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第九話:筋肉の福音と、女神の真顔

無事に(?)勇者お披露目の儀を終えた翌日。私たちは王都の公爵邸に腰を落ち着けていた。 母様とルシウスの守りはセレスティーヌ先生に任せ、私はバラン先生とミリィを連れて王都の視察——もとい、観光へと繰り出した。


王都は活気に満ちていた。特に冒険者ギルド周辺の熱気は凄まじい。 それもそのはず、王都郊外に「地下数百階に及ぶ」と噂される空前絶後の超巨大ダンジョンが発見されたのだ。


「……ん。……あの穴、深い。……マナの澱みが、尋常じゃない」


ミリィが杖を握り直し、王都の地下を見通すように呟く。 酒場からは、行方不明になった上級パーティーを悼む声や、ギルドが封印を検討しているという噂話が聞こえてくる。


(……ダンジョンか。前世のゲーマーの血が騒ぐけど、今はルシウスが優先だ。冒険者登録もしてないしな……)


私は後ろ髪を引かれる思いで、観光を切り上げた。


翌日。私たちは再び大聖堂を訪れ、ルシウスの今後について教皇と対峙していた。


「勇者殿は教会が保護し、最強の聖騎士として育て上げるのが女神様の御意志……。我々にはその責務があるのです」


教皇は物腰柔らかく、だが断固として譲らない。母様は「まだ乳飲み子の息子を渡せるわけがありません!」と毅然と撥ねつける。 話し合いが平行線を辿る中、教皇の額に青筋が浮かび始めた。


「……やむを得ない。言葉で解らぬのであれば、私の『本気』をお見せしましょう」


バリバリバリッ!!


突如、教皇が自らの聖女ドレスを豪快に引き裂いた。 現れたのは、黄金に輝くオイルを塗ったくったような肉体——そして、ボディビル大会用の極小ビキニパンツ一丁の姿。


「これが私の『戦闘服』……! 魂の咆哮を聞けェイッ!!」


(……何が戦闘服だ、ただの変態じゃねーか!!)


叫ぼうとした瞬間、私の意識が急激に遠のいた。


気がつくと、そこは懐かしの「あの空間」だった。 玉座にふんぞり返る、厚化粧のアフロ女神がそこにいた。


「よお、太郎ちゃん。元気してた?」


「……クソ女神! 言いたいことは山ほどあるけど、まずは聞かせてもらおうか。なんで俺を女にしたのかを!」


俺はやんわり(のつもりで)問い詰めた。だが女神は鼻をほじりながら「えー、ご褒美じゃん? 目の保養でしょ?」と一蹴。


あれ、女神ってこんなヤツだっけ?もっと『あらあら~~ん。太郎ちゃんったら可愛いわね~~ん。』みたいな喋り方じゃなかったっけ??


「じゃあせめて……せめて大人になったら巨乳にして! 切実だよ、これ!」


「無理無理。あんたの魔力量で巨乳にしたら、燃費悪すぎて戦闘中に胸の重みで自爆するわよ。諦めて『お揃い』のミリィちゃんと仲良くしなさい」


あっさりと絶望を突きつけられ、私が膝をついた時。 女神の表情が、急に「真顔」になった。……バッチリメイクのオカマのマジ顔。正直、キツイ。


「……冗談はここまでよ、太郎ちゃん。ルシウスが勇者として生まれたのは、偶然じゃないわ。魔王が邪神と契約して、アレスガイアを飲み込もうとしてるの」


これが女神のテンションが異なっていた原因だろうか。物凄く重大な内容が告げられる。


女神が語る真実は残酷だった。 現在戦争中の「帝国」は、すでに上位貴族から皇帝に至るまで、魔族に中身をすり替えられているという。


「……だから、ルシウスは教会に預けなさい。あそこには私の加護がある。今のあなたたちじゃ守りきれないわよ」


その言葉を最後に俺の意識が現実世界へ帰還した。


「——っ、リリアーヌ様!?」


意識が現実に戻った瞬間、私の目に飛び込んできたのは地獄のような光景だった。


「勇者殿に女神様の祝福ベロチューをぉぉぉーーー!!」


ビキニパンツ一丁の教皇が、顔を真っ赤にしてルシウスに迫っている。 それを母様が「やめてぇぇ!」と叫びながら教皇の顔面に回し蹴りを叩き込み、ミリィが重力魔法で教皇の足を地面に縫い付けていた。


「……ん。……ファーストキス、守る。……死守」


(……女神様。アンタが『加護がある』って言った教会、一番の変態がトップに居るんだけど!?)


私は即座に魔力を練り上げ、教皇の顔面に全力の「身体強化パンチ」を叩き込むべく、黄金の光を纏った。

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