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疑惑が確信に変わりました!

「雪帆ー!話があるのー!」

 昼休み、雪帆の教室へ向かったわたしはドアのところで雪帆を呼んだ。

「乃愛。どうしたの?」

 雪帆を廊下へ呼び、本題に。

「橘くんのことなんだけど」

「た、橘くんの!?」

 橘くんの名前を出した瞬間赤く染まる雪帆の顔。

 これはもう……間違いない。

「どう思う?橘くんのこと」

「どう思うって……同じ部活で頼りになるなと……」

「本――」

 本当にそう思うの?と言いかけてやめた。

「……乃愛?」

「えっ?あっ、なんでもないよ!へぇーそうなんだ!でもあの人って女好きで有名じゃん?」

「それ、みんな言ってる」

 雪帆は無邪気な笑顔でわたしに言った。

「でも、橘くんって何気にいい人だよ。部活の時とかいつも真剣だし結構強いし頼りになるし……。確かに女好きだけどさ」

「ねぇ……雪帆って橘くんのことよく分かってるんだね」

「だって同じ部活だしね!」

 雪帆は気づいたかな?

 その言葉でわたしが少し傷ついたことに、わたしが橘くんに嫉妬したことに。

 疑惑を確信に移すためわたしは雪帆に1つの質問をした。

「そういえば、雪帆ってどんな人が好きなの?」

 心情を悟られないようわたしは笑顔で言った。

「えっ?いきなりなに?」

「いいからいいから。教えて」

「えっ?どんな人って……優しくて頼りになって何事にも真剣で、なにより僕を女の子と思ってくれてる人――かな?」

 ズキンと胸が痛んだ。そして思い出した橘くんの言葉。“愛桜のああいう女らしい仕草ってなんかいいな……”

 少なくとも橘くんは雪帆をれっきとした女の子と認識してる。それは彼が女好きだからかもしれないけど。

 そういえば雪帆は橘くんのことを真剣だし結構強いし頼りになるって言ってた。雪帆の好きな人は優しくて頼りになって何事にも真剣な人。


 それってまさか橘くん……?


「で、そういう乃愛はどんな人が好きなの?」

 雪帆は笑顔でわたしに言う。そんな笑顔で言われたら言わざるを得ない。

「えっとわたしは……優しくて笑顔が素敵な人かな?雪帆みたいな」

「もう乃愛ってば!」

 バシッとわたしの肩を叩く雪帆。

 雪帆的には本気で叩いたわけじゃないと思うけど結構痛かったよ……

「ホントだよー!もし雪帆が男だったら付き合いたいくらいだもん!」

 あっ、言っちゃった……。

「僕も……もし自分が男だったら乃愛と付き合いたいな」

「えっ!?本気!?」

「うん。だって乃愛は可愛いし女の子らしいし」

 見た目だけですか。中身については触れてくれないんだ。

 やっぱり雪帆は橘くんが好きなのかな?だとしたらなんでよりによってあんな女好きを!

 わたしはそんなの許しません!って……なんか雪帆の父親になった気分。

「えへへ。雪帆にそんなこと言われると照れるよ。嬉しいけど……。じゃあわたしはそろそろ戻るね。予鈴鳴りそうだから」

「もうそんな時間だったのか。じゃあまたね」

「うん!」

 小走りで雪帆のいる教室から遠ざける。

「雪帆……」

 頬に伝う熱いなにか。涙だと気付くのに時間はかからなかった。

 なんであんな女好きが好きなの?雪帆にはもっと相応しい人がいるはずなのに。

 橘くんも橘くんだ。他の女子にも言いそうなことを雪帆に言わないで……。雪帆を惑わせないで。

 雪帆はわたしの大切な友達で、大好きな友達なんだから。

 適当な気持ちで近づいたり傷つけたりしないでよ……!

 もしそんなことしたらわたしは橘くんを絶対に許さない。


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