第50章 グレンホテル開業初日 ― 混乱と感動の幕開け
第50章 グレンホテル開業初日 ― 混乱と感動の幕開け
グレンホテルの開業初日。
朝日が昇るよりも早く、すすむは北側の敷地に立っていた。
整然と並ぶ三十二の客室コンテナ。
中央にはロビー兼事務室コンテナがあり、まるで小さな街のようだ。
「……ついに、この日が来たな。」
胸の奥がじんわりと熱くなる。
二週間の訓練を終えた従業員たちも、緊張した面持ちで集まってきた。
「すすむさん、おはようございます!」
「今日から、いよいよですね……!」
アゼリー、ジョシュア、ジータ、セレスト。
四人の顔には不安と期待が入り混じっている。
すすむは微笑み、全員を見渡した。
「大丈夫。みんなならできる。困ったらすぐ呼んでください。」
その言葉に、四人は力強く頷いた。
★★★★★
午前九時。
ロビーコンテナのドアを開けた瞬間――
「おーい! ここが新しい宿か!」
「空いてる部屋はあるか!?」
「ギルドから紹介されたんだが!」
冒険者たちが雪崩のように押し寄せてきた。
「ひ、ひえぇ……!」
アゼリーが思わず声を上げる。
受付カウンターの前には、あっという間に長蛇の列。
ロビーの外まで人が溢れ、ざわめきが止まらない。
「落ち着いてください! 順番にご案内します!」
セレストが声を張り上げ、列を整える。
ジョシュアは荷物を運び、ジータは清掃済みの部屋を確認して走り回る。
すすむは受付に入り、アゼリーと並んで対応を始めた。
「お名前をお願いします。」
「はい、こちらの部屋をご案内します。」
「荷物は後ほどお届けしますね。」
冒険者たちは口々に驚きの声を上げた。
「なんだこの部屋……暖かい!」
「ベッドがふかふかだぞ!」
「壁が白くて綺麗だ……まるで貴族の宿じゃないか!」
すすむは胸を撫で下ろした。
――改装した部屋と同じ仕様にしてよかった。
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開業から三時間。
ほぼ全ての部屋が埋まり、ロビーは落ち着きを取り戻しつつあった。
その時――
「す、すすむさん! 大変です!」
レミーが駆け込んできた。
「どうした?」
「お湯が出ない部屋があるって……!」
すすむはすぐに工具箱を持ち、レミーと一緒に問題の部屋へ向かった。
原因は、コンテナ同士をつなぐ給湯管の接続不良だった。
急いで修理し、湯が出るのを確認する。
「助かったよ、兄ちゃん!」
冒険者が笑顔で頭を下げた。
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。」
トラブルはあったが、対応は迅速だった。
従業員たちも、すすむの動きを見て学んでいく。
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夕方、ひと段落した頃。
村長ローガンがホテルを訪れた。
「いやぁ……本当に立派なものだな、すすむ殿。」
村長はロビーを見渡し、感嘆の声を漏らした。
「村の者たちも驚いておる。
まさか、こんな立派な宿ができるとは……」
すすむは照れくさく笑った。
「まだまだ課題はありますが、みんなのおかげで何とか形になりました。」
村長は深く頷いた。
「このホテルは、村の誇りだ。
そして、村の未来を変える存在になるだろう。」
その言葉に、すすむの胸が熱くなる。
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夜。
全てのチェックインが終わり、従業員たちがロビーに集まった。
「……みんな、本当にお疲れさま。」
すすむが声をかけると、アゼリーが目を潤ませた。
「私……今日、すごく嬉しかったんです。
お客さんが“ありがとう”って言ってくれて……」
ジータも静かに頷く。
「家事しかしてこなかったけど……
こんなに人に喜んでもらえるなんて、思わなかった。」
ジョシュアは腕を組みながら、しみじみと言った。
「村のために働けるのは、悪くないもんだな。」
セレストは微笑みながら、すすむに向き直った。
「すすむさん……あなたが来てくれて、本当に良かった。」
すすむは胸がいっぱいになった。
「こちらこそ……みんながいてくれたから、今日を迎えられたんです。」
その瞬間、レミーが叫んだ。
「明日も頑張ろうね、みんな!」
笑い声がロビーに広がる。
★★★★★
冒険者たちの話し声が遠くから聞こえる。
コンテナ客室の灯りが、夜の草原を優しく照らしていた。
すすむは外に出て、冷たい風を吸い込む。
「……いいホテルになりそうだ。」
そう呟くと、胸の奥に温かいものが広がった。
グレンホテル開業初日。
混乱もあったが、それ以上に感動があった。
そしてすすむは確信した。
――このホテルは、村の未来を変える。
――そして、自分の第二の人生も。
物語は、まだ始まったばかりだった。




