第53章 ギルドからの料理人たち
第53章 ギルドからの料理人たち
グレンホテルのレストラン棟が完成してから四日後。
朝の冷たい空気を切り裂くように、三つの影が北側の敷地へと歩いてきた。
「すすむさん、エレニアのギルドから料理人の方々が到着しました!」
レミーの声に、すすむは外へ出た。
そこには、旅の埃を払いながらも、どこか誇らしげな表情を浮かべた三人の料理人が立っていた。
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●ミーナ
20代前半の女性。
金髪のショートヘアが陽光にきらめき、瞳は真っ直ぐで強い意志を宿している。
「よろしくお願いします! 料理を学べると聞いて、ずっと楽しみにしていました!」
努力家らしく、声にも熱がこもっていた。
●ダレス
40代の男性。
落ち着いた雰囲気だが、目の奥には料理人特有の鋭さがある。
「究極の料理を追求するためなら、どこへでも行く覚悟はできている。」
その言葉に、すすむは思わず背筋を伸ばした。
●メイ
10代後半の少女。
まだ幼さが残るが、姿勢は真面目そのもの。
「わ、私……まだまだですが、よろしくお願いします!」
緊張で声が震えていたが、真剣さは誰よりも伝わってきた。
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すすむは三人をコンテナ客室へ案内した。
「ここが皆さんの部屋です。設備は最低限ですが、快適に過ごせると思います。」
ミーナは目を輝かせ、
「すごい……魔法で作ったとは思えないです!」
と感嘆の声を上げた。
ダレスはベッドを軽く押し、
「ふむ……悪くない。これなら疲れも取れる。」
と満足げに頷く。
メイは部屋の隅々まで見て、
「こんなに綺麗な部屋、初めてです……!」
と感動していた。
三人とも、すすむに深々と頭を下げた。
「ここで働けること、心から感謝します。」
すすむは微笑み、次の場所へ案内した。
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レストラン棟の厨房に入ると、三人は息を呑んだ。
「……これは……」
「見たことのない器具が多いな……」
「すごい……全部、魔法の道具なんですか?」
すすむは苦笑しながら説明する。
「魔法……ということにしておきましょう。
これは“オーブン”、こっちは“フライパン”……使い方は順番に教えます。」
三人は真剣に頷いた。
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すすむは三日間、朝から晩まで料理人たちに指導した。
・火加減の調整
・包丁の扱い
・衛生管理
・調味料の使い方
・盛り付けの基本
・大量調理の段取り
ミーナは吸収が早く、すすむの動きを見ただけで真似できるほど。
ダレスは質問が多く、料理の理屈を深く理解しようとしていた。
メイは不器用ながらも、誰よりも丁寧に作業をこなした。
「ミーナさん、火が強すぎると焦げますよ。」
「はいっ、気をつけます!」
「ダレスさん、その味付けは……」
「む……少し塩が強いか。調整しよう。」
「メイさん、包丁はこう持つと安全ですよ。」
「は、はい……ありがとうございます!」
すすむは三人の成長を見て、胸が熱くなった。
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訓練の合間に、すすむと三人は実際に料理を作り、レストランで提供した。
「うまい!」
「なんだこのスープ……身体が温まる……!」
「この村に、こんな料理があったのか!」
冒険者たちは大喜びだった。
ミーナは照れながらも嬉しそうに微笑み、
ダレスは腕を組んで満足げに頷き、
メイは「よかった……」と胸を撫で下ろしていた。
すすむは、彼らの背中を見ながら思った。
――このレストランは、きっと村の新しい名物になる。
そして、ギルド支部とホテルを支える大きな柱にもなるだろう。
三人の料理人が加わったことで、
グレン村の未来はさらに明るくなっていくのだった。




