プロローグ
・・神格返上、そして伝説のFランクへ・・
魔神アビスの封印から2年。レムリアの地は、相撲と筋肉、そして魔法学園の活気に満ち溢れていた。 リリーは20歳(見た目幼女のまま)を迎え、眷属神として天界から世界を見守り続けていたが、そこには神ゆえの「不自由」があった。
「リリー、もし貴女が望むなら、神格を捨てて人としての生を全うしてもよいのよ?」
主神セレナの慈悲深い提案。神格を捨てれば、概念操作や宇宙規模の因果改変はできなくなる。しかし、その代わりに「直接誰かに触れ、共に歩み、危機には自らの手で愛する者を守る」という、当たり前でかけがえのない自由が手に入る。
「……そうね。見守るだけじゃ、退屈すぎるわ」
リリーは決断した。再度神になるには、またあの「数百億年の地獄」を歩まねばならないというリスクを承知で、彼女は神座から降り、ただの「リリー・ヴァランタン」へと戻ったのである。
・・最強のFランク、爆誕・・
「というわけで、今日から私たちは新人冒険者よ。いいわね、ミリィ、モミジ」
「……ん、わかった。お嬢様がそう決めたなら、私は付いていくだけ。神の制約もなくなったし、邪魔する奴は……消す」
「オラもワクワクすっぺ! 異世界のダンジョンには、まだ見たことねえ魔物がたくさんいんだっぺ?」
リリー、ミリィ、モミジの三人は、レムリア王都にある冒険者ギルドの門を叩いた。かつて神として世界を救った彼女たちだが、ギルドの規定は絶対である。受付嬢から渡されたのは、最低ランクである**『Fランク』**の銅プレートであった。
テンプレの洗礼:モヒカンと肩パッド
三人がギルドの酒場で依頼を選ぼうとした、その時である。 酒場の空気を切り裂くような、下品で騒々しい声が響き渡った。
「ひゃっはーーー! 見ろよ、今日日は幼稚園児でも冒険者になれるのかぁ!? ひゃっはーーー!!」
そこに立っていたのは、世紀末を彷彿とさせる巨大な肩パッドを装着し、頭頂部を鋭いモヒカンに整えた、見るからに質の悪い冒険者たちであった。彼らはDランクで数年くすぶっている、いわゆる「新人の壁」を自称するクズ共だった。
「おいおい、お嬢ちゃんたち。そのピカピカのプレート、俺たちに預けな。ひゃっはーーー! 泣きを見る前に、お家へ帰してやるぜ。ひゃっはーーー!!」
リーダー格の男が、リリーの頭に手を伸ばそうとする。 リリーは無表情のまま、隣のミリィに視線を送った。
「……ミリィ、やっていいわよ」
「ん。了解。……お嬢様に触るな、クズ」
「ひゃっはーーー!? 何をブツブツ言ってやが……ぐえっ!?」
次の瞬間、モヒカンリーダーの体は、ミリィの「軽く添えただけ」の手によって、ギルドの壁に文字通り埋め込まれた。
・・新たな冒険の始まり・・
「ひゃ、ひゃっは……ひゃ……あ、あばばばば……」
泡を吹いて気絶したモヒカン共を尻目に、リリーは掲示板から「薬草採取(ただし場所はドワーフの地下帝国跡地付近)」という依頼を剥ぎ取った。
「さあ、行くわよ。神格はなくても、因果律をちょっぴり捻じ曲げた『絶対当たる魔法』くらいは使えるんだから。レムリアの深淵、存分に見せてもらいましょうか」
「ひゃっはー」と鳴く害虫を片付けた三人は、期待に胸を膨らませ、未知なる地下世界へと一歩を踏み出す。




