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第44章 冬支度の改装計画

第44章 冬支度の改装計画


上級政務官マンハイム、政務官ローレント、そして助手マーカスの三名が無事にチェックアウトしたことで、宿の三部屋が空いた。

最近は冒険者の往来も増え、宿の稼働率は五割から六割ほど。

村の規模を考えれば悪くない数字だが、すすむは胸の奥に小さな違和感を抱えていた。


――このままでは、冬を越せない。


建物LV3のスキルで得られる建材を確認していたとき、すすむの中でひとつの考えが形になった。


「……客室を、改装しよう。」


まずは政務官たちが泊まっていた部屋からだ。

すすむは厨房で仕込みをしていたリリアに声をかけ、改装の許可を求めた。


「部屋を……改装、ですか?」

「はい。冬に向けて断熱を強化したいんです。今のままだと、寒さでお客さんが眠れません。」


リリアは少し驚いたように目を瞬かせたが、すぐに柔らかく微笑んだ。


「すすむさんがそう言うなら、きっと必要なことなんでしょう。お願いします。」


許可を得たすすむは、早速部屋へ向かった。


政務官が使っていた部屋は、ユニットバスとルーフランプ、木製のベッド、小さなテーブルと椅子が置かれた簡素な造りだ。

コーキング材で隙間風を防いではいるものの、断熱はほぼ皆無。窓枠からは外気が容赦なく入り込み、冬の夜には凍えるほどだ。


「……まずは、ここからだな。」


すすむは窓枠に手を当てた。

鉄製の古い窓は重く、開閉のたびに軋む音を立てる。雨の日には水が染み込み、風が吹けば冷気が流れ込む。


「これじゃあ、政務官の方々も寒かっただろうな……」


建物LV3のスキルで取り出した白枠のアルミサッシを部屋に運び込み、採寸を始める。

メジャーを当て、枠の高さと幅を確認し、微調整を加える。

ガラスは割れやすい。慎重に、慎重に。


「レミー、こっちを押さえてくれ。」

「わかった!」


レミーは慣れない手つきながらも、すすむの指示に従って窓枠を支える。

二人で息を合わせ、アルミサッシをはめ込み、固定していく。


「……よし、これで窓は完了だ。」


外気の流れ込みが一気に減り、部屋の空気が落ち着いたように感じられた。


次は壁だ。


すすむは建材を部屋に運び込み、レミーに説明しながら作業を進めた。


「まずは角材で枠を作る。ここに断熱材を詰めていくんだ。」

「こんなふうに……?」

「そう、それでいい。」


角材を壁に沿って組み、断熱材を隙間なく敷き詰める。

その上からボードを貼り、釘で固定していく。

丸鋸で板を切るときの音が、宿の廊下に軽やかに響いた。


「すすむさん、これ……本当に全部自分でやってきたの?」

「前にいたホテルでは、設備の補修も仕事のうちだったからね。慣れてるよ。」


「すすむさん、ホテルで働いていたんですか?!」


「ああ。」


レミーは尊敬の眼差しを向けた。


1日目は壁の下地まで完成した。

まだ壁紙は貼っていないが、断熱材が入っただけで部屋の温度が違う。


「今日はここまでにしよう。続きは明日だ。」


すすむは工具を片付けながら、改装後の部屋を思い描いた。

暖かく、静かで、安心して眠れる空間――

この世界の宿屋に、そんな“当たり前”を持ち込みたい。


その思いが、すすむの背中を押していた。

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