表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/54

風環連鎖。



 全て終わり、時刻は二十九時くらい。

 ベッドの上でみんな疲れ果てている。そんな中私はルフィアの持ってきた魔石を賢者の石に変えた。


「ほい。この後寝るだけだし、飲んじゃおっか」


 私は作った飴玉くらいの賢者の石をメリルとルフィアに渡して、リリアに指示を出す。


「こんな時間に悲鳴出されても困るから、二人が飲んだら口塞いじゃうね。手で塞がれるのと口付け、どっちがいい?」

「「口付け」」

「おけ、リリアも手伝ってね。どっち塞ぐ?」

「リリアはメリルを塞ぎますので、お姉様はルフィア様を」


 口付けならついでに口移しがいいとメリルが言うと、ルフィアも乗っかったから私とリリアは賢者の石を咥えてにじり寄る。

 ベッドの上では大して逃げられない二人はあっさり捕まり、賢者の石を口に入れられそのまま舌が絡む。


「ん、んんー! んんんんー!」

「ふぁまんひへ。はむ」


 涙を流しながら私の口の中にうめき声を出すルフィアを抱き締めて、苦痛が去るまでキスと愛撫を続けてあげる。二倍で疲れるかも知れないけど、苦痛オンリーよりいいと思う。


 それから暫くしてルフィアが気を失った。メリルの方を見るともう平気そうでリリアとちゅっちゅして盛り上がってる。混ぜてよ。


「平気なの? 辛くない?」

「ふぁあ、ファミちゃん。最初は凄い苦しかったけどね、すぐに引いちゃったよ。リリアちゃんのお口が気持ち良くて、ずっとしちゃった」

「うふふ、メリルの舌は柔らかいので美味しいのです」

「え、本当に平気? ······もしかして元々魔力が少ないから拒否反応が無かった?」

「······そうなの? えへへ、平民で助かっちゃった」

「メリル、体の中の魔力はわかる?」

「分かんない! 今まで使った事ないもん!」

「······だよね。いいや、コッチでメリルの賢者の石操作する」


 リーフェとリリアの賢者の石と同じ様に、二人の賢者の石はファクトリーと繋いである。メリルの賢者の石を起動してメリルの魔力を増やしていく。

 元々が少ないから倍々でも少し時間がかかった。まぁ加速度的に早くなるんだけど。小数点以下からスタートだと流石にね。


「ふぇえ、なんか、体が熱い············。リリアちゃん、フェミちゃん、あの、もう一回············」

「ふふ、しょうがないなぁ。リリアはメリルのお口を味わってて、下はフェミが楽しむから」


 増えた魔力で体が昂ってしまったメリルを二人で満足させて、昨日の痛みが少し引いてきた私達もちょっとだけ楽しめた。


 ルフィアを含めて皆の体を魔法で洗ってから眠ろうとすると、メリルちゃんはまだ足りない様子だった。初めて体に満たさせる魔力に気持ちが着いていかないみたいだ。


「フェミちゃん、別の意味で辛いよぉ······」

「ふふ、おいで?」


 抱き締めながら口を塞いで、メリルの好きな場所を魔法まで使って攻めてみた。リリアが羨ましそうに見ているけど、今はメリル優先なのだ。そして終わったら寝るのだ。許せリリア。


「疲れたら寝るしか無いでしょ?」

「ふぇ、ぅん、眠れそう······」


 次は自分もと飛び付いてくるリリアを抱き締めて、そのまま寝る。お耳ハムハムくらいはしてあげるけど。


「あ、お姉様、そのまま寝ては······」

「はむはむ············。はむぅ······」


 リリアの耳を口に咥えたまま私は寝落ちして、夜通し悶えたリリアは朝起きると寝不足だった。

 ただ本人は幸せそうだったから、容赦なく朝食の後に学校に連れていったら。


「三人でご一緒に来るなんて、随分仲がよろしいのね?」


 教室に入ってすぐ、何か絡まれた。誰だっけコイツ。えーと、確かハープレスレイのキュリルキアって奴を持ち上げてた巾着袋の············。


『ウッソだろお前。ご主人、イオっちの妹』


 そうだ! イオの妹だ! 名前はまだ知らない。そういや紫髪の馬鹿と同学年ってこと、髪色もそうだしイオと同腹なのかな? 紫髪の血筋は連座させられてるはずだしね。


「ごきげんよう。お名前はまだ伺って居なかったけれど、イオ様の妹君様でよろしいかしら?」

「っ!? お兄様を気安く呼ばないで頂ける!? 不愉快ですわ!」

「あら、そうは言われましても、ご本人にお許しを頂いておりますので」


 どうやら妹もイオが大好きらしい。そういや妹は空気を読まないみたいな事をイオが言ってたな。


「特にご用が無いのでしたら、失礼しますわね」


 リリアとルフィアを連れていつもの場所に············、座ろうとしたらキュリルキアが陣取っている。いや何がしたいんアンタら。


「あらごきげんよう。フェミリアス様もこちらにお座りに?」

「ごきげんよう。お気になさらなくて結構ですわ。席なんて山ほど空いておりますもの」


 別にそこに座らないと行けない意味も義務も無いので、スルーして部屋の隅、窓際まで行って座った。ルフィアもリリアも私の隣じゃないと怒るので、必然的に真ん中になる。


「············で、なんだったのアレ」

『知らね』

「縁を結びたいにしても、方法が······」

『お粗末だよね!』

「どっちかって言うと、煽って来てない? イオ様の名前出したら煽り返せたけどさ」

「やり方が、なんか、残念? そう思うとフェミちゃん、エグかったよね。人前であんな············」

「それだけ大事な本だったの。あの時は本気でルフィアを潰す気だったし。あ、そだ、はいパソコン」


 私は思い出した様にパソコンをロールアウトしてルフィアにあげた。賢者の石で魔力を気にしなくて良い今、ルフィアにも使える。


「ぅあ、嬉しぃ············」

「ルフィア本当に可愛くなったよね。最初が嘘みたい」

「······お姉様が本気で潰そうとする程、酷かったのですか?」

「ぅん。ルフィアが悪かったの。ごめんね?」

「いいよ。今は可愛くなっちゃったし」


 こそこそと談笑していると、上級組の騎士志望貴族達が私たちの席を囲んでいた。

 円陣を組む感じじゃなく、周りの席が埋まる感じで。

 これもキュリルキアの嫌がらせだろうか?


 チラチラとリリアを見る様子が物凄く癇に障って、思わず声をかけてしまった。


「なにか御用でしょうか? リリアがあまりに可愛いからと言って、盗み見るのはあまり褒められませんわ」

「な、あっ、いえ、申し訳、ありませんっ」


 嫌味のつもりで言ったのだけど、予想外に顔を赤くして俯く貴族と、それを聞いて他の貴族もソワソワと視線をそらし始めた。


「あら? 本当にリリアが気に入ったのでしたら、遠慮せずにお声を掛けてもらっても良いのですよ?」

「あ、あの! 昨日の騎士との模擬戦を拝見しました!」

「私も! あの素晴らしい戦いぶりを目にしてっ······」


 どうやら嫌がらせではなく、昨日の戦いを見て自発的に集まった様だった。そう言えば騎士志望は獣人差別が少ないって騎士さんも言ってたっけ。


 顔を赤くして自己アピールを始める貴族を遮って、レイオラシスが教室に入ってきた。

 まともな会話も出来ずに、悔しそうにする男の子達に、だがリリアは渡さんよ? 私のだよ?


「はい皆静かに。始めるぞ。シスケンティアはいつも通り、遊んでいなさい」

『はい、ご主人。行ってきます』


 シスケンティアがいつも通り私の前まで飛んできて、授業が始まる。レイオラシスはシスケンティアが気になるのか、チラチラこちらを伺っていた。

 そして休憩に入るとこちらに来た。


「おはようフェミリアス嬢、リリアライト嬢、シュリルフィア嬢」

「レイオラシス先生、ごきげんよう。ほらシスケンティア、ご主人様がいらしたわよ?」


 お目当てのシスケンティアを手に乗せてレイオラシスに渡すと、一度頬を緩めた後に咳払いをした。


「おほん。いや、少し聞きたいことがあってね。シュリルフィア嬢、そのパソコンは?」

「こちらは、もちろんフェミ様に頂いたものですわ」

「ふむ。その様だね。でも他の人には使えないと聞いたのだが?」


 あ、やっべ。言い訳考えてなかった。唸れ私の頭脳!

 すぐに取り繕った答えを頭の中で組み立てて口にする。


「こちらは、量産に向けて作った試作品ですわ。まだまだ改良の余地があるので、レイオラシス先生にはまだお待ちいただきたく思いますわ」

「む、そうだったのか。いや、ソレがあるだけでどれだけ仕事が楽になるだろうと思うと、少し気が逸ってしまった。急かす様な真似をして悪かった」

「いえ、それだけ楽しみにして頂いているのです。わたくしも張り切らなくては行けませんね」


 なんとか無難に対応して、レイオラシスが休憩を利用してトイレに行ったタイミングでルフィアにちゃんと同じ物だとフォローを入れた。


「ルフィア達は大丈夫?」

「ルフィアはフェミちゃんの前で、その、するから、いいの」

「リリアは普通に大丈夫ですわ」

「分かった。けど、ルフィア? 我慢は体に悪いよ?」

「いいの。フェミちゃんの前でいっぱい出すの」

「··················本当に好きだねぇ」


 ルフィアに特殊な性癖を植え付けて、コキュートスまで堕とした罪悪感が胸にモヤモヤした気持ちを貯める。私罪深すぎない?


 貴族学が終わり、昼食の後に魔法学へ行くルフィアと別れて、メリルとリーフェを連れて中央区域に向かった。


「どこに行かれるのですか?」

「ハンターギルドだよ。お店持つのに開店資金集めなきゃ」


 中央区域商業許可書と一緒に、リリアと私の騎士資格、国家魔道具作家認定書、国家魔法使い認定書も同封されていたので、ハンターに登録して飛び級試験申請をしてしまおうと思っている。


 私とリリアは前代未聞の在学中に正規資格を三つも手に入れたので、そのまま働く事も不可能では無いが、ちまちま給金貯めてちゃお店なんて持てない。


 一攫千金が可能なハンターに登録して、強めの魔物を倒して素材を売り捌いて開店資金とするのだ。


 同時にハンターをやって情報を集められれば、足りない素材など手に入って量産出来る物が増えるかも知れない。


 目下必要な素材はエーテルコアに使うエーテル結晶、この世界風に言うならマナ結晶かな。


 ハンターギルドは中央広場に面していて、実はチラチラ見えていた。ギリックがニール君と待ち合わせにここを使っていたのは、ギルドの目の前と言う理由もあったのだと思う。


 ギルドに入ると、イメージの中の酒場然とした雰囲気は微塵もなく、前世の役所を彷彿とさせた。

 入ってすぐに木製のカウンターがギルド内部に円を描く様に設置してあり、等間隔で高い仕切りがカウンターに着いている。

 そしてカウンターに立つ職員は総じて女性で、制服なのかカーキ色のワンピースに赤茶色の革製ベストを付けている。


 入口から見て正面のカウンターのに立つ三人の職員だけは、ワンピースの色が高級感のあるワインレッドになっていて、どうやら受付嬢らしい。

 受付で要件を聞き、要件に添った窓口に来訪者を回すシステムになっているみたいだ。


 四人で受付に歩いていき、真ん中のお姉さんに挨拶をした。

 

「ごきげんよう。要件はここでいいのかな?」

「いらっしゃいませお貴族様。ここは受付で、ご要件にあった窓口の番号をお知らせするだけです。ご依頼でしょうか?」

「いいえ、ハンターに登録に来たの」

「······登録でお間違い無いですか?」

「そう、子供組全員。大人の彼女は既に五級のハンターだから気にしないで」


 目線より高いカウンターのお姉さんにそう伝えると、お姉さんがリーフェを見て、少し顔を歪めた。そこから読めた感情は、「五級ハンターならちゃんと止めろよ。子供にハンターなんか出来るか!」って感じだった。


「それと飛び級資格を取得出来たので、一緒に試験の申請もしたいの。登録と同じ窓口で良いのかな?」

「え、え!? 飛び級、ですか?」

「はい。資格書。あと、資格者と中級ハンター合計三人の推薦が有ると飛び級受けられたよね。騎士資格二つと五級ハンターの推薦で、子供組全員の飛び級申請をお願い。もちろん偽造でも何でも無いから、貴族学校にも王家にも問い合わせて貰っていいよ」


 騎士資格を見せると、あたふたし始める受付嬢をぼんやり眺めて、やっと窓口を教えて貰って移動した。


 窓口は、一番がギルドに依頼をする依頼審査窓口。二番窓口がハンターの依頼受注を処理する依頼処理窓口。三番が依頼の達成、失敗を処理する報酬窓口。四番がハンター登録やパーティ申請など、ハンターの登録事務を処理する登録窓口、五番が依頼報酬とは別に魔物の素材を買い取る買取り窓口だ。


 四番窓口には並んでいる人が居らず、すぐに職員のお姉さんがお辞儀してくれた。

 お姉さんはショートヘアにパッツンの黄色い髪で、金髪とはまた違う趣きがあって可愛い。


「いらっしゃいませ。ハンター登録でお間違いありませんか?」

「うん。子供三人全員登録で、騎士資格二つと後ろの五級ハンターの推薦で、全員飛び級申請も一緒にお願い」


 受付嬢と違ってすぐに処理してくれるお姉さんに少し好感を持ちながら、隣の三番窓口を見ると何か知ってる人が居た。


「ん、ギリック?」

「ん、なんだ嬢ちゃんか。依頼の窓口はそこじゃ無いぜ?」

「登録に来たんだよ。変な事言ってるとギリックの仕事全部取っちゃうからね」

「はは、勘弁してくれよ。食い詰めハンターが貴族に仕事取られたら、生きていけねぇぜ」


 慣れた様子で喋る私とギリックを、後ろの三人が不思議そうに見てるので、紹介してあげた。


「ギリック、フェミの可愛い可愛い妹のリリアライトと、その側仕えになった可愛い可愛いメリルと、私の側仕えリーフェリアルだよ。三人とも、あそこのハンターはギリック。四級のハンターだから、多分そこそこ強い」


 私が紹介すると、リリアとメリルはその場でカーテシーをして、リーフェは普通にお辞儀した。

 そのリーフェを見てギリックが少し動きを見せたので釘を刺しておく。


「リリアとメリルは当たり前だけど、リーフェに手を出したら酷いからね。王都に住めなくしてあげる」

「············分かった分かった。目が本気なのは痛い程分かった。だが少し口説くくらいなら······」

「うん。直接的に言うね。殺すよ?」


 私が魔力を解放して威圧すると、ギリックが顔色を変えて慌て始めたから魔力に蓋をした。


「おっかねぇ! 嬢ちゃん、その歳で何て殺気出すんだよ!」

「それくらい大事な人なんだよ? 例えば、ギリックに妹が居るか知らないけど、大事な妹にギリックっぽいハンターが言い寄ったらイラッと来ない?」

「それを俺本人に聞くなよ。泣くぞ」

「······あの、お待たせしました」


 色々書類を持ったお姉さんがカウンターに戻って来ていたので、ギリックをほっといて書類を埋めていく。

 リーフェに抱えられながらカウンターで書くのは少し恥ずかしい。


「エキドナ、踏み台あったろ。出してやれよ」

「ちょっとギリック、抱えられてるの可愛かったのにぃ!」


 エキドナと呼ばれたお姉さんは、私がリーフェに抱えられている様子がお気に召した様だけど、踏み台あるなら下さい。あと何気にギリック優しいんだよね。前から思ってたけど、なんでモテないんだろう。


「エキドナ、嬢ちゃんだから許してくれるが、貴族相手なんだぞ?」

「だって、だって可愛んだもん!」

「ふふ、もっと可愛いの見せよっか? リリア、変身だよ!」

「にゃ!? お、お姉様? こんな場所で············」


 リリアの変身を見せたかったんだけど、恥ずかしいみたいだ。リーフェは察して俯き、メリルは何が起こるのか分からなくて私とリリアを交互に見ている。


「はずかしい?」

「む、無理ですぅ············」

「しょうがないなぁ。フェミがやろっか」


 何が起きるのかと期待している職員、エキドナと呼ばれた女性に良く見える位置まで下がり、猫の手を作った両手を胸の前で下げ、お尻を軽く突き出してキーワードを口にした。


「変♪身♪にゃん♡」


 キーワードに反応したネックレスが、リリアライト・プリンセスの私版、フェミリアス・プリンセスを展開した。


「···ケプッ!?」


 私のふわっふわ猫耳ドレスを見て、エキドナが鼻血と吐血を吹いた。

 ふふ、私程度で吐血なんてしていたら、リリアの超絶可愛いリリアライト・プリンセスを見たら死んでしまうよ?


「ギリック、殺して、私を殺して! 今死ねばこの光景を最後に逝けるの!」

「ふふ、ダメだよー。もっと可愛いのがあるんだよ? ね、リリア、お揃いになろ?」

「あぅぅぅう······」

「ふえぇ、フェミリアス様、とっても可愛いです······」


 初めて見る姿に興奮するメリルと、手で顔を押さえて必死に血を止めているエキドナの前で、リリアを撫でて説得すると、赤面しながら観念してくれた。


「あぅ、ぁぅ、へ、変身、にゃん♡」

「「かはっ···!?」」


 リリアが頬を染め、羞恥に悶えながら猫のポーズを取り、上目遣いで変身する様子は、やはり神が世界に創りたもうた至高の一つなり。

 同時に吐血する私とエキドナは、心の中で全て通じあっていた。


「お貴族、様······」

「なぁに、エキドナさん」

「ありがとう、ございました············」

「うん。来世はもっといっぱい、可愛い女の子を、きっと」

「············ええ、きっと······」


 とてもいい顔でカウンターの奥に崩れ落ちて見えなくなるエキドナは、リリアの可愛さを分かってくれた同志だった。


「フィルファぁあー! エキドナが死んだー!」

「ちょっと、何やっ······!? きゃぁぁあ!? 何この血! ちょっとエキドナ! 鼻血止めないとアンタ死ぬわよ!?」


 ギリックが窓口の奥に叫び、他の職員さんが出てきて慌て始めた。


 ともあれ、手続きが全て終わったのでプリンセス装備のままギルドを後にした。


「ふふ、エキドナさん幸せそうだったねぇ」

「お、お姉様······、あの、大丈夫だったのでしょうか」

「しょうがないよ。リリアの可愛さが直撃したんだもん。良く聞いてリリア? リリアの可愛さはね、人の命に届くんだよ」

「あわ、あわわわわわ······」


 十級のギルドカードを三枚貰い、明日の癒しの日に街の外で行われる飛び級試験に参加出来る事になったので、今日はもうスイーツでも食べてから帰ろうかと、みんなでピンクのお店に向う。


「で、何でギリックがついてくるの?」

「良いじゃないか。小腹が減ったんだよ」

「ブルボアでも狩ってくれば良いんじゃないかな」

「そこまでガッツリは要らない」

「余ったのニール君にあげなよ。そう言えばニール君は?」

「今日は水の鐘の後だな。ちょうど軽く何か食ったら中央広場でいい時間だろ」

「プリシラさんの店に行けば?」

「············最近プリシラ、すっげぇ冷たてぇんだよ。何か知ってるか?」


 男要らない宣言までしたプリシラには、ギリックはもはや言い寄ってくる虫どころか害虫レベルに落ちたのか。うん、私のせいだけど知らん。頑張れギリック。


 メリルはギリックがあまり気にならないらしく、それよりも私達の変身の方がよっぽど重要事項らしかった。初めて髪の手入れをして上げた時のような、キラキラした目を向けられる。


「お嬢様、フェミリアス様、そちらは何でしょうか? 私初めて拝見しました!」

「これはね、実は戦闘用の魔道具なの。肉弾戦特化で、とにかく殴って倒す武器かな?」

「は、はぁ? それ武器なのかよ。なんでそんな見た目にしたんだ」

「なにギリック、戦いの場に可愛らしい女の子が居たら士気も上がるでしょ?」

「いやまぁ、嬢ちゃん達は可愛いけどよ、その場に可愛い女が居るのと、可愛い女が可愛い服着て魔物を殴り殺してるのは、状況が違うぜ?」


 そんなこんなお店につき、ギリックは小腹が減ったと言うのに結構ガッツリ頼み始めた。私達は果実水とパンケーキのクリーム乗せだ。リーフェは立ったまま給仕。


「リーフェも座ろう? って言っても聞かないんだよね」

「ええ。あ、メリルは座ってて良いですよ。ここは私に譲ってください。寮はお嬢様のお世話があまり出来なくて、楽しく無いのです」


 上司たるリーフェが立ってるのに、部下のメリルが座っているのも結構辛いと思うんだけど、リーフェは気にせず、楽しそうにパンケーキを切り分けたりしていた。

 いや皿ごとくれよ。なんだこのチマチマした食べ方。


「············なんで美人に食べさせて貰って、不満そうなんだよ嬢ちゃん」

「フェミはリーフェも一緒に食べたいの。ギリックも何て顔してるのさ」

「羨ましいんだよ!」


 満足したリーフェを確認して、お店でギリックと別れる。ニール君は任せたよ。

 辻馬車を使って寮まで帰り、自室にて明日の準備をする。特にメリルの。


「リーフェ、今日はもうメリルのお仕事はいい?」

「構いません。メリル、今から夜の鐘と同じ様に」

「······良いのかな?」

「いいの。メリルに色々教えないと行けないし。賢者の石で魔力は使えるようになったでしょ? だから魔法を使えるようになって欲しいんだ」


 私は、フェミリアス、リリアライト、リーフェリアル、メリルでパーティを組む気でいる。しかし、明らかにエーテルドレスすら無いメリルが火力不足なのだ。

 せめてオリジナル魔法の一つでも作って貰って、可能なら無詠唱まで覚えて欲しい。


「わ、私が魔法を······」

「うん。魔力はあるし、あとは覚えるだけなんだよ」


 それから猛勉強をさせた。通常の魔法を知らない事を利用して、私が立ち上げている理論を優先で詰め込んでいき、洗浄魔法と乾燥魔法くらいなら無詠唱までたどり着く頃には夕食の時間だった。


「ふぇ、ふぅ、フェミちゃ、頭から何か出るぅ!」

「知識だよ! 出さないで!」

「ふぅぇえ、零れる! 覚えたの出てきそうだよぉ!」


 メリルがパンクしたあたりで休憩をして、夕食をリーフェに部屋まで運んでもらった。ゆっくりと食べて充分休息を取らせると、メリルが天井を眺めながら何かを呟いている。


「どしたの?」

「············、フェミちゃん。魔法って、頭で考えた物を、魔力と一緒に声に出して起こすんだよね」

「簡単に言うとね。ただ言葉にも決まり事とか有るから、魔法は何でも出来る訳じゃないんだよ」

「その決まりって、さっき教えて貰ったものだけ?」

「もちろん他にも有るけど、だいたいそう。どうしたの?」

「えっと、自分で魔法作るには、一回古代呪文? に置き換えるのが楽なんだよね?」

「うん。普通は違うらしいけど、古代呪文は魔法を使うための情報だけが詰め込まれているからフェミはそうしてるかな。覚えやすいように置き換えてある現代呪文より組みやすいの」


 復習かな? いい事だ。

 

 そんな呑気な事を考えていた私は度肝を抜かれた。


 休憩を終えて更に知識を詰め込んで行くと、メリルは私の知らない呪文を口にし始めた。


「風環連鎖!」


 そしてメリルに魔法を教えて半日、オリジナル魔法を作り上げた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ