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第六話:暴走する風紀委員と正義の迷走

生徒会室。そこは学園の秩序を統べる聖域。 しかし、その重厚な扉を蹴破らんばかりにして駆け込んできたのは、二人の「見知らぬ絶世の美女」であった。


「会長ぉぉ! 会長ぉぉ! 大変ですわ、私が、私の大胸筋がぁぁぁ!」 「書記のドスコイです! 殿、ドスコイ・ハリスンにございます! 突っ張りが! 私の突っ張りに重みが足りないのですぅぅ!」


そこにいたのは、ブカブカの男子制服をはだけさせ、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした紅蓮の美人と、ぽっちゃり美少女だった。


・・困惑の生徒会幹部・・


「……ちょっと、誰よあなたたち。ここをどこだと思っているの?」


冷徹な声が響く。机に座っていたのは、生徒会長のイザベラ・ルミナス。 公爵家の令嬢であり、学園創設以来の才女と謳われる三年生だ。その鋭い眼光は、数多の不届きな生徒を黙らせてきた。


「不法侵入かしら。それとも、他国のスパイが新手の幻惑魔法でも使っているの?」


その隣で、書類を整理していた会計の二年生、カレン・ミレディが眼鏡をクイと押し上げた。カレンは次期会長の筆頭候補とされる秀才で、その計算能力は「人間電卓」と称されるほどだ。


「会長、照合データに該当者はいません。この学園にこれほどの美貌を持つ女子生徒がいれば、私の『学内ファンクラブ・リスト』に載っていないはずがありませんわ。即刻、捕縛すべきです」


「待ってください、私です! 副会長のバルトですわ! この胸のエンブレムを見てください、ボルト家の家紋です!」 「ドスコイです! 四股を踏むから見てください! ドスコイ、ドスコイィ!」


二人が必死に訴えるが、イザベラとカレンの目には「狂った侵入者」にしか見えなかった。何より、バルトが主張する「大胸筋」は今や柔らかな膨らみと化しており、ドスコイの「岩のような体躯」はマシュマロのような質感に変わっている。


「問答無用。カレン、やるわよ」 「了解です、会長。……演算開始。重力魔法『グラビティ・テイル』!」


カレンが放った重力弾が元ホモの二人を襲う。対するバルト(♀)も無意識に筋肉の記憶で応戦しようとするが、身体バランスが激変しており、無様に転倒した。


・・真面目すぎる「正義の鉄槌」・・


戦闘が激化しようとしたその時、生徒会室の窓を突き破って一人の男が乱入してきた。


「そこまでだッ! 邪悪なる侵入者どもッ!」


風紀委員長、三年生のゼクス・アイアンハート。 銀髪を短く刈り込み、鋼のような肉体を持つ彼は、学内でもトップクラスの実力者である。座学・実技ともに完璧だが、性格が「岩のように真面目で実直」すぎるあまり、一度思い込むと周囲の言葉が一切耳に入らなくなるのが玉に瑕であった。


「ゼクス!? 窓から入るなっていつも言ってるでしょ!」 イザベラが叫ぶが、ゼクスは既に抜剣していた。


「会長、ご安心を! 現場へ向かう途中でDクラスの生徒リリーから通報を受けました! 『生徒会室に変質者が侵入した。一人は筋肉を偽装した巨乳の女、もう一人は脂を偽装したデブの女だ』とな! まさかこれほど凶悪な面構えとは……覚悟せよッ!」


「えっ、リリーが……? ちょっと待って、ゼクス!」 カレンが制止しようとするが、ゼクスは既に「正義の突進」を開始していた。なお、カレンは全生徒の情報を既に記憶している。そうつい最近入学したばかりのリリアーヌのことも知っていたのだ。


「風紀奥義・鉄血断罪ッ!!」


「ちょ、ちょっと! 私です! 副会長のバル――あぁぁぁ!」 「ドスコイィィィ!」


バルトとドスコイは、同僚であるはずのゼクスの全力の一撃を食らい、再び生徒会室の壁へとめり込んだ。


「ふむ……手応えがない。潜入のために肉体を改造した末の衰弱か。悲しいものだな、スパイというものは」 ゼクスは一人で納得し、誇らしげに剣を収めた。


そこに、リリーたちがひょっこりと顔を出した。 「あら、ゼクス委員長。お仕事が早くて助かりますわ。……ね、ミリィ。通報して正解だったでしょ?」 「……ん。……正義の、暴走。……便利」


イザベラ会長は、壁にめり込んだ「元・副会長と書記」と、ドヤ顔のゼクス、そして優雅に微笑むリリーを見比べ、激しい頭痛に襲われた。


イザベラ会長が激しい頭痛を堪え、こめかみを押さえていたその時。生徒会室の重厚な扉が、再びガチャリと開いた。


「ハァ、ハァ……失礼しますよ、イザベラ会長。生徒会補佐の内定者、エドワード・アレスガイア……参上……ッ!」 「……同じく、ガスト・ポークミートですぞぉぉ! ぐふ、ぐふふふふ!」


現れたのは、もはや学園の「負の象徴」となりつつある、ガリ王子とブタ公爵のコンビであった。一年生は正規の役員にはなれないが、王族と公爵家という「コネの暴力」により、彼らには『生徒会補佐』という将来の幹部候補の椅子が用意されていたのだ。


・・深淵の邂逅・・


入室した二人は、そこにいたリリーとミリィの姿を認めると、一瞬で瞳にドロリとした欲望を宿した。


「ああ、リリアーヌたん! ミリィたん! ここで会えるとは、運命……否、デスティニー! ハァ、ハァ、今日も今日とて神々しいまでに平坦なその胸板……ッ!」 「殿下! 見てください、光の加減でリリアーヌたんの鎖骨のラインが……これは新作スケッチの構図が決まりましたな!」


ゼクス委員長が「なんと熱心な入会希望者だ。勇者リリーをこれほど称えるとは、教育が行き届いているな」と勘違いの感銘を受けている横で、二人の視線はふと、壁にめり込んでいる「元ホモの美女二人」へと移った。


壁から突き出しているのは、バルト(♀)とドスコイ(♀)の、男子制服のズボンに包まれたヒップ。ゼクスの全力投球により、二人は見事なまで頭から壁に突き刺さっており、残された下半身だけが情けなく虚空を蹴っている状態だった。


「……ム。殿下、あれは一体……?」 「……ガスト。不敬だぞ。あれは、侵入者……らしいが……」


・・ロリコンの葛藤:ケツという名の新天地・・


二人は、壁にめり込んだケツを見つめながら、かつてない怒りと、それ以上に深い「戸惑い」に襲われていた。


「……許せん。なぜ、彼女たちはパンツを見せていないのだ! 男子の制服だと!? 乙女の尊厳に対する冒涜ではないか!」 「左様です、殿下! 壁に頭から突っ込むなら、せめてスカートで華麗な円を描くのが礼儀というもの……ッ! しかし……しかしです、殿下」


ガストが脂ぎった指で顎を擦る。


「……あの突き出た曲線。絶壁派の我らからすれば、本来なら『肉厚すぎて不合格』のはず。……なのに、なぜでしょう。私の本能が、あの膨らみをも愛せと囁いているような気がするのです……」


「馬鹿なことを言うな、ガスト! 僕たちは生粋のロリ……否、絶壁主義者だぞ! 豊満な肉体など、牛と変わらんと昨日誓い合ったではないか!」


エドワード王子は必死に否定したが、その視線はバルト(♀)の、スラックス越しでも分かる「極上のくびれからヒップへのライン」に釘付けになっていた。


「……待てよ。……もしや、胸さえ見なければ、僕は大人の女性も愛せるというのか……? いや、ありえない。そんなことは宗教的背信行為だ。だが、あのケツのボリューム感は、スケッチブックの余白を埋めるには最適ではないか……?」


「殿下……もしや我ら、新たなゲートを開こうとしているのでは……? 『絶壁至上主義』という一神教から、『ケツさえ良ければ多神教』への改宗……ッ!」


二人は、壁にめり込んだ元・副会長たちのケツを囲み、まるで高名な哲学者のように、深刻な面持ちで意見交換を始めた。


「……お嬢様。あの二人、今すぐ聖剣で浄化デリートした方がよろしいかと」 アンナの冷徹な進言に、リリーは「……同感ね。でも、あそこに刺さってるの、一応バルト副会長たちなのよね」と、乾いた笑いを漏らすしかなかった。


イザベラ会長は、壁に刺さる同僚、ドヤ顔の脳筋委員長、そしてケツについて論じ合うクズ一年生たちを眺め、ついに机に突っ伏した。 「……もういいわ。カレン、今日の生徒会は解散。……誰か、私に強い酒を持ってきて」


学園の秩序を守るはずの生徒会室は、いまや「性癖の実験場」へと成り下がっていた。

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