表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/225

第88章 ― 大地を拓く音、村に響く未来のエンジン ―

第88章 ― 大地を拓く音、村に響く未来のエンジン ―


冬の終わりが近づくにつれ、

グレン村にはこれまでにない熱気が満ちていた。


「春になったら、今年は新しい作物を植えるぞ」

「荒れ地を畑に変えれば、もっと収穫できるはずだ」

「ホテルの料理にも使えるし、余ったら売れる!」


村人たちの声は明るく、希望に満ちていた。


すすむが提案した“農業の多角化”は、

村の未来を変える大きな一歩となり、

村人たちの心に火を灯していた。


そして今、春を迎える前のこの時期こそ、

荒れ地を開墾する絶好のタイミングだった。


すすむは、村の北側に広がる荒れ地に立っていた。


そこは長年放置され、

枯れ草が腰の高さまで伸び、

倒木や石が散乱し、

木の根が地中深く張り巡らされている。


(ここを畑にするのは……大変だな)


だが、すすむは笑った。


(だからこそ、やりがいがある)


彼は収納スキルを使い、次々と道具を取り出した。


・草刈り機

・チェーンソー

・軽量スコップ

・刈払機

・剪定バサミ

・小型耕運機


村人たちは目を丸くした。


「すすむ殿、また新しい道具を……!」

「これ、どうやって使うんだ?」

「魔道具なのか?」


すすむは笑いながら説明した。


「魔道具じゃありません。僕の世界の“道具”です。

 でも、使えば作業が何倍も早くなりますよ」


村人たちは興味津々で道具を手に取り、

すすむの説明を聞きながら、次々と使い始めた。


しかし、すすむが次に取り出したものは、

村人たちの想像を遥かに超えていた。


「……こ、これは……なんだ?」


村人のひとりが声を震わせた。


すすむの前に現れたのは、

金属の塊――ミニショベルカーだった。


キャタピラを備え、

油圧アームの先には鋭いバケット。

まるで巨大な獣のような存在感。


「木の根を掘り起こすために買いました」


すすむは説明書を片手に、

慎重に運転席へ乗り込んだ。


(免許がいらない世界でよかった……)


キーを回すと、

エンジンが低く唸りを上げた。


「うおおおおお……!」

「動いたぞ……!」

「すすむ殿が鉄の獣を操っている……!」


村人たちは口を開けたまま見つめていた。


すすむは説明書を確認しながら、

ゆっくりとアームを動かし、

地中に埋まった太い木の根を掘り起こした。


バキッ――!


根が引き抜かれた瞬間、

村人たちから歓声が上がった。


「す、すげぇ……!」

「こんな太い根を一瞬で……!」

「魔法よりすごいんじゃないか……?」


すすむは照れくさそうに笑った。


掘り起こした木の根は、

そのままでは邪魔になる。


そこで、すすむは次の道具を取り出した。


・小型クローラー

・小型トラクター

・追加の耕運機


「これで、掘り起こした根を運びます」


村人たちは、

荷台付きのクローラーを見てまた驚いた。


「これ……馬車じゃないのか?」

「馬がいないのに動くのか?」

「どうやって荷物を運ぶんだ?」


すすむは操作方法を見せながら説明した。


「このレバーで前進、こっちで後退。

 荷台に根を積んで、あっちの集積場まで運びます」


村人たちは恐る恐る乗り込み、

やがて楽しそうに動かし始めた。


「おおっ、動いた!」

「馬より速いぞ!」

「これなら何往復でもできる!」


耕運機も追加で投入され、

荒れ地はみるみるうちに整地されていった。


★★★★★


数日が経つと、

村人たちは驚くほど機械に慣れていた。


・草刈り機を自在に操る者

・チェーンソーで倒木を処理する者

・耕運機で畑を均一に耕す者

・クローラーで根を運ぶ者

・ショベルカーの操作を覚え始めた若者まで現れた


すすむはその光景を見て、

胸が熱くなった。


(この村の人たちは、本当にすごい……

 吸収力が高いし、何より楽しそうだ)


村人たちの表情は明るく、

作業は重労働であるはずなのに、

どこか祭りのような雰囲気すらあった。


「すすむ殿、これなら春までに畑が倍になるぞ!」

「今年は豊作間違いなしだ!」

「ホテルにもたくさん納品できるな!」


すすむは笑顔で頷いた。


作業を見守りながら、

すすむはふと考えた。


(ミニショベルカー……ホテルの敷地整備にも使えるな)

(クローラーは資材運搬に便利だ)

(草刈り機は、庭の管理に最適だ)

(トラクターは……駐車場の整地にも使えるかもしれない)


ホテルの拡張、

庭園の整備、

新しい施設の建設――。


これらの機械は、

村だけでなくホテルの未来にも役立つ。


(村とホテルは、一緒に成長していくんだ)


すすむは、

機械のエンジン音を聞きながら、

静かにそう確信した。


夕暮れ。

作業を終えた村人たちが帰っていく中、

すすむはひとり荒れ地に立った。


耕された土の匂いが、

風に乗って漂ってくる。


(ここに、春になったら苗が植えられる……

 そして夏には緑が広がり、

 秋には実りが訪れる)


その光景を想像すると、

胸が温かくなった。


村人たちの笑顔、

ホテルの料理、

訪れる客の驚き、

そして村の未来。


すべてが、この大地から始まる。


すすむは空を見上げた。


夕焼けが大地を赤く染め、

まるで新しい時代の幕開けを祝福しているようだった。


こうして、

グレン村の農地拡大は順調に進み、

村全体がひとつの大きな力となって動き始めた。


機械の導入は、

村の生活を大きく変え、

農業の効率を飛躍的に高めた。


そしてその変化は、

ホテルの運営にも新たな可能性をもたらす。


すすむは、

村とホテルが共に成長する未来を思い描きながら、

静かに拳を握った。


(この村は、もっと良くなる。

 僕が来た意味は……きっとここにある)


大地を拓く音が、

今日も村に響いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白くて一気読みしました! 次の更新楽しみにしてます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ