一年生掌握。
食事が終わり、さっそく······、と意気込む三人にお願いだから少し休ませてくれとベッドに転がる。
「うーん、フェミ愛されてるねぇ」
「はい。愛しております」
「フェミちゃん男の子だったら、今頃何人恋人いたのかな」
「変なこと言わないでよメリルー、フェミそんなにモテないでしょ」
「んーん。ルフィア、フェミちゃんにすぐやられた」
みんながベッドの中で私を囲み、完全包囲網が完成した。逃げられないっ、だと!?
「うふふ、お姉様がお姉様でよかったですわ」
「だねぇ。女の子同士って、やっぱりみんな避けるみたいだし」
「フェミちゃん素敵なのにね」
みんなの手が際どい所を撫で始めて、流石に三人に一度にされては死んでまうと警戒するも、意味が無かった。
今日は寂しさが爆発しているルフィアがメインで私は三人がお腹いっぱいになるまで食べられた。
次の日は珍しく食堂で朝食を三人で食べた。メリルとリーフェはいつも通り私達の登校後に食べるのだ。
「おや、皆様お揃いで、珍しいですね」
「あらシェネルート、ごきげんよう。わたくしがここで食べると人混みに飲まれてしまうので、最近は部屋で摂っていたのです」
「ふふ、お姉様は人気者ですもの。おはようございますわ、シェネルート様」
「ごきげんようシェネルート」
「リリア様。私はシェネルートで、様は要りません。シュリルフィア様もおはようございます」
「そう言う訳には······、リリアは一つ下ですから、長幼の序は守りませんと」
今日は人がまだ少ないので、快適に食べれる。これならシェネルートくらいなら同席してもいい。なんだかんだ、私が城を出て一番最初に遭遇した貴族だし。
「そう言えば、シェネルートはリティットを連れてないのね?」
「ええ、やはり下級貴族はそこまで裕福では無いので、父上がリティットの利便性が分かるまで余計な出費を控えさられています。姉上は買っていましたので、次の休暇には許しが貰えるかと」
「あらそうでしたの······。ごめんなさいね」
「なにを言うのですかフェミリアス様。あれだけの魔道具が八万リヴァル、誰がどう見ても破格です。フェミリアス様が謝られる事など一つもないのです。下級組の教室でも、フェミリアス様はとても慕われています。下級貴族にも優しい値で魔道具を売って頂き、どれだけの下級貴族が救われたか······。きっと中級組も同じでしょう」
シェネルートによると、下級組の教室ではフェミリアスを崇める人達すら出てきたらしい。本来の魔道具はもっと高く、下級貴族は真似して自分で劣化版を作るしか無かったのに、完全オリジナルの物を安価で売りに出して生活に貢献した私は神に等しいと。
「特に女性貴族に多いです。とりーとめんとこーむ?という物が特に嬉しかったらしく、今ではフェミリアス様の姿を登校中に見かけるだけで羨ましがられる程です」
それなんて宗教? なんで私がそんな現人神みたいな扱いされてんだろ。と言うか、リーアの名前は結構広がっているのに、そう言う手合がコールして来ないのが不思議だ。
一応着信拒否機能も付けているのだけど、私はそう言う事が無かったのでまだ使った事が無い。それをシェネルートに聞くと、
「ああそれは、フェミリアス様のお怒りを買ったら下級組では生きていけない状況になるからですね。間違っても用事もなくお手を煩わせる事の無いように、下級組では皆が心に誓ってます」
「············わたくし、そんな王族の方みたいな扱いなのですね」
シェネルートから不思議な情報を得て朝食を終えて、せっかくだから一緒に登校する。
「ふふ、フェミ様はやはりどこでも人気なのですね」
「お姉様ですから、当然ですわ」
「扱いに複雑な思いですけども······」
「しょうがないのですよ。下級貴族は基本的に中級、上級貴族から搾取される対象なのです。フェミリアス様の行いに、どれだけ下のものが救われたかお分かり無いでしょう」
「シェネルートには言いましたが、わたくしにとって上級も下級も関係無いのです」
「ええ、それも皆に伝えています。だからこそ、なのですよ」
······いやシェネルートもしかしてフェミリアス教煽ってんじゃね? こんなお言葉があったぞーってさ。
シェネルートの情報を貰ってから、すれ違う貴族を観察してみると確かに、何人かは嬉しそうにこっちを見ていた。マジかよ。
「では私はこれで」
「ええ、お互い勉学に励みましょうね」
上級組の教室前でシェネルートと別れて教室に入った。
腕輪端末を見ると時刻は八時四十五分。鐘まであと十五分くらいか。
教室に入るとみんなに挨拶をして、適当な席に座った。シェネルートの話しを聞いたから少し周りを気にしてみると、どうやら上級組の中にもフェミリアス教がいるっぽい。どっかでミサとか開いてねぇだろうな。
でもリリアに注がれる熱い視線も多数ある。獣人差別派も今では上級組にはほぼ居なくなって、軒並みリリアの歌姫っぷりに落ちたらしい。ふふ、気付くのが遅いんだよ。
今更言い寄ってきても、リリアにはバッチリ罵倒してきた相手として記憶されている。
周りを観察していると、リリア、私、ルフィアの順で並んでる所にイオの妹、リリア、私、ルフィア、キュリルキアと座ってきた。
『コイツら、懲りないねぇ』
「ほんとにね」
まだ私はコイツらから名乗られてすら居ないのだが、何を知己の面して寄ってきて居るのか。
「ごきげんようフェミリアス様。今日も仲良く三人でご登校ですのね? まるで恋仲ですわ」
「··················あの、失礼ながら、どちら様ですか?」
私はもうブチかます事に決めた。相手のでかた次第では、ルフィアの時より酷いことにするつもりで。
「············は?」
「いえ、ですからどちら様かしら? わたくし、あなた方に名乗られた覚えが無いのです。何故気安くそこに座っていられるのでしょう? どこの領地の方か知りませんが、よほど礼儀の知らない領地なのでしょうね」
「なっ!? なに、を」
「わたくし、名前も知らない方と談笑出来る教育など受けておりませんので、コチラに座りたいのでしたらわたくし達が移動しますわね」
リリアとルフィアを連れて、久々に後ろの方に移動する。ここはルフィアがお漏らししちゃった席だったっけ。
「なっ、待ちなさい! ぶ、無礼ですわ!」
「そうよ! 中領地風情が調子に乗らないで!」
おお、乗ったきた乗ってきた。
私はあまり使いたく無かった手だけど、ここでルフィアを軽く叩く。ルフィアは正しく意味を汲んでくれて、静かに言い放った。
「黙りなさい。下位領地風情が調子に乗らないでちょうだい」
そう、私のルフィアは大領地一位の領主一族。この教室にはルフィアに権力で勝てる人間など、鐘が鳴ったら来るレイオラシスくらいしか居ないのだ。
「名乗りもせず、どちらが無礼なのですか。恥を知りなさい」
「ルフィア様、恥を知らないのではありませんよ。きっと恥を知った上で理解できないのですわ」
「ふふ、お姉様、それは知らないのと同じですわ」
「な、なぁ······!?」
可能な限り煽り倒す。貴族は一つの失態が永久に首を絞める。だからこそ私はルフィアに教室で粗相をさせたのだから。
「でもリリア? 理解が出来ない者に、知りなさいと言っても無茶でしょう? わたくしのリーアの方がよっぽど賢いもの」
『アレと比べないで!?』
「ふふ、リーアも比べられて嫌がっていますわね」
本当に凄く嫌がっているリーアに笑うリリア、くすくす口を抑えているルフィアに、顔が真っ赤になっていく相手二人。
「だってそうでしょう? 自分が名乗ってない事すら覚えていないなんて、魔物よりも頭が不自由なのでは無くって? わたくし心配になってしまいます。ブルボアだって自分が何したかは分かっているんですもの」
私がそう言うと、教室が湧いた。
我慢していた貴族が残らず腹を抱えて机に崩れ落ちた。
「ふふは、ふふふふふ、ブルボアっ、ぐふぅ!」
「だめだっ、こんなの、笑うにきまっ······、ははははは!」
「············ぷふっ、だめ、笑っては、淑女はっ、ふはっ」
はい完成。そして反論したい二人は何も出来ない。何故なら······。
「はいおは······、なんだ、随分楽しそうな朝だね。何かあったのかい?」
鐘が鳴ると同時にレイオラシスが教室に入って来たからだ。
この場での事はもう覆せない。まだ弱いが、寄って集って笑い物にされたのは明らかな恥であり、時間切れで挽回のチャンスもありはしない。
「············覚えていらっしゃいっ!」
「あら? ブルボアとわたくし達は自分のした事は覚えているのですよ?」
苦し紛れの口撃に、だがそれは私の追撃チャンスだ。新しい薪に教室の笑いと二人の羞恥は燃え上がった。
しばらくブルボアネタぶち込んで行こう。
授業の休憩に入った瞬間、無詠唱で拡声魔法を使ってボソッと「ブルボア······」と呟いた瞬間、レイオラシスがビクッとなる程急に教室中が笑い出す。
もちろん例の二人にも聞こえていて、何故教室が笑いの渦に有るのかも理解しているから、逃げ出す様に教室から飛び出す。
「············ほんとにフェミちゃんエグい」
「お姉様が怒るとこうなるのですね」
「············え? まだ手加減してるけど······」
「「え!?」」
いやだって、まだブルボアしかネタ仕込めてないし。これが飽きられたら終わりじゃん。他にもジャンジャン薪をくべないと、人ってのは簡単に飽きるのだ。
幸い、次の音楽の授業ではネタを仕入れられた。キュリルキアが歌っている時にこっそりパラライズを撃って悲鳴を上げさせる事に成功したのだ。その時のタイミングで、『あーなーたーきゃんっ!?』となったから、すかさず拡声魔法で『あなきゃん······』と呟いて定着させる。
度々起こる爆笑の渦にレイオラシスがそろそろ怖がり始めたので、後で教えてあげよう。
前世で言うならイジメになるのだろが、生憎とこの世界で貴族同士なのだ。これは戦闘であり負ける方が悪い。
昼の鐘が鳴ると同時に二人が私の所まで走ってきて、顔を真っ赤に怒鳴り散らした。
「いったいどう言うつもりですの!?」
「こんな事をして、ただで済むと思わないで欲しいですわ!」
「あら? 何かあったのですか? わたくし、生憎とブルボアとあなきゃんしか覚えて居ないのですが、わたくしが何かしたかしら?」
ブルボアとあなきゃんを平気でぶち込む私の表情に、皆の腹筋が限界だった。
「くふっ、フェミリアス様、もぅゆるしてっ」
「ふひ、息がっ」
彼ら彼女らには悪いが、もう暫く死んでて貰おう。
「ご自分があなきゃんした事を、わたくしのせいにされても困りますわ? やはりご自分が何をしたのか覚えて居ないのでしょうか? さすがブルボア······」
「な、な、な、な、なぁ!?」
「ななななな? 何でしょう? 新しい呪文ですか? それとも二つ名ですか? なななななのキュリルキア様ですか? さぞ覚えられる事でしょうね。わたくしの時にもそう名乗って頂ければ良かったですのに」
「ッッッッッ! いい加減にしなさい!」
「············ふぅ、レイオラシス様はもう居ないね。あー、もう面倒。やっちゃおっか☆」
私は指を鳴らして風を生み出し、二人のスカートを吹き散らして、精密に操り、頭の上で縛り上げる。
「あらあら、淑女が殿方の前でその様にはしたない。······随分素敵な下着ですわね? 股に綺麗なシミがございますわ」
狙った訳では無いが、先ほどのパラライズで少し漏らしたらしいキュリルキアの醜態が教室に晒された。
なんなら魔法でドレスを切り刻むくらいする気だったけど、キュリルキアはコレで死亡だろう。
「なぁ!? 何をするのです!?」
「は、はやく解きなさい!」
「あら? 誰に命令しているのかしら? 状況が分かって居ないようね?」
私はもう一度指を鳴らすと、今度は二人の真上に大量の水が出現して勢いよく落ちる。
流水は床の付近で消えるも、スカートが上がった状態で水の流れを受け、ドロワーズがずり脱げている。つまり、そう言う事だ。
「「きゃぁぁぁああああああ!?」」
「あらあら、ご自分の秘部を······。殿方も居るのに何をしているのです?」
スカートが頭で結ばれていて手が出せない二人は、足を閉じてしゃがむ事でしか隠せない。
私はとどめに、パラライズの範囲を極々絞って二人の秘部に撃ち込み、快感に声が漏れ始めるまで発動を続けた。
「うわエグい······」
『ご主人まじ死神』
「······流石に同情致しますわ」
さらにさらに、風魔法でドロワーズをピンポイントで切り刻んだ後にデジカメで撮影。スカートを解いてあげた。
男性貴族は前屈みになっていたり、座っていたり。女性貴族は一様にその惨状に口を覆っている。
手が自由になって周りが見える様になった二人は、その教室の様子に顔を真っ赤にして、いやそこまで人って赤くなれるんだね? アスタキサンチン豊富なの?
「この様な場所でご自分を慰めるなど、見せられた皆様が可哀想ですわ。見てくださいませ。殿方はあまりの見苦しさに動けなくなっていますわ。ご自分の趣味に人を巻き込まないで頂けませんこと?」
ニタァっと笑って、可能な限りの煽りを入れる。容赦しない。ルフィアの時のようにミスなどしない。徹底的に叩く。
「そんなにご自分を見せるのがお好きでしたら、お手伝いして差し上げますわ。ほら」
デジカメをパソコンに繋ぎ、オリジナルの私達仕様のパソコンが出来るディスプレイの巨大化でもって、二人の痴態を二人にも見せてあげる。
そして最後の仕上げである。息を大きく吸って、大きな声で相手を煽り威圧する事を心掛けて喉を震わせる。
「この様に、しっかりと記録しておりますので、羊皮紙に写して中級組と下級組の殿方にもお配りしておきますわ。 あぁ、ご心配には及びませんわ。羊皮紙の代金はわたくしが持ちますので、皆に見られる喜びをその身でたっぷりと、享受してご堪能下さいませ?」
私が双眸を歪め、睨みながら歩み寄り静かに喋り散らすと、とうとう二人は泣き出して教室から逃げ出した。ノーパンで!
それを見届け髪をかき上げて、一言吐いた。
「はっ、雑魚が」
リリアとルフィアも少し青くなりながら歩いてくるので、今後のために一つ指導する。
「リリアもルフィアも、みんなも良く聞いて。人と戦う時の三つの注意だよー」
口調をいつもの『フェミ』に戻し、教室を見渡してほぼ全員残っている貴族に、対人戦のルールを教える。
「まず一つ。相手を人間だと思わない事。魔物や動物だとでも思って、可哀想だとか思わない事。相手がこの後どうなろうと、どれだけ可哀想な目に会おうが、一切知らんっ! 持ち得る全ての攻撃を相手に叩き込む事を躊躇しない!」
まさにそれを今体現した私に、殆どの貴族が戦慄した。
「そして二つ目。相手の手札を、相手の使いたい状況、手段、戦術を使わせない事。数多の戦争でも人は人にそうやって勝ってきたの。相手の手を潰し、自分の手を押し通す」
私の声に得心がいったようにルフィアが頷き、小さく呟いた。
「············だから、ルフィアにさっき······」
「その通り。相手が使いたい『上位領地』と言う手札を、さらに上位のルフィアに潰して貰ったの。まぁルフィアが居るのにそんな手札で戦いに来た向こうがマヌケなんだけどさ」
「お姉様、三つ目とは?」
全員に力強く、私のトワイライトスターから使ってる信念を伝える。
「三つ。手段の前に勝ちを取る事」
教室を見渡しながら、ゆっくり解説して上げる。急に始めた講座に、白銀の翼の時みたいだなとか考えながら喋る。
「綺麗に勝ちたい。優しく勝ちたい。勇敢に勝ちたい。そんな寝言吐いて負けた後、自分はもっと上手くやれたなんて妄言を、自分を降した相手が聞くわけ無いよね? そんなのは勝った後にやるんだよ。まずは勝ちをとる。優しく勝ちたいなら完膚なきまでに叩きのめした後で優しくすればいい。綺麗に勝ちたいなら相手を打ち負かした後でいくらでも美談にすればいい。勇敢に勝ちたいなら相手に圧勝した後にでも辛勝だったとでも吐けばいい!」
リリアを撫でて、ルフィアの手を取り、魂からの言葉を。
「ますば勝て!」
皆思う所が有るのか、私の言葉に身震いをして、力強い視線を返してくれた。そこに少し続ける。
「その為には力がいるよ。知力、財力、腕力なんでもいい。いまフェミ達は力を付けるために学んでいるの。下らない計略を仕掛けてくるブルボア二匹見ても分かるけど、今じゃない。この後勝てる様に力を付けるの。何も出来ない内に家名や領地の順位で何とかなると思ったマヌケの末路は今見たね? 家名も領地の順位も、まだ自分の力じゃ無いんだよ。これからそれも力に変えれる様に学んで行くの。フェミ達はまだ何でも無い。だから何にでもなれるよ。さぁみんな、お昼の後は力を付ける時間だよ。騎士は技術と腕力を、魔法使いは知力と魔力を、魔道具学なら将来財力が手に入るよ。フェミのお店は開店初日だけで純利益二千百十三万リヴァルだったからね! さぁ、みんな」
一つ呼吸を置いて、拳を突き上げる。
「力をつけよー!」
私が号令をかけると、皆の声が一つになった。拳を天井に向かって突き出して、騎士志望の貴族など反対の手でガッツポーズをして拳を震わせていた。
「············上級組一年生の顔役が決まりましたわね」
「ふふ、フェミちゃんなら当然だよ」
「中級組は分からないけど、下級組もフェミの傘下らしいから、実質一年生の過半数がフェミの味方になったよね。これであいつら何も出来ないでしょ」
まぁ、正直八歳の集まり掌握するなんてこんなもんだよね。ブルボア二匹仕留めるついでだったけど。
この日から私は教室でも『フェミ』で居ることが多くなった。
余談だが、上級組にもフェミ教が出現、下級組のフェミリアス教と合併して、どこからか漏れたのか私達のパーティ名からとってヴァルキリー教が完成してしまった。
ルフィアの方で中級組にも探りを入れてもらうと、中級組もヴァルキリー教が蔓延するのは時間の問題らしい。
ちなみにヴァルキリー教にはリリアファンも統合され、魔法学から発生した密かに居るメリルファンも足されて、文字通りのヴァルキリー教になりつつあるらしい。こわ。
「なにそれっ、ルフィアもヴァルキリー入るぅ!」
「いや、ルフィアハンター資格無いじゃん。騎士資格とか無いと飛び級出来ないよ? 推薦でも行けるけど、怪我させたくないから、中途半端な力だとフェミは推薦したくない」
あれから数日、私が教室でもフェミで居るからルフィアもシュリルフィアからルフィアになって、ルフィアファンも増えてきた。このルフィア可愛いもんね。
ルフィアがヴァルキリーに入りたがり、猛勉強した結果魔法学をついに卒業。ついでに新魔法体系はフェミ式と言われるようになっているとルフィアから聞いた。
そしてメリルからルフィアの飛び級推薦をお願いされて、ハンター登録を側仕えに許されたらと許可すると本当に許可をもぎ取ってきた。
「皆様のお噂は聞いております。ご一緒ならば危険も無いでしょうから」
いくら何でも中領地の人間を信用しすぎじゃ無いかと思ったら、噂の出処がヴァルキリー教だった。もしかして上級生にまで伝播しないよね······?
私も私で、開発を進めていた空間魔道具がついに完成したので、ルフィアが飛び級成功したらメリルと揃って贈ろうと決めた。
空間魔道具は、ティターニオの循環魔道具理論を応用して、得られる魔力増大反応を外では無く内側にベクトルを操作する事で、発生した魔力の圧力が魔石内に一定以上溜まり臨界に達した時に干渉して魔力的な亜空間を生み出す事に成功した。
容量はファクトリーに繋いである元祖三人用に比べたら少ないが、エーテルドレスとエーテルスーツを保存するには充分だった。
ただ元祖と違い、キーワードでエーテルドレスとエーテルスーツを起動し装着するシステムは外付けしなければ行けなくて、ネックレスのデザインが変わってしまった。しょうがないでしょ。
さらに、二人の追加に合わせて二人の専用エーテルドレスの開発もあるので、ついに私の専用エーテルドレスも作ることにした。
いい機会だし、専用エーテルドレスの名前も一新して、ヴァルキリードレスと名付けた。エーテルドレスと専用エーテルドレスで紛らわしかったんだよね。
リーフェリアル・ウィザードとリリアライト・プリンセスに並び、メリルに贈るのは『メリル・ディザスター』。名前の通り災害を振り撒くようなドレスで、メリルのオリジナル魔法の暴風円環大連鎖を常時展開するドレスである。
ぶっちゃけ出力をあげた上にヴァルキリードレスで単純戦力も上がって、武装まで使い始めるメリルは大災害と言って差し支えない。マジックゲートも暴風円環大連鎖とは別に三つ用意しているので、魔法の同時展開と戦術級魔法の行使まで行える。
ルフィアに贈るのは『シュリルフィア・ビーストマスター』
こちらは少し趣向を変えて、武装を全てヴァルキリードレスで操作するゴーレムにしてみた。
ガジェットも全てのゴーレムにしてあり、鳥、蝙蝠、猫、犬、兎になっている。メイン武装には虎と獅子、リーサルにはドラゴンを用意した。
そして私は『フェミリアス・タナトス』。死神って言われるから本当になってやろうと思って作った。
スザクの様にリーサルには蝙蝠羽型の飛翔ユニットを背中につけて、メイン二つは四バレルガトリングを乗せ、ガジェットを五つ潰してメインを一本分増やし、死神の鎌を装備した。
ガトリングは二つをジョイントして四バレル二門のリーサル級武装に出来るおまけ付き。ふふ、我ながら久々にいい武装を作ったものだよ。
そして、ルフィアの試験の日に、バーゼルとギルドマスターに無理を言って見学させて貰う。私達が来た事に嬉しそうにしているルフィアに手を振り、私たちも受けた試験を眺める。
各々が自己紹介を終わらせて、ルフィアは何と家名も名乗らず『ルフィア』と名乗った。その手があったかぁ······。私もフェミって名乗れば良かったよ。一応一緒に様子を見に来たギルドマスターに、ルフィアの名前を教えてカードに『ルフィア』って書かれない様にした。
なんやかんやあって、ルフィアのブルボア戦が始まる。