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第十八話:扶桑の心霊スポットと、伯爵家の珍客

レムリアでリリーが魔神アビスを永久封印し、美女神セレナの抱擁に蕩けていたその頃。 取り残された扶桑の地では、一人の令嬢の絶叫が天を突いていた。


「……なんですって!? ミリィもモミジも、アンソニー様までもがレムリアへ旅立ったというのに、なぜ私だけお声が掛かりませんのーーーッ!!」


そう、アフロヘーアの「大移住アナウンス」は、かつて神との決別を選んだ扶桑の地には一切届いていなかったのである。バルトは地面を叩いて泣き伏した。


・・玄の決断:さらば妻よ、いざレムリアへ・・


バルトの激しい涙(と、ドスコイへの執念)を目の当たりにし、玄の「漢気」に火がついた。あるいは、連夜の皿数えと般若顔の妻に、精神的な限界を迎えていたのかもしれない。


「……お菊よ、これまでよく尽くしてくれた。だが、わしは決めた。この娘と共に、異世界の土俵レムリアを目指す! これが今生の別れじゃ!」


「……なんですって? お待ちになって、玄様! 逃がしませんわよ、この薄情者ぉぉーーーッ!!」


お菊が般若の如き形相で追いすがるが、玄は印を結び、バルトの手を引いて爆走を開始した。


「お嬢様! 我らもお供いたしますぞーーーッ!!」


ボロボロのボートで太平洋を渡りきった、ゴルドフ団長率いるボルト家の十名も、再び筋肉を軋ませてその後を追う。


後に残された大きな武家屋敷には、お菊一人が取り残された。 その日から、屋敷では夜な夜な女のすすり泣く声と、凄まじい勢いで皿を割る音が響き渡り、扶桑の民の間で語り継がれる心霊スポット・ナンバーワンとなった。 「……あそこはマジで出るでござる……近寄ってはならぬでござる……」


・・ボルト伯爵家の帰省:なぜか馴染んでいるシオン・・


数十日後、今度はまともな船で大海原を渡り切り帰還した一行は、アレスガイアのボルト伯爵家へと辿り着いた。


豪華な応接間。そこには、変わり果てた(町娘姿の)愛娘を前に、涙を流すボルト伯爵の姿があった。


「おお……バルト……。無事であったか。この異国の方々がお前を助けてくださったのだな」


「ええ、お父様。特に玄様には、ドスコイ様への『間接的な愛』を育むためのシェルターを提供していただきましたわ」


伯爵は、娘の言っている意味が全く理解できなかったが、とりあえず娘を救ってくれた(らしい)扶桑の面々に深く頭を下げた。


「我が愛娘を扶桑の地でお助けいただいたこと、深く感謝いたしますぞ。……して、そちらの御仁は?」


伯爵が目を向けたのは、なぜか上等な茶菓子を平然と頬張っている、扶桑の勇者パーティー・シオンとカエデであった。


「なに、困ったときはお互いさまでござるよ、伯爵殿」


帰還の道中で「面白そうだから」という理由だけで付いてきた、全く面識のないシオンが、さも昔からの戦友のような顔で返事をした。


「(……誰だっけ、あの人……?)」 必死にボートを漕いで同行したゴルドフ団長やメイド長マルタたちが困惑の表情を浮かべるが、シオンの圧倒的な「図々しさ……もとい、包容力」の前に、なんとなく場の空気は丸く収まってしまった。


・・次なる地平:アレスガイアからの「最終便」・・


「さて、お父様。ゆっくりもしていられませんわ。これから私たちは、ドスコイ様とアンソニー様が待つ『レムリア』へと移住いたしますの!」


「えっ? 引っ越し? 今、帰ってきたばかりなのにか!?」


伯爵の驚きをよそに、バルトは玄、シオン、カエデ、そして忠義の騎士団を引き連れ、アフロヘーアが残した「レムリア行き最終便」の光の中へと飛び込む準備を始めた。


アレスガイアから扶桑の勢力までもが加わり、レムリアの地はいよいよ「人種のるつぼ」ならぬ「筋肉と個性の煮込み鍋」と化そうとしていた。


・・アレスガイア最終便、あるいは強欲な大移動・・


ボルト伯爵家の応接間に、バルトの帰還を祝う間もなく、空間を揺らす高圧的な声が響き渡った。


「ちょっと待つのじゃッ! わらわたちを置いていくなど、万死に値するぞ!」


そこに現れたのは、学園の最高権威にして合法ロリ老婆、アマリリスの精神体であった。


・・アマリリスの決断と、執念の追跡者たち・・


「妾も行く。レムリアとやらは復興の最中だというではないか。教育なき国に未来はない。妾が『学園』ごと、その地へ根を下ろしてやろうぞ!」


アマリリスは豪語した。さすがに全生徒を連れて行くわけにはいかないが、身寄りのない風紀委員長ゼクス、そして……なぜか執念深く影に潜んでいた**「デブとガリ」**こと、公爵令息と第三王子もそこにいた。


「リリーたん……ミリィたん……アマリリスたん……三大幼女(合法)が一人もいないアレスガイアなど、もはや砂漠! 私は行きます、地の果てまでも!」


彼らは一国の公爵家嫡男と王子という立場をかなぐり捨て、ただ「推し」を追う求道者として、禁断の異世界移住に名乗りを上げた。


・・アフロヘーアの「罪滅ぼし」と最終転移・・


神界では、アフロを揺らす女神が反省の色(?)を見せていた。


「あ、あら……私を見限った扶桑の民はともかく、バルトちゃんは私の敬虔な信徒(?)だったのに、声をかけ忘れるなんて私の落ち度だわん。……いいわ、これが最後よ! アレスガイアからレムリアへの**『最終便』**、発車いたしますわよーーーッ!」


アフロヘーアの神権が発動した。しかし、その規模は「ちょっとした引っ越し」の域を遥かに超えていた。


ボルト伯爵家: バルトへの愛が深すぎる伯爵の願いにより、屋敷丸ごと、そして現場にいたメイド・執事・騎士団だけでなく、その**「家族」**までもが範囲に含まれた。


学園施設: アマリリスの言葉通り、学園の校舎の一部と設備、ゼクス、そしてデブとガリが光に包まれる。


扶桑の居候: 玄と応接間で菓子をもぐもぐ食べていたシオンとカエデ。彼らは図々しく馴染みすぎていたため、神の判定により「ボルト家の人格を持った備品……あるいは家族」として誤認され、強制連行の対象となった。


「えっ? ちょっと待つでござる、拙者たちはただ菓子を食べに来た客……」 「シオン殿、お菓子持ったまま浮いてるでござるよ!?」


・・置き去りにされた人々の悲喜交交・・


光が収まった後、アレスガイアには巨大な「空白」が残された。


ボルト家の敷地: 広大な屋敷があった場所は、ただの巨大な更地と化した。


デブとガリの両親: 「うちの息子が消えた! 誘拐だ!」と血眼で探し回る公爵と国王。後日、アフロヘーアから「異世界で元気にロリを追ってるわん」と神託を受け、生存に安堵するも、二度と会えない事実に絶望し、枕を濡らすことになる。


非番の使用人たち: 「買い物をしていたはずなのにここはどこ??」「寝て起きたら知らないレムリアが見える」という状況に、全米が泣くレベルの驚愕を味わった。


・・レムリア降臨:カオスの極致・・


レムリアの王都、その外郭に突如として「アレスガイア様式の豪邸」と「巨大な校舎」が出現した。


屋根を突き破って降臨したバルトが、土俵の砂を浴びながら叫ぶ。 「ドスコイ様ぁぁーーーッ! 会いたかったですわーーーッ!!」


その横では、着物姿の玄、菓子箱を抱えたままのシオンとカエデ、そして鼻血を出しながら幼女たちを探すデブとガリが、レムリアの地に第一歩を記した。


「……なんだか、えらいことになってきたわね」


封印を終えて戻ってきたリリーは、変わり果てたレムリアの光景(相撲、筋肉、学園、扶桑)を見て、そっとこめかみを押さえた。だが、その隣でセレナは嬉しそうに微笑んでいる。


「リリーさん、賑やかになりましたね!」


「……ええ。賑やかすぎて、魔神アビスも二度と出てきたくないでしょうね」


アレスガイアの精鋭、変態、そして愛すべき家族たちが勢揃いしたレムリア。 最強の賢者が切り拓いた新天地での物語は、もはや「異世界転生」という枠を飛び越え、全宇宙を巻き込むカオスな新章へと突入するのであった。

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