表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/112

第十四話:物言い! 土俵際の審判と新たな紛争

「薪割り大会」一年生の部。その結果は、アレスガイア学園の歴史に刻まれるほど衝撃的なものとなった。


優勝:魔法学園一年Dクラス。 二位以下を数万本という圧倒的な薪の数で引き離し、文字通りの圧勝である。一方、例年なら魔法学園Dクラスと「どちらが最下位か」を泥仕合で競い合っていた騎士学園Dクラスは、いつも通り順当に最下位。この異常事態に、演習場を埋め尽くす全校生徒は、もはや感嘆を通り越して呆然としていた。


・・授与:黄金の斧トロフィー・・


「ほっほ、見事じゃった。モミジ、そしてリリアーヌ。お主らのおかげで、わしの代の燃料費が浮いたわい」


表彰式の壇上、アマリリス理事長が満面の笑みを浮かべ、魔法学園Dクラスに黄金の斧を模した優勝トロフィーを差し出した。リリーがそれを代表して受け取ろうと、小さく一歩前へ出たその時——。


「待ったッ!! その表彰、不服にござりまするッ!!」


会場の空気を切り裂く、腹の底から響くような叫び声。 壇上へ続く階段をドスドスと、しかしどこか優雅に(?)駆け上がってきたのは、二人の美女——元ホモの副会長**バルト(♀)と、書記のドスコイ(ハリスン)(♀)**であった。


・・物言い:相撲道と騎士の誇り・・


ドスコイ(♀)は、豊かなマシュマロボディを揺らしながら、相撲の審判が「物言い」をつける際のような堂々たる風格で、理事長とリリーの間に割って入った。


「理事長閣下! わたくし、ドスコイ・ハリスン……否、魂に刻まれし相撲道(SU・MO・U)の名において、この結果に異議を唱えさせていただきますわ!」


彼女は美しい垂れ目を鋭く光らせ、リリーの背後に控えるモミジを指差した。


「代理人の参加は認められております。しかし! あのモミジさんの薪割りは、もはや『薪割り』という名の神事であり、暴力! あまりの衝撃波により、隣のレーンで我がAクラスが割ろうとしていた丸太まで勝手に割れてしまったのです! これは土俵外からの不当な干渉、いわば『足取り』による反則に等しい行為ですわ!」


「左様だわ!」 バルト(♀)も、爆乳を激しく上下させながら同調した。 「私は聖筋騎士団の推薦を受けた身! 騎士の美学から言わせてもらえば、あのような『一瞬で終わる作業』に林業への感謝など微塵も感じられない! 泥にまみれ、汗を流し、大胸筋……いえ、大胸筋を震わせてこそ薪割り! Dクラスの勝利は、効率を重視しすぎた『魔法使いの傲慢』よ!」


・・混迷の審判・・


「……ん。……ただの、嫉妬。……見苦しい」 ミリィが冷淡に言い放つが、バルト(♀)とドスコイ(♀)は止まらない。


彼女たちは、リリーたちへの個人的な怨恨(美女にされた恨み)と、元男性としての「力への執着」が混ざり合い、とにかくDクラスに恥をかかせたい一心であった。


「理事長! このような不正同然の勝利を認めれば、学園の秩序は崩壊しますわ! ここは一度、代表者同士による『本気の取組』で決着をつけるべきではありませんこと!?」


「ほほう、面白いことを言うのう」 アマリリス理事長は、事態がさらにカオスになるのを面白がるように、扇子で顎を叩いた。


「リリアーヌ。どうするかの? 物言いがついてしまった以上、このままトロフィーを渡すのも、後に禍根を残すかもしれぬぞえ」


リリーは溜息をついた。目の前でマシュマロボディを震わせるドスコイ(♀)と、美貌の裏で筋肉への未練を爆発させているバルト(♀)。


「……いいわ。そこまでおっしゃるなら、相手をして差し上げますわ。ただし——」 リリーは、観客席で鼻血を出しながら三大幼女(と、美女二人)を眺めているガリとデブを指差した。


「あの二人を次の『農業大会』で私たちの下僕(馬役)にする許可をいただけるなら、受けて立ちますけれど?」


この一言により、薪割り大会の表彰式は、突如として「代表者による特別再試合」という名のカオスへと突入することになった。


しかし、それに待ったをかける者たちがいた。


「……何よ、その言い掛かりは! モミジちゃんの努力を侮辱する気!?」 「そうよ! 副会長と書記だからって、私たちの『リリー』の勝利にケチをつけるなんて許さないんだから!」


表彰式の壇上は、一瞬にして修羅場と化した。リリーを「理想の妹」として可愛がり始めたDクラスの先輩たちが、ドスコイ(♀)とバルト(♀)を包囲したのだ。 女子の体になったドスコイ相手なら、お姉さんたちも遠慮がない。マシュマロのような肉体に密着し、逃げ道を塞ぐように詰め寄る。


「あ、あら! 近いですわ! 寄り切りはやめてくださいまし!」 「ちょっと、私を誰だと思っているの!? ああっ、爆乳が、爆乳に挟まれるわ……ッ!」


さらには、輪に入れなかったお姉さんたちがアマリリス理事長にも詰め寄り、「この結果は正当ですわよね!?」と猛抗議。壇上は百合の花園とカオスが混ざり合った、凄まじい「もみくちゃ」状態に陥った。


・・紛失:噴水に消えた黄金・・


その混乱の最中、リリーの手から離れ、宙を舞ったものがあった。 優勝トロフィー——『黄金の斧』である。


「あっ……!」


キン、と高く、そして鈍い水音が響いた。 壇上のすぐ横にある、学園のシンボル「知恵の噴水」に、トロフィーが無残にも吸い込まれていったのだ。


その瞬間。噴水が七色の後光に包まれ、水柱と共に、もはや学園のレギュラーと化した女神アフロヘーアが、三本の斧を抱えて神々しく(?)降臨した。


『ちょっとぉ! 誰よ、こんなところで不法投棄したのは!』


女神は両手に一本ずつ、そして口に一本、計三本の斧を器用に保持して言い放った。


『さあ、正直に答えなさい。あなたたちが落としたのは、この豪華絢爛な「金の斧」かしら? それとも渋い輝きの「銀の斧」? それとも、この安っぽいプラスチックみたいな「普通の斧」かしら?』


・・誤答:真理の罠・・


「金の斧です!!」


食い気味に、そして一切の迷いなく叫んだのは、観客席で息を吹き返していたガリ王子エドワードと、ブタ公爵ガストであった。彼らは「正直に答えればご褒美パンツがもらえる」という、前世の童話レベルの短絡的な思考で声を揃えたのだ。 実際、リリーたちが落としたのは「黄金の斧トロフィー」なのだから、彼らの答えは客観的事実に基づいた「真実」のはずだった。


しかし。


『……なんですってぇぇぇぇ!!』


女神の顔が、一瞬にして鬼瓦のような憤怒の表情に変わった。 『あなたたち、この期に及んで見栄を張るなんて……嘘つきには、あたし直々にお仕置き(ディープ・トリートメント)が必要みたいね!!』


「えっ? いや、本当に金……」 「ぎゃあああああああ!!」


女神アフロヘーアは、隆起した大胸筋を震わせながら、エドワードとガストの首根っこを掴むと、そのまま「知恵の噴水」の底へと二人を引きずり込んでしまった。 水面には「ブクブク」という泡と、断末魔のような叫びだけが残された。


・・真実:メッキの代償・・


「……ねえ、リリー。なんで『金』って答えたのに怒られたんだべ?」 モミジが不思議そうに首を傾げた。


「……ん。……女神。……判定、厳しい」 ミリィも無表情に沈黙する中、リリーは一人で、事の真相を察して溜息をついた。


「……理由は簡単よ、モミジ。私たちが落としたトロフィーは、学園の備品。つまり、**『金メッキ』**を施しただけの安物だったのよ」


そうなのだ。女神アフロヘーアが持ってきた「金の斧」は、神の力によって生み出された、不純物一切なしの**「純金製」**。 学園のトロフィーを「金の斧」と呼ぶのは形式上の名称であって、物質的には「偽物」だったのである。


「女神様にしてみれば、メッキ品を『金の斧』と呼ぶこと自体、黄金に対する侮辱だと思ったのか……あるいは、単に二人をお仕置きしたかっただけでしょうね」


噴水の底からは、今もなお女神の「アンタたち、もっと正直に生きなさいよ!」という説教と、二人の情けない悲鳴が響き渡っている。


「……ほっほ。トロフィーは失ったが、代わりに本物の純金を三本も置いていったわい。さすがは女神様、太っ腹じゃのう」 ちゃっかりと純金と純銀の斧を回収した理事長が、扇子で口元を隠して笑う。


こうして、今年度の薪割り大会は、優勝トロフィーが「神遺物」に昇格し、二人の変態が噴水の底で「水の女神による筋肉教育」を受けるという、伝説的なエンディングを迎えたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ