもん」


 ルフィアがグズるから、エリさんがお兄様からデジカメを取ってきてくれるって言って部屋を出て、本当にすぐに取ってきてくれたの。やっぱり優秀な人だったよ。


「どうやって取ってきたの?」

「シュリルフィア様が、魔道具を返してくれない事実を洗いざらい魔道具の絵の女性に喋ってしまうでしょう。そう伝えました」

「わー、手際いいんだねー」


 それからデジカメに入ってる絵を見せて、フェミちゃんやリリちゃん、メリちゃんとリーフェさんのお話しをいっぱいして、眠くなるまでエリさんはルフィアのお話しを聞いてくれたの。



 次の日、エリさんの毛並みが見違える程さらっさらふわふわの艶々になってて、エリさんも嬉しそうだよ。

「おはようございます、シュリルフィア様」

「ルフィアって呼んで欲しいな? エリさん、すっごく綺麗になったょ!」

「お預かりした魔道具のお陰でございます。ここまで効果が出るとは、思って居ませんでした」


 ルフィアにトリムを返そうとするエリさんに、そのまま持ってて欲しいと言う。こんなに効果の高い魔道具は貰えないと言うけど、それ王都にはいっぱい有るんだよね。


「それは、昨日見せたフェミちゃんが作った魔道具で、ランドの王都では安く買えるの。平民でも買えるんだよ」

「こ、これ程の魔道具が、平民にも?」

「うん。フェミちゃん凄いんだよ! みんなが幸せになれるようにって、凄い魔道具を凄く安く売って、凄いいっぱい作ってるの! 昨日言ったでしょ? 本当に安いの。殆どの魔道具が十万くらいで、それは五万だか八万だか······」

「そんなに安いのですか!? わ、私でも頑張れば普通に買える······」

「うん、だからね。そのまま貰っても良いの。その代わりフェミちゃんの凄さを知ってね! 本当に凄いんだよ!」


 艶々で素敵になったエリさんを連れて、食堂に行く。通り過ぎる他のメイドさんがエリさんを凄い見てるけど、エリさんは誇らしそうにルフィアの後ろを歩いてるの。ちょっと面白いよ。


 また苦手な主さんとご飯を食べて、主さんがエリさんの変わりように驚くけど、エリさんは無難な対応で逃げていた。

 んふふー、エリさんとっても可愛くなったよね。


 お父様は暫く商談があるって言うから、今日からルフィアは自由時間なの。自由ならゴンちゃんで飛んでトライアスに行きたいけど、国境をゴンちゃんで超えたら大問題になりそうだから自重するよ。

 ルフィアだってそれくらい分かるもん。


「ではお兄様、わたくしはハンターギルドに行ってまいります」

「ま、まて! 私も一緒に······!」

「あら、お兄様はこの屋敷の娘様に誘われて居たではありませんか」

「ぐぅ······、獣人は好きだが、あの者は苦手なのだ······」

「わたくし、お会いしたことがありませんが、どう言う方なのです?」

「うむ。猫人キャットの中でも珍しい、猫叉人ケットシーと言う変異体なのだが、それを鼻にかけているのが気に入らんのだ。尻尾が二本あって魔力が少し多い程度なのに、全ての猫人キャットを見下している様な奴でな······。何故か人族の私を気に入っているみたいなんだが······」

「······頑張って下さいませ。さぁエリカ、行きましょう」


 まだ何か言っているお兄様をほっといて、ルフィアはエリさんと一緒にハンターギルドまで向かう。エリさんが馬車を呼ぼうとするから止めて、目立たない所でレオ君を呼ぶ。


「ルフィアの眷属よ、ここに集え! インパクトレオ!」


 ルフィアの呪文に反応して、着ている薄水色のドレスがふわっふわのコートに変わる。ルフィアがふわふわ大好きになったの、コレのせいだよね。

 それからふわふわコート、ヴァルキリードレスのシュリルフィア・ビーストマスターから光の粒がたくさん漏れて、目の前で集まって形を作ると、数日ぶりのレオ君が現れたの。


「レオ君、エリさんも乗せて欲しいの」

「ウォンッ」

「る、ルフィア様、この魔物は······? 魔物使いだったのですか?」

「えーと、うん。お父様達も知らないけど、魔道具の中に魔物をしまえるの」


 フェミちゃんに、こう言う時は勘違いして貰ってた方がいいって言われたから、魔物使いってことにしちゃおう。


 おっきなレオ君に怖がるエリさんに、レオ君を撫で撫でして甘やかす姿を見せて安心してもらう。こんなにいい子だから、怖がらないで欲しいな。


「これ程立派な魔物を使役しているなんて············」

「レオ君凄いんだよ。空を走れるの!」

「······そら、え? 空を走るって何ですか?」


 フェミちゃんが言ってたの。言うより見せろって。

 レオ君がルフィアのためにしゃがんでくれて、背中に跨るとエリさんにも乗って貰う。そのままレオ君の鬣に手を入れて、中に隠してある手綱を握ったルフィアに、エリさんもしっかり捕まっててもらう。


「レオ君、ハンターギルドまで!」

「ゥオウッ!」

「ひっ、きゃぁぁぁぁあああああ!」


 レオ君が絶妙な力加減でルフィア達が落ちないように、優しく早く空を駆け登る。レオ君はフェミちゃんみたいに、優しくて強くてカッコ良くて可愛いの。だから加減も上手なの。


 あっという間にハンターギルドの上まで来ると、レオ君が人の少ない場所を狙って落ちて行って、着地の衝撃も全部消した優しさたっぷりのレオ君旅が終わると、後ろのエリさんがぷるぷる震えてて可愛いの。


「エリさん、エリさん、ついたよ?」

「······あ、あ、はぃ、あぁ」


 周りの人がみんな驚いている中、震えて上手に降りられないエリさんを助ける為に、レオ君が上手に体を傾けるの。レオ君優しい。

 レオ君の気遣いが分かったエリさんは、ぷるぷるしながら歩いて、レオ君の頭を撫でてお礼を言ってくれたの。レオ君も気遣ったのがバレて恥ずかしそうだけど、嬉しそうにぐるるーって鳴いてて可愛いの。


「············あれ、可愛い······?」

「でしょ! レオ君可愛いの! 他にも、シマちゃんもゴンちゃんも、ワンワンもエコちゃんもみんな可愛いの!」

「まだ他にも居るんですか!? どれだけ高位の魔物使いなんですかルフィア様は!?」


 突然降ってきた魔物に驚いて皆が道を開けてくれるから、ギルドまですぐに入れた。

 お兄様の話だと魔物使いって人が居るから、レオ君をビーストアウトで消さなくていいんだよね。


 ハンターギルドの中は王都のギルドと全然違っていて、入ってすぐ丸机がゴチャゴチャと並んで、右に食べ物を出すつけ台に、左はお酒を出すつけ台。入口から見て一番奥にハンターギルドの窓口があって、その両脇には依頼台があった。


 まるで、酒場が主な施設でハンターギルドがオマケみたいだね。


「······ここがハンターギルドですか」

「エリさんは初めて? ルフィアもこの形は初めてなの。ハンターギルドって全部同じじゃないんだね」


 中には本当に魔物使いの人がいっぱい居て、虫みたいな魔物やパリストルみたいな鳥型の魔物、色が違くて小さいヘゲナみたいな魔物も居て、見てるだけでワクワクするね。


 魔物も通るために距離が開いている机の間を歩いて、まっすぐに依頼台まで歩いていく。色んな人に見られるけど、王都のギルドでそう言うのはもう慣れたの。


 依頼台の前はけっこう空間が空いていて、机でいっぱいな入口付近よりは広々してて、依頼をゆっくり眺められる。他にも数人依頼台を見ている人が居るけど、みんなレオ君が気になるみたい。ふふ、可愛いでしょ?



「······おい嬢ちゃん、ずいぶん立派な魔物連れてるじゃねぇか。まさかハンターかぁ?」


 ルフィアが依頼を見ていると、知らない獅子虎人ライガーのおじさんがニヤニヤして話し掛けて来たの。でも不思議、屋敷の主さんより嫌じゃないよ?


「おじさん、だーれ?」



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