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第85章 ― グレン村の新名物を求めて ―

第85章 ― グレン村の新名物を求めて ―


グレンリゾートホテルの売店が軌道に乗り始め、

村に訪れる客の数も少しずつ増えてきた頃。


すすむは、ホテルのロビーで帳簿を整理しながら、

ずっと胸の奥に引っかかっていた課題について考えていた。


――村の名物を作りたい。


売店の商品は好評だ。

饅頭セットも服も売れた。

だが、それらはあくまで“外から持ち込んだもの”であり、

グレン村の文化や自然を反映したものではない。


「この村ならではの名物……何か作れないかな」


すすむは、村長にも何度か相談していた。


「名物か……村の農産物は質が良いが、加工品となると難しいな」

「そうなんですよね……何か、村の特色を活かせるものがあれば……」


そんな会話を繰り返す日々が続いていた。


★★★★★


ある日の夕方。

リゾートホテルのロビーで、宿泊客の女性二人が話しているのが耳に入った。


「ねえ、王都で流行ってるローズオイル、知ってる?」

「もちろん! 香りがすごく良くて、肌にもいいって評判よ」

「王都の貴族の間では、ローズオイルの香水が大人気なんだって」

「私も欲しいけど……高くて手が出ないのよね」


すすむは、その会話を聞いた瞬間、

頭の中に雷が落ちたような衝撃を受けた。


――ローズオイル……バラ……バラ園……!


「そうか……バラだ!」


村長の家へ走りながら、すすむは確信していた。


バラ園を作り、バラを使った商品を村の名物にする。

これなら、村の自然と観光を結びつけられる。


村長はすすむの提案を聞き、目を丸くした。


「バラ園……か。

 確かに、観光拠点としては魅力的だな」


「はい。

 ローズオイルを使った香水や石鹸、

 それから飴やゼリーなども作れます。

 村の名物として売り出せると思います」


村長は腕を組み、しばらく考え込んだ。


「……面白い。

 村の者も手伝うだろう。

 土地の使用許可も出そう」


すすむは深く頭を下げた。


「ありがとうございます!」


こうして、グレン村の新名物づくりが本格的に動き始めた。


まずは、ローズオイルを通販能力で調達した。

瓶を開けると、濃厚で甘い香りがふわりと広がる。


「……すごい香りだな」


すすむは、香水・石鹸・飴・ゼリーの試作に取りかかった。


石鹸づくりは、すすむにとって初めての挑戦だった。


まず、通販で調達した石鹸素地ソープベースを湯煎で溶かす。

白い固まりが、ゆっくりと透明な液体へと変わっていく。


「ここにローズオイルを……数滴」


スポイトで慎重にオイルを垂らすと、

液体全体に淡いピンク色の香りが広がったような気がした。


次に、色付けのために天然色素を少量加える。

ほんのりとした桜色の石鹸液が完成した。


「よし、型に流し込もう」


ハート型、丸型、四角型――

いくつかの型に流し込み、冷やして固める。


数時間後。


型から取り出すと、

淡いピンク色の石鹸が美しく輝いていた。


「……おお、いい感じだ」


すすむは石鹸を手に取り、香りを確かめた。


「うん、悪くない。

 でも、もう少し香りを強くしてもいいかも」


次に、香水づくりに取りかかった。


香水は、

・エタノール

・精製水

・ローズオイル

を混ぜ合わせて作る。


まず、エタノールにローズオイルを数滴垂らす。

すると、甘く華やかな香りが一気に広がった。


「……これは、王都で流行るのもわかるな」


次に精製水を加え、よく振って混ぜる。

香りのバランスを整えるため、

ローズオイルの量を微調整しながら何度も試作した。


「うーん……少し強すぎるかな」

「これは逆に弱い……」

「このくらいがちょうどいいかも」


試行錯誤を繰り返し、

ようやく“グレン村オリジナル香水”の試作品が完成した。


最後に、飴とゼリーの試作だ。


砂糖と水を鍋で煮詰め、

透明な飴液ができたところでローズオイルをほんの少し加える。


「入れすぎると香りが強すぎるから……ほんの少し」


飴型に流し込み、冷やして固める。


透明な飴の中に、

ほんのりピンク色の気泡が浮かび、

見た目にも可愛らしい。


ゼラチンを溶かし、

砂糖水にローズオイルを加えて混ぜる。


「ゼリーは香りが飛びやすいから……少し多めに」


冷蔵庫で冷やし固めると、

淡いピンク色のゼリーが完成した。


「……よし、これで試作品は全部できた」


すすむは、完成した商品をトレイに並べ、

村長の家へ向かった。


村長は石鹸を手に取り、香りを確かめた。


「ほう……これは良い香りだな。

 王都の貴族が好みそうだ」


香水も試してみる。


「……うむ、悪くない。

 だが、少し香りが強いかもしれん」


飴とゼリーも口に運ぶ。


「うん……まあまあだな。

 もう少し甘さを抑えても良いかもしれん」


すすむはメモを取りながら頷いた。


「改良の余地はありますね」


「だが、方向性は悪くない。

 村の名物として十分可能性があるぞ」


二人は顔を見合わせ、笑った。


次に取りかかったのは、バラ園づくりだ。


村長から許可を得た土地は、

グレンリゾートホテルの近くにある広い草原だった。


「ここなら、観光客も立ち寄りやすいな」


すすむは通販能力で、

さまざまな種類のバラの苗を調達した。


・ツルバラ

・直立性のバラ

・一季咲き

・四季咲き

・香りの強い品種

・色鮮やかな品種

・大輪の品種

・小ぶりで可愛らしい品種


「バラって……こんなに種類があるんだな」


村の者たちも手伝いに来てくれた。


「ここはツルバラを植えよう!」

「こっちは色の濃いバラがいいんじゃないか?」

「香りの強いのは入口に植えると良さそうだな」


みんなで土を耕し、苗を植え、支柱を立てていく。


三週間後。


広大な土地に、

整然と並ぶバラの苗が風に揺れていた。


「……すごい……!」


すすむは胸が熱くなった。


「これから春になれば、枝が伸びて……

 夏には花が咲き始める。

 秋にはもっと咲くだろう」


村長も満足げに頷いた。


「村の新しい名所になるな」


すすむはバラ園を見渡しながら、

未来の光景を思い描いた。


観光客がバラ園を散策し、

売店でバラの香水や石鹸を買い、

ホテルでゆっくり過ごす。


「……楽しみだな」


グレン村は、また一歩前へ進んだ。


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