表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/225

第50章 グレンホテル開業初日 ― 混乱と感動の幕開け

第50章 グレンホテル開業初日 ― 混乱と感動の幕開け


グレンホテルの開業初日。

朝日が昇るよりも早く、すすむは北側の敷地に立っていた。


整然と並ぶ三十二の客室コンテナ。

中央にはロビー兼事務室コンテナがあり、まるで小さな街のようだ。


「……ついに、この日が来たな。」


胸の奥がじんわりと熱くなる。

二週間の訓練を終えた従業員たちも、緊張した面持ちで集まってきた。


「すすむさん、おはようございます!」

「今日から、いよいよですね……!」


アゼリー、ジョシュア、ジータ、セレスト。

四人の顔には不安と期待が入り混じっている。


すすむは微笑み、全員を見渡した。


「大丈夫。みんなならできる。困ったらすぐ呼んでください。」


その言葉に、四人は力強く頷いた。


★★★★★


午前九時。

ロビーコンテナのドアを開けた瞬間――


「おーい! ここが新しい宿か!」

「空いてる部屋はあるか!?」

「ギルドから紹介されたんだが!」


冒険者たちが雪崩のように押し寄せてきた。


「ひ、ひえぇ……!」

アゼリーが思わず声を上げる。


受付カウンターの前には、あっという間に長蛇の列。

ロビーの外まで人が溢れ、ざわめきが止まらない。


「落ち着いてください! 順番にご案内します!」


セレストが声を張り上げ、列を整える。

ジョシュアは荷物を運び、ジータは清掃済みの部屋を確認して走り回る。


すすむは受付に入り、アゼリーと並んで対応を始めた。


「お名前をお願いします。」

「はい、こちらの部屋をご案内します。」

「荷物は後ほどお届けしますね。」


冒険者たちは口々に驚きの声を上げた。


「なんだこの部屋……暖かい!」

「ベッドがふかふかだぞ!」

「壁が白くて綺麗だ……まるで貴族の宿じゃないか!」


すすむは胸を撫で下ろした。


――改装した部屋と同じ仕様にしてよかった。


★★★★★


開業から三時間。

ほぼ全ての部屋が埋まり、ロビーは落ち着きを取り戻しつつあった。


その時――


「す、すすむさん! 大変です!」


レミーが駆け込んできた。


「どうした?」

「お湯が出ない部屋があるって……!」


すすむはすぐに工具箱を持ち、レミーと一緒に問題の部屋へ向かった。


原因は、コンテナ同士をつなぐ給湯管の接続不良だった。

急いで修理し、湯が出るのを確認する。


「助かったよ、兄ちゃん!」

冒険者が笑顔で頭を下げた。


「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。」


トラブルはあったが、対応は迅速だった。

従業員たちも、すすむの動きを見て学んでいく。


★★★★★


夕方、ひと段落した頃。

村長ローガンがホテルを訪れた。


「いやぁ……本当に立派なものだな、すすむ殿。」


村長はロビーを見渡し、感嘆の声を漏らした。


「村の者たちも驚いておる。

まさか、こんな立派な宿ができるとは……」


すすむは照れくさく笑った。


「まだまだ課題はありますが、みんなのおかげで何とか形になりました。」


村長は深く頷いた。


「このホテルは、村の誇りだ。

そして、村の未来を変える存在になるだろう。」


その言葉に、すすむの胸が熱くなる。


★★★★★


夜。

全てのチェックインが終わり、従業員たちがロビーに集まった。


「……みんな、本当にお疲れさま。」


すすむが声をかけると、アゼリーが目を潤ませた。


「私……今日、すごく嬉しかったんです。

お客さんが“ありがとう”って言ってくれて……」


ジータも静かに頷く。


「家事しかしてこなかったけど……

こんなに人に喜んでもらえるなんて、思わなかった。」


ジョシュアは腕を組みながら、しみじみと言った。


「村のために働けるのは、悪くないもんだな。」


セレストは微笑みながら、すすむに向き直った。


「すすむさん……あなたが来てくれて、本当に良かった。」


すすむは胸がいっぱいになった。


「こちらこそ……みんながいてくれたから、今日を迎えられたんです。」


その瞬間、レミーが叫んだ。


「明日も頑張ろうね、みんな!」


笑い声がロビーに広がる。


★★★★★


冒険者たちの話し声が遠くから聞こえる。

コンテナ客室の灯りが、夜の草原を優しく照らしていた。


すすむは外に出て、冷たい風を吸い込む。


「……いいホテルになりそうだ。」


そう呟くと、胸の奥に温かいものが広がった。


グレンホテル開業初日。

混乱もあったが、それ以上に感動があった。


そしてすすむは確信した。


――このホテルは、村の未来を変える。

――そして、自分の第二の人生も。


物語は、まだ始まったばかりだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ