正直に言いました
「あの人達はみな僕を男と間違って告白してきた人達なんだ」
その言葉を聞いたわたしは思わずドキッとした。
「たとえ好かれていたとしてもそれは男と思って僕を見ていたからだ。女としての僕を見てくれる人は……」
「雪帆……」
「でも、乃愛は違った。ちゃんと僕を女として見てくれた。それが僕は嬉しくて嬉しくて……」
雪帆の言葉が胸に刺さった。
「乃愛……?どうしたの?」
「ゆ、雪帆……わたし……」
本当のことを言ってしまうべき?それとも言わないべき?
本当のことを言って雪帆を傷つけ友達じゃなくなるのか、誤魔化して嘘をつき続けるか。
わたしは……
「なにかあったの?言えないなら言わなくてもいいけど……僕は乃愛のこと、大切な友達と思ってるから話せそうになったら遠慮せずに話してね」
心配そうな目でわたしを見る雪帆。
そんな目で見られたら誤魔化せない。嘘なんてつけないよ!
「雪帆……ごめんっ!」
雪帆に向かって思い切り頭を下げた。
「……えっ?なに?どうして!?」
「わたし……最初は雪帆を男だと思ってたの」
「えっ?」
多分雪帆はすごく驚いた顔をしているだろう。見なくても分かる。声を聞けば。
「一目惚れだったんだ。すごくかっこよくて……。メアド聞いた日、わたしは雪帆が女の子だって知ったの……それまで本当に分からなくて本当に知らなくて……ごめん!」
こうなったらなにもかも正直に話そう。それが雪帆を傷つけたとしても事実だから。隠しても意味がない。
「だけどね!その日からわたし、ちゃんと雪帆を同性として見てた。次第に仲良くなって雪帆のいつもとは少し違う一面を見れてわたしは嬉しかった!ただ……雪帆と一緒にいるのが楽しくて!一緒にいたいと思って!」
「乃愛……」
「わたしが倒れた時保健室に運んでくれたりわたしのことを名前で呼んでくれたりしてすごく――」
「乃愛!」
雪帆が声を荒げた。
こんな雪帆、見たことない。それだけ怒ってるんだ。
「正直に言ってくれてありがとう。確かに僕はこんなだから男として見られても仕方ないよ」
雪帆の声はさっきとは全く違い、静かで今にも消えそうだった。
「だからなんか悔しいんだよ。乃愛に好かれたのは男っぽい僕ってことが。ちゃんとした女友達ってことで好かれたと思っていたから……」
「雪帆……」
「1つだけ聞いていい?乃愛は今どんな僕を好きでいるの?男っぽい僕?それとも女である僕自身?」
どうして雪帆はこんなことを聞くの?聞いたところでわたしの答えは決まってるのに。
雪帆が同じ女の子だと知った日からわたしは貴方の友達としてそばにいた。これからもそばにいたい。
「それはもちろん、女の子の雪帆だよ。女友達の雪帆がわたしは大好き」
「……よかった。そう言ってくれて」
雪帆の目が潤んでいる。今まで弱いところを見せたことのない雪帆が泣きそうになってる。
わたし、雪帆を泣かせちゃったんだ……
「当然だよ!わたしと雪帆は友達だもん!わたし、雪帆のこと前よりもっと好きだよ!大好きだよっ!」
そう言ってわたしは雪帆に抱きついた。
「うん!僕も乃愛が大好き!これからも仲良くしてね。乃愛」
「うん!」
雪帆はわたしを抱きつき返してくれた。
わたし達はより強い絆を結んだ。