第一話:異世界の洗礼、あるいは「不敬な身代わり」
レムリア王国の謁見の間には、重苦しい空気が流れていた。 「……王女殿下、異を唱える無礼をお許しください。ですが、この者たちが我が国の命運を託すに足る勇者一行とは、到底信じがたい」
宰相が冷ややかな視線を教皇マッスル一世の聖女ドレスから透けている「オーシャンブルーの布地」に向ける。騎士団員たちも鼻で笑い、ひそひそと「変態の集まりか?」と囁き合っていた。
「確かめてみるべきです。本当に彼らが、魔神を屠る力を持っているのかを」
大臣たちの強い要求に、王女エルナは苦渋の決断を下した。「……身勝手なお願いで申し訳ございません。ですが、民の不安を払拭するため、どうか我が国の精鋭と手合わせを願えませんか?」
「構いませんよ。僕たちを知ってもらうには、それが一番ですから」 ルシウスは聖剣の柄を握り、静かに頷いた。
・・訓練室:絶対不壊の演武・・
王城の地下にある巨大な訓練室。そこは古の魔法により「絶対不壊」の障壁が展開されていた。 「ここには絶対不壊の障壁が展開されていますので安心してください。また、これは『身代わりの護符』です。致死ダメージを受けた瞬間、王女殿下の傍らに用意された人形と入れ替わります。存分に死力を尽くしてください」
レムリア側から選ばれたのは、王国最強の騎士団長と、三人の宮廷魔導士。 対するルシウス一行も、戦闘態勢に入る。
ルシウス: 至高のショーツ一丁になり、黄金の聖剣を召喚。
教皇: 今日はあざやかな「オーシャンブルー」の勝負下着。
ボルダー&カイト: 唯一の良心として、まともな防具を装着。
「いざ、尋常に……レムリアの力、見せてやる!」
・・激闘、そして退場・・
模擬戦は、想像を絶する激戦となった。レムリア王国の精鋭は、アレスガイアの魔族に匹敵する技量を持っていた。
まず動いたのはカイトだった。隠密スキルで魔導士の背後を狙うが、地面から生えた岩の棘に足を捕られる。 「……チッ、魔力探知が鋭すぎる……っ!」 騎士団長の剛剣がカイトを強襲。カイトは盾で防ぐも、その衝撃で腕の骨が砕け、護符が発動。光と共にカイトは戦場から消えた。
「カイト! ……野郎、よくも!」 憤ったボルダーが斧を振りかざすが、残る二人の魔導士による重力魔法と火炎魔法の同時放射を浴びる。 「……あとは……任せたぜ、ルシウス……」 ボルダーの巨体もまた、炎に包まれる直前に光となって消失した。
残されたのは、ルシウスと教皇。 「あらあら~! 異世界の魔法、刺激的ですわねッ!」 教皇が筋肉を躍動させ、放たれる雷撃をことごとく「大胸筋」で弾き飛ばしていく。だが、宮廷魔導士長が放った究極の氷結魔法『コキュートス・テイル』が、教皇の足元を凍りつかせた。
「あら? ……あらららら!? 動きが……」 逃げ場を失った教皇に、騎士団長の突進が炸裂。聖女ドレスはズタズタに引き裂かれ、教皇の肉体は氷の刃に貫かれた。
パァァァンッ!!
・・王女の目前、禁断の「イチモツ」・・
王女エルナの目の前で、身代わり人形が爆発するように消え、代わりにそこに現れたのは――。
「……あ、あら? 」(マッスル)
氷魔法の冷気でさらに引き締まった、全裸に近いブルー下着姿の教皇。 そして、かつて聖女に選ばれし時、聖女としてふさわしくあるために切除を検討したあの「聖なるバナナ」が、あろうことか王女の目線の高さで堂々と鎮座していた。
「「「きゃああああああああーーーッ!!!」」」エルナ王女と侍女たちの悲鳴が地下施設に響き渡る。
「貴様ぁぁ! 姫様に何を、何を晒しているのだぁぁぁ!!」 騎士団長が顔を真っ赤にして激昂するが、教皇はどこ吹く風。 「失礼ですわね。これは女神の恵みですのよ?」
・・勇者の一閃・・
教皇の「不祥事」によりレムリア側の集中力が一瞬途切れたその隙を、ルシウスは見逃さなかった。 「……みんなの想い、無駄にはしない!」
ルシウスがショーツの食い込みを正し、聖剣を天に掲げる。 「聖光破邪・次元断!!」
黄金の一閃が絶対不壊の障壁すらも震わせ、レムリアの騎士団長と魔導士たちを一掃。辛くも勇者パーティーの勝利で模擬戦は幕を閉じた。
ボロボロの状態で戻ってきたボルダーとカイトは、王女の前で股間を輝かせている教皇を見て、そっと顔を覆った。 「……なあボルダー。俺たち、元の世界に帰れるかな……」 「……知るか。俺は今、リリー様の『剪定』が恋しくてたまらねえよ……」
異世界レムリア。彼らの戦いは、あまりにも前途多難なスタートを切った。
・・ピンクの残光、あるいは「留守を預かる狂気」・・
勇者一行が異世界レムリアへと拉致され腕試しをさせられていたころ、アレスガイア王国の中心地――王都大聖堂では、一人の男が天を仰いでいた。
枢機卿アンソニー。 ボディビル大会で教皇を下したこともある「魅せる筋肉」の求道者は、教皇の気配がこの世界から完全に消失したことを、その鋭敏な筋肉センサーで察知したのである。
「……行かれましたわ。あの方は、ついに次元の彼方へと旅立たれたのですわね」
アンソニーは、鍛え抜かれた広背筋をこれでもかと広げ、聖堂のステンドグラスから差し込む光を一身に浴びた。その瞳には、野心という名のピンク色の炎が灯っている。
・・第一次ピンクのフリル革命・・
「教皇様がいらっしゃらない今こそ、このアレスガイアを『真の美』で塗り替える絶好の好機! さあ、野郎共! 準備はよろしくて!?」
アンソニーの号令と共に、大聖堂の地下から、重厚な金属音を立てて「それ」が運び出された。それは、リリーの近代化政策を独自に解釈して開発された**「全自動フリル装着機」**であった。
「アフロヘーア様は仰いました……『可愛いは正義』だと! 可愛さのない女装服など、今すぐ脱ぎ捨てなさいなッ!」
翌朝、王都の民が目にしたのは、阿鼻叫喚……もとい、極彩色の光景であった。 大聖堂の全ての柱にはピンクのリボンが巻かれ、巡回する聖筋騎士たちは皆、**「超多層構造のフリル付きエプロンドレス」**を着用していたのである。
「アンソニー枢機卿! これは何事だ!?」 事態を重く見た国王(アレスガイア十六世)が抗議に訪れたが、アンソニーは動じない。
「国王様、遅れておりますわ。これからは『筋肉』と『フリル(ソフト)』のハイブリッドが国力の指標。さあ、国王様もこの『特注パニエ』をお召しになって!」
「いや、私は国王としての尊厳が――」
王宮すらもピンクに染め上げようとするアンソニーの「革命」。 教皇という名のストッパーを失った王国は、勇者の不在を嘆く暇もなく、別方向の破滅(ファッションの暴走)へと突き進んでいた。
・・一方、公爵領では・・
ルシウスの失踪からしばらく、リリーは一つの仮説を立てていた。ルシウスたち四人は、大聖堂を出た後に消息を絶っている。あの四人を誰にも気付かれずに攫うなど、通常では不可能だ。同じく、抹殺されたとも考えにくい。となると、喚ばれたのか。それしか考えられなかった。
リリーは、大聖堂の方向を眺め、冷めた紅茶を啜っていた。 「……アンソニーが暴れてるわね。まあ、王都がピンクに染まるくらいなら、世界が滅びるよりはマシかしら。……ルシウス、あんたが帰ってくる頃には、お城が巨大なデコレーションケーキになってるかもしれないわよ?」
リリーの横で、モミジが斧を研ぎながら呟く。 「リリー、あっちのピンクのハゲも、一度『剪定』しといたほうがいいべか?」
「いいわよ、放っておきなさい。……それより、次元をブチ抜くための『穴あけドリル』の設計を急ぐわ。私の弟を勝手に借りた代償は、その世界ごと買い取ることで払ってもらうから」
賢者の静かな怒りと、枢機卿のピンクの狂気。 アレスガイア王国は、勇者がいなくても別の意味で「限界」を迎えようとしていた。




