第48章 コンテナ客室と、始まりの準備不足
第48章 コンテナ客室と、始まりの準備不足
すすむはレミーの案内に従い、村の北側へと足を運んでいた。
そこは、かつて畑として使われていた場所だが、今は荒れ果て、枯れ草が風に揺れているだけの寂しい土地だった。
「ここが……設置場所か。」
「はい。村長さんが村の人たちに頼んで、草だけは刈ってくれました。」
レミーが胸を張る。
確かに、地面はまだデコボコしているが、作業ができる程度には整えられていた。
すすむは深く息を吸い、ステータス画面を開く。
――建物LV4。
――コンテナ客室、魔力消費100。
「よし……出すぞ。」
念じた瞬間、空気が震え、光が地面に集まる。
次の瞬間、ドンッという重厚な音とともに、巨大な四角い影が姿を現した。
「うわっ……でかい……!」
レミーが目を丸くする。
そこにあったのは、40フィートのコンテナを改装した客室ユニットだった。
白い外壁に、窓とドアが一つずつ。
見た目は完全に“異世界の建物”ではない。
「じゃあ、入ってみようか。」
すすむがドアを開けると、ひんやりとした空気が流れ出た。
二人は中へ足を踏み入れる。
★★★★★
中は細い通路になっており、右手には小さなユニットバス。
その奥にはベッドルームが広がっていた。
「……すごい……!」
レミーは目を輝かせながら部屋を見回す。
ベッドはふかふかで、枕元にはライトのスイッチ。
壁には折り畳み式の小さな机が取り付けられ、椅子もある。
ただし、テレビや冷蔵庫といった“現代の象徴”は一切ない。
「木じゃないんですね、この部屋……」
「鉄と樹脂だよ。魔法で作った材料ってことにしておこう。」
すすむは苦笑しながら答える。
この世界にも、魔法で生成された不思議な素材は存在する。
冒険者の荷物にも、金属とも木ともつかない道具が混ざっているのを見たことがあった。
「ユニットバスも、宿のと似てますね。」
「そうだね。使い方も同じだよ。」
レミーは興味津々で蛇口をひねり、湯が出るのを見て感動していた。
★★★★★
すすむたちは外に出て、同じ要領でさらに二つのコンテナ客室を生成した。
魔力は500あるが、コンテナ一つにつき100消費するため、今日の限界は三つ。
「これで……三部屋か。」
レミーは感心したようにコンテナを見上げる。
「すごいよ、すすむさん! これなら冒険者さんたちも泊まれます!」
「そうだね……ただし問題が一つある。」
すすむは腕を組んだ。
「人手が足りない。」
コンテナ客室を設置しただけでは宿泊施設として機能しない。
清掃、受付、食事の提供、洗濯……
宿屋の仕事は多岐にわたる。
「このままじゃ、リリアさんたちだけじゃ回らないな……」
レミーも不安そうにうなずいた。
「村長さんに相談してみよう。人手を確保しないと、開業できない。」
すすむはコンテナ客室を見渡しながら、静かに決意を固めた。
村に押し寄せる“ダンジョン特需”。
それに応えるための新しい宿泊施設――コンテナホテル。
だが、始める前から課題は山積みだった。
「よし、村長さんのところへ行こう。」
すすむはレミーとともに、村長の家へ向かって歩き出した。
新しい宿の誕生は、まだ準備段階にすぎない。
だが、確実に村の未来を変える一歩になるはずだった。




