プロローグ
キキッ!!ギイイーーーーッ!!!
音を文字で表すのは難しいが、俺が人生最期に聴いた音は表すならそんな音だった。
でも後悔はしていない。
目の前で小学生低学年くらいの女の子が轢かれそうになってたんだもの。
見て見ぬふりをしてその後の人生を歩もうものなら確実にトラウマになっていただろう。
とは言えとっさに行動できるかどうかはその時になって見なければ分からないものだ。
俺はとっさの時にちゃんと自分の望む行動がとれたんだな。
そう思うと何かやり遂げたような、不思議な満足感?充足感?まぁそのような感情とともに俺の意識は闇に落ちるのだった。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
気が付くと真っ白な空間にいた。
と、言えば定番のシチュエーションだな。
日頃からラノベ愛読者の俺は異世界転生ものが特に大好物だった。
まさか自分にそんな機会が訪れるとは。
「気が付いたようですね。」
ktkr
声は美しい女性のもの。
間違いなく女神様!
ああっ!女神さま!!
振り返った俺はその御姿を見て固まる。
ピシッ!と瞬時に石化したような音が俺の心の中に響く。
なぜなら、
そこに居たのは筋骨隆々のハゲ頭のおっさんだったのだ。
それだけならまだ良い!
そんなおっさんが、ひらっひらふりっふりの素敵な女性もののドレスを着ていたのだ。
ついでにいうと顔にはばっちりメイクが施されており、それがまたキツさを倍増させていた。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
驚きのあまり固まる俺と何か反応を待っているおっさん。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・、コホンっ!驚くのも無理は無いわ。この美の女神、アフロヘーアに逢った殿方はだいたいそんな反応をするわね。」
私が美し過ぎるのがいけないのかしら、と何やらブツブツ言っている。
しばし放心状態だった俺だったが、おっさんのつぶやき(だが聞こえてくるのは若い女の人の声)は、はっきりと聞こえており、どこか冷静にこの状況を分析している自分もいる。
まず思ったのはその名前!アフロヘーア?アフロじゃなくてハゲだろっ!!
ということだった。
それからも思考を巡らす。
これは、とりあえずおっさんに現実を突きつける発言は絶対NGだな。
むしろ美しさを称賛する方向で、ただし、過剰なのは無理やり言ってるのがばれそうなので匙加減が重要、と。
「あなたは、女神さまですか?」
さきほどそう名乗っていたがとりあえず確認も込めて聞いてみる。
「そうよ~~~。あなたは、えーと、田中 太郎さん、ね。」
平凡な名前ね~。なんか提出書類の記入例にそのまま書かれてそうな名前だわ~~と失礼なことをほざく自称女神!
「まだ高校生だったのに立派な行いをしたわね~~」
「あの子は、助かったんですか?」
死の間際に満足感を感じたのは覚えている。感覚的には助けられたはずとは思うが実際どうなったのか聞いてみる。
「ええ。あの子は小さな擦り傷と打ち身くらいで済んだわ~~。あなたの方は、・・・・、まぁ言わない方が良いわね~~。とにかく自分を犠牲にして他人を、それも見も知らぬ人を助けるなんてなかなかできることじゃないわよ~~。」
声だけ聴いてると美しい女性だ。目を瞑って聞くことにしたらあら不思議。本当に美女の女神さまに話しかけられてるような気がしてきた!
「ところで・・・、どうして目を瞑ってるのかしら~~~??」
さっそく突っ込まれた!
「それは、女神さまがあまりにお美しいからです。」
「あらあら~~~。うれしいこと言ってくれるわね~~~。ご褒美に祝福をあげるわね~~~。」
そう言っておっさんが近づいてくる気配。
香水なのか少し良い匂いの後、加齢臭が俺を襲う。
そして、・・・・、なんということだっ!
俺の唇に柔らかいが少しパサパサした感触がっ!!
え?キスされた??
そう思ってるうちにおっさんの舌が俺の口内に侵入を試みる!
身を捩ったり口を思いっきり閉じて必死に抵抗する俺!
しばらく抵抗できていたもののそのままおっさんに抱きしめられ、締め上げられる。
「かはっ・・・」
あまりの強さに口内の空気が吐き出され、そのすきに侵入を許してしまった。
その後、むさぼりつくすように蹂躙された俺は抵抗をやめてされるがままになっていた。
「ふう~~~。ごちそうさま♡」
「・・・・・・・・」
「あらあら、そんなに喜んでくれるなんて、お姉さん、嬉しいわ~~。」
「・・・・・・・・」
「・・・・、えーと、じゃあ次に、あなたのこれからについてお話するわね~~。」
「・・・・・・・・」
「あなたには、転生してもらいます。転生先は地球とは異なる世界、あなたたちの感覚からすればマンガやゲームのファンタジー世界が近いと思うわ~~。」
その後、その世界や転生後の事について説明された。
途中から俺の意識も何とか戻ってこられた。
まとめると、
転生先はアレスガイアという世界。
剣と魔法にエルフやドワーフ、獣人やその他いろいろが住まうファンタジー世界。
魔物ももちろんいる危険な世界。
奴隷制度や貴族制度なども普通に存在する世界。
転生は今の年齢(16歳)からでも良いし、どこかの家庭に産まれて0歳からでも良い。(ただし産まれる先は選べない)
先ほどのベロちゅうのおかげで女神の加護が付いてるので、スキルや魔法などの能力、聖剣や伝説級の武器防具などのアイテム、レベルアップの速度や成長限界、各種耐性などなど、何か一つ、選べるらしい。
俺は考える。
とりあえず、武器防具はないな。
スキル、魔法や耐性なんかもきけば後からでも習得できるっぽい。
それなら成長限界か。
「ちなみにレベル上限はあるんですか?」
「う~~ん。上限っていうか種族によってある程度の成長限界はあるわね~~。寿命や適性なんかが影響するのよ~~。」
「適性?」
「そうよ~。たとえばエルフは魔法に長けてるとか、鬼人族なんかは物理攻撃が得意とかかしらね~~。それによってエルフは魔法レベルは高くあがる人が多いし、鬼人族だと魔法レベルは低いけど物理攻撃のレベルは高くなりやすいわね~~。」
「ではいわゆる限界はない、と?」
「そうなるわね~。寿命によって修練を長くできる種族は各種能力のレベルが全体に高くなりやすいし、得意分野についてはレベルが上がりやすいけどある程度あがればそこからは上がりにくくなるわね~~。」
その辺はこれまでやってきたゲームに近いらしい。
違うのはカンストの概念がないということくらいのようだ。
レベル100になったからそこからはもう成長しないとか、そういう決まりはないようだ。
ちなみに人族や獣人族はレベル30~40、エルフやドワーフはレベル50~70というふうに種族間の寿命によって平均レベルに差があるらしく、それが種族間の差別意識や争いの元になっているようだ。
「それで、加護は決めたかしら~~~。」
「その件ですが、女神さまっ!できれば不老にしてもらうとかはできないでしょうか?」
寿命がレベル差を生むなら不老にしてもらえれば問題は解決だ。
だが、
「それは無理ね~~。」
「そうですか・・・・・」
まぁ、そりゃそうだろうな。
「不老になりたいってことは、修練の時間を確保したいってことよね~~??」
「そうです。」
「では人生で一回だけ。入っている間は時間が止まる部屋に入る権利をあげるわ~~」
おおっ!
精神と時間の部屋ktkr
そこには食べ物とかあるんでしょうか??
「う~~ん。それじゃあ入ってしばらくは自由にその空間を作り変える権限を付与しましょう。必要なものは部屋に入ってから自分で作れば良いわ~~。」
たとえば無限に食材が補充される冷蔵庫とか、魔法書がぎっしりつまった本棚とか、お風呂やベッド、着替え、武器防具、なんでも作れるから部屋に入ったら最初に作るのを忘れずにね~~。
「ありがとうございます!」
「それじゃあ転生させるけど、今のままが良いか、0歳からが良いか、どうするかしら~~?」
「あ」
決めてなかったわ。
「確認ですが、0歳からの場合、記憶は引き継がれるんでしょうか?種族も容姿も選べない?」
「記憶は引き継がれるわよ~~。」
じゃないと『部屋』のことも覚えてないでしょ~~。
とのこと。
「種族や容姿は選べないけど、一応希望があれば聞いとくわ~~。」
「それでは、人族でお願いします。容姿はブサイクじゃなければ贅沢いいません。」
「分かったわ~~」
んもうっ!太郎ちゃんったら欲が無いわね~~。
この愛と美の女神、アフロヘーアに美しさを求めないなんてっ!
でもそこが気に入ったわ。
超が付くほどの可愛い子にしてあげましょう!
俺は知らなかった。
この時の回答が、とんでもない事態を発生させるトリガーになっていたことを・・・・・




