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第三話:究極の学食、あるいは豚とガリの自滅

「お嬢様、本日の『家畜の餌』、もといDクラス用日替わり定食でございます」 アンナが差し出したのは、泥水のようなスープと、釘が打てそうなほど硬いパンだった。


「……ん。……原子レベルで、不合格」 「あだし、これなら裏山の木の皮を齧った方がマシだべ……」


リリーは冷え切ったスープを眺め、静かに立ち上がった。 「ええ、決めましたわ。まずはこの『食の不毛地帯』を楽園に変えましょう。ミリィ、手伝って」


・・執行:キッチン・レボリューション・・


リリーはまず、厨房に鎮座するやる気ゼロの料理人たちを睨みつけた。 「あなたたち、今日から『伝説』になってもらうわ」


リリーが指を鳴らすと、禁呪の一種**「英霊憑依レプリカ・ソウル」**が発動した。一万年の修行空間でリリーが「美味しすぎて消滅させるのが惜しい」と魂を保存していた、異世界の三ツ星シェフたちの技術と精神が、料理人たちに強制付与される。 彼らの死んだ魚のような瞳に、突如として職人の魂が宿った。


「次に食材ね。……分子構造、再構成リ・ストラクチャー


ミリィが杖を振るう。倉庫に積まれたカビ臭い古米やクズ肉が、分子レベルで分解され、最高級のササニシキとA5ランクの霜降り和牛(ちなみに本物の日本の和牛を再現、ササニシキも)へと組み替えられていく。 仕上げにリリーが「神域建築」を発動。ボロい食堂は一瞬にして、地上百メートルからの絶景を映し出す魔法スクリーン完備の、最高級スカイラウンジへと魔改造された。


・・強奪:豚とガリの傲慢・・


改装が終わった瞬間、香ばしいソースの香りが学園中に広がった。 その匂いに釣られてやってきたのは、案の定、エドワード王子とガスト公爵令息だ。


「な、なんだこの場所は!? Dクラスの分際で、我らAクラスの温室レストランより豪華な場所を使っているのか!」 エドワードがガリガリの指を突きつけ、ガストが脂汗を流しながら叫ぶ。 「リリアーヌたん! これはいけませんな! こんな素晴らしい設備、高貴な我らこそが使うべきですぞ! さあ、今すぐAクラスのレストランと交換しなさい!」


リリーはわざとらしく溜息をついた。 「……そこまでおっしゃるなら、交換して差し上げてもよろしくてよ? 設備ハードはそのまま置いていきますわ」


「ふはは! さすがは分かっているじゃないか!」 エドワードたちは勝ち誇り、リリーたちを追い出してスカイラウンジの特等席に陣取った。


リリーは去り際、ミリィに合図を送った。 「……ん。……魂、回収。……分子、復元」


・・崩壊:Aクラスの仲間割れ・・


エドワード王子とガスト、そして彼らに同調したAクラスの生徒たちが、期待に胸を膨らませて料理を待つ。 「ふふ、これだけの設備だ。出てくる料理はさぞかし……」


だが、厨房から出てきたのは、**元の「泥水スープ」と「釘が打てるパン」**であった。 憑依が解けた料理人たちは再び死んだ魚の目に戻り、食材もただの生ゴミへと退行していたのだ。


「な……なんだこれは! 毒か!? 嫌がらせか!?」 エドワードが叫ぶが、一口飲んだ周囲のAクラス生徒たちが激怒した。


「殿下! あなたが『最高級だ』と言って無理やり交換させたから、私たちは温室のステーキを捨ててここに来たんですぞ!」 「この泥水を飲めというのか! 王子だろうと許されないぞ!」


ここで、アレスガイア魔法学園の鉄の掟が牙を剥く。 学則第一条:学園内に身分制度を持ち込むべからず。全ての評価は実力と魔導に準ずる。


この学則がある限り、王子であっても「不味い飯を強要した責任」からは逃れられない。 「殿下のせいだ!」「ガスト、お前の食い意地が招いた結果だろ!」 「あ、いや、僕は……殿下がそう言ったから……!」


スカイラウンジでは、かつてないほど醜い「Aクラスの仲間割れ」が勃発していた。


一方、リリーたちは元のAクラス用レストランをさらに魔改造し、アンナの手料理で優雅なランチを楽しんでいた。 「……お嬢様、あちらの叫び声が、良いスパイスになりますわね」 「ええ、身の程を知るには、ちょうど良い授業だったんじゃないかしら?」


リリーは、遠くで聞こえる「泥水スープ」を巡る罵声を聞きながら、静かに紅茶を啜った。

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