第68章 レベルアップで得た能力がすごかった
第68章 レベルアップで得た能力がすごかった
バーを作り上げた翌朝、すすむはいつもより早く目を覚ました。
昨夜の疲れが残っているはずなのに、身体の奥からじわりと湧き上がるような活力がある。
まるで、見えない何かが背中を押してくるような感覚だった。
――レベルアップだ。
胸の内側で、確信めいた直感が灯る。すすむはステータスを確認した。
白谷すすむ LV7
体力:50
防御:45
素早さ:56
知力:54
魔力:3000
スキル
・建物LV5(消費5~3000)
・車調達・車保守LV2(消費5~200)
・偽装LV3(消費20)
・通販LV4(消費5~100)
・収納LV5
・言語LV1
数字が示す成長は、確かに着実なものだった。だが、すすむの目を釘付けにしたのは別の部分だ。
建物LV5で、新たに建てられるようになった建造物。
その名を見た瞬間、すすむは思わず声を漏らした。
「ビジネスホテルA……?!」
思わず二度見する。いや、三度見した。
ビジネスホテルA 3階建て
ロビー、事務室、宿直室、食堂、厨房、男女大浴場(小)、ランドリールーム、トイレ
客室(小)×32
「……いやいやいや、なんでホテル?」
バーを作れた時点で相当だったが、今度はホテルだ。しかも三階建て。
すすむは、胸の奥がざわつくのを感じた。期待と不安が入り混じった、あの独特の感覚だ。
(……建ててみたい)
その衝動は、もはや抑えられるものではなかった。
すすむは村長のもとへ向かい、事情を説明した。
「また新しい建物を……? 今度は何じゃ?」
「ビジネスホテルです。三階建ての」
「……ほう?」
村長は目を丸くしたが、すぐに苦笑しながら頷いた。
「まあ、お主の建物はどれも村の役に立っておる。好きにやってみるがよい」
了承を得たすすむは、グレンホテルの東側にある広い空き地へ向かった。
そこは、村の中でも比較的開けた場所で、建物を建てるには十分な広さがある。
「よし……ここだな」
深呼吸をひとつ。
建物スキルを発動すると、地面に魔法陣が広がり、眩い光が空へと伸びていく。
――ゴゴゴゴゴッ。
地面が震え、光の柱の中から巨大な影がせり上がってくる。
まるで地中から建物そのものが押し出されてくるような、圧倒的な光景だった。
やがて光が収まると、そこには――
三階建ての鉄筋コンクリートのビジネスホテルが、堂々と姿を現していた。
「……本当に出た……」
すすむは呆然と立ち尽くした。
周囲では、建設の光を見て駆けつけた村人たちがざわめいている。
「なんじゃあれは……」
「また白谷殿の魔法か?」
「でっけぇ……!」
その中を、ギルマスが息を切らしながら走ってきた。
「すすむ! 今の光は……また何か建てたのか?」
「ええ、ちょっと……ホテルを」
「ホテル?!」
ギルマスは目を剥いたが、すぐに状況を理解したように頷いた。
「中を確認するんだろう? 野次馬は俺が止めておく。安心して見てこい」
「助かります」
すすむは礼を言い、ホテルの自動ドアへ向かった。
ガラスの自動ドアが、シュッと音を立てて開く。
「……自動ドアまであるのかよ」
すすむは思わず苦笑した。
中に入ると、そこはこぢんまりとしたロビーだった。
ソファーが二脚、壁際には観葉植物まで置かれている。
受付カウンターの横には、自動販売機が一台。
奥には事務室と宿直室が続いている。
正面にはエレベーターが一基。
階段もあり、右手にはトイレ、食堂、厨房、男女大浴場(小)、ランドリールームが並んでいた。
「……完全にホテルだな、これ」
すすむはエレベーターに乗り、二階へ向かった。
扉が開くと、左右に客室が並ぶ廊下が伸びている。
片側八室、計十六室。
リネン室と倉庫も完備されていた。
客室の扉を開けると、そこはまさに“ビジネスホテルの一室”だった。
ユニットバス(小)。
シングルベッド。
小さなテーブルと椅子。
冷蔵庫まである。
「……コンテナ客室よりは広いけど、完全に日本のビジホだな」
三階も同じ構造だった。
すすむは一階に戻り、自動販売機をじっと見つめた。
「鉄硬貨一枚で……水、紅茶、リンゴジュース?」
試しに紅茶を買ってみる。
ガコンッ。
出てきたのは――
黄色いラベルの、見慣れたペットボトルのアイスレモンティー。
「……いや、これ完全に日本のやつじゃん」
すすむは額に手を当てた。
(これ、大丈夫かな……?)
この世界の人間が飲んでも問題ないのか。
そもそも、どういう仕組みで補充されるのか。
考えれば考えるほど謎は深まる。
「……魔法ってことにしておこう」
すすむはそう結論づけた。
一通り内部を確認したすすむは、外へ出た。
そこには、すでに大勢の村人が集まっている。
「おお、白谷殿!」
「中はどうなっておるんじゃ?」
「泊まれるのか?」
すすむはハンス、村長、ギルマスを見つけ、案内しようと声をかけた。
「中を見ますか? 案内しますよ」
「儂も行くぞ!」
と、ガンツが胸を張って言ってきた。
すすむは苦笑しつつ頷いた。
「わかりました。じゃあ、四人で行きましょう」
こうして、すすむは四人を連れて、ビジネスホテルAの内部へと足を踏み入れた。
新たな建物が、村にどんな変化をもたらすのか。
すすむ自身も、胸の高鳴りを抑えられなかった。




