相談に乗ってください!
「なるほどなるほど……。そうだったのね」
放課後、紗弥と麻由と共によく寄るカフェでお茶をしながら雑談中。内容はもちろん……
「つま――」
「つまり、愛桜さんは橘くんが好きかもしれないし橘くんも愛桜さんが好きかもしれない、ってことでしょ?乃愛」
紗弥の言葉を遮るように麻由が言う。
そう、雑談の内容は雪帆と橘くんの関係について。わたしはもう昼休みから2人の関係が気になって気になってしょうがない!授業どころじゃなかったもの!
おかげでわたしは午後の授業全て先生に怒られたが。
「うん……。そうなの。わたし、一体どうすれば……」
「ちょっと!何故このわたしを無視する!?2人で勝手に話を進めないでよ!」
『ごめんなさい』
ってなんでわたし達謝ってるの?
「で、乃愛がそう思う根拠ってなんなの?」
「だから今話したように雪帆は橘くんの話をしたら顔を赤くしたし、橘くんは乃愛の顔が赤くなったのを見てああいう女らしい仕草いいなとか言ってたし!」
「まぁ橘は女好きだからそう言うのも仕方ないとして、問題は愛桜さんね」
「愛桜さん、やっぱり橘くんのこと好きなんじゃない?」
グサッと胸に突き刺さる麻由の一言。かなりのダメージを食らった。
「わぁー……。珍しく麻由が突き刺さる一言を言ったー……」
「だってそうとしか考えられなくない?顔を赤くしてっていう時点で」
「確かにね……。真面目な人やボーイッシュな人ほど女好きに惹かれやすいって聞いたことあるし」
「そんな……。わたしの雪帆が橘くんの餌食に……」
「餌食なんて言わないの。橘はともかく愛桜さんに失礼よ。もし本当に愛桜さんが橘に惹かれていたとすれば。それと何度も言うようだけどあんたの愛桜さんじゃないから」
「そうだよ乃愛。そのうち橘くんの愛桜さんになっちゃうんだから」
さっきの一言よりも遥かに重いダメージ。こんなに痛いことをズバズバ言われたらわたしの心は簡単に砕けてしまう。
「ねぇ麻由……。さっきから結構痛いこと言ってるけどさ、わたしのガラスのハートを粉々に砕きたいの……?」
「べ、別にわたしはそういうつもりじゃ……!」
「大丈夫よ乃愛」
紗弥が珍しくわたしを励ましてくれる。少し紗弥を見直したかも。
「あんたの心はガラスのハートじゃないから粉々に砕けないよ」
「……ってそっち!?紗弥が珍しくわたしを慰めてくれてるって思ってたのに!まさかのわたしの心を否定!?それはひどくない!?」
せっかく人が見直してあげたのに!わたしの厚意を無駄にするなんて!紗弥は鬼だ!悪魔だ!人でなしだあぁぁぁぁぁ!
「それ、わたしも思った。乃愛の心ってガラスのハートだっけ?結構心が強いと思ってたけど……」
「違うよ麻由。乃愛はただ単に慰めてほしいんだよ。それをそんな言葉で誤魔化してさ……」
「誰が慰めてほしいなんて言った!そんなこと思ってないわ!そんなの紗弥の思い違いよ!」
「本当に?顔に慰めってくださいって書いてあるよ」
「本当だー!書いてある!」
「なんで麻由までー!?」
何故わたしは相談する度この2人にこんなにもからかわれるんだ?話がいつの間にか雪帆と橘くんの話からわたしの心の話になってるけど……。
わたしは雑談をするために3人でカフェに行こって言ったわけじゃないのに……。
お願いだから真剣にわたしの話を聞いてー!そして相談に乗ってー!
でもそんなわたしの心の叫びは誰にも届かなかった。