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王都グライバル。

性的な描写があります。


 宿について荷台から皮袋を引っ張り出して部屋に入ると、すぐに着替える。

 メリルちゃんにもネグリジェを貸してあげて、それ以外の服は魔法で洗濯して乾かして、部屋にあるテーブルの上に畳んで置いた。


「寝る時の服も可愛いね!」

「少し余分にあるし、何着かあげようか?」

「そ、それは流石にダメだと思う。怒られちゃうよ」


 桃色のネグリジェを着たメリルちゃんが安いベッドの上で楽しそうに笑っている。大人しくしていたリーアがそこに飛んでいき、なんとメリルちゃんの胸元に入り込んだ。


 貴っ様ぁ!? 私の邪魔はした癖に自分は楽しむのか!?


「ぁん、リーアちゃんだめだよぅ。くすぐったいよ」

「ピュィー······」

「ぁ、やん。だめだってばぁ」

「リーアの馬鹿! ファミもやるのー!」


 私も我慢出来ずにベッドに入り、メリルちゃんに抱き着いてリーアに混ざった。

 背中の開いたネグリジェに後ろから手を入れて、リーアの羽が擦っている大事な所を一緒に触る。


「あ、ぁん、やぁ、だめだよ、だめぇ」


 寝転んでメリルちゃんの柔らかい胸で遊んでいると、リーアが出てきて私の胸に移った。


「あ、馬鹿リーア、ん、だめ」

「フェミちゃんも、やん、ぁ、あ、だめだよぅ···!」


 リーアはやはり確信犯だったのか、お風呂場で学習したのか私の胸も弄り始め、私は負けないようにメリルちゃんを弄るのだった。

 メリルちゃんの声が艶めかしくなった後、私の体も限界で、急に体に電気が走る様に全身が強ばる。


「くぅ! リーアのばかぁ! 初めてが鳥とかもう、誰に怒ればいいのよ!」

「はぁ、はぁ、フェミちゃん、なにこれ······、ふわふわするの」


 勝ち誇ったリーアのドヤ顔を身ながら、堕ちちゃったメリルちゃんの柔らかい胸を最後まで弄った。


「あれ、メリルちゃんのお父さんにこう言うの無しって言ってたのに、リーアのせいで約束破っちゃったよ?」

「ピィ」

「ぴぃじゃないよ」

「ふぁあ、フェミちゃん、もっかい······」

「ダメダメ! これ以上は本当に怒られる。メリルちゃんも内緒だよ?」

「内緒にするからぁ、もっかぃ······」


 前世なら十歳くらいで一人遊び覚える子もいるし、胸くらいなら良いのかな? いや私が八歳だし、アウト寄りのアウトじゃね?


「んー。いっか。寝る前にしてあげるから、今はだーめ」

「分かったぁ、んふふー」


 何でだろ。凄くマズイフラグを立てまくっている気がしてならない。今日はもう寝てしまいたいが、まだリリアに連絡する約束があった。


「リーア、後でお仕置きね? コールリアス」

「ピュイ。リリリッ♪ リリリッ♪」

「ん、妹様?」

「うん。リリアに連絡するって言ったからね」

『お姉様ぁ♡』

「はやっ、ラグ考えるとまだコールもほぼして無いはずなのに」


 向こうのリアスまでマナの回路を組み上げて共鳴させるタイムラグを考えると、なった瞬間にコールリーアと叫んだんじゃ無いだろうか。本当に今か今かと待っていたらしい。


「リリア、今はお友達も居るの。紹介していい?」

『はい。もちろ······、殿方では無いのですよね?』

「ふふ、違うよ。メリルちゃん」

「あ、あの、メリルと言います! えと、平民です。よろしくお願いします!」

『あら、平民の方なのですか? お姉様らしいですね。リリアはリリアライト・アブソリュートと申します。お姉様の妹ですわ』

「あの、フェミちゃんに魔道具を見せてもらって、リリアちゃ······、あ、ごめんなさい!」

『大丈夫です。お姉様のご友人でしたら、平民か貴族かなど、どうでも良いのです。リリアとお呼びくださいませ』


 流石私の妹だよ。優しいよね。

 リリアの頭を撫でる代わりに、リーアの頭を撫でておく。代わりにするって言ったしね。


 ······あれ? そうすると、私はさっきリリアに攻められて果てたのかな? やっばい何それ萌える。


「えと、リリアちゃんの事を、フェミちゃんに見せてもらってね、すっごく可愛かったの! あとお耳が可愛くてね、ドレスも綺麗でね······!」

『ぁう、恥ずかしいですわ······。お姉様はなんでリリアの姿を?』

「あのね、大好きな妹だよって見せてくれたの」

『はぅぅぅ♡ 大好き······、えへへー』

「リリア、大丈夫? 辛そうな声がするけど······」


 急に部屋の中が姦しくなるけど、嫌じゃない。

 可愛い友達と大好きな妹と、寝る前にお喋り。実に年相応じゃないかな。さっきのピンク色の出来事はノーカンで。


「お姉様のお声が聞けて、リリアはとても嬉しいのです」

「ふふ、フェミもリリアの声が聞けて嬉しいよ。暫く会えないけど、我慢してね?」

「リリアちゃんはフェミちゃんが大好きなんだねぇ」

『大好きと言うか、その、あの、あ、愛して、いますわ······』

「えへへ、フェミもリリアを愛してるよ? 最愛の妹だもん」

「仲良しだー!」


 腕輪端末に付けた腕時計機能を見ると、二十六時を指していた。

 朝六時、早朝の鐘で起きるとしても、二十八時に寝れば八時間は寝れるから、後二時間はみんなでイチャイチャできるね。


「それでね、お風呂でフェミちゃんに出会ったの!」

『あぅ、羨ましいです······。リリアもお姉様とお風呂に······』

「帰ったら入ろうね。半年は我慢だよ」

『うぅ、長いですぅ』

「そう言えば、フェミちゃんは何しにこの街に来たの?」

「あ、言ってなかったっけ。貴族は八歳で中央に行って、お勉強しないといけないの。明日には街を出発しなきゃ」

「え!? フェミちゃん明日居なくなっちゃうの!?」


 楽しそうだったメリルちゃんは、急に悲しそうな顔になって涙目になってしまう。


「やだよー! もう少し居てよー! せっかくお友達になれたのにー!」

「ふふ、ごめんね。早目に行って中央を見て回らないと不安なんだ。六年もそこで暮らさないといけないからさ」

「うぅぅ、リリアちゃんの気持ちが分かったよー······」

『メリルさん、リリアはもっと寂しいのですよ。何年もリリアを大事にして下さったお姉様が、遠くに······。うぅぅ』

「待って待って、二人して泣かないでよ! イジワルしたくて中央に行くわけじゃ無いんだから!」

『でも······』

「だってぇ······」

『「ねぇ······?」』

「もう仲良しか! 息ぴったりだね二人とも!?」


 漫才のような掛け合いで、可笑しくなって三人で笑い出す。二時間みっちり話して、そろそろ寝ようと告げる。

 リーアの向こうのリリアはまたグズり始めたので、次私がコールするまで我慢できたら、次会った時に御褒美を好きなだけあげると約束した。

 もちろんお耳ハムハムだ。


「じゃ、元気でね」

『はい、お姉様もお元気で。お約束は絶対ですよ?』

「リリアちゃんまたねー?」


 コールアウトして、元に戻ったリーアを撫でる。チチチッと嬉しそうに鳴くリーアから指を離してベッドに潜る。


「フェミちゃん。リリアちゃんにあげる御褒美ってなに?」

「うーんと、今からメリルちゃんにしてあげる事に似てるかな?」

「·········妹様にもしてるの? フェミちゃん小さいのに、やらしいんだね」

「あはは、メリルちゃんだってもう一回って言ったのに、そんな事言うならこのまま寝ちゃおっと」

「あ、ごめんなさいごめんなさい、まって寝ないでぇ!」


 恥ずかしい事をしているのは自覚していたメリルちゃんに、だけど私だけそう言われるのはちょっと納得出来なくてイジワルすると、メリルちゃんが私のネグリジェに手を入れてきた。


「えと、こうかな?」

「にゃ、だめメリルちゃ、ぁん、や、ばかぁ!」

「えへへ、ホントだ。楽しいね」


 自分の体で覚えたメリルちゃんの仕返しを受けて、頑張って耐えたけど果ててしまった。

 恥ずかしくなってメリルちゃんの後ろから抱き着いて、要望通りに攻めてあげた。


「フェミちゃん、あのね、ん。あの、下がムズムズするの······」

「そこは本当にダーメ。大人になったらか、自分でね」


 手を下腹部でもにょもにょしているメリルちゃんを、疲れ果てて眠るまで悦ばせてあげた後、眠ったメリルちゃんと自分を軽く魔法で綺麗にして目を閉じた。


 うん、下は本当にだめだと思う。それは超えちゃダメな一線だと思うよ。よく耐えた私。




 翌朝、目を覚ましたらメリルちゃんが起きていて、目が合うと顔を真っ赤にして布団を被ってしまった。


「メリルちゃん? どしたの?」

「は、はずかしぃ」

「あはは、内緒だからね?」

「うん、でも、大人になったら、その、下も·········、ね?」

「そんなに気に入っちゃったの?」

「···············うん」


 うーん、大人になって責任をお互い取れる様になったら、良いのかな? そう言う遊びくらい。

 今の状態だと精神年齢アラサー超えてアラフォーに迫る私が幼女を誑かしてるだけだから、正直罪悪感が半端ない。

 うん、大人になったら考えるよ。まぁこんなに美人なメリルちゃんなら、その頃は恋人くらい居るだろうし、深く考えないでおこうか。


 二人とも着替える途中、やっぱり気になってメリルちゃんに普段着を一着あげた。


「ドレスじゃなくて、普通のワンピースなら良いでしょ。あと髪飾りと首飾りもあげる」

「ふえぇぇ、こんなに貰ったら怒られちゃうよ!」

「大丈夫。可愛いメリルちゃんをより可愛くする為にフェミが無理やり渡したって、説明してあげる」


 昨日話した感覚だと、お父さんは娘可愛い路線で攻めれば落ちそうだ。同じくらい、娘さん堕ちましたって言ったら貴族だろうと殴りかかって来そうで怖い。


 カクテルドレス風のワンピースに、ネックレスは豪奢すぎるから外させて、リボンを付けて完成。


「お家に着くまでこれ着てて。鍵返して来ちゃうから」

「ね、昨日もだったけど、フェミちゃんは寒くないの? 私は大丈夫だよ?」

「ふふふー、フェミは魔道具あるから大丈夫なんだなー」


 荷物を持って部屋を見渡し、忘れ物を確認。

 テーブルの上で金色の鳥が寝てるけど大丈夫、忘れ物は無し。


「よし、行こう」

「······。良いけど、リーアちゃん私が貰っちゃうよ? リリアちゃんと毎日お喋りするの」

「うぐ、リリア代わりの子だからだめ」

「じゃぁリリアちゃんを置いていこうとしたの?」

「ぐぬぅ!?」


 反論出来なくてリーアを胸元に入れる。また弄ってきたら強めに怒る。さすがにポケットに入れるのは怖いし、生き物に対する扱いじゃ無いと思うんだよね。生き物じゃないんだけどさ。


 二人で階段を降りて、私はカウンターに寄ってお姉さんに鍵を返す。

 

「ねぇ、昨日は二人でなにしてたんだい?」

「ん、楽しい事だよ?」


 どうやら昨日の艶かしい声を聞かれたらしい。思えばこんな安宿、壁なんて音を遮ってくれる訳が無かった。

 シェネルートにも聞かれている可能性があるから、早目に移動しよう。エンカウントしたら流石に恥ずかしい。


 二人で宿を出て、ビークルの荷台に荷物を積んだ後メリルちゃんを上に座らせる。

 このまま中央まで連れ去ってしまおうか一瞬悪魔に囁かれたけど、だめだめ。幼女が幼女誘拐とかもう意味が分からない。


 ビークルに乗ってエンジンをスタートしてタイヤのロックを解除。メリルちゃんを気にしながらゆっくり走り出す。

 

「ふぇえ、凄い凄い! 動いてるよ!」

「ふふ、もっとはやく動かせるんだよ。ここでやると人にぶつかっちゃうけどね」


 人が増えてきた大通りをビークルでゆっくり走り、メリルちゃんの家まで向かう。

 子供サイズのビックスクーターなので、小道でもギリ通れたので家の前までビークルで来る事が出来た。


「おはよーございます。娘さんを返しに来ましたよー」


 玄関をコンコン叩くと、昨日見た弟くんが開けてくれた。


「かーちゃ、ねーちゃとおねーちゃきたよ」

「あらあら、おかえりメリル。お貴族様も、娘をどうも」


 お母さんがツギハギのエプロンで手を拭きながら玄関まで出てきて、その後ろからお父さんも出てきた。


「ん、メリル。昨日だけの約束なんだろう? なんでまだいい服着てんだ?」

「うふふ、余りにもメリルちゃんが可愛いから、押し付けちゃったんですよー。服だってより似合う人に着られた方が幸せですしね。リボンもフェミが可愛過ぎるメリルちゃんの為だけに作った物だから、このまま貰ってくださいな」

「へっへっへ! そうだろうそうだろう! いや本当に可愛いなうちの娘は」

「本当に可愛いですよ。将来はきっと言い寄る男が多いと思うので、フェミのリボンと首飾りを見せて、『コレよりスゲェ物を娘に贈れねぇ男に、娘はやらん!』って叩き出してくださいね!」

「おう! 悪いな嬢ちゃん、任せときな!」

「いえいえ、実際この程度の装飾も贈れない男には勿体ないですからね。メリルちゃん可愛い」

「うむ。うちの娘可愛い」

「もう! フェミちゃんもお父さんも止めてよ!」


 速攻でお父さんを攻略して、めでたくプレゼントを認めてくれた。

 最後にもう一個、メリルちゃんに贈り物。


「メリルちゃん、これもあげる」

「木箱? もういっぱい貰ったし、大丈夫なのに」


 メリルちゃんが箱を開けると、中には綿の中でメリルちゃんの為のリティットが眠っていた。

 ただ、メリルちゃんは魔力が殆ど無いから、起動用に魔力を流すための小さな杖付きだ。

 杖にはリティットに使っている周りのマナを集めて貯める機能が付いていて、リティット起動分ピッタリの魔力を貯めれる上に、使用者の魔力に染まる設計だ。これでリティットはメリルちゃんをマスターだと認識する。


「ふぇえ、私の髪と同じ色のリティットだよぉ······」

「ふふ、木箱はリーアが入ってた物の流用だけどね。その指くらいの長さの杖でリティットに触って、ネーミングって唱えた後、すぐに付けたい名前を言うんだよ」

「え、え、どうしよう! どんな名前が良いかな?」


 暫く悩んで唸っているメリルちゃんを眺めていると、いつの間にかお父さんとお母さんに抱えられた妹ちゃんと弟くんが覗き込んでいた。


「こえ、ぴっぴ?」

「ぴっぴ! ぴっぴだー!」


 嬉しそうにしている二人を見て、メリルちゃんが聞いてきた。


「ピッピでも、良いのかな? こんなに凄いのに、こんな名前で」

「ふふ、愛情を持ってくれるならそれでいいんだよ。決まったなら、ネーミングピッピね」


 覚悟を決めたメリルちゃんが杖を持ってキーワードを唱えると、桃色に白い模様が入ったリティット、ピッピが目を覚ました。


「ふぇえ、こ、これ私の······?」

「うん、そうだよ。ちゃんとお話出来る機能も付いているよ。試しにリリアにかけてみる?」

「うん! えっと、リリアちゃんのリティットは、リアスだっけ? で、コールって言うんだったよね。コールリアス?」


 メリルちゃんの手の上でリリリと歌い始めるピッピは、すぐにリリアの声を出し始めた。


『あの? えっと、どなたでしょう?』

「あ、あの、リリアちゃん?」

『あら、その声は、メリルさんですか?』

「うん! あのね、フェミちゃんにリティットを貰ったの! でね、お話の練習に、リリアちゃんとお話ししようってフェミちゃんがね」

『お姉様がいらっしゃるんですか!? お姉様ぁ♡』

「うんうん。居るけど、いまコールしているのはメリルちゃんだよ? 少し失礼じゃないかなー?」

『あ、えっと、メリルさん、ごめんなさい······』

「えへへ、良いの。リリアちゃんがフェミちゃん大好きなの知ってるし、私もフェミちゃん大好きだもん!」


 その瞬間、お父さんからの殺気を感じて背筋が冷えたのは言うまでもない。頭を叩いて止めてくれたお母さんありがとうございます。


「えへへ、これから、たまにお話ししてもいい?」

『勿論ですわ。むしろ、お姉様に会えなくて寂しいのです。リリアからもコールしていいですか?』

「うん! えへへ。凄いなぁ、私いま、お姫様二人とお友達になっちゃったよ! 嬉しいなぁ!」

『あぅ、お姫様だなんて、照れてしまいます······』


 リリアはお勉強の途中だという事で、また今度話そうとコールアウトした。

 目が輝いて可愛さ三割増になったメリルちゃんからコートを受け取り、動くピッピにはしゃぐ幼い子供二人、あとメリルちゃんの両親に別れを告げて、ビークルで走り出す。


 余談だが、リティットの命名は電話番号に代わる物なので、既に誰かと被っていると命名出来ない。

 命名されて起動する瞬間、一瞬だけ私のファクトリーにアクセスして重複が無いかを参照するシステムが付いている。その時に重複が無ければ、データを残して命名完了、起動するのだ。

 ちなみにフェアリーゼの三羽にはこの機能が付いてない。


「フェミちゃんまたねー! また会いに来てねー! 絶対だよー!」


 走り去る私に大声で最後の約束をするメリルちゃんに、手を挙げて応えた。


 リオライラの城下町を出て、また街道を走り抜ける。

 半年後はここに絶対寄って、なんならメリルちゃんをトライアスまで旅行に連れていこうと誓う。

 可愛い娘さんが色々なことを知りもっと可愛くなりますよってお父さんに言えば許可出そうだしね。


 今日も中央行きの貴族や商人の馬車を次々追い越し、限界速度までアクセルを回す。

 エーテルドレスから絶えず放たれるエコーで事故は起きない。

 去年の白銀の翼が現場に来た事件から、エーテルエコーは基本常時発動にシステムをいじったのだ。


 いくつか街を横切り、昼が近付く頃には次の領地に付いていた。

 ただ、ここまで来ると中央は目の前なので、ちょっと空腹を我慢して走り続ける。その空腹の甲斐あって夕刻の鐘前には中央に付くことが出来た。


「うっわ、でか······」


 中央はデカかった。本当にデカイ。まず塀と門がデカイ。

 塀が十五メートルはあり、これ整備どうやるんだと誰かに問い詰めたくなる。門は高さ十二メートル、幅十メートルくらいあり、街に入る列も出る列も、二列ずつ捌かれている。


 真ん中にある貴族用の検問も門番が立ち、馬車を一つ一つ検問している。

 私が通る時は少し騒動になった。護衛も何も連れずに、領主紋を身に付けた人間が一人で来たのだから。

 荷物から入学許可証と通行証を見せて、間違いなく自分がトライアスのフェミリアス・アブソリュートだと納得してもらった。


 そしてくぐり門を抜けた先の街並みもでっけぇ!

 大通りは門の幅と同じで脇道も広かった。馬車が行き交うのに馬糞など汚物は少しも見えず、大通りには大店が並び脇道には小さい商店や露天がひしめく。

 レンガやモルタルで作られている大店は殆どが五階建て以上で街並みに迫力を与えているのだが、大通りが広々しているので開放感がある。


 ここが私の六年間世話になる街かー、いいねぇ。


 中央広場には、なんと時計台があった。この世界時計あんのかよ。

 アナライズで調べると動力は魔法では無く、北海道の時計台と同じ様に重りを使った仕掛け見たいだ。


 なるほど、人力で定期的に巻き上げるのか。

 これなら大型建築じゃないと時計は作れないな。まだ小型は普及して無いのだろう。


 流石に時計の原理は知らないので、ファクトリーで作れないから私には関係無いか。エーテル使ったデジタル式なら作れるけど、常時魔力を吸う魔道具とか、要らないだろ普通の人は。


 時計台がある中央広場を見渡すと、四方向に同じ大きさの大通りがあり、恐らくどれかが王城に繋がっているのだと思う。うっすら見えているアレが王城かな?

 大通りと脇道に面した所には多種多様なお店が並び、その奥に行くと居住区なのだろう。


 しかし困った。貴族学校どこよ?


「うーん? お母様にメール出してみようか?」


 フェアリーゼのリティットにも通話機能付けておけば良かった。そうすれば音声案内を頼めたのに。

 リリア経由で行こうか? でも昨日私から次コールするまで我慢出来たら御褒美って言ってあるし、コールしにくい。

 今日のはメリルちゃんからのコールだからノーカンだよ。


「あ、その辺通る貴族の馬車追いかければ良いんじゃない? フェミってば天才ね」

「いや、下手したら不審者として捕まると思うぜ?」

「ぶぇ!?」


 ある筈の無い返事にビックリして、淑女にあるまじき悲鳴が出てしまった。悲鳴なのだ。今のは悲鳴。異論は許さん。


「え、だれ?」

「ああ、ごめん。なんか困ってるみたいだった助けようかなって、そしたら貴族の馬車追い掛けるとか不敬な事を言い始めたもんだからついね」


 振り返ると、水色の髪の青年が居た。

 ハンターなのだろう。傷が見える革製の胸当てと、同じく革製のロンググローブにロングブーツの軽装。

 カーキ色のシャツにクリーム色のカーゴパンツを履いて腕組をしている。


「えっと、ハンターさん?」

「うん。ハンターだ。君は、あれ? もしかして貴族かい?」

「一応、領主の娘だから上級貴族かな?」

「うっわ、やってしまった。あー、あの、大分失礼な物言いをしまして······」

「あー、気にしないで? フェミそう言う貴族っぽいの嫌いなの。不敬罪とかどうでもいいから」

「お、そうかい? 良かった、親切心で死ぬところだった。話しの出来る貴族も居るもんだね」

「うんうん。貴族怖がられ過ぎだよ。出会ったら殺しにくる化け物じゃないんだからさ。フェミみたいな変わり者も居るんだよ?」

「ふはは、自分で言うのかい?」


 爽やかで話しやすい青年だった。うん、結構好感が持てる。

 サバサバしていて楽というか、ハンターに依頼するならこう言う人が良いな。


「それで、お兄さんはだれなの?」

「ああ、せっかくだから名乗っておこうかな。貴族に覚えてもらう機会も稀だしね。俺はギリック。四級のソロハンターさ」

「ふむふむ、四級って事は、ゼルビア達と同じ中級の最上位なんだね。腕は良い方だと」

「おっと、懐かしい名前が出たね。ゼルビアの知り合いかい?」

「あれ、お兄さんも知ってるの? ゼルビアとジェイドとレイナのパーティ?」

「ああ、確かに知ってるゼルビアの様だね。その三人なら知己だ。そうか、今アイツら四級なのか」

「いや、今はもっと上かも知れないよ。上級に行けるくらいに育てたから、三級くらいにはなってないとフェミ困っちゃう」

「ん? 育てた?」

「え、うん。ゼルビア達がちょっと不甲斐なかったから、色々と」

「うん?」


 爽やかな笑顔のまま固まってしまったギリックに、今はそんな事どうでもいいと道を聞く。


「そんな事より、貴族学校の場所か、ご飯の美味しい場所知らない? フェミお昼抜いてこの街めざしたから、お腹減ってるの」

「ん、ああ、俺も小腹が減ったから、一緒に行こうか」


 話題を無理やり被せて、ついでに私のお腹の音も被せてギリックに案内してもらい、とっても遅い昼食になった。



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