第67章 グレンホテル・バー、誕生
第67章 グレンホテル・バー、誕生
鋼の匠がグレン村に移住してから数日。
工房棟の建設が進む一方で、すすむは別の計画に胸を躍らせていた。
――ホテルにバーを作りたい。
レストランで飲む酒も悪くない。
だが、ホテルマンとしての経験があるすすむには、
「酒を楽しむための空間」をどうしても作りたかった。
照明を落とし、木のカウンターに肘をつき、
静かにグラスを傾けるような場所。
冒険者たちが語り合い、職人たちが仕事終わりに一息つける場所。
そんな“夜の顔”を、グレンホテルに持たせたかった。
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ある日の夕方、すすむは工房棟の前でガンツを呼び止めた。
「ガンツさん、ちょっと相談があるんですが……」
「なんじゃ、すすむ殿。工房の追加設備か?」
「いえ……バーを作りたいんです。」
ガンツは一瞬きょとんとしたが、すぐに豪快に笑った。
「ほう! 酒を飲むための場所か!
それはええのう! ワシらも毎晩飲んどるし、
専用の場所があれば最高じゃ!」
「本当ですか? 協力してもらえますか?」
「任せておけ。木工もワシらの得意分野じゃ。
どんなカウンターが欲しい?」
すすむは、前の世界で見たホテルバーのイメージを伝えた。
深い色合いの木材、落ち着いた照明、酒瓶を美しく見せる棚――。
ガンツは腕を組み、うんうんと頷く。
「よし、任せとけ。
ワシらが“最高の酒場”を作ってやるわい。」
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翌日から、鋼の匠の職人たちはレストランの一角に集まり、
木材を運び込み、削り、磨き、組み上げていった。
「この木はどうじゃ? 色が深くてええぞ。」
「もっと角を丸くした方が、手触りが良くなる。」
「ここに鉄の補強を入れれば、長年使っても歪まん。」
彼らの手際は見事だった。
鉄を扱う時とは違う、繊細で丁寧な動き。
木材が彼らの手の中で、みるみるうちに形を変えていく。
数日後、ついに完成した。
深いマホガニー色の、重厚で渋いバーカウンター。
すすむは思わず息を呑んだ。
「……すごい。まるで高級ホテルみたいだ。」
ガンツは鼻を鳴らした。
「当然じゃ。ワシらの仕事は一流よ。」
すすむは通販スキルで調達した設備を次々と組み込んでいく。
・流し台
・冷蔵庫
・製氷機
・アイスピック
・ペール
・シェイカー
・バースプーン
・グラス各種
棚には、先日揃えた多種多様な酒を並べた。
ラム、ジン、ウォッカ、ウイスキー、焼酎、紹興酒、コニャック……
そして、ドワーフが喜ぶ90%超えのスピリッツまで。
すすむは棚を照らすための柔らかな間接照明も能力で調達し、
酒瓶が美しく輝くように配置した。
「……いい雰囲気だ。」
すすむは満足げに頷いた。
★★★★★
夕方。
仕事を終えたドワーフ職人たちが、興味津々でバーに集まってきた。
「おお……なんじゃこの雰囲気は……!」
「酒が……輝いて見える……!」
「カウンターが渋すぎる……!」
冒険者たちも次々と訪れ、
すすむがシェイカーを振るたびに歓声が上がる。
「こんな場所、エレニアにもなかったぞ!」
「仕事終わりに飲む酒が、こんなにうまいとは……!」
ガンツも満足げにグラスを掲げた。
「すすむ殿、最高の酒場じゃ!
ワシらの工房の隣に、こんな場所ができるとは思わなんだ!」
すすむは照れながらも、胸の奥が温かくなるのを感じた。
こうして――
グレンホテルのバーが正式に完成した。
レストランとは違う、
落ち着いた大人の空間。
冒険者も職人も、
一日の終わりにここで酒を楽しみ、語り合う。
村にまたひとつ、
新しい文化が根付いた瞬間だった。




