彼は“女の子”でした!
「はうっ!?」
わたしは見てしまった。すごく素敵な彼を。
「やばい……やっぱめちゃくちゃかっこいい……」
そのさらさらで少し茶色い髪の毛も、キリッとした瞳も、透き通った白い肌も全てが素敵!わたしの心はもう貴方のもの!
彼に惹かれて約半年。わたしはいまだにメアドを聞けないでいた。
しかし、今日の体育祭でかっこいい彼を見たわたしはメアドを聞くと決めたのだ!
「あ……あのっっ!」
勇気を出して彼へと歩み寄る。
「なに?」
彼が振り返る。目が合ってしまった。間近で見てもやっぱりすごく綺麗な瞳。それに少し高くて可愛い声。女の子みたいな声にギャップ萌え!
「?」
「メ、メアド教えてくださいっ!」
ついに言ってしまった……
心臓がバクバクしてる。
「あ、うん。いいよ」
と、彼はあっさりOKしてくれたのでその場でメアドを交換。
「ありがとうございますっ!」
「いえいえ」
わたしの携帯に入った彼のアドレス。嬉しすぎて笑みがこぼれる。
「えっと……名前は?」
「あっ如月乃愛です」
「如月乃愛ね。僕の名前分かる?」
「愛桜……?」
不覚にも苗字しか知らなかった。
「名前は知らないか。僕は愛桜雪帆」
「愛桜雪帆……」
ホント女の子みたい……
「あとでメールしますね!」
「ありがとう」
優しい笑顔……。やばい……。素敵すぎる!
見とれすぎて危なく倒れそうになった。
するとそこに現れた1人の男子生徒。彼の友達?
「あ、あの……愛桜さん……!」
「はい」
えっ?なんか相手の顔赤いけど!何故?
「あの……俺……!」
相手は一呼吸置いてから彼に言った。
「俺、愛桜さんが好きです!」
…………“好き”!?これは今流行りのBLという……!?
「えっ……僕のこと……!?」
彼も驚いた顔をしている。
「はい……!ずっと好きでした!愛桜さんのクールなのにたまにある“女の子らしい仕草”に惹かれました!」
“女の子らしい仕草”!?
この人はなにを言ってるのだろう……。男子に対して女の子らしいなんて!彼に失礼じゃないか!
「俺じゃ……だめですか?」
「あっ…えっと……ごめんなさい。今は誰とも付き合う気はないんだ……」
「そ、そうですか……」
男子生徒は肩を落とし、来た道を戻って行った。
「またか……なんでみんなこんな女の子らしくない僕を……僕より女の子らしい人はいっぱいいるのに」
彼は呟くように言った。
えっ?その言い方、まるで……
「ユッキー!また告白されたの?」
女の子達がわたしの言葉を遮るように彼に話しかけながら彼を囲んだ。わたしは一瞬にして彼から遠ざけられた。
「う、うん……」
「ユッキーは女子にも男子にもモテるね!」
「うーん……でも正直僕は複雑だよ……」
「じゃあその“僕”って言うのはやめたら?」
「そうだよ!だってユッキーは……」
1人の少女が勿体ぶりながら言った。
「女の子なんだからさ!」
…………えっ?女の子……?
えええぇぇぇぇぇぇ!?!?彼って女の子だったの!?
それじゃあわたしは……女の子に惹かれてたの!?
「嘘でしょ…………」
いろんな出来事に頭がついていけず、身体がふらつく。
「!?乃愛!」
彼、いや彼女がわたしの名前呼ぶ。でも返事する気力もない。
その場にバタンと倒れた。