第73章 ― 外見木造ポンチョ、初運行 ―
第73章 ― 外見木造ポンチョ、初運行 ―
村のはずれに、朝の冷たい空気が漂っていた。
まだ太陽が地平線から顔を出したばかりだというのに、
そこにはすでに数人のドワーフが集まり、外見木造ポンチョの周りをぐるぐると歩き回っていた。
「よし、今日が本番だな!」
ガンツが太い腕を組み、満足げにうなずく。
その横で、他のドワーフたちも興奮を隠しきれない様子で、運転席や車輪を覗き込んでいた。
すすむは、彼らの様子を見ながら苦笑する。
――本当に、ドワーフの学習能力は恐ろしい。
昨日まで工房で少し動かしただけのはずなのに、彼らはすでに運転のコツを掴んでいた。
アクセルとブレーキの改造部分も、まるで昔から使っていたかのように扱いこなす。
「じゃあ、試運転いくぞ!」
ガンツが運転席に乗り込み、すすむも助手席へ。
外見木造ポンチョは静かに動き出し、村の外れの道へと滑り込んだ。
坂道を登る。
狭い道を抜ける。
クランクを曲がる。
どれも、ドワーフたちは難なくこなした。
「おいおい、ちょっとスピード出しすぎじゃないの……!」
すすむが慌てて声を上げるが、ガンツは笑ってアクセルを踏み込む。
「大丈夫だって! ほら、まだ余裕だ!」
速度計は60、70、そして80km/hを指した。
風が窓を叩き、景色が流れる。
――日本じゃ考えられない……。
すすむはシートを握りしめながら、心の中でつぶやいた。
だが、結果として、ドワーフたちが外見木造ポンチョを運用できることは証明された。
すすむは、調達部の運行をガンツに任せることに決めた。
★★★★★
翌朝。
太陽が昇ると同時に、外見木造ポンチョは村を出発した。
「いってきまーす!」
ドワーフたちが手を振り、村人たちも興味津々で見送る。
ギルマスはすでにエレニア側の関係者へ連絡を入れており、
「魔法馬車が来る」との噂は市場にも広まっていた。
すすむは村の入口で見送りながら、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
――これで、食材の安定供給ができる。
ホテルの料理も、もっと豊かになる。
期待が膨らむ。
★★★★★
エレニアの市場は、朝から活気に満ちていた。
色とりどりの野菜、香り高い果物、干し肉や香辛料が並び、商人たちの声が飛び交う。
そこへ――
「おおっ、来たぞ! 噂の魔法馬車だ!」
「馬がいないのに動いてる……!」
「ドワーフが運転してるのか?」
外見木造ポンチョが市場に入った瞬間、周囲がざわついた。
ガンツは胸を張り、堂々と降り立つ。
「グレンホテル調達部だ! 今日は仕入れに来た!」
商人たちは興味津々で近づき、次々と声をかけてくる。
「今日は何をお探しで?」
「野菜なら今朝採れたばかりだよ!」
「果物もどうだい? 甘いぞ!」
ガンツたちは、すすむから渡されたリストを広げ、次々と品物を買い付けていく。
新鮮な葉物野菜。
大ぶりのトマト。
香りの強いハーブ。
果物も数種類。
さらに、エレニア名物のチーズや加工肉も仕入れた。
車両の中はあっという間にいっぱいになった。
「よし、帰るぞ!」
ガンツが声を上げ、外見木造ポンチョは再び村へ向けて走り出した。
★★★★★
夕方。
村の入口に、外見木造ポンチョが戻ってきた。
「おかえりー!」
「どうだった?」
「すごい量の荷物だな!」
村人たちが集まり、荷台を覗き込む。
リリアが目を輝かせた。
「こんなに新鮮な野菜……! すごい、これなら料理の幅が広がります!」
ミーナも感動したように果物を手に取る。
「甘い……! これ、デザートに使えますね!」
ハンスは加工肉を見てうなずく。
「これなら、宿の朝食も豪華になるな」
厨房はすぐに活気づき、料理人たちが次々と新しいメニューを試作し始めた。
その香りがレストランに広がり、宿泊客たちも期待に胸を膨らませる。
★★★★★
そして――数日後。
毎日1便だけ運行していた大型馬車が、正式に外見木造ポンチョへと置き換えられた。
「速い!」
「揺れが少ない!」
「乗り心地が全然違う!」
村人も商人も、口々に驚きを語る。
従来の大型馬車は、片道4時間以上かかっていた。
だが、外見木造ポンチョなら――
片道1時間半。
しかも、乗車人数は大型馬車の1.5倍。
荷物スペースも広く、商人たちの利用も増えた。
エレニアと村の往来は活発になり、
村の経済は一気に動き始めた。
グレンホテルのレストランでは、エレニア産の食材を使った新メニューが次々と登場した。
・新鮮野菜のサラダ
・果物のコンポート
・ハーブ香るロースト肉
・エレニアチーズのオーブン焼き
宿泊客は驚き、喜び、口コミは広がっていく。
「グレンホテルの料理がさらに美味しくなった!」
「エレニアの市場の味が楽しめる!」
「魔法馬車で来る価値がある!」
村は活気に満ち、笑顔が増えた。
すすむは、レストランの隅でその様子を眺めながら、静かに息を吐く。
――これで、また一歩前に進めた。
村も、ホテルも、もっと良くなる。
外見木造ポンチョのエンジン音が、遠くで響いた。
それは、村の未来を運ぶ音のように聞こえた。




