第ニ十話:開戦の火蓋と、食い違う野望
いよいよクラス対抗模擬戦が幕を開けた。 演習場の中央には巨大な魔導舞台が設置され、新入生たちは全員、腕に「身代わりの護符」を装着している。この腕輪は、致命的なダメージを受ける寸前にそれを肩代わりして砕け散り、同時に装着者を舞台外の救護エリアへと強制転移させる。
「生命は保証する。ゆえに、全力で、殺す気でかかるが良い!」
壇上から、アマリリス(精神体)の凛とした声が響く。 対戦形式は、各クラス全員が舞台に上がる総当たり戦。最後まで一人でも残っていたクラスがその試合の勝者となる、シンプルかつ苛烈なルールだ。
・・第一試合:A対Cクラス・・
第一試合のカードが発表された。まずは「A対C」と「B対D」。 リリーたちの出番はBクラスとの対戦だが、まずはAクラスの実力を見極める機会となる。
舞台に上がるAクラスの一団。その中に、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべる二人組がいた。ガリ王子のエドワードと、ブタ公爵のガストである。彼らは勝利など二の次、本命であるリリーとの対戦を前に、セクハラターゲットの選定で揉めていた。
「……ガスト。いいか、Cクラスには宝石のような原石が紛れている。僕の狙いはあの娘、リノ・ルピナスだ。あの怯えた小動物のような瞳……僕が保護してやらねばならん!」
エドワードが指差したのは、Cクラスで最も小柄な少女だ。
名前:リノ・ルピナス
容姿: 栗色の髪をサイドテールにし、大きな瞳を不安げに揺らす、クラスで一番幼く見える生徒。
「殿下ッ! 何を血迷っておられるのですか!」 ガストが、自身の肥大化した大胸筋(脂肪)を震わせながら猛反論する。 「幼き蕾を散らすなど、騎士の……いえ、漢の風上にも置けませんぞ! 女神アフロヘーア様は仰いました、『ガチムチこそ貢ぎ物』だと! ならば女性側もそれに相応しい『質量』を備えていなければバランスが取れぬというもの!」
ガストが熱視線を送るのは、Cクラスの「歩く質量」と噂される女子生徒だ。
名前:ベリンダ・バレンタイン
容姿: 金髪のウェーブヘアに、制服のボタンが今にも弾け飛びそうなほどの爆乳を持つ。
「私はあのベリンダ様の、重力に抗う双丘にこの身を投じますぞぉぉ!」
「おのれガスト! 女神の度重なる教育(お仕置き)で、脳まで脂肪に変わったか! 爆乳など、我らロリ同盟に対する裏切り、死罪に値する不敬だぞッ!」
「裏切りではありません、進化ですッ! これこそ女神様が我らに求められていることですぞっ!殿下こそ、いつまでも絶壁という名の荒野を彷徨うのはおやめなさい!!」
王子とブタ、かつての同志は、舞台の上でつかみ合いの喧嘩を始めんばかりの勢いで罵り合う。
・・女神の沈黙と怒り・・
その頃、地底に蠢く「寄生魔樹」の動向を監視するため、いつも以上に学園に意識を割いていた女神アフロヘーアは、天界(あるいは地脈の隙間)からこの二人の醜い会話をすべて拾い上げていた。
(……ちょっとぉ。あたし、誰かを襲えなんて一言も言ってないんだけど? むしろ「乙女を尊べ」って言ったわよね!?)
女神の額に青筋が浮かぶ。 (……あいつら、あたしの教えを「都合のいいセクハラ理論」に変換しやがって……。決めたわ。魔王の騒ぎが終わったら、あの二人は「筋肉アフロ矯正・地獄の百番勝負」に強制連行ね。覚えときなさいよ……!)
・・火蓋、切る・・
「……試合、開始ッ!!」
審判(教師)の声が響くと同時に、Cクラスの生徒たちが一斉に魔力を練り始めた。 しかし、Aクラスのエリートたちは、それ以上の速度で最新の魔導杖を構える。
「さあ行くぞガスト! どさくさに紛れて、リノちゃんのサイドテールを掴むのだ!」 「ベリンダ様の揺れる山脈に、私は全力を投じますぞぉぉぉ!」
「貴様ら、真面目にやれと言っているだろうがッ!!」 リーダーの騎士学園一年(そう、この模擬戦はA~Dの格差を知らしめるためなので両学園合同である)アレントの怒鳴り声も虚しく、欲望に狂ったAクラスの変態たちが突撃を開始した。 リリー、ミリィ、モミジの三人は、冷ややかな視線でその阿鼻叫喚を舞台の下から眺めるのであった。
「……ん。……ゴミ。……燃やしたい」 「リリー。……あだしたちの出番、あいつらと同じ舞台に上がるの、正直嫌だべな……」
護衛は参加できないわけだが、モミジはすっかりそのことを忘れていた・・・
・・第一試合:A対Cクラス、セクハラの代償・・
セクハラターゲットの選定で揉めていた二人であったが、それぞれ単独任務に当たるということで決着していた。
エドワードが狙うのは、Cクラスで最も小柄な少女、リノ・ルピナス(栗色の髪をサイドテールにし、大きな瞳を不安げに揺らす、クラスで一番幼く見える生徒)。 ガストが狙うのは、Cクラスの「歩く質量」ことベリンダ・バレンタイン(金髪のウェーブヘアに、制服のボタンが今にも弾け飛びそうなほどの爆乳を持つ)。
二人の口論と、その醜悪な下心は、女神アフロヘーアの逆鱗に触れていたが、試合は開始された。
「行くぞガスト! リノちゃんのサイドテールを掴むのだ!」 「ベリンダ様の揺れる山脈に、私は全力を投じますぞぉぉぉ!」
Aクラスの圧倒的な実力に対し、Cクラスの生徒たちは次々と護符を破壊され、転移していく。しかし、リノとベリンダだけは違った。
「な……サイドテールを、掴もうとしたですって……!? 許さない!!」 普段は大人しいリノの瞳が、怒りに燃えた。彼女は隠し持っていた魔力弾を掌に集中させ、エドワードの股間目掛けて容赦なく叩き込んだ。
「ひぎゃあああああああッ!!」
護符は砕け、エドワードは白目を剥いて転移していった。 一方、ガストもまた、ベリンダの猛烈な反撃を食らっていた。
「私の……私の胸に突撃しようとしただとぉ!? 恥を知れ、変態ブタ!!」 ベリンダは自身の豊かな質量を活かし、まさかの「回転体当たり」を敢行。ガストは衝撃と、その圧倒的な質量に押し潰され、護符が砕けると共に、叫び声も上げられずに転移していった。
結果としてAクラスはCクラスを圧倒し、最終的にかなりの人数が舞台に残って勝利を収めた。しかし、Aクラスのクズ代表たる二人だけは、セクハラの代償を支払い、屈辱的な形で舞台から消え去ったのである。
・・第二試合:B対Dクラス、幼女の進撃・・
そしていよいよ、第二試合「B対D」の対戦カードが発表された。 魔法学園Dクラス、そしてBクラス。
「……リリー。……出たい。……全部、燃やしたい」 「あだしもだべ。あのブタと王子、まとめて叩き潰したいべな!」
舞台袖では、ミリィとモミジが今にも飛び出さんばかりに臨戦態勢に入っていた。二人を説得し、なだめすかすのに、リリーは普段の三倍の精神力を使ったほどだ。
「いい? 二人とも、これは『生徒だけの模擬戦』なの。二人の出番は、もっと後で必ずあるから。……それより、Dクラスのみんなの頑張りを見守ってあげて?」
舞台に上がるDクラスの生徒たち。 対するBクラスには、優秀な人材が集まっていた。
魔法学園Bクラス委員長:シリル・グラッドウェル(男性)
容姿: 知的な雰囲気を纏い、銀縁眼鏡をかけた細身の美男子。防御魔法と回復魔法に長ける。
騎士学園Bクラス委員長:リアナ・ストームブレード(女性)
容姿: 短く刈り込んだ金髪に、引き締まった体格。堅実な剣技と、味方を鼓舞する統率力を持つ。
「Dクラスの諸君、健闘を祈る。だが、我々Bクラスの盾は堅いぞ!」 シリルが優雅に魔導杖を構え、リアナも精悍な顔つきで剣を抜いた。
「リリーちゃん、私たちはあなたを守るわ!」 「私たちの温泉(魔改造風呂)と、美味しいお茶(一万年物)のためにも、負けるわけにはいかないんだから!」
Dクラスのお姉様方(同級生)が、リリーを囲むように陣形を組んだ。 「みんな……ありがとう」
リリーは、皆の覚悟に微笑み、静かに魔力を高めた。 シリルとリアナの善戦はあったものの、その「絆」と、リリーの放つ「一万五千年の波動」は、Bクラスの想像を遥かに超えていた。
Dクラスのお姉様方が放つ初級魔法は、リリーの魔力で増幅され、Bクラスの防御陣を次々と打ち破る。シリルが繰り出す防御魔法は、リリーの魔法によって簡単に蒸発。リアナの剣技も、リリーの「魔力フィールド」によって動きを封じられる。
善戦を繰り広げたお姉様たちであったが、Bクラスとの実力差は相当なものだった。戦いも決着に近づいていた。Dクラスの最後の一人——リリーが、舞台の中央に凛と立っていた。 Bクラスの生徒たちが次々と転移していく中、シリルとリアナは最後の力を振り絞り、リリーへと突撃した。
「くっ……! まだだ、まだ終わらん!」 「諦めない! これが騎士の誇りだ!」
二人の護符が砕け散り、舞台から消え去る瞬間、リリーはただ静かに、しかし圧倒的な力で彼らを舞台外へと押し出した。
第二試合、Dクラスの勝利であった。




