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第42章 エレニア到着、そして帰路の闇に潜む影

第42章 エレニア到着、そして帰路の闇に潜む影


エレニアの城門前で列に並んでいたすすむの馬車は、

門番がこちらを確認した瞬間、態度を一変させた。


「マンハイム上級政務官!? し、失礼いたしました! どうぞお通りください!」


どうやら、いつの間にか目を覚ましていたマンハイムが、

馬車の窓から顔を出していたらしい。


その“顔パス”は絶大で、

門番たちは慌てて道を開け、馬車はすんなりと町の中へ入ることができた。


エレニアの町は、グレン村とは比べものにならないほど賑やかだった。

人、馬車、荷車、露店、行商人……

通りは絶え間なく動き続ける人々で溢れ、

すすむは御者席で思わず息を呑んだ。


(これは……運転に気を使うな……)


偽装馬車は揺れこそ少ないが、幅はそれなりにある。

人混みの中を進むには、慎重な操縦が必要だった。


「すすむ殿、あちらです。あの通りを右へ。」

助手のマーカスが、窓から身を乗り出して案内する。


「了解です。」


すすむは手綱を操り、ゆっくりと馬車を進めた。

馬車の車輪が石畳を軽く叩き、周囲の喧騒が耳に響く。


やがて、町の中心部に差し掛かった時――

巨大な石造りの建物が視界に入った。


五階建て。

この世界では珍しいほどの高さと重厚さを誇る建物。

それが、エレニアの行政府だった。


「着きました。ここですね。」


すすむが馬車を止めると、三人は順に降りてきた。


マンハイムは深く頷き、

「見事な操縦だった。感謝する。」

と短く言葉をかけた。


ローレントは、ほっとしたように息をつきながら、

「いやぁ……やっぱりグレン村の宿は最高でしたね。

またすぐ戻って、くつろぎ――」


「ローレント。」

マンハイムの低い声が飛ぶ。


「は、はいっ!」

ローレントは背筋を伸ばし、青ざめた。


「仕事が終わってからだ。わかったな?」


「も、もちろんです……!」


すすむは苦笑しながら、三人に深く頭を下げた。


「皆さま、どうかお気をつけて。」


「白谷殿、また会おう。」

マンハイムはそう言い残し、行政府の中へと消えていった。


三人を見送ったすすむは、馬車に乗り込み、ゆっくりと建物を離れた。


帰りも同じ門から出る。

夕日が城壁を赤く染め、影が長く伸びていた。


(さて……グレン村まで戻らないと。)


しかし、馬車はどうしても速度が出ない。

丘陵地帯を越えるには時間がかかり、

夜になればモンスターが出る可能性もある。


すすむは判断した。


「……偽装を解こう。」


馬車を道の脇に止め、

偽装を解除して元の車を呼び出す。


黒い車体が夕闇の中に現れた瞬間、

すすむはほっと息をついた。


「やっぱり……これが一番安心するな。」


荷物を移し替え、車に乗り込む。

エンジンをかけると、馬車とは比べものにならない力強い振動が伝わった。


アクセルを踏むと、車は一気に加速した。

馬車の二倍以上の速度で、丘陵地帯の道を駆け抜けていく。


完全に暗くなり、対向の馬車もいない。

すすむはヘッドライトを全開にし、

曲がりくねった道を慎重に進んだ。


(この世界で車を走らせるのは……やっぱり緊張するな。)


そんなことを考えていた時だった。


前方に――

小さな影が、ぼんやりと浮かび上がった。


すすむはブレーキに足をかけ、目を凝らす。


(人……? いや、違う……)


影は急速に近づき、

ヘッドライトのハイビームがその姿を照らし出した。


緑色の肌。

小柄な体。

ぎょろりとした黄色い目。


「……ゴブリン……!」


すすむは息を呑んだ。


闇の中、ゴブリンは牙をむき、

こちらに向かって走り出してきた。


車のライトに照らされながら――

まるで獲物を見つけた獣のように。

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