第64章 鋼の匠、まさかの即決移籍
第64章 鋼の匠、まさかの即決移籍
鍛冶屋《鋼の匠》の店内は、鉄と火の匂いが混ざり合い、
ハンマーの音が絶え間なく響いていた。
すすむがどう声をかけていいか迷っていると、
奥から背の低い女性が現れた。
「……あんた、誰だい? 客かい?
それとも修理の依頼か?」
彼女はガトラ。
ドワーフ族の女性で、この鍛冶屋の女将だという。
鍛冶場で働くドワーフたちの世話役もしているらしい。
すすむがギルバートの紹介状を見せると、
ガトラは目を細めて頷いた。
「なるほどね。昼になったら親方に会わせてやるよ。
それまで、好きに見ていきな。」
すすむは礼を言い、鍛冶場の様子を見学することにした。
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ドワーフたちは、驚くほどの集中力で鉄を叩き続けていた。
火花が散り、炉の熱気が肌を刺す。
だが彼らは汗ひとつ気にせず、
まるで鉄と会話するようにハンマーを振るっている。
「……すごい。」
すすむは思わず呟いた。
この世界の鍛冶技術は、
現代の工業とは違う“職人の魂”が宿っている。
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昼頃、ガトラに呼ばれ、すすむは別室へ案内された。
そこには、どっしりとした体格のドワーフが座っていた。
白い髭をたくわえ、鋭い目つきだが、どこか温かみもある。
「親方、ガンツだよ。」
すすむは深く頭を下げた。
「グレン村から来ました、白谷すすむと申します。」
紹介状を渡すと、ガンツは目を通し、
ふっと笑みを浮かべた。
「ああ、あのグレンホテルのすすむか。
コンテナの宿やプレハブを作ったと聞いとるぞ。」
「ご存じだったんですか?」
「もちろんだ。ギルバートから聞いておる。
あんな建物、見たことがないからな。」
ガンツの目は、まるで子供のように輝いていた。
すすむが、武具メンテナンスのために
職人を派遣してほしいと説明すると――
ガンツは豪快に笑った。
「派遣? いや、違うな。」
「え?」
「ワシら一家ごと、グレン村に移るわい。」
すすむは思わず固まった。
「い、移籍……ですか?」
「そうだ。あの村は面白い。
ギルドもできたし、宿も発展しとる。
ワシらの腕を振るうには、ちょうどいい場所だ。」
ガトラも腕を組んで頷く。
「親方はね、ずっと新しい土地で鍛冶場を開きたいって言ってたのさ。
グレン村なら、やりがいがあるってわけ。」
話はそこから驚くほど早かった。
・鍛冶場はギルド支部とグレンホテルの隣に設置
・職人たちの住居はコンテナ客室を利用
・食事はグレンホテルのレストランで提供
・武具メンテナンスはギルド経由で受付
すべてが、とんとん拍子に決まっていく。
すすむはただ驚くばかりだった。
すすむは移籍のお礼として、通販スキルで酒を取り出した。
・ラム酒
・焼酎
・日本酒
ガンツは瓶を見た瞬間、目を丸くした。
「なんじゃこの酒は……見たこともない!」
「よければ、どうぞ。」
ガンツは一口飲み、顔を真っ赤にして叫んだ。
「う、うまい!!
こんな酒、飲んだことがないぞ!」
ガトラも笑いながら飲み始め、
鍛冶場の奥から職人たちも集まってきて、
その場はちょっとした宴会になった。
こうして――
鍛冶屋集団《鋼の匠》が、
まるごとグレン村に移籍することが決まった。
冒険者たちの武具メンテナンスはもちろん、
村の発展にも大きく貢献することになる。
すすむは帰り道、馬車の中で静かに微笑んだ。
「……また一つ、村が強くなるな。」
異世界の村は、今日もすすむの手で進化していく。




