第55章 “ピンクホテル”の汚名返上作戦
第55章 “ピンクホテル”の汚名返上作戦
グレンホテルが開業してから数日。
冒険者たちの間で、妙な呼び名が広がっていた。
「ピンクホテル」
すすむは最初、何のことか分からなかった。
だが、冒険者たちの会話を耳にして、ようやく理由を理解する。
「おい、あのピンクの宿、今日も満室らしいぞ。」
「側面に“ONE”って書いてあるやつだろ? あれ、魔法陣か何かか?」
「いや、あれは……なんかの呪文じゃないか?」
すすむは頭を抱えた。
ONE、前の世界で見慣れた海運会社のロゴ。
そして、コンテナの色は鮮やかなピンク。
「……完全にそのまま出てきてるじゃないか。」
JR貨物のコンテナもそうだった。
どうやら、すすむのスキルで生成されるコンテナは、
“前の世界のデザインをそのまま持ってくる”仕様らしい。
しかし――
「ピンクホテルって……なんか、誤解されそうな名前だよな……」
すすむは、前の世界で“ピンク”が持つ意味を思い出し、
顔を引きつらせた。
このままでは、ホテルのイメージが危ない。
★★★★★
すすむはすぐにレミーを呼び出した。
「レミー、コンテナの色を変えるぞ。」
「えっ、どうしてですか?」
「……モンスターに目立つから、ということにしておこう。」
本当の理由は言えない。
だが、レミーは素直に頷いた。
「なるほど! じゃあ、緑にしましょう! 草原に馴染みますし!」
すすむは内心でガッツポーズをした。
(よし、これで“ピンクホテル”から脱却できる……!)
★★★★★
すすむは通販スキルで大量のグリーン塗料を調達し、
ローラーと刷毛を手に、レミーと二人で作業を開始した。
「レミー、そこは二度塗りしておいて。」
「了解です!」
コンテナは全部で三十二室。
一つ一つが大きく、塗る面積も膨大だ。
最初の一日は、二人とも腕がパンパンになった。
二日目には、レミーが「筋肉痛で死にそうです……」と泣き言を言い、
三日目には、すすむも無言で肩を回しながら作業を続けた。
それでも――
「すすむさん、見てください! だいぶ緑になってきましたよ!」
「うん、いい感じだ。」
塗り終えたコンテナは、草原に溶け込むような深い緑色になり、
ピンクの派手さは完全に消え去っていた。
★★★★★
七日目の夕方。
最後のコンテナにローラーを走らせ、すすむは深く息を吐いた。
「……終わった。」
「やりましたね、すすむさん!」
二人は並んで、緑色に染まったコンテナ群を眺めた。
草原の中に整然と並ぶ緑の客室。
まるで自然と調和した小さな村のようだ。
「これなら、もう“ピンクホテル”とは呼ばれないだろう。」
「“グリーンホテル”って呼ばれるかもしれませんね!」
レミーの言葉に、すすむは笑った。
「それなら、悪くない。」
こうして、グレンホテルは無事に“ピンクホテル”の汚名を返上し、
新たな姿へと生まれ変わったのだった。




