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晩餐会と嬉しい喪失。

性的な描写をついに回避したぜ! 勝った! やったー!


『勝ててない』


お前はリーア!? 何故ここに!?



「良く来てくれた。歓迎しよう」


 既に席に座っているジークザーロに促され、レイオラシスと席に座る。

 テーブルは四角く長いテーブルで、辺の短い上座にはジークザーロが座り、ジークザーロを挟むように長辺の上座側に二人の王妃が居る。第二夫人まで王妃と呼んで良いのかは知らないが、どうでも良かった。

 そこからズラッと王子が並び、上座に近い順に王位継承権が高いのだろうと思えた。


「本日は高貴な方々の晩餐にお招きいただきました事を、心から光栄に思います。トライアス領主の娘が一人、フェミリアス・アブソリュート、お招きにより参上いたしました。今日は一生の誉と存じます」


 私はもうやる事をやり切った。あとはタイミングを勝手に見て、リティット達を献上してくれる使用人達に任せる。本当に疲れた。


 本当はお姫様も居るらしいのだが、何故か今日は晩餐会から外れているらしい。私としては王子に囲まれるよりお姫様と楽しくお喋りした方が心休まるのだけど。


 幸い皆いっぺんに自己紹介するのでは無く、食事が始まって会話を振られた折に名乗られて、何とかだいたい覚えられた。


 第一王子がグレゴラッツェ様。第二王子がパレアドルガ様。第三王子がイリスフィルド様。第四王子がケレティルツ様。第五王子はご存知レイオラシスだ。

 皆二十代に見える。第一王子と第四王子が婚約者が居て、ファミルツェリア様が第一王子の婚約者で、ミャルレート様が第四王子の婚約者らしい。


 食事の味も良く分からない心臓に良くない晩餐会が進み、ジークザーロがソワソワし始めたあたりでレイオラシスに目線で教えられた。


「ではそろそろ、僭越ながら、王族の晩餐に招かれると言う良き日を記念しまして、わたくしがお持ちした魔道具をご覧頂きたく存じますわ」


 ジークザーロが思わず豪華な椅子をガタッと鳴らし、両脇の王妃様が口に手を添えて上品にその様子を笑う。

 そして使用人がぶわーっと部屋に入ってきて、王族それぞれの前に小箱を置いていく。

 第二王子とその婚約者が小箱のデザインに息を呑むと、ジークザーロは待ち切れないと小箱を開ける。


「開けた蓋に魔道具の起動方法が書かれておりますので、ご覧下さいませ」


 箱を開けて目を見張るジークザーロのリティットは、全身が金色で、立派な白金のトサカに細かい彫金を施した王冠を付け、鬣の様なふかふかした羽毛が首で靡く国王専用リティット、クラウンリティットだ。

 その翼には白金に輝く王家の紋章が模様として入っている。

 本当はマントも付けようと思ったけど、飛ぶのに邪魔そうなので止めておいた。


「ふぉぉぉおおお······、なんと、なんと見事な······」

「お名前を付けてあげてくださいませ」

「う、うむ。ここに書いてある呪文だな? 名前、名前、なんと名付ければ良いのだ!?」


 嬉しそうなジークザーロはすぐに顔色を変えて頭を抱えた。ちょっと面白い。


「ふふ、どんな名前でも良いのですよ。呼んでいく内に愛着が湧きますわ」

「そ、そなた達はどうやって名付けたのだ?」

「わたくしのリーアは、妹の名前から肖っているのです。妹のリティットもまた、わたくしの名前からリアスと名付けていますわ」

「そう言えば、色が······。リアスと言うのはあの黒いリティットか?」

「はい。妹と領地で分かれる時、わたくしの髪色を模したリティットを残したのです。それがリアスですわ」

「そして、妹君の髪色を模したのが、そのリーアか。仲が良いのだな」

「はい。わたくし、妹の為なら何だってするのです」

「ふむ。残りの二羽は?」

「桃色のリティットはピッピと言います。持ち主の妹と弟がそう呼んだのが由来ですわ。青いリティットはフェミルフィアと言いまして、持ち主が自分とわたくしの名前を混ぜたみたいですわ。すこし恥ずかしいので、わたくしはミルフィと呼んでおります」


 私の話しを聞いて悩み始めるジークザーロを置いといて、他の人も箱を開け始めた。特に王妃様から長いため息が聞こえる。


 王妃様に準備したのはクラウンリティットと対になるティアラリティットだ。

 全身が澄んだ銀で翼には金色で王家の紋章。首元と控え目なトサカには、私が全力で、全ッ力でデザインした渾身のティアラとネックレスがある。第一王妃と第二王妃でティアラの大きさとデザイン、同じくネックレスの大きさとデザインで差を付けてある。

 さらに分かり易いようにトサカの色は聞いていた二人の髪色にしてあり、第一王妃はパステルピンクで第二王妃は青銀だ。


「あら、まぁ······。随分素敵な首飾りと小冠ね」

「本当ですわ。わたくし達より素敵な物ですわね」

「ふふ、リティットをお贈りしました女性に置かれましては、特別な仕掛けを準備致しました。リティットが入っている綿の中をご覧くださいませ」

「·········あら、あらあらあら、まぁ」

「素敵ですわね······」


 リティットが眠る綿の裏側、リティットが付けている物と同じデザインの人間用ネックレスが入れてある。もちろん、王子の婚約者にも、リティットのネックレスと同じ物を仕込んである。


 それを聞いた婚約者二人はリティットを引っくり返さないように、優雅な所作でネックレスを取り出しては嬉しそうに頬を染めていた。


「ふふ、お気に召していただけた様なら、わたくしも嬉しく思いますわ」

「母上達、それは先ほど父上からの無茶を受け、このフェミリアス嬢が自ら、とてもとても急いで作り上げた物です。どうか大切にして上げてください」

「まぁっ、ジークザーロ様? あのような幼い淑女に何をさせているのです? 今日招待された方が来るとは聞きましたが、本当に今日申し付けたのですか?」

「いくらなんでも急すぎるのではありません事? フェミリアスだったかしら、夫のが無理を言ったようでごめんなさいね。そしてその短い間に、これだけの魔道具と装飾品の準備に気遣い。あなたは立派な淑女だわ」

「勿体ないお言葉でございますわ」


 にっこり微笑んで見せるが、本当に嬉しい。凄い頑張ったんだよ。頑張ったんだよ!

 ちゃんと労ってくれた王妃様への好感度が爆上がりする。王妃様たちいい人だぁー!


「本当は小冠も作りたかったのですが、王位を象徴する物をわたくしが作っていいのか判断出来なかったのです。情報を集める時間も有りませんでしたから」

「······そこまで考えて、このような素敵な物を······」

「ジークザーロ様は、もちろん相応の物を準備されているのでしょう。まさか少し便宜をはかっただけで終わりだなんて、言いませんわよね?」

「母上、もっと言ってやって下さい。本当にフェミリアス嬢は大変な思いをしたのです」

「ふふ、皆様、ありがとう存じます。そのお言葉だけで十分に報われた思いですわ。それよりも、新しく家族になる小鳥達に、名前を授けてあげてくださいませ」


 王妃の小言に小さくなっていたジークザーロも、その通りだと勢いを撮り戻すも、全員が名付けで唸っている。


「はは、難しいな。ずっと呼ぶ名前だろう?」

「そうですわ。簡単に決めてしまうと後悔しそうで······」


 全員が唸っている中、私は今のうちにゆっくりご飯を食べる。やっと味が分かるようになって、美味しく食べれる。流石に王族は良い物食べてるね。


「ふ······。なぁフェミリアス嬢、代わりに名前をくれないか?」

「······え、あの?」

「作った本人が名付けるなら、私は文句など無い。お願い出来ないかい?」


 レイオラシスは私の一番近くに座っていて、リティットの名前を要求してきた。

 王子達のリティット、プリンスリティットシリーズは、首元にスカーフが巻かれていてそれを丸いブローチで止めてある。お洒落な足輪も付けて、お腹と翼の後ろが銀色、他は金色とちょっとシンプルに可愛く作った。


「長い名前や、可愛い名前、雄々しい名前など、何かご注文は有りますか? リティットが雄に育つか雌に育つかわたくしには分かりませんが」

「ふむ。ではどちらでもいいように、少し長く凛々しい名前を頼もうか」

「では僭越ながら、シスケンティア、など如何でしょう」

「·········気に入った。ネーミングシスケンティア」


 目を覚ましたシスケンティアはレイオラシスの肩に乗り、周りを見回して目をクリクリさせている。

 その頭をレイオラシスが優しく撫でて挨拶していると、ジークザーロが慌て始めた。


「息子よ! ズルイではないか!」

「何を言うのです父上。一番に箱を開けたのは父上なのですから、はやく名付ければ良いかと」

「ぐぬぅ! 思い付かん! が、自分で名付けたい! ぐぅおおお!」

「ふふ、ではわたくしはお願いしてもよろしくて? フェミリアスの思うわたくしのリティットの相応しい名をお願いするわ」

「では、フレイアル。などどうでしょう?」

「ふふ、素敵な名前がスグに思い付くのね? ネーミングフレイアル」


 それから王子も自分で名付けたり、私が名付けたりして次々目を覚まし、皆の肩にはリティットが止まっている。


 ジークザーロ一人を除いて。


「ぐっぬぅ、最後だとぉ······!」

「国王様、難しければ、何かに肖るのも手かと存じます。例えば国に伝わる宝剣の名前とか、かつて居た英雄の名前など」

「っ!? なるほど!」


 王様は明るい顔で少し考え、王家に伝わる宝剣シックザールの名前をリティットに与えた。


「では最後に、リティット達が持っている特別な能力を披露致します。リーア、いいかしら?」

『コール? だいじょぶ』

「では、コールシックザール」


 私のキーワードに反応してリーアがコールモードになると、ジークザーロの肩に居るシックザールも共鳴モードになる。


「な、なんだこれは!?」

「コールチェック、と口にすると、相手が分かり、同じ様にコールすると相手と会話が出来ます」

「こ、コールチェック······」

「リリリッ♪ コール、リーア♪」

「喋った!?」

「国王様、コールリーアと仰って下されば、リーアとシックザールが繋がりますわ」

「わ、分かった。コールリーア······?」

「ふふ、ごきげんよう」

『ふふ、ごきげんよう』


 私の声が少し遅れてシックザールから聞こえ、聞いていた全員が時を止める。


「この遠方と話せる魔法をコールと言います。皆様のリティットは王族仕様で、王族同士か、一度王族からコールした相手からしかコール出来なくなっています。わたくしのリーアからは、説明の為にコール出来る様にしてあるので、ご容赦下さいませ」

「············つ、つまり、リティットを持つ者同士は、どこに居ても喋れると?」

「その通りですわ。リティットの名前が分かればコール出来るので、気軽にコールされては困る王族の方専用に、機能を組み直したのです」


 私が語ると、レイオラシスは手で顔を覆って息を吐き、第一王妃様は私をマジマジと見た。


「·········この様な手間まで、この短い時間に······」

「あの、フェミリアス? もし良かったら城で働かないかしら?」

「残念ですが、わたくしは領主の子ですので」

「輿入れ以外では中央に来れない、か。ぐぬぅ勿体無い。この様な決まりは廃してしまえないものかっ······!」


 ジークザーロまで呻き始める中、第二王妃様が青銀の髪を揺らして首を傾け、私に褒美を聞いてきた。


「あなたの持ってきた物は、あなたが思うよりずっと素晴らしく、価値のある物だったわ。コチラとしても、相応の褒美を取らせないといけません」


 と言われても、私としてはこの晩餐会を無事に乗り切って部屋に帰り、リーア達と寝たいだけだ。


「·········あ、一つだけ、是非お願いしたい事がございました」

「な、なんだ!? 言ってみよ。シックザールの礼は相応にするぞ」

「はい。では、中央区域にて商業許可を頂けませんか? 調べると、王都で店を持つには、国王の認可が必要だと聞きましたの」

「ん? その、その程度でいいのか?」


 そう、私の魔道具屋計画には中央区域商業許可証が必要なのである。いま正に、それを手に入れるチャンスであり、ティターニオと知り合えた私にとって、最後の難関なのだ。


「父上、私からもお願いします。フェミリアス嬢は自分が作った魔道具を量産し、王都から売り出し国を豊かにしたいと、先ほど聞いたのです」

「な、まさか、このリティット達もか?」

「はい。なので皆様のリティットは、下々の物とは違う高貴な仕様にしたのです。平民にも買えるようにしたいので、中央区域にお店を出したいのです」


 軽く目を伏せ、貴族がテーブルでする礼でお願いをすると、ジークザーロは何とも言えない難しい表情になった後、目頭を指で抑えながら上を向いた。


「··············· 国の為に、我々の為にもそこまで······、分かった。後日正式な書類を寮に届けさせる。開店資金もコチラで···」

「あ、許可だけで構わないのです。開店は出来れば自分の手で······。でなければ、きっと愛着も湧かないと思うのです。わたくしは、与えられた店ではなく、自分の店を持ちたいのです」


 危うく全部を提供される所で止めに入る。開店資金まで出されたら、きっと立地も何も全て決められてしまう。それはもう私の店じゃなくて、王族経営の店に私が雇われ店長をしているだけだ。そうじゃない。私が欲しいのは私の城なのだ。


「·········本当に、入学したばかりなの? 誰か、イリスはフェミリアスを妻にする気は無いかしら? これ以上ない相手が目の前に居るのですよ?」

「母上っ、私は、そのっ」


 急に話しを振られて青くなるイリスフィルド第三王子に、何となく察して助け舟を出す。自らも助ける船を。


「ふふ、王妃様、きっと王子様にも考えているお相手がきっと居るはずですわ。わたくしの様な幼子を宛てがうのは、少しばかり急かと存じます」

「はぁぁ······、ダメかしら? イリスがダメなら、グレゴは第二夫人など······」

「母上、まだ婚約で正式に結ばれても居ないのに、第二夫人とは急ぎ過ぎではありませんか。なにより、急に晩餐会に呼ばれ、急いで王族への対応をし、我々に対してこれ程の利を持ってきた者を、第二夫人? 些か失礼では?」

「そうですよ母上。それに、貴族学校に入っている貴族に対して、外から縁談を持ち掛けるのを禁止しているのは王命ではありませんか」

「············そうだったわね。では卒業したら······」

「······母上、ここは見合いの場でも、結びの宴でも無いのですよ」


 結びの宴とは、貴族間で行われるいわゆる婚活パーティーだ。適齢十八歳ギリギリくらいの淑女と、二十五歳までの男性が集まり結婚相手を探すパーティで、特に女性が必死に相手を探す。


 男性は適齢が三十までとされていて、女性に比べて馬鹿みたいに長い。と言うのも、やはり男尊女卑に近い風習が有るのか、有力者は最悪その辺で見目のいい妾でも探して、子供を設ければどうとでもなるとされている。


 レイオラシスの援護射撃を十分に生かし、他愛ない話しにシフトさせることに成功した私は、三学科初日卒業の話しなどを武器に晩餐会を乗り切った。


 すっかり気に入られた両王妃に、城に泊まって行けと言われたが、大事な最愛の妹がやっと寮に入れたから、出来ればゆっくりしたいと断れた。

 次は是非妹も一緒に来なさいと言われたところで、レイオラシスが私を連れ出してくれた。


「本当に、本当に、本当に申し訳無かった。これだけ急な話しを綺麗に捌いて貰ったのに、結婚だなんだと不躾な話まで······」

「先生が謝る事では無いと存じますわ。話しを逸らすために沢山助けていただきましたもの」

「······本当によく出来た娘だ。トライアスは目立たない領地だったが······」

「ふふ、トライアスは関係無いのですよ。わたくしやリリアの努力の賜物でございますわ」


 寮の入口までエスコートしてもらい、カーテシーで挨拶を最後に別れた。

 自分の部屋の扉を開くと、中にはリリアとメリルしか居らず、ルフィアは部屋に帰り、リーフェは食堂がある中央棟の側仕え寮に居ると。


「お待ちしておりましたわお姉様♡」

「待ってたよー」

「ふふ、三人でゆっくり出来るのは初めてだね。あー会いたかったよ二人ともー」


 私は疲れた心と体を癒すために、二人を抱き締め······ようとして、先にお風呂だなと思った。


「今日一日動きっぱなしだし、お風呂先! 後で思いっきり、思いっきり二人を堪能するの!」


 リリアもメリルも先にお風呂入ったらしく、私は一人でぱぱっと入る。

 エーテルドレス無しで髪も体も乾かして、ネグリジェに急いで袖を通し、二人が居るベッドに突入した。


「うふふー、リリアの匂いだぁ。メリルの匂いもするぅ」

「お姉様、見てくださいませ」

「えへへ、恥ずかしいけど、着てみたの」


 布団を少し捲り、二人の着ている物を見ると、プリシラが着ていたのと似ているスケスケネグリジェだった。どこで買ったそんなモン!?


「ちょ、どうしたのそれ!」

「うふふ、ルフィアさんに貰ったんです。なんでもお姉様の為に買ったけど、側仕えが目を光らせてて見つかるとまずいって」

「あのね、私には少し小さいんだけど、どうせ隠れないから大丈夫って」


 メリルの言う通り、何も隠れてなかった。だって下着付けてないんだもん二人とも。いや私もいま付けてないけど、二人が恋し過ぎて履くの忘れただけだよ。


「お姉様、お約束のご褒美、くださいますか?」

「ふふ、なんか改まると照れるね。まずはお耳かな?」

「フェミちゃん、私も欲しいな······」

「うん、メリルもあげる。しかし二人とも見事に透けてるね。大事な所見えちゃってるよ?」

「お姉様に見て欲しいのです······」

「······ホントは恥ずかしいんだよ?」


 メリルを後ろから抱き締めて、メリルに向かい合わせでリリアを抱き締めてもらい、リリアの耳をハムハムしてメリルを抱き締めた手もモニモニ動かす。

 漏れ始めた甘い吐息を聞きながら、私は二人を楽しみ続けた。




「おはようございます、お姉様♡」


 次の日、ちゃんと初めてを喪ったリリアの顔が目に入り、反対を向くとメリルも居た。

 顔を真っ赤にして布団を被ってしまうメリルが可愛くて、布団に潜って頬にキスをすると、リリアにもせがまれた。


「大丈夫そう? 痛い? ちなみにフェミは痛いよ。まだジンジンする」

「うふふ、この痛みはお姉様の愛情その物ですから」

「······私は、もう大丈夫」

「え、メリルずるい。私は二人に指入れられて大変だったのに」

「ふぇえ、言わないでぇ······」


 思い出して赤くなるメリルがまた布団に潜ると、リリアが慣れるためにもう一回と言うので、デコピンでお仕置き。


「リリア、今日から一緒に学校なんだよ? 今から本当にするの? リーフェもそろそろ来るんだよ?」

「っ!? そうです! リーフェさんが来る前に着替えなきゃっ!」


 側仕えの仕事を思い出したメリルはスケスケのネグリジェで慌て始めたので、良いから取り敢えずお風呂に入ろうと連れていく。


 三人とも、疲れて寝てしまったので血の跡が、ね。未処理なのだ。


「ぐっふぅ!? なっかいってぇ······」


 やる事やってるので、中まで洗おうとするとメチャクチャ痛い。なんだこの痛みウッソだろお前。

 流石にリリアは悶絶していて、メリルは先の通り平気そうだった。嘘じゃん。私が破った膜ってそんなにヤワじゃなかったよ。


 膜って年齢と共に薄くなり、破瓜の時痛みが和らぐらしいのだが、逆に言うと幼いと痛いのだ。だってその年齢で使うもんじゃ無いからね!?


 なのになんで二年しか違わないメリルはあんなに平気そうなんだよぉ······。


「あの、私はフェミちゃんが優しく丁寧にしてくれたから······」

「リリアはあそこで死んでるけど?」

「だって、リリアちゃんはもっと欲しいって無茶したじゃん」

「······あ、そうだね。そっか······」

「ごめんね? 二人で指を······、はぅぅ」

「うん、いいの。うん。二人一緒にって、納得したし。うん」


 可愛い恋人二人も持った私と、無茶をしたリリアの自業自得って事だね。メリルは優しい相手を選んだ勝ち組。全部私なのに!


「お嬢様、リリアライト様······、湯浴みですかね······? ああ、血の跡······」

「リーフェー? 全部察したならちょっと手伝ってー? リリアが痛みで悶えてるのー」


 風呂の外から聞こえて来たリーフェの声に、リリア介抱の援軍を頼む。入ってきたリーフェは微妙な顔をして微笑んでいる。


「おはようございます。お嬢様、私は祝うべきか叱るべきか悩んでいます」

「ふふ、リーフェにだったらどっちでも良いよ。フェミを想っての言葉だって知ってるから」

「では、大人になられましたね。おめでとうございます。それと、もっとゆっくりで良いのですよ。お嬢様はご成長が早すぎます」

「うん。自分でも一昨日思ったよ。三学科卒業とか意味分かんないよね」


 リーフェに手伝ってもらうとあっという間に全てが終わり、メリルはペコペコ謝りながらメイド服に着替えていた。リーフェはそんなメリルも労る様に心配する。


「メリル、アナタは大丈夫なのですか? 痛みは?」

「大丈夫です。フェミリアス様はお優しいので。お嬢様がああなっているのは、フェミリアス様を求め過ぎて無茶をされたのです」

「そうですか。大丈夫なら良いでしょう。お嬢様達が学校の間に指導します」

「はいっ! お願いします!」


 私は足をガクガクさせているリリアを連れて部屋を出る。

 お風呂に入ったのが一番ダメージ高い様で、回復魔法を使うか聞くと断られた。この痛みを消してしまうのは、絶対にダメだと。まぁ分からなくも無いけど、リリアの場合出来たばかりの傷口に私の指を突っ込んで掻き回したんだから、多少回復した方がいいと思う。


 まずはエリプラムの部屋に行き扉をノックして、ピッピとリアスを引き取りに来た。

 リーアは気を利かせて部屋の隅に行っててくれて、昨日は気にせず色々と出来たけど、ピッピとリアスに見せても良いのか分からなくて預けっぱなしだったのだ。


 部屋から出てきたエリプラムも登校の準備が済んでいるらしいので、側仕えに送り出されて一緒に歩き出す。


「ピッピ、自分でお部屋帰れる?」

『扉、あいてる?』

「あー、そっか。もう一回寄ろうか」


 そりゃ扉開けられないよね。フェアリーゼの諜報三羽と違ってガラス抜け機能も付けてないし。

 

 自室に一回寄り、メリルにピッピを返して三人で登校するのであった。



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