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第十四話:「レムリア場所」開幕!

筋肉と魔法の土俵ついにこの日がやってきた。レムリア王国の歴史に刻まれる、前代未聞の神事――**「第一回・レムリア場所」**の開催である。

訓練室を改装した特設会場には、噂を聞きつけた市民や、同僚の勇姿を見届けようとする騎士、魔法士たちが詰めかけ、異様な熱気に包まれていた。

ドスコイ(女将さん)は、自分もあの土俵に上がって腰を下ろしたい衝動を必死に抑え、自ら筆を執って書き上げた「番付表」を掲げた。


「いいかい、あんたたち! 今日までの稽古はただの準備運動だよ。この場所の成績いかんじゃ、横綱だって次は平幕、いや十両以下まで叩き落としてやるからね! 気合を入れなッ!!」


「「「オッス!! 女将さんッ!!!」」」


第一回・レムリア場所 番付表(仮)

今場所は観客への分かりやすさを重視し、本名(四股名)の形式で発表された。



番付東(レムリア騎士団側)部屋出身(レムリア地名)西(宮廷魔導師団側)部屋出身(レムリア地名)

横綱ボリス(ボリス山)ドスコイ部屋 王都セントラル  バッカス(大酒灘)魔法肉部屋港町ポートワイン

大関ガウェイン(剛威韻)騎士道部屋 北方フリーズ  イグニス(烈火海)魔法肉部屋 火山麓ボルカノ

関脇エドガー(盾ノ海)ドスコイ部屋 西方ウエスト  ゼファー(神風丸)魔法肉部屋 高原スカイハイ

小結ハンス(鉄壁龍)騎士道部屋 王都下町  アクア(清流山)魔法肉部屋 湖畔レイクサイド

前頭一レオ(獅子王)ドスコイ部屋 南方サバンナ  テラ(土導山)魔法肉部屋 鉱山マウンテン

前頭五シモン(粘り岩)騎士道部屋 東方オリエント  ルーン(魔陣錦)魔法肉部屋 隠れ里ミスティ

前頭十カイル(速風)ドスコイ部屋 王都セントラル  ボルト(雷電雲)魔法肉部屋 渓谷サンダー

前頭十五新人騎士(初陣丸)騎士道部屋 辺境村  見習い魔導士(杖ノ花)魔法肉部屋 学院都市



・・注目の一番:童貞横綱 vs 暴飲魔導士・・


今場所の最大の目玉は、やはり東横綱・**ボリス(ボリス山)**と、西横綱・**バッカス(大酒灘)**の激突である。ボリスは、女将さんとの「マシュマロ密着稽古」により、精神が崩壊する寸前で**「無我の境地(童貞力)」**を開眼。女子に触れても動じない(フリができる)強靭な足腰を手に入れた。

対するバッカスは、自慢の恰幅に魔法で重力を付加する「ヘヴィ・ツッパリ」を開発し、連戦連勝で横綱まで上り詰めた。


「ひがしーーー、ボリス山ーーー! にしーーー、大酒灘ーーー!」


ドスコイが朗々と呼び出しを行う。

土俵に上がった二人の巨躯が向き合う。

ボリスは真剣な眼差しで、バッカスは不敵な笑みを浮かべて、四股を踏む。

その振動が会場全体を揺らし、観客のボルテージは最高潮に達した。


「……見ててくれ、女将さん。俺は、俺はあんたの背中を見て、本当の『漢』になるんだ!」


ルシウスは会場の隅で、勇者の仕事(魔神討伐の準備)を一時忘れ、真剣に塩をまくボリスたちの姿を見ていた。


「……なんだろう。魔神より、こっちの熱気の方が世界を救いそうな気がする……」


審判席に座る教皇(ブルー下着に審判用の羽織を着用)が、軍配を構えた。


「はっけよい……」


レムリアの運命を左右する(かもしれない)熱き戦いの火蓋が、今、切って落とされた。


・・「ちゃんこの味と、新たな門出」・・


レムリア場所、千秋楽。 結びの一番、東横綱・ボリス山と西横綱・大酒灘バッカスの全勝対決は、歴史に残る大熱戦となった。


バッカスの重力魔法を付加した「ヘヴィ・ツッパリ」がボリスの胸板を激しく叩くが、ボリスは女将さんへの純愛で鍛え上げた足腰で土俵際に踏みとどまる。


「……これ以上、下がれるかッ!! 俺の土俵際(童貞)を舐めるなーーーッ!!」


ボリスはバッカスの巨体に潜り込み、相手のまわしを掴むと、魔法の反動を利用して己の体を独楽のように回転させた。


「決まり手は――『マシュマロ旋回投げ』!!」


バッカスの巨体が宙を舞い、土俵の外へと転がった。会場からは割れんばかりの拍手と共に、どこからか用意されていた座布団(王宮の高級クッション)が次々と土俵へ投げ込まれる。 これを見ていた一般客、特に恰幅の良い男たちは、己の肉体が「武器」となり「華」となるSU・MO・Uの魔力に、完全に魂を奪われていた。


・・涙のちゃんこ鍋・・


千秋楽の夜。ドスコイ部屋では盛大な打ち上げが行われていた。 土俵ほどの大きさがある巨大な鍋には、鶏のつくね、野菜、そして秘伝の出汁がたっぷり詰まった「ちゃんこ」が煮え立っている。


「さあ、みんな! 今日は無礼講だよ、たっぷりお食べッ!!」


「「「ごっつぁんです!!!!」」」


力士たちは山盛りのちゃんこを瞬く間に完食し、次々とお代わりを求める。その豪快な食べっぷりを見て、ドスコイ(女将さん)の目から熱い涙が溢れ出した。


(……ああ。かつて帝国城に潜入した時、あんなに心を込めて作ったちゃんこを、貴族たちは『怪しい食べ物』だと一口も食べてくれなかった……。でも、今はこんなに愛されている……!)


ドスコイの過去のトラウマが、力士たちの胃袋によって浄化されていく。これこそが彼女が夢見た「SU・MO・Uの楽園」であった。


・・門を叩く新弟子たち・・


その時である。部屋の重厚な扉が「ドンドンドンッ!」と激しく叩かれた。 扉を開けると、そこには王都中の「太った御仁」たちが、汗を流しながら大勢詰めかけていたのである。


「女将さんッ! 俺もボリス山のような漢になりたいんですッ!!」 「この腹を、ただの贅肉から『正義の盾』に変えさせてくださいッ!!」


彼らは皆、昼間の興奮冷めやらぬ新弟子志願者たちであった。 ドスコイは驚きつつも、鼻を啜って笑顔を見せる。


「いい度胸だよ、あんたたち! 稽古は地獄だけど、ついてこれるかいッ!?」


しかし、ここで一つの嬉しい悩みが浮上した。 これまでは「騎士団(東)」対「魔法師団(西)」という構図で番付を分けていたが、これほど多くの一般人が加わるとなると、その枠組みでは収まりきらない。


「困ったねぇ……。新しい『部屋』を増やすか、それとも扶桑の伝統に則って本格的な相撲協会を立ち上げるか……」


ドスコイは、広がり続けるレムリア場所の未来に、心地よい忙しさを感じるのであった。

挿絵(By みてみん)

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