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第67章 グレンホテル・バー、誕生

第67章 グレンホテル・バー、誕生


鋼の匠がグレン村に移住してから数日。

工房棟の建設が進む一方で、すすむは別の計画に胸を躍らせていた。


――ホテルにバーを作りたい。


レストランで飲む酒も悪くない。

だが、ホテルマンとしての経験があるすすむには、

「酒を楽しむための空間」をどうしても作りたかった。


照明を落とし、木のカウンターに肘をつき、

静かにグラスを傾けるような場所。

冒険者たちが語り合い、職人たちが仕事終わりに一息つける場所。


そんな“夜の顔”を、グレンホテルに持たせたかった。


★★★★★


ある日の夕方、すすむは工房棟の前でガンツを呼び止めた。


「ガンツさん、ちょっと相談があるんですが……」


「なんじゃ、すすむ殿。工房の追加設備か?」


「いえ……バーを作りたいんです。」


ガンツは一瞬きょとんとしたが、すぐに豪快に笑った。


「ほう! 酒を飲むための場所か!

それはええのう! ワシらも毎晩飲んどるし、

専用の場所があれば最高じゃ!」


「本当ですか? 協力してもらえますか?」


「任せておけ。木工もワシらの得意分野じゃ。

どんなカウンターが欲しい?」


すすむは、前の世界で見たホテルバーのイメージを伝えた。

深い色合いの木材、落ち着いた照明、酒瓶を美しく見せる棚――。


ガンツは腕を組み、うんうんと頷く。


「よし、任せとけ。

ワシらが“最高の酒場”を作ってやるわい。」


★★★★★


翌日から、鋼の匠の職人たちはレストランの一角に集まり、

木材を運び込み、削り、磨き、組み上げていった。


「この木はどうじゃ? 色が深くてええぞ。」

「もっと角を丸くした方が、手触りが良くなる。」

「ここに鉄の補強を入れれば、長年使っても歪まん。」


彼らの手際は見事だった。

鉄を扱う時とは違う、繊細で丁寧な動き。

木材が彼らの手の中で、みるみるうちに形を変えていく。


数日後、ついに完成した。


深いマホガニー色の、重厚で渋いバーカウンター。


すすむは思わず息を呑んだ。


「……すごい。まるで高級ホテルみたいだ。」


ガンツは鼻を鳴らした。


「当然じゃ。ワシらの仕事は一流よ。」


すすむは通販スキルで調達した設備を次々と組み込んでいく。


・流し台

・冷蔵庫

・製氷機

・アイスピック

・ペール

・シェイカー

・バースプーン

・グラス各種


棚には、先日揃えた多種多様な酒を並べた。


ラム、ジン、ウォッカ、ウイスキー、焼酎、紹興酒、コニャック……

そして、ドワーフが喜ぶ90%超えのスピリッツまで。


すすむは棚を照らすための柔らかな間接照明も能力で調達し、

酒瓶が美しく輝くように配置した。


「……いい雰囲気だ。」


すすむは満足げに頷いた。


★★★★★


夕方。

仕事を終えたドワーフ職人たちが、興味津々でバーに集まってきた。


「おお……なんじゃこの雰囲気は……!」

「酒が……輝いて見える……!」

「カウンターが渋すぎる……!」


冒険者たちも次々と訪れ、

すすむがシェイカーを振るたびに歓声が上がる。


「こんな場所、エレニアにもなかったぞ!」

「仕事終わりに飲む酒が、こんなにうまいとは……!」


ガンツも満足げにグラスを掲げた。


「すすむ殿、最高の酒場じゃ!

ワシらの工房の隣に、こんな場所ができるとは思わなんだ!」


すすむは照れながらも、胸の奥が温かくなるのを感じた。


こうして――


グレンホテルのバーが正式に完成した。


レストランとは違う、

落ち着いた大人の空間。


冒険者も職人も、

一日の終わりにここで酒を楽しみ、語り合う。


村にまたひとつ、

新しい文化が根付いた瞬間だった。


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