【*】 帝国侵攻
田中ニコと月時計の二人が、それぞれの持ちキャラの一人称視点で交互に書いていく合作小説です。必然的に、視点変更が都度起こり読み辛い事にはなりますので、その点はあらかじめご承知置きください。
田中がバーテンダーのノア、月時計が騎士団長のジェイド視点をつとめます。
また、ボーイズラブをテーマとした作品ではありませんが、二人の青年の熱い友情(?)を主題に置いているため、時にはそちら側へ偏った表現が見られるかもしれません。何せ田中が生粋の腐女子です。
アンチ腐女子の方・硬派でハイクラスなファンタジー愛好家の方々には、お勧め出来かねる内容である事は確かですので、あしからずご了承くださいませ。
怖いくらいに真っ青な空と、強い陽射しの下、半透明に揺らめく炎。
何もかもを奪っていく焦げた臭いに、血飛沫。
四方八方から、自分を呼ぶ声と、悲鳴。
足元から燃え上がる炎は見上げるほどに大きく、突如として現れた鋼鉄の軍団は、家も、物も、人も、村にあった全てを蹂躙していく。
普通に考えれば、こういった奇襲的な作戦は夜闇に紛れて行われるのがほとんどだろう。
それをあえて日の一番高い時刻にやってみせたというのは、奴らにとってそれだけ、この略奪行為が取るに足らないものだという事だった。
成す術なんて、選択肢なんて何もない。
誰も、いない。
救いもない。
あるのは死体と、人間とは思えない残忍な略奪者達。
ロヴェル帝国――大陸最大の軍事国家として、その名は畏れと共に知れ渡っていた。
いつか、こんな日が来るんじゃないかって、侵略者への漠然とした不安を抱きながら生きていた世界。
やって来たのは、唐突。
そして過ぎ去ったのは、ほんの一日。
その日――僕は、僕以外の全てを失くした。