第49章 グレンホテル始動へ
第49章 グレンホテル始動へ
すすむは、毎朝のように北側の敷地へ向かった。
霜が降りる季節になり、空気は冷たい。だが、彼の足取りは軽かった。
理由はひとつ。
今日も新しい客室コンテナを出すためだ。
「よし……今日もいくか。」
建物スキルを発動すると、光が地面に集まり、
ドンッ
という重い音とともに、また一つコンテナ客室が姿を現す。
これを毎日繰り返し、すすむはコンテナ客室を増やし続けた。
さらに、受付や事務作業を行うための事務室コンテナも一つ生成し、
ホテルとしての形が少しずつ整っていく。
★★★★★
宿の拡張には、人手が必要だ。
すすむが村長に相談すると、すぐに四名の候補者を紹介してくれた。
●アゼリー(20代・赤髪ロング)
新婚ほやほやの女性。
夫婦で暮らすための収入が必要で、働き口を探していたという。
明るく、気配りができ、接客向きの雰囲気があった。
●ジョシュア(50代・シルバーポニーテル)
息子に畑を継がせ、第二の人生をゆっくり過ごすつもりだったが、
村の状況を見て「力になりたい」と名乗り出た。
落ち着いた物腰で、力仕事もこなせる頼もしい人物だ。
●ジータ(40代後半・金髪ショート)
子育てが一段落し、働きたいと考えていた女性。
家事全般が得意で、清掃や洗濯を任せるには最適だった。
●セレスト(50代・落ち着いた雰囲気)
こちらも子育てを終え、自由な時間が増えたところでの応募。
話し方が丁寧で、受付や案内役に向いている。
すすむは一人ひとりと面談し、
彼らの人柄や働く理由を聞き、
全員を採用することに決めた。
「よろしくお願いします、すすむさん!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
新しい仲間が増えたことで、
コンテナホテル計画は一気に現実味を帯びてきた。
★★★★★
宿の形が整ってくると、次に必要なのは――名前だ。
すすむは村長、リリア、レミーと相談しながら、いくつか候補を挙げた。
「北の宿」
「草原ホテル」
「コンテナロッジ」
「グレン・ステイ」……
どれも悪くないが、どこかしっくりこない。
そんな中、リリアがぽつりと言った。
「この村の名前を、そのまま使うのはどうでしょう?
……“グレンホテル”とか。」
その瞬間、すすむの胸にすとんと落ちるものがあった。
「いいですね、それ。村の人にも覚えてもらいやすいし、誇りにもなる。」
村長も満足げに頷いた。
「うむ。村の名を冠する宿なら、村全体で支えていける。」
こうして、
コンテナホテルの正式名称は《グレンホテル》
に決まった。
★★★★★
翌日から、すすむは四人の従業員に対して本格的な訓練を開始した。
・受付対応
・客室清掃
・ベッドメイキング
・洗濯と備品管理
・簡単な接客マナー
・トラブル対応
ホテルマンとして20年働いた経験が、ここで存分に活きる。
「アゼリーさん、笑顔はそのままで大丈夫。声のトーンだけ少し柔らかく。」
「ジータさん、この清掃の順番を覚えると効率が上がります。」
「ジョシュアさん、重い荷物は任せますが、無理はしないでください。」
「セレストさん、案内の言葉がとても丁寧で、お客様も安心しますよ。」
四人は真剣に学び、吸収が早かった。
村の人々は勤勉で、責任感が強い。
訓練は二週間続き、
その間にもすすむは毎日コンテナ客室を増やし続けた。
★★★★★
二週間後――
北側の敷地には、
客室コンテナ32室
ロビー兼事務コンテナ1室
荷物室コンテナ2室
従業員休憩コンテナ1室
合計 36コンテナ が整然と並び、
まるで小さな街のような光景が広がっていた。
レミーは感動で声を震わせた。
「すすむさん……本当にホテルができちゃいましたね……!」
すすむは静かに頷いた。
「うん。ここからが本番だよ。」
ダンジョン特需に沸くグレン村。
その中心に、新しい宿――グレンホテルが誕生しようとしていた。
そして、すすむの異世界ホスピタリティは、
また大きな一歩を踏み出すのだった。




