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第七話:揺れる乙女心と無慈悲な接触

翌朝、学園の正門を潜る二人の美女の姿に、登校中の生徒たちは足を止めた。 一人は燃えるような紅蓮の長髪をなびかせ、はち切れんばかりの胸元をリボンで締めた超絶スタイルの美女。もう一人は、マシュマロのように柔らかな曲線を持つ、癒やし系ぽっちゃり美少女。


昨日まで「筋肉ダルマ」と「土俵の鬼」だったバルトとドスコイである。 二人は実家への泣きながらの説明、性別変更の魔導手続き、そして家人の入れ替え(屈強な男衆から厳格な侍女へ)を、わずか一晩で終わらせていた。公爵家や伯爵家の政治力とは、時として物理法則をも凌駕する。


「……ドスコイ。昨夜、私は鏡の前で絶望したわ。この、歩くたびに揺れる忌々しい脂肪の塊……。あの大胸筋の『硬度』はいずこへ……」 「バルト様……。私もです。自分の肌がこんなに滑らかでは、立ち合いの際の摩擦係数が足りませんわ。……それに、何より悲しいのは……」


二人は顔を見合わせ、重い溜息をついた。 「「男が、男が恋しい……ッ!!」」


絆はあっても、性癖は「ホモ」。彼女たちは、目の前の美女(かつての相友)よりも、自分たちを投げ飛ばしてくれる筋肉質な野郎を求めていたのだ。


・・再会:ケツの残像と無礼な勧誘・・


そんな悲劇のヒロイン(元男)たちの背後から、不快な脂の匂いと、カサカサという不気味な足音が近づいてきた。


「……ハァ、ハァ……見つけた。見つけたぞガスト。あの、壁に突き刺さっていた伝説の黄金律ケツ……!」 「左様ですな殿下! 本日はスラックスではなく、チェックスカートに包まれたその膨らみ……。ああ、昨夜のスケッチを修正せねばなりませんな!」


ガリ王子エドワードと、ブタ公爵ガストである。 二人は昨日、生徒会室で見た「ケツのライン」だけでバルトとドスコイを特定していた。正面に回り込み、彼女たちの豊かなバストを見て一度は「げんなり」と顔を歪めたものの、昨日の「ケツの衝撃」が勝ったらしい。


「いいかい、侵入者。君たちのその、牛のような無駄なぜい肉(乳)には目をつぶってあげよう。その代わり、今から僕たちが用意した『秘密のお茶会ルーム』へ来るんだ。そこでそのケツを……いや、その豊かな感性を僕たちの画力のために提供しなさい」


エドワード王子が傲慢に指を突きつけ、ガストが「ぐふふ」と涎を垂らす。 だが、バルト(♀)とドスコイ(♀)の反応は冷淡だった。


「……何かしら、このガリガリの猿と、締まりのない豚は」 バルトが蔑むような視線を向ける。


「殿、ここは通していただきましょう。……わたくし、あのような筋肉の欠片もない細腕には、一分たりとも興味はございません」 ドスコイも四股を踏む間もなく、冷たく言い放った。


二人は深く溜息をつくと、相手にするのも馬鹿らしいとばかりに背を向け、去ろうとした。


・・暴走:事故という名の「死」・・


「な……っ、無視するのか! この僕を! 王家の血を引くエドワード・アレスガイアを!」 「待ちなさい! まだ話は終わっていませんぞぉぉ!」


プライドを傷つけられたガリとデブ。彼らはとっさに、去りゆく美女二人の腕を掴んで引き留めようとした。 しかし、彼らは忘れていた。自分たちの運動神経が、ゴミ屑以下であることを。


「おっと……ッ!」 「ぬおっ、足が……!」


エドワードはガリガリの足をもつれさせ、ガストは自分の腹の肉に振られて前方へダイブした。 二人がバランスを崩し、その「救いを求める手」が虚空を彷徨った先には——。


ボフッ。


「「………………あ」」


エドワード王子の細い手が、バルト(♀)の、騎士団級にビルドアップ……否、ボリュームアップされた右胸を、鷲掴みにした。 そしてガストの脂ぎった両手が、ドスコイ(♀)の、マシュマロのように柔らかな両胸に、深く沈み込んだ。


学園の廊下に、時が止まったかのような沈黙が流れる。


「……あら」 バルトの眉間が、かつて戦場で見せた「虐殺モード」のシワを作る。


「……殿、これは……『寄り切り』ではございませんわね?」 ドスコイの目から、癒やし系の光が完全に消え、漆黒の殺気が溢れ出した。


その光景を、たまたま通りかかったリリー、ミリィ、モミジが遠目に見守っていた。 「……ん。……合掌。……南無」 「あだしの斧も、あの二人の首はもういらないって言ってるべ。……代わりに、すり鉢で潰して挽肉にした方がいいってさ」


「……リリアーヌ様、アンナが通報しましょうか? それとも、そのまま『埋葬』の手続きを?」 アンナがどこからかスコップを取り出す中、バルトとドスコイの、元ホモの怨念を込めた「正当防衛」が炸裂しようとしていた。


バルト(♀)とドスコイ(♀)の瞳に宿ったのは、かつての戦場を彷彿とさせる「破壊」の輝きであった。


「……貴様。私の『聖域』を、その貧弱な指で汚したな?」


バルトの背後に、筋肉の神罰を司るオーラが立ち昇る。 「バルト流・正当防衛――『ラットスプレッド・ビンタ』!!」 バルトは背甲筋を限界まで広げるポージングの勢いをそのまま右腕に収束させた。バキィィィン!! という乾いた音と共に、エドワード王子のガリガリな体は、独楽のように回転しながら廊下の天井へと吸い込まれていった。


一方、ドスコイ(♀)の前には、もはや女子生徒の姿はなかった。 「……土俵が見える。……はっけよい、のこったぁぁ!!」 瞬間、ドスコイとガストを中心に、黄金に輝く「精神の土俵」が展開された。ドスコイは女子制服のスカートを激しく捲り上げ(下はスパッツである)、四股を踏む。 「ドスコイ・ハリケーン・ブチカマシッ!!」 マシュマロのような柔らかい肉体から放たれたのは、数トンの重圧を一点に集中させた衝撃。ガストの脂ぎった巨体は、一発の張り手で廊下の壁を突き破り、中庭まで「寄り切られ」て沈んだ。


・・深淵の悟り:二人のアイコンタクト・・


「……はぁ、はぁ。……殿下、生きておいでですか」 中庭のクレーターの中で、ガストが血を吐きながら呟いた。 「……あぁ、ガスト……。僕は今、宇宙の真理を見た気がするよ……」


エドワード王子は天井から逆さまにぶら下がったまま、自分の右手のひらをじっと見つめていた。その手には、まだバルト(♀)の「暴力的な弾力」の感触が残っている。


二人は、重傷を負いながらも、無言で深いアイコンタクトを交わした。


(ガスト……絶壁は、素晴らしい。それは揺るがない。ロリータは信仰であり、愛でるための至高の芸術だ。……そう、芸術品には「ノータッチ(触れてはならない)」が鉄則だ。だが……) (殿下……左様ですな。逆に言えば、あの牛のようなデカ乳は……信仰の対象外。つまり、ノータッチ、ではなく……「タッチOK」な存在なのだ! 触れて、揉んで、その感触を蹂躙しても、我らのロリータ信仰は一切汚されることがない!)


二人は、この世の邪悪な真理を理解してしまった。絶壁は「観賞用」、巨乳は「実用(ストレス解消用)」。 この歪んだ悟りを開いた瞬間、二人の周りに禍々しいまでの「性癖のオーラ」が渦巻いた。


・・女神、再降臨・・

その時である。 「ちょっとアンタたち! 盛り上がってるところ悪いんだけど、見てらんないわよ!」


学園の廊下を、済み渡るような、しかしドスの効いたオネエ言葉が切り裂いた。 眩い光と共に現れたのは、あのショーツ信託以来の登場となる女神アフロヘーアである。


「ア、アフロヘーア様!? なぜ学園に……」 リリーたちが驚いて跪く中、女神は間延びした足取りで、クレーターの中のガリとデブの元へ歩み寄った。


『あのね、私は以前「真の漢」を探せって言ったわよね?見つかったからもうおしまいってわけじゃないのよ!なのに、なによその「ケツさえ良ければ多神教」だの「実用巨乳」だのっていう薄汚い性癖のデパートは! 私、そういう不潔な欲求不満、一番嫌いなのよ!』


女神は扇子でエドワード王子の額をパチンと叩いた。


『いい? 世界の危機がまた訪れるかもしれないのよ! 勇者ルシウスちゃんを支えるべき貴族の坊ちゃんたちが、そんなところで「揉み心地」の真理に辿り着いてどうすんのよ! ……もう、仕方ないわね。アンタたちには「特別なお仕置き」が必要みたいだわ』


女神の瞳が怪しく光る。 リリーは直感した。この女神の介入は、間違いなく事態をさらに「カオス」の深淵へと叩き落とすと。

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