第74章 ― 高級政務官来訪の報せ ―
第74章 ― 高級政務官来訪の報せ ―
改造された外見木造ポンチョの運行が始まった翌朝。
グレン村の空気は、いつもより少しだけ張りつめていた。
新しい交通手段が村に活気をもたらし、村人たちの表情もどこか明るい。
そんな中、ビジネスホテルAのフロントでは、すすむとミーナが今日の宿泊予定者リストを確認していた。
「今日のチェックインは……商隊の人が三組と、冒険者が二人。それから――」
ミーナが紙をめくった瞬間、背後から落ち着いた声が響いた。
「すすむどの、久しぶりだな。」
振り返ると、そこには上級政務官の姿があった。
以前、村の視察で訪れたことのある人物だ。
彼は旅装束のまま、軽く微笑んでいた。
「これは……上級政務官殿。お久しぶりです。今日はお一人で?」
「うむ。実は、少し秘密の相談があってな」
彼は声を潜め、周囲を見回す。
すすむはミーナにフロントを任せ、清掃の終わった客室へ案内した。
客室に入ると、上級政務官は椅子に腰を下ろし、深く息を吐いた。
「実はな……ドリエステ王国の政を司る“高級政務官”が、グレン村の視察を希望している」
すすむは思わず目を見開いた。
「高級政務官……王国の中枢にいる方ですよね?」
「そうだ。王都の政務を取り仕切る人物だ。
最近、グレン村の噂が王都にも届いてな。
“魔法の宿”だとか、“異世界の設備がある”だとか……」
すすむは苦笑する。
確かに、村の発展は急激だった。
外見木造ポンチョの運行開始も、王都にとっては驚きだろう。
「その高級政務官を、ちょうど一週間後に連れてくる。
――もてなしてほしい」
「……なるほど。だから秘密に?」
「うむ。余計な噂が広まると、視察がやりにくくなるからな」
上級政務官は立ち上がり、すすむの肩に手を置いた。
「頼んだぞ、すすむどの。
グレン村の未来は、そなたの手にかかっている」
そう言い残すと、彼は翌日の定期便でエレニアへ戻る予定だという。
その夜、彼は久しぶりにグレンの食事を楽しみ、
翌朝の朝食を終えると、外見木造ポンチョに乗ってエレニアへ帰っていった。
★★★★★
その日のチェックアウトが終わった頃、すすむの体に淡い光が走った。
――レベルアップだ。
白谷すすむ LV8
体力:56
防御:52
素早さ:68
知力:64
魔力:5000
スキル
・建物LV5(消費5~4000)
・車調達・車保守LV2(消費5~200)
・偽装LV3(消費20)
・通販LV4(消費5~100)
・収納LV5
・言語LV1
「今回は……建物系が増えたのか」
すすむはメニューを開き、新たに建てられる建物を確認する。
・ビジネスホテルB
・屋外プール
・ロビー喫茶
・卓球場
・ビラ建物
「……これは、もてなしに使えるな」
高級政務官の来訪まで一週間。
準備期間としてはギリギリだが、すすむは迷わず建設に取りかかった。
建設を開始すると、地面が静かに震え、光が集まり、
やがて五階建てのホテルが姿を現した。
「……でかい」
すすむは思わずつぶやく。
ビジネスホテルB
・ロビー
・事務室
・宿直室
・食堂
・厨房
・男女大浴場(中)
・ランドリールーム
・ロビー喫茶
・屋外プール
・卓球場
・リネン室
・倉庫
客室(小)×48
客室×6
ロビーは広々としており、喫茶コーナーには落ち着いた色のソファーが並ぶ。
食堂はビュッフェ形式に対応しており、料理台やジュースサーバーも完備されていた。
「ビールサーバーは……ないか。まあ仕方ない」
大浴場は10人が同時に入れるほどの広さで、
小さいながら露天風呂もある。
温泉ではないが、湯気が立ちのぼる様子は十分に魅力的だった。
客室(小)はビジネスホテルAと同じ仕様だが、
最上階の客室は格段に豪華だった。
・広い浴室
・独立したトイレ
・ツインベッド
・ソファー&テーブル
・机と椅子
・冷蔵庫
「これなら……高級政務官にも満足してもらえるはず」
次に、ビラ建物を建ててみる。
光が収まると、そこには半円形の白い建物が現れた。
「……発泡スチロール?」
外観はまるで巨大な発泡スチロールのドーム。
しかし触れると、驚くほど暖かく、内部は柔らかい曲線で構成されていた。
中はベッドルームと浴室、トイレのみのシンプルな構造だが、
不思議と落ち着く空間だった。
「これは……意外といいな」
すすむは気に入り、四棟を追加で建てた。
三日間でビジネスホテルBとビラ建物四棟を完成させたすすむは、
高級政務官の滞在プランを練り始めた。
・宿泊はビラ建物
・食事はビジネスホテルBの食堂でビュッフェ
・ロビー喫茶での休憩
・卓球場や大浴場での娯楽
・村の視察は外見木造ポンチョで案内
「……問題は、従業員だな」
ホテルが増えたことで、シフトのやりくりが難しくなっていた。
リリア、ハンス、ミーナの三人では限界がある。
「やっぱり……大規模な従業員募集をしないと」
すすむは深く息を吐いた。
だが、同時に胸の奥が熱くなる。
――グレン村は、確実に前へ進んでいる。
高級政務官の来訪は、村の未来を大きく変えるかもしれない。
そのための準備は、すでに始まっていた。




