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未来への布石。



「ふふ、来てしまった」


 ジークザーロは、『てへっ。来ちゃった☆』とでも言わんばかりの仕草でおどけて見せるが、店内の客含めて皆怯えている。ハッキリ言って営業妨害だ。


「あの、陛下? 下々の者には陛下のお姿は、刺激が強すぎると存じます。執務室へご案内致しますので、どうか御足労願えませんか?」

「うむ。その様だな。皆の者、驚かせるつもりは······、いやあったな。驚かせるつもりで来たのだ。嘘はいけないな」

「畏れながら、皆充分驚きましたので、どうぞこちらへ」


 ジークザーロが怖くて買い物どころでは無い客の為にも、一刻も早く店の癌を取り払わなければ。


 こんな日に限って何故私はリーフェもメリルも置いてきてしまったのか。そしてジークザーロも何故に側仕えすら連れずに一人なのか。


 執務室へ着いてソファに座って貰い、リリアに少しばかりジークザーロの相手をお願いしてお茶を淹れにいく。


 応接用に執務室にもキッチン付けといて良かった! ファインプレーだよ昔の私!


「ふむ、そなたは茶まで自分で淹れられるのか」

「側仕えほど美味しくは出来ませんので、お口に合うかどうか······」

「ふむ。············うむ、問題ない。不味くはないぞ」


 るっせぇばーか! 美味くも無いってかぁ!?

 ローテーブルに出した紅茶をすぐに一口含み、屈託ない笑顔のジークザーロに心で悪態をついた。


「陛下が毒味も無くお茶を飲むのは、良いのでしょうか?」

「はは、そなたが我を殺そうと思えば、暗殺などせずとも正面から出来るだろう? 気にするだけ無駄よな」


 ほほう。ジークザーロは私の戦闘力を何故か知っているらしい。どこから流れたのか知らないけど、ガタイの良いジークザーロを正面から殺せると言う評価は、字面通りじゃなく、護衛やその他も居ればそれ含めてなぎ倒せると言う評価に聞こえた。

 つまり私の能力を正しく把握していることになる。


「そなたがハンターとして暴れ回っている事も、耳に入っている。バジリスクにヘゲナなどを軽く捻ると、眉唾の話しばかりだが、そなたの事だ。事実なのだろう?」

「······ええ、こちらのリリアもですが」

「ふむ、そちらも久しぶりよの。あの時使った魔法を考えれば、不思議でも無いか。もっとすごい魔法も有るのだろう?」

「······は、はいっ。側仕えが生み出す魔法なども、とても効果的でして······」

「ふむ。リッドデッドの助手になったと言う娘か。あの時居た桃色の髪の者だろう? リッドデッドが妻に欲しいとか······」

「「お断りします」」


 リリアとハモってジークザーロの話しを断った。なんだよリッドデッド、渋ってたのは惚れてたからか!


「ふむ。まぁ断るだろうな。同じ歳の頃の、友の様な側仕えをよく知りもしない男に任せたくないだろう」

「······あの、陛下は本日どのような御用がお有りなのでしょうか?」

「うむ? ああ、そうだったな。要件は二つと我の息抜きだ。また息子が、レイオラシスが魔道具を自慢しよるのだ。ぱそこん? と言ったか、あれがどれだけ素晴らしいかをな。悔しくなって来てしまった」


 自由過ぎんだろこの王様。この国どうなってんだよ。

 私は自分が店を持った国の未来が少し不安になりつつも、話しの続きを促した。


「それと、妻二人から、まだそなたに対する礼が足りんと言われてな。店に王紋を授けに来たのだ」

「······王紋、と言うことは、王家御用達の印、ですか?」


 私がクラウンリティット達やその入れ物を作る参考にしたお店にもあった、王家御用達のお店だけが持てる証、王紋。


「うむ。実際このシックザールもそなたが生み、この店でリティットを扱うなら間違いでは無いからな。レイオラシスもこれから良く利用しようと言っていたし、他の息子も娘も、興味を持っていた。よく分からん馬鹿者に難癖を付けられる事も有るだろうから、全てを捩じ伏せる為にも王紋を授ける」


 正直凄く有難い話だった。昨日の初日もさんざん煩い客が居たのだ。王家御用達の王紋を見せて黙らせられるのはとても大きい。


「格別のお引き立て、光栄にございます」

「ふ、後は本当に暇潰しなのだ。なにやら面白い物ばかりあったからな、気晴らしには最高だった」

「お褒めに預かり恐縮ですわ。では、当店の品物を改めてお見せ致します。リーア、コールルルプ」


 私はヴェル君をコールで呼び、倉庫の在庫を各一個執務室に持って来るように伝える。国王陛下が来ているから気をつけてとも。


『こ、国王陛下が!? ふぁい! 急いでお持ちしまつ!』

「ふふ、慌てないで。ただ失礼さえ無ければいいのです」


 すぐにヴェル君とビッ君が荷物を抱えて執務室へやって来て、私の傍に全て下ろすとソファの横に跪く。

 顔は真っ青で、初めて間近に見るジークザーロに怯えきっている。リリアも表情が硬いし、平然としている私がおかしいのか。


「うむ。大義であった。そう怯えずとも良い。我は平民を大事にして行きたいのだ。貴族だけで国は回らんからな」

「ふふ、ヴェルナード、ビットア、ありがとう。陛下も満足していらっしゃるから、怖がらなくて良いのです。さぁ、工房に戻ってちょうだい」

「「っはい!」」


 二人が退室すると、入れ替わりでミュラちゃんが部屋に入ってきて、私の横で陛下と私に跪く。どうしたのか。


「ご主人様お一人にお客様の対応をさせてしまう不始末、どうかご容赦ください」

「ミュラフラウ、良いのですよ。高貴な方の前は緊張するでしょう?」

「いえ、緊張など言い訳にならないのです。ご主人様にこれだけ良くして頂いて、仕事も満足に出来ないのでは自分を許せません」


 ヴェル君達よりよっぽど顔色が悪いのに、毅然としているミュラちゃんがかっこよくて、傍に居ることを許してしまう。


「ふむ、随分と慕われているのだな。奴隷だろう? 直答を許す。そなたから見たフェミリアスの事を教えるがいい」

「はい。私は軽犯罪奴隷でして、陛下の御前にいる事も許されない身の上ですが、ご主人様は普通の人の様に扱ってくれるのです。部屋も与えられ、自分を買い戻す給金も潤沢に頂き、何一つ不自由なく幸せに暮らせています。もし許されるなら、年老いても体が動く限り、ご主人様の元で働きたいと思っています」


 私が思うより、ミュラちゃんはずっと私に感謝していた。その気持ちを初めて聞いて、むず痒くなった。

 ミュラちゃんは働き者で、いや皆凄く良く働いてくれるんだけど、ミュラちゃんは自分から仕事を探しては、確実に自分のモノにしてこなしていく、凄くいい子だ。

 それは全部私への恩返しだったのかと思うと、心が暖かくなった。


「ふむ。軽犯罪とは、なにをやらかしたのだ?」

「はい。私は孤児でして、食い詰めた先に盗みを働きました。体を売るのも嫌で、でもお金は稼げず、盗むしか生きていけなかったのです」


 そう言えば、カラちゃんとミュラちゃんは、貞操が守れて良かったと喜んでいたのを覚えている。

 そんな生活をしていたのかと、知れて良かったような、知らないまま優しくしてあげたかったような、不思議な気持ちになってしまった。


「············そうか。語らせて悪かった。この国で孤児が生きていけないのは、国王たる我の不徳もある。············辛い思いをさせたな」

「勿体ないお言葉です。しかし陛下、私は陛下に感謝しているのです」

「······ふむ?」


 ミュラちゃんは顔を伏せたまま、雰囲気を柔らかくさせて、静かに気持ちを吐露した。


「この国が無ければ、この国で食い詰めて奴隷に落ちなければ、私はご主人様に買われる事はなかったのですから」

「············ミュラフラウ。もう良いのよ。それ以上言われたら、わたくし陛下の前で泣いてしまうわ?」


 目尻に涙が浮いている私は、誤魔化すようにミュラちゃんの頭を撫でた。いやぁ、こんな事言われたら大切にしなきゃね。


「許されるなら、なんて言わないで? わたくしからお願いするわ。ミュラフラウ、ずっとここにいてちょうだい」

「············はぃ! この命果てるまで······!」


 それからミュラに手伝ってもらい、商品をジークザーロに見せていく。気に入ったものは差し上げると言うと、全部だ! と言うので持ち帰れますか? と聞いて黙らせた。


「ぐぬぅ、なぜ誰も連れてこなかったのだ我はぁ!」

「ふふ、持って帰れる量でお願い致しますわ。店の前は列が凄いので、馬車も呼べませんから」

「うむ。このすないぱーらいふる、と言う物が特に気に入ったが、これも良いのか?」

「こちらはとても危険な物なので、購入者の記録を取っております。記録さえ取らせて頂ければお持ち頂いて構いませんわ。ただ、本当に危険なので取り扱いには注意して下さいませ。もし家臣がこのライフルで何かをしでかしたら、陛下の責任になるのです。まぁそう言う時に陛下へ提出する為の記録で、陛下の責任を問うと言うのも、おかしな話ではありますが」


 この国では長さの単位が曖昧だが、建築の為にはキッチリ決まっている。それを利用して陛下に説明するも、陛下が建築用の単位をよく知らなかったので、例題で説明する事にした。


「そうですね。この街の端から端までなら、見えさえすれば綺麗に人の頭を撃ち抜けます」

「なんだとっ!?」

「それ程遠くから人を殺められる道具、悪い事に使われたら大変でしょう? だから記録を取っているのです」

「······な、なるほど。しかし、本当は魔物や動物、鳥に使う為のものだろう?」

「そう言うことにしてありますが、例えば他国が攻めてきた時に

、行軍中の敵国を一方的に嬲れるなら、陛下はこれを使いませんか?」

「··················ふむ」


 どれだけヤバイ物なのかを陛下に分からせる良い機会だった。これが国の中で暗殺に使われたら捜索など出来やしない。

 前世で弾道等から狙撃地点を割り出せても、この世界にそんな科学力は無いのだから。


「陛下の執務が楽になるという点では、わたくしパソコンを推したいのですが······」

「いや、それはもう確定しているのだ。と言うか文官が全員分買ってこいと言うのだ」

「············陛下に使い走りをさせる文官が居るのですか」

「うむ。あやつら、もう少し我を敬えばいいのだ」

「······まぁ息抜きで執務を抜け出して、中央区域で平民を驚かせる陛下も少し悪いと存じますが······」

「············それを言われると何も言えん」


 取り敢えず、ミュラちゃんにパソコンを十個準備してもらい、他にもレイオラシスみたいに護身用のハンドガンも付けて、リティットを撮影しまくれるデジカメも勧めた。


「おお、愛らしいシックザールが絵に残せるのか······!」

「シックザール以外にも、シスケンティアもフレイアルも、人のリティットの姿も残し放題でございますわ」

「ふぉぉぉぉおお······!? そなたは何と素晴らしい物を作るのだ!?」


 コチラとしては、アトリエの売上は超黒字だし献上して良いのだけど、ジークザーロは王妃二人に支払いをしっかりして来いと言われているらしい。これ以上私から何かをされると、お返しが出来なくなって大変だと。


 ミュラちゃんに支払いの対応を任せて、私はリリアに留守番を頼んで店の外にビークルを出してきた。流石にジークザーロの前で召喚機能はあまり使いたく無い。


「では、お送りいたしますわ。こちらにお乗りくださいませ」

「ぬぉおお!? なんだこれは!」


 支払いが終わったジークザーロを連れて店に降り、恐縮する客も一緒に来たミュラちゃんに対応させて外に出た。

 店の横手、少し隠れる様に置いておいたビークルを引っ張り出すと、ジークザーロは興味津々で荷台に乗る。

 本当は荷台外せる仕様なんだけど、外した事無いな。


 アクセルを回して人混みにぶつからない様気を付けて帰属区域の門まで来ると、いつもの門番さんがジークザーロを呆れた顔で見ていた。


「ぬ? バルツイル、なんだその顔は!」

「陛下、そちらの淑女はこの短い間に、それはもう色々な面倒をアチコチでかけられているのです。陛下までお世話になってどうするのですか」

「ぐっぬぅ、何も言えん」

「······あの、お知り合いなのですか?」

「む? ああ、このバルツイルは元近衛なのだ。我が自由過ぎてやってられんと言うから、門番にしてやったのだ」

「ふっ、とても快適に仕事をさせて頂いております」


 なんと、門番さん凄く偉かった! 王の近衛ってめちゃくちゃ偉くない? 王国騎士団のトップとかがやるもんじゃないの?


「陛下、門番さん······、バルツイル様にはお休みを与えて居るのですか? わたくし、バルツイル様以外にこの門に立っている騎士様を見た事が無いのです」

「違うぞ。我はちゃんと休ませようとしていたのだ。バルツイルが近衛辞めれるなら休みなど要らんと言ったのだ」

「そこまで嫌だったのですか?」

「ああ、嫌だった。思い付きであちこち飛び回る陛下の近衛をやるのなら、休み無しの門番の方が休める」


 凄いこと言い始めた門番さん、バルツイルが遠い目をしている。ちょっと陛下、労わってあげて! このひと凄いいい人なんだよ!


 私が王都に来てから何回も顔を合わせているが、いつ会っても爽やかに笑って、昨日なんか私が戻るのをわざわざ待っててくれたのだ。


「陛下、わたくしバルツイル様ほど働き者の騎士様を他にしりませんの。わたくしへの礼などより、バルツイル様に何か······」

「我からだと受け取らんのだ。そなたからなら受けるのでは無いか?」

「············わたくし、今度バルツイル様のためにありったけの魔道具を持ってきますわ。ショートソードを使うみたいですから、わたくし宝剣を作ります」

「············そなたが作る宝剣など、王家より良い物になりそうだから辞めるのだ。武器を贈ることを王命で禁ずる」

「そんなっ!?」


 茶番が終わり、バルツイルに見送られながら王城に向かって速度を上げた。

 イオを乗せた時みたいにはしゃぐジークザーロを王城に送り届け、別れの挨拶の後来た道を戻る。


「バルツイル様、武器は禁じられましたが防具は禁じられていませんわ!」

「············いや、気持ちだけ受け取ろう。それと、私の事はいつも通り門番さんで構わんよ。門番である事が存外気に入っているのだ」


 気さくな門番さんと別れてアトリエに戻ると、渡されていた王紋を看板に取り付けた。


「この瞬間から、当店フェミリアスのアトリエは王家御用達になりました。皆様、これからも変わらぬご愛顧を賜ります様お願いしますわ」


 今日は夕刻の鐘で締めることが出来て、執務室で集計をする。


「大分落ちたね。まぁそれでも多いんだけどさ」

『いくらになったの?』

「千二百万リヴァル。いやー、これ一月で多分開店に使ったお金取り戻せるよ」


 それから皆を呼んで集計を発表して、もう一個提案をする。


「それでね、みんなの中から男女一人、まとめ役が欲しいんだ。誰が適任かな?」

「でしたら、ミュラちゃんとミー君では?」

「そうだね。俺らの中ではミーが一番働いてる」

「うんうん。ミュラちゃんがいいです!」

「本当にそれでいい? まとめ役の人は給金上がるよ?」


 私が言っても皆意見が変わらず、ミー君とミュラちゃんがリーダーになった。

 ミー君はともかく、ミュラちゃんが恐縮しているけど、これで決定する。


「本当に······、私でいいのですか?」

「ん? ミュラちゃん、ずっと居てくれるんでしょ? 陛下に言ってくれた言葉、フェミ嬉しかったよ。本当に泣いちゃったもん」


 にへっと笑って照れ隠し。ミュラちゃんも感極まった様だけど、私は別の事も気になってみんなに聞いてみる。


「ねえ、皆もう結構お金持ってると思うんだけど、解放しないの? 首輪が気に入った訳では無いでしょ? なんなら勝手に解放しちゃうよ?」

「いえ! このままで!」

「そうですご主人様! まだこのままでいいんです」

「············なんで? 理由聞いてもいい?」

「あの、不安なんです。奴隷じゃなくなっても、首輪を外してもここに居てもいいのか······」

「え、大丈夫だってフェミ言ったよね?」

「頭では分かっているんですけど、心の準備が······」

「俺たちも、こんなにしてもらって、まだ大して返せてないのに、さっさと奴隷辞めていいのかって······。せめてたくさん役に立ってから、解放されたいんです」


 皆が言うことが分かって、それ以上は何も言わなかった。

 扱いやすそうだから奴隷を買ったけど、みんな予想以上に慕ってくれる。こんなに心地いいお店になったのはみんなのお陰だ。


「うん、わかった。これからもよろしくね。ところで、誰か恋仲になったりしてないの? ん?」

「······正直言うと、みんなご主人様が好き過ぎて仲が良いので、しばらくは何も無いと思いますよ?」

「おいアイちゃん、それ俺達は誤解されるじゃないか」

「だって皆好きでしょ?」

「いや好きだけどさ!」

「ふふふ、そんなにみんなに好き好き言われたら照れちゃうよ。フェミもみんなの事好きだよ。大事にするから、ここに居てね」


 明日もよろしくと伝えて解散、私室でお留守番させていたリリアを迎えに行き、ビークルで帰ろうとすると店の前にギルドマスターが立っていた。


「ギルドマスター?」

「お、嬢ちゃん居たか! 良かった、店閉まってるからどうしようかと思ったぞ」

「あの、何か御用で? お買い物でしたら、今日はもう閉店で······」

「まぁ買い物もしたかったがな、要件はこれだ。準特急のギルドカードが完成したから届けに来たんだ。貴族区域は苦手で近寄りたく無いんだよ······」


 渡されるカードは磨かれた白金で出来ていて真っ白。銀製の中級カードとは差別化する為に、所々に宝石まで埋め込まれていて、細やかな彫金がされている。

 真ん中にハンターギルドの紋章と、カードの外周を縁取る様に花の彫りがあり、ギルドの紋章とカードの四隅に小さな宝石が光る。

 それぞれに名前とパーティ名まで彫られている見事なカードだ。


「確かに四枚、渡したぞ。それと、最近来なくて解体場が恋しがっていたぞ。スゲェ獲物持ってくるのはいつもアンタらだって」

「ふふ、時間が取れましたら伺いますね。他の人も上級の魔物倒せればいいのですが」

「この店の武器があれば、その内出来そうだぞ。燻っていた中級が数組、急に階級上げたんだよ。そんで全員必ずここの武器を持ってやがった。なんでもジュウって武器が凄いってな」

「ふふ、皆の役に立てたなら良かったです。でも銃でしか階級を上げられないのは三流ですわ。剣も銃も使いこなせて一流です。弓使いは別ですが」

「おう、よっく言い聞かせておくぜ。じゃぁな」


 去っていくギルドマスターを見送りながら、何かを忘れている様な気がする。


「あ、フェミ達の戦闘見るんじゃなかったの?」


 私は、まぁ後日なにか狩って行けば良いかと一人で納得し、リリアにも準特級のギルドカードを渡して、今度こそ寮に帰った。


「フェミちゃん待ってたよぉ! はやく、はやくしたいよぉ」

「うっわルフィアが既に発情してる!? まって、まだ漏らさないで! お風呂行くから!」


 扉を開けると頬を染めて下腹部を両手で抑えて、足を震わせているルフィアが居た。

 夕食もまだなのに始めたくて仕方ないルフィアを連れてお風呂に向かうと、すぐにルフィアが顔を両手で隠しながらドレスを汚し、お風呂場の床をビシャビシャと濡らしていった。


「はぁぁぁぅぅう············、フェミちゃんに見られて、ドレスが、濡れていくの、すきぃ······」

「ルフィア、どれくらい我慢したの? すごい出てるけど······」

「ふぁ、もっと見て、フェミちゃんみてぇ······」

「うん。見てあげる」

「あぁぅぅ、中も、中も見て······、出てるところ見て······」


 もう完全に止まらなくなってるルフィアがスカートをめくり、下着も脱ぎ始めたので私もお風呂の準備をした。

 空気を読んで退室していたリーフェに夕食の確保をメリル経由で頼んで貰って、みんなでお風呂に入る。

 ルフィアのドレスだけはその辺に転がっている。私のもあったのだが、リリアが何故か私のドレスだけ回収して脱衣場に戻って、風呂場に改めて入ってきた時にはリリアも出来上がっていた。


「なっ、マトモなのメリルとフェミだけ!?」

「うふふー、フェミちゃん甘いよー。周りがこんな雰囲気になってるんだもん。私も手遅れー」

「最後の砦までやられただと!?」


 まさかの城壁シーナが陥落していた。ローゼとマリアが崩れたら自動で崩れるなんて、超大型を誰が止めるんだよ!


 いつも私が攻めるのに、今日は私が三人に蹂躙された。しかも久しぶりにリーアまで参戦してきて、私の体力は限界まで削られお風呂で溺れそうになった。


「今日もう、ベッドでは要らないね?」

「「「いる」」」

『ご主人、分かってて聞いたね』

「うん。分かってた······」


 お風呂を出て、何とか着替える。みんなはスケスケネグリジェを来ていてやる気満々だった。もしかしたプリシラもこう言う生活をしていたのかもしれない。私も絶倫になるのかなぁ。


 部屋に居たリーフェにみんなで給仕してもらい、体力回復も含めた夕餉を楽しみ、ルフィアの発言でまたリーフェが部屋から退出した。


「ルフィア、フェミちゃんの赤ちゃん欲しい」

「············流石に無理かなぁ」

「出来たら既にリリアが授かっています」

「ねぇ冷静になろ? リリア七歳。フェミとルフィア八歳」


 愛してくれるのは嬉しいんだけどさ、子供も出来たらなんか許される気もするけどさ、私女の子なんだよねぇ。

 子供が作れるなら、ルフィアの親も説得出来るかも知れない。無理なのが前提だけど、説得の足掛かり程度にはなるかもしれないけどさ。


 だがそもそも、初潮も来てないのに妊娠など出来っこない。

 そう思って思考を捨てた私に、新しい考えを吹き込んだのは安定の天才、メリルちゃんだった。


「あのさ、男の子になるのは無理でも、フェミちゃんなら、その、子種? を作る魔道具なら作れるんじゃないの? それだけ有れば、赤ちゃんって出来るんでしょ?」


 ······。

 ············。

 ··················。


「いややっぱメリル天才だよね。そうだよ人体改造なんて要らないじゃん。種だけ細胞から培養出来れば済む話なんだし、それ以外の機能は女の子が自前で持ってるじゃん。難しい話しだから施行回数を馬鹿みたいに重ねないと完成しないけど、多分出来る」


 メリルの言う通り、例えば自分に挿入して体液やらから細胞を取り込んで種に変換する、双頭ディル何とか先輩を作れたら、男の子に人体変換する必要も股間に刀を錬成して生肉の錬金術師になる必要も無い。完全に後付けハードだけで問題を処理できる。


「ふふー、やっぱりね。私はフェミちゃんなら出来るって思ってたもん。お母さんにはフェミちゃんが赤ちゃん産ませてくれるってもう言っちゃったもん」

「そう言えば、リオライラにメリルを迎えに行った時、そんな事を話してましたね······」

「えと、つまり、フェミちゃんの奥さんに、なれるの?」


 多分閃いては行けない類の閃きだったんだけど、もう遅い。私はもう、禁忌とかそういうのとっくに捨てた。


「うふふ、お姉様の子供が授かれるのですか······」

「えへへー、誰が一番かな?」

「盛り上がってる所悪いけどさ、流石に完成しても貴族学校卒業するまで封印するからね。在学中に妊娠とか洒落にならない」

「「そんなっ!?」」

「まぁそうだよねー。赤ちゃん授かるのって、子供じゃまだ無理だってお母さんに教わったもん」

「うんうん。まず初潮って言って、赤ちゃん産めますよーって体が出すお知らせが来ないとダメなの。詳しく言うとお股から血が出てくる」


 十二歳くらいが前世の平均だっけか? あとは、身長が百五十超えてくるとそろそろだとか············。


「あれ? メリルそろそろ来るんじゃね? 身長大きいし、来年には大変かも?」

「ふぇえ!? 私、血が出るの!?」


 そんな会話に、リリアとルフィアはメリルを羨ましそうに見て、メリルは自分が迎える未知に少し怖がりながら食事を終えた。


「でも、私が一番にフェミちゃんの赤ちゃん、授かれるのかな?」



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