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勇者の書を開いたら何か召喚してしまいました  作者: 田中ファントム
1.僕と勇者の書
1/1

1冊目「赤から白で紅白戦」

1冊目



田辺春樹は、片手に持つ本を震わせながら、自室で尻餅をついた。パクパクさせた口と、空いた片手で指差す方向には、怪しげな光と、1匹の猫。


「あっ…えっ…」


開いた口が塞がらないとはこのことか、と思いつつも、目の前の状況に頭が追いつかない。怪しげな光が落ち着くと、わざとらしく、春樹に分かるようにニヤリと笑った。

事の発端は数時間前、学校帰りに図書館に寄った事から始まった。



***



元々本を読むことが好きな春樹は、学校帰りに図書館に寄ることが日課だった。今日も何気なく図書館内を歩き回り、何か面白そうな本は無いかと本棚を見ていた。

ふと、本棚の影から見覚えのある姿を見つけた。それを自身の姉__基、田辺美希だと察するのにそう時間はかからなかった。


「姉さ…」


声をかけようと後を追うが、横目で見えた本に興味をそそられてしまい、そのまま姉を見逃してしまった。

春樹は渋々姉を諦める。

見つけた本を手に取ると、見た目の割には軽く、本は綺麗で高級感のあるものだった。


「なんだこの本…」


赤い表紙には"勇者の書"と書かれており、開けばいかにも怪しそうな内容が書かれていた。

中身はほとんど破けており、軽い理由はそれか、と納得する。しかし、肝心の勇者の書らしき術や、その他の召喚術などが破けており、唯一読めるのは日本語ではない何かが羅列している一ページのみだ。


「ここしか読めるとこないし…なんでこんなボロボロなの置いてあるんだろう…」


春樹は1度本を閉じ、本棚に戻そうとするが、その手を止め、持ち帰ることを決めた。

一度は迷ったものの、男子はいつだって憧れる勇者に心が揺らいだのだ。

本を片手に、借りようと受付まで持っていくが、その本をここでは取り扱ってないと言われ、終いには、見たことがないと言われた。

中身がボロボロなのもあり、誰かの捨て置きだろうと言うことになった。

処分するのももったいないと、春樹は持ち帰ることを伝えると、図書館を出て帰ることにした。


自宅に帰ると靴を乱暴に脱ぎ捨て、階段を駆け上がって自室に篭った。

バタン、と閉まるドアと同時に、本に対する興奮が湧き上がる。


「勇者の書…なんか怪しいけど、かっこいい…!!やっぱり男は憧れるよなぁ、勇者!」


本を左手で持ち、右手で1枚捲ると、突如として部屋に光が広がり、本のページが勝手に捲られる


「うわっ、まぶしっ…え、ええええ!!」


本はひとりでに宙に浮き、そこから1匹の白猫が飛び出した。

そして、本は春樹の左手に落ち着き、そのまま春樹は尻餅を着く。こうして冒頭へと戻るのだが…


「ね、ね、猫!?!?本から!?」

「やかましい」


驚く春樹へ白猫は肉球パンチを頬に食らわせる。ぶべらっと 倒れ込む春樹は涙目になりつつ、白猫を見つめた。


「しゃ、喋った…」

「当然だろう、私は__」


白猫が何かを言いかけようとした時、丁度部屋のドアが開き、そこには仁王立ちの姉の姿があった。


「何か騒がしいと思ったら…何これ、白猫?」


しかめっ面な美希、そして視線の先は白猫にあった

怒られるのかとビクビクする春樹だが、瞬きをする暇もなかった。

凄い勢いで美希が飛び込んできたのだ。

猫にめがけて一直線に。


「可愛い〜!ちょっと春樹どこで拾ってきたのよこんな可愛い白猫!毛並みもいいし、どっかのいい所の飼い猫みたいな…」


猫の頬に自身の顔を擦り付けたり、撫でたりする姉に、褒められたのが嬉しかったのは白猫は嫌がらなかった。

ただ、白猫は美希の対応はそのままに、「当然だろう」と言葉を続けた。


「私は誇り高き騎士のナイン・アルフォートだ」


かなり低めの声で、自慢げにそう言う白猫に、可愛がっていた美希がぴたっと止まる。

しかし、それを気に止めずに白猫は話し続ける


「それと、お前達は先程から私を猫だと言っているが、私は決して猫では…」


そういうと、猫…ナインは自分の手を見て、肉球を見て、美希同様に動きを止めた。


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