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底なしのプリシラ。

若干性的な描写がありました。ました。


 夕方、いい加減手持ち無沙汰なので魔法を解除した。


「満足した?」

「······やぁ、もっとぉ」

「お腹減らない? 夕刻の鐘なったし、ご飯食べに行こ? あぁ、その前にお風呂かな?」


 透け透けネグリジェのまま幸せそうにぐちゃぐちゃになっているプリシラに、洗浄の為の水魔法を使ってあげてから抱えて運んで、お風呂に放り込んだ。


「ピー!」


 プリシラの家に戻ってから好きに放していたリーアがお風呂に飛んでいくのを見届けて、荷物の整理をする。

 ドレスは今のを軽く洗浄すればいいや。入浴セットも出して、ネグリジェとタオルと······。


 一日分を革袋から取り出して、プリシラの部屋のベッド横のチェストに置かせて貰う。


 ファクトリーを開いて、プリシラが正気に戻ってお風呂から出てくるまで設計図を引いて遊ぶ。

 そもそも設計するのが趣味だからね。


「あ、おかえりー。どうだった?」

「·········フェミちゃん、ここで暮らしましょ?」


 まだ正気なのか怪しい目をしているプリシラにもちろん、ハッキリ断って着替えさせる。


「魔法って、凄いのね······。あんなの初めてよ」

「まぁ、馬鹿みたいに魔力使ったしね。娯楽に使っていい魔力量じゃ無かったよ」

「それより、今更だけどどうしたの?」

「ふふ、貴族学校の寮にまだ部屋が出来てなかったの。明日また様子を見てくる。今日も泊まっていい?」

「もちろんよ。······夜はあの魔法、使ってくれる?」

「そんなに気に入ったの? フェミを今度こそ寝かせてくれるなら良いけど」


 そう言えば男は要らないとか言ってたしなぁ。でもプリシラも使える様に魔道具化するには魔力量の問題があって無理そうだし、しばらくはここぞって時の御褒美かな?


 魔法の事もあり、すっかり従順になっちゃったお姉さんプリシラと適当なお店を探す。リーアはもう定位置になった私の胸元だ。ドレスの装飾でもこもこしているから分かりづらくて丁度いいのだ。

 プリシラが夕食を作ると言い張ったが、この時間までお楽しみしてたので食材の買い出しをして無いのだ。


「あ、あれギリックじゃない?」

「本当ね。でもわざわざ声かける必要ないわ。行きましょ」


 中央広場の時計台にギリックが見えたけど、プリシラは少し嫌そうにして道を変える提案をしてきた。


 ごめんねギリック。プリシラさん落としちゃったよ。


「せっかく女の子だけなんですもの。食後の甘味がおいしい場所に行きましょ」

「······いいねぇ」


 甘味と聞いて頬が緩む。へにゃっと笑うと「初めて歳相応に見えたわ」と笑われた。


 プリシラに連れていかれたお店は、絶対にプリシラの部屋はここを参考にしたなって分かる白とピンクが踊るファンシーなお店で、周りがレンガやモルタルそのままって建物が多い分クッソ浮いている。それはもう浮いている。


 ただ、ファンシーな店先は女性の心に何か訴えるのか、客入りは良いように見えた。


「ここ? 甘味は良いけど夕食は食べれるの?」

「大丈夫よ。甘味を美味しく食べれるように、塩気のある食事を出すお店だから」


 ふむ。まぁそう言うなら良いかな。ダメなら帰りに露店で串焼きでも買おう。


「あらプリシラじゃない。そう言えば休み被ってたわね」

「リュイッカ、アナタ昨日もここ来たんじゃないの? 大丈夫?」

「······初めまして、フェミリアスです」

「はい初めまして。プリシラの娘さんかしら?」


 昨日もこんなやり取りしたなぁと思い、プリシラが働いている店と似ている内装を見ながら中に入ると、プリシラの同僚リュイッカが三人掛けほどのテーブルで何かを食べていた。


「はい。プリシラさんとギリックの娘です」

「ちょ!? 冗談でも止めて!?」

「ぶはっ、止めてよ、吹き出しちゃうじゃないっ」


 特に断りもなく自然と相席して、私がプリシラと一緒に居る理由や経緯、今までの流れをささっと語った。

 昨日の夜にプリシラにイタズラされた話しの辺りで、リュイッカが呆れた顔になった。


「プリシラあんた嘘でしょ。こんな小さい女の子食べるとか、男に飢えすぎて壊れたの?」

「このまま話してれば分かるけど、小さい子って感じしないのよ。加減間違えたのは認める」

「いや論点そこじゃ無いよ。加減どうこうじゃ無くてフェミをモグモグした事が問題なんだよ」

「······確かに、食われたにしてはサッパリした反応ね? この子絶倫なのに」

「うん! だってまだ膜は無事!」

「「ぶはっ···」」


 私が力強く重要な事を言うと、二人が吹き出した。リュイッカが「そう言う問題じゃ無いわよ」とお腹を抱えている。


 そろそろご飯を食べようと、慣れていそうな二人にメニューを聞くと面白いシステムを説明された。


 ここは、調理された材料が単品で値段設定されていて、好きな食材を好きなだけ頼んで自分の皿を注文出来るのだとか。

 例えばパスタとミートソースが別々になっていて、二つ注文すると一つの料理になる。


 元々は甘味の注文をトッピング形式で提供していたのが発展したらしい。そしてその料理の方の羊皮紙に書かれたメニューを見ると、なんと絵付。

 ここまでサービスを意識しているお店はこの世界で初めて見た。もしかして私と同じ転生した人がやってんじゃないかと思うほどだ。


 更に更に更に、この王都でここだけしか無いらしい、私がずっと求めていたソウルフードがあった。


「米!」


 神かよ! 神かよ! 神かよぉ!


「コメ? テルイのこと?」

「テルイって言うの? フェミこれがいい! 絶対にコレ!」

「初めて来てテルイ頼む人は珍しいわね」


 料理の内容をいちいち確認して、私はある程度料理方法も指定出来ると知り、牛肉と野菜の煮物を、丼代わりの深い皿でオンザライス注文する。ちなみに汁なしで。


 ジャガイモっぽいのと大根的な野菜と煮込まれているが、何ちゃって牛丼だ。


「面白い注文をするのね?」

「ふふーん。絶対美味しいよ」


 自信満々の私に興味を持って、プリシラも同じ様に注文をしてた。それを怪訝な顔で見ているリュイッカは目の前にあるシリアルっぽい奴の蜂蜜掛けを食べている。


「それも、牛乳入れると美味しいと思うよ」

「·········えぇ···。このサクサクが美味しいんじゃないの」

「ふふ、興味が湧いたら試してみてよ」


 思い出してリーアをテーブルに出すと、珍しく忘れなかったな!って顔してる。このやろ。


「あら、可愛い鳥さんね。飼い鳥?」

「魔道具だよ。フェミが作ったの。ほらリーア、挨拶しなさい」


 元気よく鳴いて翼を片方あげるリーアの頭をグリグリ撫でてあげる。

 料理が来るまで店内を見回すと、結構貴族の客も居るようだ。もちろん女性が殆どだけど、フェミより大きいくらいの子供の貴族カップルも一緒にデザートをつついていた。


「中央区域って、貴族と平民の距離が近いね」

「まぁね。王が平民を大事にする方針だし、ぶっちゃけ貴族しか居ない貴族区域より中央区域の方がお店が豊富なのよ」

「だからプリシラさんもリュイッカさんも、フェミの事あんまり驚かないんだね。他の街だと皆青くなってたもん」

「あんまり関わり会いにはならないけど、お客としてはよく見るからね」


 それから料理が運ばれてきて、念願の米が、お米が目の前に!


「うふふ。いただきます」


 流石に箸は無いので、スプーンで食べる。

 久しぶりの味に涙が出そうになる。懐かしい味を噛み締めていると、同じ料理を頼んだプリシラが目を見開いてた。


「パンの代わりに食べるものって聞いていたけど、こうやって一度に食べると全然変わるのね」

「ふふ、パンだって料理を挟んだりするじゃない。それと一緒だよ」

「なるほどねー」


 店内を見回しながら牛丼をもりもり食べていると、ふと少し離れた席にいる貴族の女の子と目が合った。

 リリアと同じくらいの長さの綺麗な青い髪で、淡い水色のカクテルドレスを着ている。

 目は少しつり目気味だが、眉が穏やかな曲線を描いていて不思議と優しい顔付きに見えた。


「あり、こっち来た。ごめん二人共、なんか不味ったかもしれない」


 一緒に居た側仕えを伴って、席を立ち上がりコチラにその子が歩いて来るのが見える。

 その間に牛丼をかきこみ、側を歩いていたウェイターに皿を下げさせた。丁度そのタイミングで女の子が私の座るテーブルにたどり着いた。


「ごきげんよう。失礼ですが、フェミリアス様でしょうか?」

「はい。わたくしは確かにフェミリアスですが、失礼ながらどなた様でしょう? わたくし、貴族学校に合わせて城を出て王都に着いたばかりで、自領の貴族さえまだ良く知らない有様でして」

「これは失礼を。わたくしはヒュリオース領主の娘、貴族学校二年のエリプラム・セッテルハーツと申します。先ほど王都に着きました領地の者が、フェミリアス様に大変お世話になったとお聞きしまして、挨拶をしなければと思いましたの」


 どうやらシェネルートが私の事を報告したみたいで、黒髪の幼い貴族という事で私だと思って声を掛けたらしい。

 上位領地の領主一族にいい覚えられ方をしているのは嬉しいが、こんな場所で挨拶されても手に余ってしまう。


「お貴族様。立ち話もなんですから、良ければ席をどうぞ。私どもは他に移りますので」

「お気遣い感謝します。それと、ご歓談を止めてしまいお詫び申し上げますわ」

「勿体ないお言葉です」


 プリシラとリュイッカがウェイターにテーブルの料理を他に運ばせ席を開けると、エリプラムが対面に着席した。


「我が領地の者を助けて頂き、改めてお礼を」

「いえ、お気になさらないで下さいませ。領主の血を引くものとして、恥ずかしくない対応をしただけですわ」


 注文していないのに、私の前にも果実水が運ばれてきて、エリプラムが勧めてきた。どうやら側仕えが注文してくれた様だ。


「シェネルート様の事だとは思いますが、馬車の車軸を魔法で直しただけなので、大した事をしておりませんし、お礼でしたら御本人から既に頂きましたので、エリプラム様が挨拶に来ていただいただけでもう充分ですわ」

「ご謙遜をなさないで下さいまし。シェネルートは言っていました。それは見事な彫金魔法で壊れる前より綺麗にして貰ったと。自分に掛けられる言葉も優しく寛容で、まるで女神に出会ったと」


 そこまで褒めてるのかよシェネルートぉ! 照れるじゃないかぁ!


「それこそ言い過ぎですわ。街道の往来で困っている方を助けるだけで女神なら、この国には何柱の神がいらっしゃるか分かりませんわ」

「それだけじゃなく、見事な魔道具を数多く持ち、それら全てフェミリアス様が作られた物だとお聞きしております。貴族学校に入り魔道具学を学んだ訳でも無いのに、緻密で画期的な魔道具に心奪われたと」

「それはこの子の事でしょうか?」


 テーブルを叩くと、どさくさでプリシラの肩に乗って逃げていたリーアが飛んで戻ってきた。お前主人を置いて逃げるなよ。いやその顔止めろよ。しゃぁねぇなみたいな顔すんな。


「あら、あらあらあら。可愛らしい小鳥ですわ。リティットかしら?」

「ええ、リティットを模して作った魔道具ですわ。自分で考え、覚え、少しずつ育っていく魔道具で、人と共に居ることを目的にした愛玩用の魔道具なのです」

「あの、少し触らせて頂けないかしら? わたくし、可愛らしい物に目が無くて······」

「構いませんわ。ただ、少しばかり無礼を働くかも知れないことだけはお許し頂けますか? なにぶん産まれたばかりで、知らない事も多い子なのです」

「もちろんですわ。この可愛さを前に、多少の無礼がなんだと言うのでしょう」


 肩のリーアに小声で、「分かってるよね?」とセクハラしないように釘を指し、エリプラムの肩に飛ばした。


 心底嬉しそうな黄色い声を出して、リーアに恐る恐る触れるエリプラムは、ゲーム中に良く使っていたダグラスファイバーと言う防弾防刃繊維を使って作り上げた、リーアのふわふわ羽毛にご満悦だ。


「あの、あの、この子が遠方の方と話せる魔道具なのですか?」

「あら、シェネルート様はお喋りでいらっしゃるのですね。そのリティットは別のリティットと魔法的な繋がりを作りあげる機能も確かに付けてありますわ」

「不躾ながら、その様子を拝見する事は出来ないでしょうか?」

「残念ながら、お話しをする相手の都合もあるので」

「あ、そうですわね。何の用も無くわたくしの都合では、お相手に失礼ですものね」


 なんでそんなに残念そうなのか分からないけど、何度もこう人目のある場所で使いたい機能じゃないし、それこそリリアにコールして、入浴中でも相手が私だから警戒もせずにコールを受け取る可能性もある。

 私は大事な大事な可愛い最愛の妹リリアの入浴ラジオなんて背徳な放送はしたくない。この店には女性がほとんどだけど、少しは男性も居るのだから。


「シェネルートから、遠方とお話しする時のリティットの様子がとても可愛かったと聞きまして、拝見して見たかったのです······」


 ああ、そう言う事だったのか。確かにコール中のこの子達は、大人しい時もあるけど、基本ちょっと小躍りする。

 シェネルートの前でコールを受けた時なんかステップを踏んで居たくらいだし。


「ふふ、そう言う事でしたら。リーア、出来るわね?」

「ピュァ! ······リリリッ♪ リリリッ♪」

「······まぁ。まぁまぁまぁ♡」


 元気に返事をしたリーアがテーブルのエリプラム前に飛び降り、エリプラムの方を向いてコール音を鳴きながら踊り始めた。本人も楽しいのだろうかノリノリだ。


「リリリッ♪ ピピピッ♪ リリリッ♪ チチチッ♪」


 しまいにはアレンジ入れ始めたぞ。女の子の要望にはサービスしちゃう男の子かよ。絶対リーアはオスだよね。


「あらぁ♡ なんて可愛らしいのかしら······」


 最後にその場でテテテと一周歩き翼を広げて一礼。さらに頬を染めて楽しくして仕方が無い様子のエリプラムに片翼を差し出して握手を求めた。この世界に握手の文化は無くはないらしく、意味が通じたエリプラムが黄色い声をあげて、ふわふわの翼を摘んで握手が成立した。


「楽しんで頂けましたか?」

「ええ、夢心地でしたわ。リーアちゃんだったかしら? ありがとう存じますわ」


 エリプラムが指でリーアの頭を撫でると、ピッと小さく鳴いて私の肩に戻ってきた。その顔はまさにドヤ顔だった。


「ピィ?」


 いや、鳴き声までドヤァ?的な含み持たせんな。ちょっと面白いでしょうが。


 目がハートになっているエリプラムがリーアを見詰めていると、夜の鐘が聞こえて来てエリプラムの顔が曇る。


「······楽しい時間とは、いつも過ぎ去るのが早くございますわね。寮に戻る時間になってしまいましたわ······」

「エリプラム様。わたくし、王都にいる間に魔道具を売るお店を持つつもりなのです。もちろんリティットも」

「·········あの、それはつまり?」

「ええ、いつになると確約は出来ないのですが、いつかエリプラム様の元にもリティットが舞い降りると思いますわ。お買い上げ頂ければですが」

「まぁまぁまぁまぁまぁ! それは本当なのですか? 是非、是非その時はお知らせ頂きたく存じます! 必ず参りますわ」


 エリプラムからのお礼と言うより、リーアのワンマンライブを終えて、いつか魔道具屋を開くと約束して急なお茶会が終わった。

 それを待っていたように、食べ終わって飲み物だけになった食器を持って戻ってきたプリシラとリュイッカが席に座った。


「おかえり」

「ええ、ただいま。フェミちゃん本当に貴族なのね? いつもと違う態度で少しドキドキしちゃったわ」

「それより、この子の踊り可愛かったわぁ。リーアちゃんて言うの? お姉さんの子にならない?」

「プリシラさんそれ何回聞いたか分からないよ。ことある事にフェミが貴族なの聞くの止めよ? リュイッカさんもリーアは諦めて? 話し聞いてたと思うけど、その内量産して売りに出すからさ」


 ちなみにお店を出したいのはマジだ。私は元々自分の作った装備を売り捌いて名を売ったハイ・プレイヤーなのだし、コッチでも似たような事をしたくて計画していた。


 だから、だからこそ照明魔道具の組み方にため息が出るのだ。アレがあれば平民でも手軽に手を出せる魔道具が大量に作り出せる。

 賢者の石を使うのは不味いし、量産は量産用の機械を作って工場を作り、材料を普通に仕入れて経営したいので、私のファクトリー機能が前提の賢者の石は素材として使いたくない。


 リティットの量産は、マナを吸収する素材が確認出来ないし、メイン回路に使うエーテルコアの材料であるエーテル結晶も見つかって無い。ファイバーの代わりも無いので現状量産は不可能だけど、目玉商品にするつもりなので絶対に素材を見付けて量産化する。


 マナ吸収は照明魔道具の魔力循環システムさえ解き明かせれば代用出来るので、エーテル結晶とファイバーの代わりだけでも見付けたい。


「支払いは全部エリプラム様がしてくれたみたいだし、出よっか?」

「そうね。早くフェミちゃんの魔法で楽しみたいしね」

「·········本当にどれだけ気に入ったの」

「魔法? なんの事?」


 楽しそうなプリシラにリュイッカが首を傾げる。それにプリシラがこそこそと耳打ちすると、リュイッカがにっこり笑ってプリシラを叩いた。


「あんた本当に何してるのよ。こんな小さい女の子に要求する事じゃ無いでしょうが」

「だってぇ、凄いのよ? 私もうフェミちゃんが居たら男なんて要らないって思ったもの」

「はぁ!? アンタが男要らないって!? え、そんなに凄いの?」

「待って待って待って。リュイッカさん興味持たないでよ。フェミ今日こそは大人しく安らかに寝たいんだってば」


 リュイッカが言うには、プリシラが可愛いのに男が居ない理由は絶倫だかららしい。マジかよ。

 そのプリシラをして満足させる私の魔法に興味を抱かないのは、少なくともプリシラを知る女性には無理だと。


 なんやかんやあって、私の睡眠を邪魔しないと言う約束でリュイッカも触手の餌食になることになった。つまりお泊まり。


「ほんっっっっとうに寝るからね?」

「·········こんなに念を押されるって、プリシラあんた何したのよ」

「えっと、気絶するまでぺろぺろ?」

「馬鹿じゃないの? こんな女の子を気絶するまで? 性別違ったらアンタを兵士に突き出してるわよ?」

「本当だよ。フェミ下は本当にだめって言ったのに、プリシラさん楽しそうにイジワルするの」

「·········フェミちゃん、次は私の所に来な? プリシラの家ほど綺麗じゃないけど、寝かせてはあげるから」

「うん。昨日言われたかった」


 ややあってプリシラの家に三人で行くと、まずはお風呂になってリュイッカの髪も手入れして上げた。

 リュイッカは髪を梳かれている間にリーアのワンマンライブを見て、終わったら髪がトゥルントゥルンになっていてずっと喜んでいた。

 お風呂を出ると体をささっと拭いて着替えて、ネックレスを付けてエーテルドレスを起動した。


「風よ」


 風の魔法で髪を乾かし、二人と私の髪をサラッサラに仕上げると、待ちきれないプリシラが私を抱き抱えてベッドに連れていった。


「はやくぅ」

「·········なんだろう。気に入られすぎて、フェミが貴族学校の寮に入ったらプリシラさんが死ぬんじゃ無いかって心配になってきたよ」


 遅れてやって来たリュイッカさんを待って、三人でベッドに潜り込む。セミダブルに三人は流石にクッソ狭い。

 私は壁側の端に陣取り、念入りに準備をした。


「ベッドがびっしょりだとフェミ嫌だから、ちょっと工夫するね」


 触手魔法はベッドに染み込まない様に組んであるけど、二人から出てくる体液は範疇外なのである。さっきは結構気になっていた。


 触手魔法に二人から出た体液を、ベッドの上に零れた物も探して吸収する機能を付けたところで、待ち切れないプリシラとドキドキして待っているリュイッカに魔法を使う。


「長すぎるとリュイッカさん死にそうだし、短いとプリシラさんが物足りないと思うから、鐘二つ分ね。終わったら勝手に魔法は消えるから、二人も体の手入れをして寝てね。フェミはもう寝るから。プリシラさんはフェミに手を出したら後で酷いからね」


 嬌声をあげている二人にそう言うと、辛うじて聞いてるみたいなので寝に入る。ちょっと煩いし、心が二人に混ざりたがっているけど私は寝る。寝る。寝るんだよ。変な気分じゃないもん!



 悶々としつつも何とか寝て、朝起きるとぐっすり寝ている二人が見えた。色々あったとは分からない綺麗な状態で寝ているので、ちゃんと後始末もしたんだなと安心した。


 ただ、部屋の匂いがかなり濃く、体が少し火照って下腹部がキュンキュンする。無意識に伸びる手を止めて、指を鳴らして魔法で消臭を試みた。


「ぐぬぅ、大人のお姉さんと一緒に居ると体に悪いよ」


 リリアもメリルちゃんもイタズラしてても耐えられた。そう言う欲を満たすより、ただただ可愛い子を愛でたい気持ちが強かったからだと思う。

 だけどこの二人は肉欲に引っ張られそうになる。せめて体がもう少し成長するまで我慢したい。成熟するまでとは言わないから、せめて八歳は早すぎる。


「んー、ぅん。おはよぅ······」

「いや、おはようって言うなら起きようよ。寝直さないでよ」

「ぅうん······。プリシラァ······、動けないわよぉ······」


 二人共起きたけど、リュイッカさんは足腰が立たないらしい。鐘二つ分はどうやらプリシラに寄りすぎた設定だったか。


「リュイッカさんには長過ぎた見たいだね。ごめんね?」

「ぅぅう、そう冷静に言われると恥ずかしいわ。でも、うん。プリシラの言う通りだったわね。髪の毛の手入れも、魔法も凄いし、可愛いし、権力もお金も持ってて優しいし、フェミちゃん居たらそこらの男なんて要らないわね」


 腕を顔に乗っけて呟くリュイッカの隣り、プリシラは朝からもう一回とか言い始めたので無視して顔を洗いに行く。

 台所には井戸から照明魔道具と同じシステムで水を組み上げる水道が付いていて、持ってきた椅子に乗って壁に付いたレバーを倒すと、隣にある蛇口から水が出た。


「くっそ、この魔道具の根幹が有能過ぎる!」


 いい事なのに技術者としては負けた思いで顔を洗って部屋に戻る。ベッドの中でモゾモゾして甘い声を出しているプリシラを無視したまま着替え始める。


「······フェミちゃん、盛ってるコイツは置いてご飯食べに行きましょうか」

「うん。フェミ本当にリュイッカさんの家に泊まりたかったよ。絶対平和に目覚めれた」

「ぁあん、待ってよぉ」


 栗色のカクテルドレスを選んだところで、プリシラの髪色と同じって何か今は嫌だなと思って、メリルちゃんに貸した気合いの入ったピンク色のドレスを選んで着る。


 手が止まらないのか、まだモゾモゾしているプリシラを跨いでベッドから出たリュイッカが顔を洗って着替えるのを待って居ると、やっと事が終わってベッドから出てきたプリシラの手を水魔法で洗った。


「今更だけど、寝起きとはいえ人前でシちゃうの?」

「だってぇ、昨日は足りなかったんだもの」

「鐘二つ分が足りないんだ······」


 そりゃ男が恐れて逃げる訳だよ。ギリックも事実を知ったら逃げるんじゃないかな?


 六時間ぶっ通しで足りないって、物理的に男死にそうだよ。


 

 あれ? フェミもっと長いことプリシラに食べられて無かったっけ?



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