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第5章 魔法《通販》と、偽装された馬車

第5章 魔法《通販》と、偽装された馬車


すすむは、怪我人たちの応急処置を終えると、深く息を吐いた。

草原を渡る風が、汗ばんだ額を冷やしてくれる。


「……これ以上は、応急処置だけでは限界だな。」


骨折した者が三人。

御者のハンスも重傷だ。

このままでは危険だし、村まで運ぶにも時間がかかる。


すすむは、ふとステータス画面を思い出した。


――通販LV1。


「……使うしかないか。」


魔力は10ポイント。

通販を使えば5ポイント消費する。

残りは5。

偽装も使えば、魔力はゼロになる。


だが、今は迷っている場合ではなかった。


すすむは、馬車の残骸の陰に移動し、そっと目を閉じる。


「通販……」


念じた瞬間、視界に淡い光が広がり、あの“通販サイト”のような画面が浮かび上がった。

商品一覧の中に、簡易救急セットがある。


「……これだ。」


すすむは購入を念じる。


――魔力5消費。


光が弾け、次の瞬間、すすむの目の前に“救急セット”が現れた。


「……本当に出てきた……」


驚きと同時に、胸の奥に不思議な確信が生まれる。

この力は、今の状況を打開するためにあるのだと。


すすむは救急セットを持ち、怪我人たちのもとへ戻った。


包帯、消毒液、簡易固定具。

現代日本の医療用品が、異世界の草原に並ぶ光景は、どこか現実離れしていた。


「ハンスさん、少ししみますよ。」


すすむは丁寧に声をかけながら、消毒をし、包帯を巻き、固定具で骨折部分を安定させていく。

ホテルマンとしての手際の良さが、ここでも自然と発揮されていた。


ハンスは痛みに顔を歪めながらも、すすむの動きをじっと見つめていた。


「……あんた……医者なのか……?」


「いえ、違います。ただ、仕事柄、応急処置の経験はあります。」


「……助かる……本当に……助かる……」


すすむは軽く微笑み、次にレミー、ローレント、マーカスの処置を続けた。

三人とも気絶していたが、呼吸は安定している。


「よし……これで、少しは楽になるはずだ。」


すすむは立ち上がり、車の方を振り返った。


「次は……運ぶ手段だな。」


車はある。

だが、この世界の人々にとっては“未知の鉄の塊”だ。

馬たちが暴走したのも、車を見たからだろう。


「……偽装を使うしかない。」


すすむは車の前に立ち、深く息を吸った。


「偽装……」


念じた瞬間、車体が淡い光に包まれた。

光は形を変え、伸び、縮み、木の質感を帯びていく。


数秒後、そこにあったのは――

六人乗りの木製馬車だった。


「……すごい……」


すすむは思わず呟いた。

馬車は見事な造りで、木目や金具の細部まで本物のようだ。

だが、馬の部分はよく見ると、精巧な“機械仕掛け”のようにも見える。


「ロボット……みたいだな。」


すすむは馬の首に触れてみた。

温かさはないが、動きは滑らかだ。


「これなら……運べる。」


すすむはハンスのもとへ戻り、声をかけた。


「ハンスさん。馬車を用意しました。皆さんを村まで運びます。」


ハンスは驚いたように目を見開いた。


「……あんた……本当に……何者なんだ……?」


すすむは微笑んだ。


「ただの旅人です。困っている人を助けたいだけですよ。」


ハンスはしばらくすすむを見つめ、やがて小さく頷いた。


「……頼む……」


すすむは、怪我人たちを慎重に偽装馬車へ運び込んだ。

ハンスとレミーは前方に、ローレントとマーカスは後方に横たえる。


「よし……全員、乗せた。」


すすむは御者席に座り、手綱を握った。

その瞬間、頭の中に“馬の操縦方法”が流れ込んでくる。


「……これが、偽装の効果か。」


すすむは手綱を軽く引き、馬車を動かした。


木製の車輪が草原を踏みしめ、ゆっくりと進み始める。


「村まで……必ず届けます。」


すすむの声は静かだが、確かな決意が込められていた。


異世界での最初の“使命”が、今まさに動き出した。


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