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第三十一話:黄金の一物、邪神を貫く

北の空が完全に割れ、そこから這い出したのは、全宇宙の絶望を凝縮したような異形の神——邪神であった。その巨躯が地上に降り立つだけで大陸は震え、空の色は生命を拒絶する紫へと塗り替えられる。


だが、大聖堂の前に立つ「人類の防壁」は、微塵も揺らがなかった。


・・漢たちの信仰:マッスル・バリアー・・


「信徒たちよ、今こそ女神への信仰を『筋肉』で示す時だ! 正装ドレス展開ッ!!」


教皇マッスル一世の号令と共に、百名の聖職者たちが一斉に女装ドレスをパンプアップではじけ飛ばし、ポージングを開始した。 彼らが放つ、汗と熱気とプロテインの香りが混じり合った「漢の覇気」は、女神アフロヘーアの加護を呼び込み、王都全体を覆う黄金の結界と化した。それは邪神が放つ死の波動を相殺し、勇者たちの背中を強力に押し上げる。


・・神域の蹂躙:四人の英雄と三匹の化身・・


「さあ、お掃除の時間よ。ルシウス、道は私たちが作るわ!」


リリーが宙に舞い、一万年の修行で完成させた「因果律崩壊弾頭」を指先から連射する。邪神が再生しようとする「未来」そのものを爆破し、その動きを固定する。 横ではモミジが、神金属オリハルコンのラブリュスを次元ごと振り抜き、邪神の触手を薪のように切り刻んでいた。


「……ん。……全術式、並列起動。……存在置換デリート


ミリィが虹色の神話杖を振るうたび、邪神の肉体の一部がこの世の法則から抹消されていく。 さらに、くまちゃん、ねこちゃん、ひよこちゃんが、ぬいぐるみとは思えぬ巨獣へと実体化。くまちゃんがパパ譲りの(?)怪力で邪神の核を掴み、ねこちゃんとひよこちゃんが魔法の嵐でそれを焼き払う。


邪神の猛攻により、戦線は幾度となく崩れかけた。だが、傷を負った瞬間にリリーとミリィの超広域回復魔法が発動し、細胞一つ残さず修復する。人類側に、死の入る隙間はなかった。


・・終焉の絶唱:黄金の聖剣・・


邪神が苦悶の声を上げ、その核が露わになった瞬間。 ショーツ一丁の正装を纏い、黄金のオーラを放つ九歳の勇者ルシウスが、空へと高く跳躍した。


「これが……僕たちの、一万五千年の答えだ!!」


ルシウスが聖剣を天に掲げると、世界中の漢たちのポージングから抽出された聖なる力が、一枚のショーツを通じて彼の一物——否、魂へと収束していく。


「喰らえ! 『絶・天頂突破・股間爆裂・聖光破邪斬(アルティメット・グランド・ショーツ・スラッシュ)』!!」


中二病全開の叫びと共に振り下ろされた白銀の刃。 それは邪神の因果、肉体、そして「羞恥心を捨てきれなかった神としての慢心」を真っ向から貫いた。


「バ、カな……。一枚の布地を信じた者たちに、この我が……ぐわあああああっ!!」


邪神は、黄金に輝く食い込みの眩しさに焼かれ、塵一つ残さず消滅した。


・・エピローグ:凱旋、そして未来へ・・


戦いが終わった。 北の空には青空が戻り、邪神の塵はキラキラとした光の粒子となって世界に降り注いだ。


王都は大歓喜の渦に包まれた。 凱旋パレードの先頭を行くのは、オープンカー(リリーが創造魔法で作成)に乗った勇者ルシウス。その姿はいまだショーツ一丁であったが、誰もそれを笑う者はいなかった。民衆は口々に叫んだ。 「勇者様! 一番キレてるよぉぉぉ!」 「弟君、背中に鬼が宿ってるぅぅ!!」


国王からは「終身名誉勇者」の称号が、教皇からは「永久欠番・ボディービル殿堂入り」の栄誉が賜られた。 そして、ルシウスが穿き抜いたあのショーツは、人類を救った聖遺物として、大聖堂の最深部にダイヤモンドのケースに入れて祀られることとなった。


騒動が落ち着いた公爵邸。 リリー、ミリィ、モミジの三人は、いつものように大浴場に浸かっていた。


「……ん。……やっと、静かになった」 「全くだべ。一万年修行して、最後がショーツの争奪戦だなんて、誰が予想したべな」


リリーは湯船に浸かりながら、空を見上げた。 邪神は倒した。魔王も軍門に降った。 だが、女神アフロヘーアのあの「オネエ言葉」が、まだ耳に残っている。


「……ねえ、二人とも。次は『真の淑女おとめ』を名乗るためのブラジャーが必要だなんて、女神様が言い出さないことを祈りましょう?」


その予感は、きっと外れない。しかし、断崖絶壁にブラジャーなど必要ない。その時にリリーとミリィは、どうするのか・・・ 一万一千年の物語は、ひとまずの休息を迎え、また新たな「カオスな日常」へと続いていくのであった。


(第一章 邪神編 完)

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