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ヴァルキリードレス。



「土よ、我が想いを受け、敵を穿て。岩撃!」


 ルフィアはさっさと詠唱を済ませて、ブルボアの顔面に地面から突き上げる岩の槍をぶち込み、一撃で終わらせた。

 ちなみに普通の魔法使いがこの魔法を使っても、せいぜい膝の高さまでしか岩が伸びずに、足止め魔法の域を出ない。

 間違ってもブルボアの頭部を爆散させながら貫ける程の威力にはならない。


「フェミちゃん見てたー? ほめてー!」


 こっちを見て嬉しそうに両手をパタパタ降っている可愛いルフィアに、ハンターとして貴重な魔法使いの参加者が口を開けて見ていた。


 しかし、はやく血抜きをしないと食べれなくなる。私は手を振り返した後にブルボアを指さした。


「あ、なんだっけ。この後何かするんだよね。前にメリちゃんが言ってたの。なんだっけ?」


 首を傾げているルフィアをみかねて、誰か他の参加者が血抜きだと教えた。分かってなかった参加者がそれを聞いて急いで血抜きを始める。

 良かったね。今回の試験はみんな美味しく食べれるね。


「そっか。血抜きだ! お兄さんありがとー!」


 パタパタ手を振る女の子が、まさか大領地一位の領主一族だとは誰も思うまい。


 ルフィアはメリルが教えたらしい血抜き魔法を使ってその場で処理した後、教えてくれたお兄さんのブルボアにも魔法を掛けていた。

 お兄さんは血抜きが苦手らしく、凄く喜んでいたから良しとしよう。


「嬢ちゃん、その身なりと様子じゃ、解体も出来ないんじゃないか?」

「······うん。多分出来ない。ナイフはフェミちゃんがくれたんだけど············」

「そのフェミってのは、あそこで見てる娘だな? ······とんでもねぇ業物くれるんだな」

「これね、フェミちゃんが作ったんだよ」

「はぁ!? あの子、鍛治師なのか!?」

「んーん。貴族だよ? 魔道具作るのが得意で、これも魔道具なの。アトリエってお店知らない? フェミちゃんのお店なんだよ」

「············アトリエって、あれだろ? スゲェ高ぇけど、とんでもねぇ武器売ってるっつう······」

「うん! フェミちゃんが作った魔道具を売ってる、フェミちゃんのお店なの。これもフェミちゃんお店のナイフなんだって」


 仲良く談笑している様子を聞いて、一つ提案を投げてみた。


「おにーさーん。ルフィアに解体を教えてくれたらナイフくらいあげるよー?」

「ほんとかよぉ!? 嬢ちゃん、よっく見てろよ! 内蔵とか気持ち悪ぃけど、ちゃんと見ねぇと分かんねぇからな」

「うん! ルフィア見てる。覚える。フェミちゃんと同じ準特級になるんだもん!」


 お兄さんにナイフをあげる約束をした後、ルフィアの言葉を聞いたお兄さんが、ギギギと錆びた音が聞こえそうな振り返り方でこちらを見た。


「準特級······? もしかして、最近噂のヴァルキリーってパーティか······?」

「そうなの! ルフィアもヴァルキリーに入るの!」


 それを聞いていた他の参加者も騒ぎ始めて阿鼻叫喚。バーゼルも処置なしと肩を竦めている。

 ルフィアは周りの様子に首を傾げながらも、懸命にブルボアの解体を進めていき、少し歪だが解体が終わった。すぐに私達の所に駆け込んで来る様子は、運動会の親御さんの気分だった。


「出来たのぉー!」

「うんうん。頑張ったねぇ。はい、これお兄さんに渡してあげて」

「うん! あの人ね、平民だけど優しかったよ!」

「でしょ? 平民とか貴族とか、気にして関わらないのは損だよ」


 今まで平民に関わった事が無いだろうルフィアは、それも合わせてはしゃいでいた。

 中央区域に来る事も無かったからね。


「そう言えば、中央区域でアトリエに来ればお姉様に会えるのに、一度も来ませんでしたわ」

「きっと怖かったんじゃない? リリアも初めて会うフェミが怖かったでしょ」

「私もお貴族様怖かったよ! でも、最近は結構優しくされる。何でだろ?」


 アトリエのナイフを手に入れて雄叫びをあげてるお兄さんと、お兄さんの真似してうおーって叫んでいるルフィアが可愛い。


 次に食事の試験があり、これは急な状況でも問題無く腹に飯を入れて、手早くハンターとしての力を発揮出来るかって言う試験らしい。


「······フェミちゃん達と食べたいっ!」

「············んー、無理じゃないか?」

「聞いてくるっ!」


 ルフィアがバーゼルに二、三喋ると、バーゼルはサムズアップした。おいおい、まさか。


「あの馬鹿者······」

「え、いいんですかね?」

「············まぁ、お前さん達ンとこ入るなら、ほとんど模擬戦が主だしな。はぁ、いいか······」


 良いそうです。マジかよじゃぁ解体とか要らなかったじゃん。


「大丈夫だって! 呼んでくるねぇ!」

「お、おう! あ、え? ヴァルキリーここくんの? ウッソだろ!?」


 すっかり仲良くなったルフィアとお兄さん。こっちはギルドマスターに許可も取っちゃったし、まぁいっか。


「はいはい聞いてたよー。どうも、ヴァルキリーの頭やってるフェミだよ」

「お姉様の妹のリリアですわ」

「メリルだよー」

「従者のリーフェリアルです」

「フェミちゃん、これ食べれるように出来る? ルフィア分かんないの······」

「ふふ、任せて。バーゼルさーん、あの岩の台残ってるー?」

「おーう! たまに別の参加者が使ってるぜー」


 私は前作った岩の調理台を見付けて、魔法で洗って乾かしたあと、ルフィアのお肉を受け取って、ステーキを焼き始める。バーゼルもスッと側に来て、ご馳走になる気満々だった。


「ルフィア、よく見ててね。こうやって少しだけ塩振って、焼くだけでとりあえず食べれるんだよ。気取った料理なんてお城で食べれば良いの」

「ふぅう、いい匂いするー! お腹減った!」

「ふふ、お兄さんも焼く? バーゼルさん、流石に今日はフォアの部分じゃ無いよ? それは狩った二人の分」

「うむ。しょうがねぇだろ」

「······お、俺も良いのか? てっきり焚き火作って枝で串焼きとかになると思って······」


 メリルにルフィアを指導してもらって、前回の様に木を倒してテーブル、皿、カトラリーを作らせる。一応試験だからね。

 調理役はリーフェに取られた。私は椅子を何個か作って座って待つ。


「まぁ、この後大変だしさ、お腹いっぱい食べないと。さぁて、ルフィアとかち合う運の悪い人は誰かなー?」

「············模擬戦が、あるんだよな············?」


 とか言ってたら、模擬戦の相手はヴァルキリーが務めることになった。見学させろって要求を報酬として、全員の実力をはかる模擬戦の試験官として参加しろと、ギルドマスターに言われた。


「こっちもギルマスの仕事置いてきてんだ。働いて貰うぞ」

「んー、まぁルフィアに他の参加者を怪我させるより良いかな。はーいみんなー! 噂のヴァルキリーだよー。みんな真剣持ち出していいから、ドラゴンと戦うつもりで全力で来てね」


 私達が相手をする事で、参加者同士の対戦と試験官との対戦を混ぜて時短出来るのも分かるし、手加減を覚えさせるいい機会だし。


「リーフェとリリアは、パラライズモードあるからって無茶しないでね。メリルは手加減本気で頑張って。相手を無用に怪我させたら今日御褒美無しで、リーフェは今日一日、フェミのお世話無し」


 そう言うと三人の目が本気になった。


「はい、じゃぁ専用エーテルドレス改め、ヴァルキリードレスとエーテルスーツの使用は禁止。エーテルドレスのみでたたかうことと、メリルは暴風禁止。下級魔法だけで戦うこと。試験に参加の皆は好きな対戦者を選んでねー」


 好きな対戦者を選べ、と言ってるのに、一番人気は何故か私だった。何故か、と言うが理由は分かっている。身長だ。


 私、リリアに抜かれた············。


「ほいほい、見通し甘いよー。そこは引かなきゃ。技はこれで全部かな? じゃぁお疲れ様ー」

「サシの戦いで悠長に詠唱してていいの? ほいっ」

「武器に頼りすぎかなー? ぃやっ! ほら、武器無くなったら何も出来ないね、バイバーイ」


 参加者の矜持も何もボコボコにして、採点は見ているバーゼルに任せている。バーゼルも仕事が楽になったと喜んでいた。


 そして最後にルフィアとお兄さん。

 お兄さんは私の戦いぶりにリリアかメリルに逃げようと、ルフィアにどっちがマシか相談したところ、「どっちも凄い強いよ? メリちゃんはルフィアに魔法教えてくれた先生だし、リリちゃんはフェミちゃんが直々に教えたんだって」と希望を砕かれ、「どっちも地獄かよ······」と嘆いていた。

 一番不人気はリーフェだった。誰でも変わらないなら、せめて美人とって思う潔いい人しか選ばなかった。一応試験なので、少しでも楽な相手をみんな選びたがった。


 結構リリアがお兄さんに選ばれ、ルフィアはもちろん私との対戦を望んだ。


「では、リリアライト、参りますわ」

「くっ、頼むから優しくしてくれよぉ!」


 ヤケにならないで丁寧にナイフを振るうお兄さんに、リリアも一手一手丁寧に捌いて行き、リリアから徐々に速度を上げて対応する。二本のスラッシャーをパラライズで使うリリアは、スピードアンドパワーの戦闘スタイルで、奇しくもお兄さんと同じタイプらしかった。


「ぐぉぉぉおお!? なんっでこんなに、つえーんだよぉ!?」

「ふふ、まだまだ早くなりますわ。それと、足がお留守ですわ?」


 完全なナイフに気を取られているお兄さんは足捌きが疎かになっていて、リリアはそれをほんの少しつついた。


「しまっ!?」

「はい、お疲れ様ですわ」


 少し、少しだけ大勢を崩したお兄さんのナイフを力いっぱい弾き、よろけたお兄さんに飛び付き押し倒して、リリアはお兄さんの首元にナイフを突き付けた。


「フェミちゃーん!」

「はいはい、はじめよっか」


 リリアに手を引かれて柵から出ていくお兄さんを見て、待ちきれないと柵に入ったルフィアが手をブンブン振って私を呼ぶ。


 バーゼルの号令で模擬戦が始まり、ルフィアは初めての対人戦に興奮している。

 そんなルフィアに、私は殺気を全開で飛ばした。


「······ひぅっ!?」

「ルフィア、今は戦いだよ。気を抜いたら本当に潰すよ······」


 私も魔法の使用を下級までに限定する。指を鳴らして突風を呼び、ルフィアに向かって土煙を飛ばした後に肉薄する。


「にゅ! 土よ!」

「甘い、風よ!」


 単詠唱で土の捕縛魔法を使うルフィアを、風魔法で阻害する。そのまま足を払い、浮いた体に手を添え慣性に力を上乗せして、ルフィアを投げ飛ばした。


「ひぅわぁぁあっ!?」

「ほらほら、叫んでる場合じゃないよ! 火よ集え」


 手を空に掲げると、掌に火球が発生する。下級魔法の火球召喚だ。風魔法で勢いを殺して着地するルフィアに合わせて魔法を撃ち、着地狩りを狙うが、ルフィアも風魔法を発動したままでそれを使って火の魔法を打ち消した。


 なかなかどうして、ちゃんと戦えているじゃないか。


「むぅ、詠唱出来ないと火力が足りなぃ······」

「ふふ、火力出したいならこうするんだよ!」


 私は同じ火球召喚を連続で発動して、自分の周囲にキープする。この魔法は構築した後、命令があるまで待機するように組んで有るから同時展開では無い。


「えええ!? なにそれっ!」

「魔法の組み方変える工夫だよ。そーらいくよー?」


 火球が五十を超えた当たりでルフィアに向かって速射する。名付けてファイアガトリングかな。


 メリルなら見ただけで、待機構築を見抜いて真似してきそうだけど、実際柵の外でまさに真似している様子が見えるけど、ルフィアは必死で風魔法を使ってファイアガトリングを弾いている。


 残り五発になった所で狙いを変えて、ルフィアの足元に撃ち込んで煙幕代わりの目くらましに使う。


 すぐに意識を切り替えたルフィアは、風魔法で高く跳躍して煙幕から抜け出すが、遠距離攻撃持ち相手にそれは悪手だよ。


「火よ穿て!」


 威力を絞った炎の槍をルフィアに向かって撃ち出し、同時に着地狩りを狙い私は走り出した。


「させないもん!」


 しかし私の狙いは防がれ、暴風を自分に叩き付けるという強引な手段で滑空してきたルフィアが私目掛けて突っ込んでくる。


 あ、この風量とルフィアの質量は不味い!


 避けたあとルフィアが無事で居るのか分からなかった。足から来れば良いのに頭から突っ込んで来るルフィアが、地面にぶつかった時の嫌な想像が頭を過ぎる。


「くっ!? 風よ!」

「風よぉぉぉ!」


 回避を捨てた私は暴風の相殺に作戦をシフトして、ルフィアはそれを分かっていた様に暴風に魔力をつぎ込む。


 メリルとリーフェが気を利かせて会場を魔法で保護して無かったら、大変な事になっている。


「馬鹿ルフィア怪我するでしょうが!」

「んふふー!」


 結局相殺出来ずに、エーテルドレスの出力を最大まで引き上げてルフィアを抱き留めた。何考えてるの馬鹿!


「んふー、ルフィアの、勝ち?」

「なにいっ······、あ?」


 怪我しない様に抱き留めた私の首に、ブルボア解体のために渡していたナイフが添えられている。おまっ!?


「えへへ、あのね、フェミちゃんが言ったんだよ。相手の作戦を潰して、自分のやりたい事をして、相手の事は考えないで、まず勝ちを選ぶって」


 つまり、私がルフィアの大怪我を恐れて暴風相殺に乗り出して、それが出来なかったら抱き留めてくれると分かっていたと。

 そうする事で私の次の手を潰しつつ、ルフィアの手を通したのだと。

 そしてルフィアは自分の身を犠牲にした特攻で、敵に助けさせると言う勝ちを選び、心配する私の事は考えず、この後怒られる事より、もっとカッコイイ手段より、まず勝ちを選んだのだと。


「馬っ鹿、もう、ルフィア、上出来!」

「えへへー! ほめてほめてー! ご褒美ちょーだい!」


 まさか負けるなんて思わなかった。

 ルフィアがナイフを引いてくれたので、両手を上げて降参を示す。


「まさか嬢ちゃんが負けるなんてな」

「違うんだよっ! フェミちゃん本気じゃなかったもん!」


 あれから会場を撤収して、ギルド二階の会議室にお邪魔している。バーゼルが戦いを振り返り、ルフィアがフォローを入れてくれる。


「いやいや、してやられたよ。ルフィアの勝ち」


 負けて清々しいなんて、初めて味わったかもしれない。ルフィアを撫でて褒めてあげる。


「あの、ルフィアもヴァルキリーに入れる?」

「ああ、嬢ちゃんの話だと、まだアンタら専用の装備を使ってないんだろ? それでアレなら文句はねぇ。うちの支部五人目かぁ······」


 ルフィアも準特級になって、お兄さんは五級だった。

 カードはすぐに作れると言うので、ほかの人が帰った後も残る事にした。


「アンタらの事があったからな、準特級のカードは少し常備するようにした。今回は名前とパーティ彫るだけだ。パーティ申請もコッチでやっとく」


 本当にすぐにカードが出来た。そして嬉しそうにカードを眺めるルフィアを連れてアトリエに行き、みんなに挨拶してから私室に向かう。


「ここがフェミちゃんのお店? 凄い人居た······」

「ふふ、お陰様で人気店だよ」


 リーフェにお茶を淹れてもらい、メリルとルフィアをソファに座らせる。その目の前に黄昏の首飾り改が置かれている。


 メリルはハンター業の中で私達の武装を知っているけど、ルフィアは私達をなんか凄い程度しか知らない。なのでネックレスを見た反応が綺麗に別れた。


「贈り物? フェミちゃんから!? うれしぃ!」

「うわー! やっと私も装備貰えるんだねぇ!」


 ネックレスを贈られて喜ぶルフィアと、装備を貰って喜ぶメリル。二人は互いに見合って、意見の違いに首を傾げる。


「そーび? 首飾りじゃないの?」

「あれ、ルフィア様は知らないんだっけ?」


 メリルが私達の武器が突然現れる理由を説明して、ルフィアが目を見開く。


「すごーい! ルフィアも剣とかにゅっ!って出せるの?」

「うんうん、出せるよ。リリア、リーフェ、ヴァルキリードレス出して見せてあげて」


 リーフェはすぐに変身するけど、恥ずかしいリリアは少し躊躇ったあと、顔を真っ赤にしてキーワードとポーズで変身する。ポーズが実は要らないとはまだ内緒。うふふ。


「え、え、えー! 凄いすごーい! どうなってるの? どうやるのー?」

「フェミちゃん、私も専用のあるの?」

「もちろん、全員分あるよ。フェミのヴァルキリードレスも作ったからね」


 キーワードを教えると、ルフィアが自分からとはしゃぐのでその通りにしてあげる。お披露目の始まりだ。


「えーと、『ルフィアの眷属よ、ここに集え』!」


 ルフィアのキーワードに反応してネックレスが起動して、ルフィア専用ヴァルキリードレス『シュリルフィア・ビーストマスター』を展開した。

 水色のファーのロングコートに真っ白い鬣が首元に靡く。モコモコのベレー帽がルフィアの頭にちょこんと乗っかり、ロングコートの下にはリリアライト・プリンセスをシンプルにした様な青と白のティアードドレスがある。

 私室には鏡を置いてあるので、それで自分の姿を確認したルフィアはテンションが最高潮に達し、ボキャブラリーが可哀想な事になりながら、ただただ喜んでいた。


「凄い凄いすごーい! 可愛い! 可愛くてすごーい! きゃー!」


 今は火の季節も半ばを過ぎて前世で言う夏に入っていて、ファーたっぷりのヴァルキリードレスはめちゃくちゃ暑そうに見えるが、ヴァルキリードレスに限らずエーテルドレスもエーテルスーツも空調完備なので問題無い。


「そのヴァルキリードレスはシュリルフィア・ビーストマスター。『エコーバット』『シールドスワロー』『トラップラビット』『マジックキャット』『ウェポンズドッグ』『バーストタイガー』『インパクトレオ』『デストロイドラゴン』の計八体を守護獣として使役出来るヴァルキリードレスだよ。各守護獣を説明するね」


 エコーバットはエーテルエコーを内蔵したガジェットゴーレムで、シュリルフィア・ビーストマスターの腕に付いているエコーとは別に、任意の場所に飛ばして索敵出来る便利な奴。


 シールドスワローは使用者の周りを高速で飛びわまり、攻撃に対して自動でエーテルシールドを展開してくれる文字通りの守護獣。


 トラップラビットは使用者の周りや任意の場所にトラップを仕掛けてくれる兎で、けっこうエグいトラップも作ってくれる。


 マジックキャットはマジックゲートを三つ内蔵した猫で、ルフィアの魔法発動の媒介になり、側に置いても挟み撃ちにしても良く戦術的に使える。


 ウェポンズドッグは自身に内蔵した武器を召喚してルフィアに渡す係で、単体で攻撃も出来る。ガジェットなのにメイン級の武装を持たせるのに苦労したよ······。


 バーストタイガーは口腔内に内蔵された高出力エーテルカノンをぶっぱなす主力ゴーレムで、インパクトレオは肉弾戦特化のゴーレムだ。


 最終兵器デストロイドラゴンは、文献に乗っているドラゴンを可能な限り再現した。空も飛ぶしブレスも撃つ。巨大な体で繰り出す爪や尾はその質量に見合った破壊を撒き散らす。


 そして全ゴーレムは訓練用のマシンちっくな物ではなく、人工筋肉モリッモリにしてドラゴンには青い鱗、獣には強靭な青い毛皮で覆った生き物仕様で、訓練用とは比べ物にならない強さを誇る。

 バーストタイガーかインパクトレオ一体で、訓練用ドラゴンを数体潰せるくらいには強い。

 個々にリティット達と同種のAIを戦闘極振り調整で搭載しているので、ある程度指示を出せば自動で戦ってくれるし、サブスロットにハウンドとスラッシャーを一つずつ入れてあり、腕のガジェットにはエーテルエコーとエーテルシールドもある。

 全てを説明した後、メリルが前に出てきた。


「次は私だね? えと、『吹き荒れろ大災害』!」


 鏡の前ではしゃぎ回るルフィアの次に、メリルの物騒なキーワードで展開されるヴァルキリードレス『メリル・ディザスター』は、メリルが普段着ている紺のメイド服を豪華にして、メイドとお姫様スタイルを両立した服になっている。


 イザとなったら豪華なヘッドドレスですと言い張れる様に、頭のティアラはヘッドドレスと混ぜて作ってあり、繊細な作りのティアラにふわりと広がるヘッドドレスが華やかさをプラスしている。

 メイド服にあるまじき口の広い姫袖に白いレースでフリルをあしらい、同じくフリルをあしらったティアードスカートの中にはパニエまで仕込んでボリュームを付けた。

 エプロンドレスのフリルにもレースを使い、エーテルコアを宝石に見立てたリボンまで付けていて、襟元のタイも同じリボンの形にしてある。

 さらに背中から肩に掛けて包み込むように、フリンジの代わりにエーテルコアを宝石にした白い羽衣が羽織られていて、背中にはモンシロチョウの羽を透明にしたような、可愛い妖精の羽が体から浮くように付いている。


 そしてそして、装着者であるメリルを囲うように無数の風の鎖が浮いている。

 基本の三本はフラフープの様にメリルを中心に浮かび、横にしたアスタリスクの記号みたいに布陣していて、残り九本の鎖はメリルから少し離れて、小さくなって衛星軌道さながらに漂っている。


「わ、わぁー!? 何これ、何これぇー!? 可愛い過ぎるよっ、無理無理、私には勿体無いよ!」


 とか言いつつ満更でも無いメリルの反応に内心ガッツポーズをしながら、機能の説明をする。


「ヴァルキリードレス『メリル・ティザスター』は、メリルの作った魔法である暴風円環大連鎖を基本にしたドレスで、ドレスを起動した時から常に発動してドレスが制御してくれる。それとは別にマジックゲートを三つ搭載しているから、魔法の同時展開をしながら戦えるし、やろうと思えば暴風円環······、長いな? 暴風連鎖を四つ展開して四十八本の鎖を操れる。さらに武装として『メリルビット』を四機一組で二組搭載してて、空を飛んで任意の敵を自動攻撃してくれる蝶々だよ。サブにハウンドとスラッシャーも入ってるし、シールドとエコーもある」


 メリル・ディザスターのコンセプトは、メイド服着たお姫様と、災害を運ぶ妖精といった体である。


 そして私!


「『死よ嗤え』」 



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